私達がさっきまでいたのが、西暦2018年11月の諏訪地方だったのに、
今は宇宙空間の施設の中にいます。
那由多さんの地元。
私達の世界とは298年後の違う未来。
アルちゃんがピカーって光って、世界中の時間が止まって、
みんなでこんなに遠くまでやってきた。
なんと今回は若葉ちゃん達だけじゃなく、巫女になっていた子たちも一緒。
ヒナちゃんだけじゃなくて、もっとたくさんの巫女のみんながいる。
「わ、ビックリした。」
急にグググってやって来た人工重力にバランスがとれず、ちょっとビックリ。
「大丈夫、花本さん。」
「ええ、大丈夫です。お手を煩わせて申し訳ありません。郡様。」
美佳ちゃんは続けて一緒。
「なんだ、無重力はもう終わりか。タマはもっと無重力で良かったのに。」
「私は何だか落ち着かなかったから、重力がある方が良いかな。」
「はいはい、2人とも落ち着いて、球子、はしゃがない。杏ちゃんはリラックス。」
安芸さんに会うのは初めてだけど、お姉さんって感じでタマちゃんアンちゃんもいつもより嬉しそう。
私は……まだ茉莉さんとちゃんと話せてない。
ううん、茉莉さんとだってちゃんと話せたことなんて、一度も無かったかもしれない。
途中で大きな建物に入る時に那由多ちゃんが、この世界の自分の制服に着替えた。
でも、私達の中学校の制服と違って、もっと生地がしっかりしたパンツスタイルで、
大人の人が着ているスーツみたいな感じがする。
「来島那由多少尉、勇者乃木若葉様をお連れしました。」
「ああ、入ってくれ。ロックは開けてある。」
促されて自動ドアを潜ると、スポーツやコンサートで使われているようなすり鉢状の座席に
たくさんの大人の人が座っている。
かなりの年齢の人も、女の人も、それから肌の色が人間離れした宇宙人さん。
その中の2mくらいありそうな映画の火星人ぽい人が進み出る。
「ようこそ、勇者達。私はこの相転移実験施設イルヴァルティカの責任者、田中麗子です。」
あれ? メッチャ宇宙人なのに日本人みたいなお名前。
よく見ると席についている人のほとんどが外国風の名前だけど、時々日本風だったりしてる。
「たぶん、この部屋の人数に驚かれていることでしょう。ですが、
それだけ宇宙中の全ての存在にとって注目に値する。それほど天の神の力は脅威なのです。」
「そうですね。私達の世界も何度となく脅かされてきた。こうして私達が決して孤立無援でないと
知ったことは励みになります。」
若葉ちゃんが差し出された手をとって握手してる。
若葉ちゃんはこういうのに慣れてきてるみたい。
この世界も大変みたいだけど、こんなに大きな施設を宇宙に作ったりできるんだ。
「少尉、永い間、天の神の近くでの任務は大変だったでしょう。ご苦労様でした。」
「……え、あ、はい、ありがとうございます。しかし、この任務に着いた人員のほとんどは
帰らぬ人になりました。」
あれ?
那由多ちゃんがすごくぎこちない動き。
緊張しているのかな。
「お互いに確認したいことはたくさんあるでしょう。まずはこちらの世界の状況をお伝えしましょう。まずはこれをお渡ししますね。」
そう言いながら、田中さんは腕時計みたいな機械を渡してくれる。
「これは、コンピュータか。かなり小型化されているな。」
「でも、これでは画面が確認しづらくないですか?」
久美子さんとヒナちゃんがさっそく色々触っている。
「そうですね。まずは使い方でした。」
田中さんの声に合わせて係みたいな人が使い方を教えてくれる。
「これ自体は場所を特定しているだけなのね。まさか施設全体に映像が流れているなんてね。」
「あ、ぐんちゃん、使い方分かったんだ。私にも教えて。って、あれ? 茉莉さんと十華ちゃんは使い方知ってるんだ。」
十華ちゃんは天の神のところにいたからなんだろうけど、茉莉さんもパパっと使ってる。
「沙耶ちゃんが同じような機械を避難所中にバラまこうとして回収したことがあったから。」
茉莉さんの答えが聞こえた瞬間、ザワザワってしていた部屋がピタリと止まる。
全員の目が一斉に茉莉さんに集中すると、まるで庇うように十華ちゃんが前に進みでようとする。
そして、まるで十華ちゃんの動きに合わせるように、田中さんの隣にいた
鬼っぽい外見の人たちが無言で一歩前に出る。
「待って、十華ちゃん。大丈夫だから、ボクはもう分かってるから。」
「茉莉さん、分かりました。」
茉莉さんは何が分かったんだろう。
「田中さん? みなさんどうされたんですか?」
ヒナちゃんの問いかけに田中さんは一度だけ軽く頭を振る。
「驚かせてすみません。ですが、我々もにわかには信じがたいのです。ですが、今の物言い、
本当に天の神は人間だった時期があるのですね。」
「はー、ビックリした。いや、この腕時計機械にもだけど、さっきは捕まって食べられるんじゃないかと思ったわ。」
「安芸先輩じゃないんですから、そんなの失礼です。」
「ちょっと花本ちゃん、それはどういう意味よ。」
真鈴さんがグッタリとした様子で用意された部屋のソファにもたれかかった。
「どうだ。」
「盗聴や見張りは無いですね。鍵も開いてますし、信用はされているんでしょう。と言うか
なんでわたしに聞くんですか?」
「せっかく、お前たちが持つ神の力があるんだ。有効利用したいんだよ。」
久美子さんは相変わらず久美子さんだ。
こっちの人たちを警戒して、十華ちゃんに周りの様子を聞いている。
ちょっと意地悪なことを言うけど、最後はうまくまとめようとしてくれる。
「十華、こっちにいらっしゃい。」
「はーい、おねえちゃん。」
そのまま十華ちゃんはぐんちゃんと美佳ちゃんの近くに行ってしまった。
「やれやれ、フられてしまったよ。」
「十華ちゃんに変なことを教えないでくださいね。あとで郡さんに叱られますよ。」
茉莉さんはちょっと変わったかもしれない。
優しくて、いつも分かりやすく目線を合わせて話してくれるけど、前はもっと静かな感じだった。
今は久美子さん相手でも、結構いい感じに話している。
「お前、前から思っていたが、だいぶ言うようになったじゃないか。」
と思っていたのは私だけじゃなかったみたい。
久美子さんも同じように感じたのか、からかうようだけど聞き返す。
「そうですね。ちゃんと言っておかないと、糸の切れた凧みたいな人が周りに増えたからでしょう。」
きっと、今しか茉莉さんときちんと話す機会がない。
「なあ、前から聞こうと思って聞けなかったんだが、友奈と茉莉はどういう関係なんだ?
いっしょに四国に来たってことは、タマと真鈴の弟くらいの関係なのか?」
「ああ、タマちゃん、私が自分で話そうと思ってたのに。」
「おお、そうだったのか、だったら遠慮せずに話しタマえ。」
先に言われて思わずタマちゃんに詰め寄ってしまう。
でも、きっかけとしてはちょうどよかったかもしれない。
「えっと、ヒナちゃん、久美子さん、今は大赦の人たちもいないから。」
「そうですね。良い機会かもしれません。構いませんか。」
「いや、私達から話すさ。大赦でやりたいことはほとんど残っていないからな。」
ヒナちゃんは若葉ちゃんにも何も言ってなかったんだと思う。
でも、私は知っていてほしんだ。
私達がどうやって四国に来て、どんな風に思ってきたか。
それから、久美子さんと茉莉さん、私がお互いに知っていることを捕捉しながら、話始める。
私達がどうやって四国までやってきたのか。
どうして、久美子さんが巫女だってウソをついていたのか。
そして、茉莉さんがどうして天の神のことを名前で呼んでいたのか。
「天の神が人間だったのは知っているけど、なんかイメージ違うわね。」
「そうですね。実際に会ったことがほとんどないので、断言できませんけど。」
「そうか? 前の時も」
。
不思議だったのは天の神はその時のことを誰にも話さなかった。
ただ避難民に混ざって普通に暮らしていただけなのに、どうして秘密にしたかったんだろう。
「神様はいろんなことを教えてくれた。でも、その時思ったことは言ってくれなくなった。
結城ちゃんだったころは、何が好きとか、学校でこんなことがあったとか、いろいろ
話してくれたのに。」
十華ちゃんが言っていた言葉が、少しだけ心に残った。
若葉ちゃんと十華ちゃんが、だいぶ眠そうでヒナちゃんとぐんちゃんに手を引かれて行くと、
みんなも、だんだんと用意された自分の部屋に帰っていく。
最後に私と久美子さんと茉莉さんが残っている。
あ、すっかり溶け込んでるけど、アルフレッドさんもいる。
「アルフレッドさんは」
集まっていた部屋は広すぎてちょっと寒く感じる。
「ちょっとタバコを吸ってくる。」
「あ、待って、久美子さん。」
久美子さんが外に出ようとしたので、私も慌てて呼びかける。
「どうした、友奈。」
2人で外に出ると満天の星空が広がる。
外って言っても、結局は宇宙空間にポツンと浮いた施設の中庭みたいなところだ。
「あ……。」
「何か見えるの? ゆうちゃん。」
茉莉さんに呼びかけられて振り返る。
「きっと、天の神は今の私達みたいになりたかったんじゃないかな。」
久美子さんと茉莉さんが不思議そうな顔で私を見ている。
「さっきの茉莉さんが拾った時、すごい怪我で目を覚まさなかったって、でも、ホントに
怪我をしたから目を覚まさなかったのかなって。」
本当の結城ちゃんがどんな人なのか私達は未だ知らない。
でも、1つだけ思いついたことがある。
しまなみ海道に入ろうとした時、久美子さんが私だけを連れて四国に行かないって、駄々をこねたことがあった。
あの時、私は必死に止めようとして、私は久美子さんに手を出せなかったけど、
代りに茉莉さんは本気で久美子さんを止めた。
その後、茉莉さんとも久美子さんとも会えなくなったけど、こうしてあの頃と同じように話せている。
茉莉さんがポツリとつぶやく。
「沙耶ちゃんが何を思っていたか分からないけど、白鳥さんと戦わなくちゃいけなくなった時、
すごく喜んでいた。終わった後は泣いていたけど、こんなにすごいことができるんだって。
ボクには全然わからなかった。なんでそんな矛盾したことをしたんだろうって、大好きだったなら、
ずっとそばにいればよかったのにって。」
そうなんだ。
白鳥さんは若葉ちゃんしか話してないけど、きっと頑張って天の神を止めてくれたんだ。
「きっと、神様にだって届いていたんだよ。白鳥さんが頑張ったこと。」
「もし、本当に沙耶ちゃんにも届いていたんだったら……。」
「そんな都合言い訳あるか、ただ傷を癒すために人間のフリをしただけだろう。」
久美子さんの言葉を聞いて、私と茉莉さんは顔を合わせて何故か笑ってしまった。
部屋に戻るまで私達はずっとニコニコしていて、久美子さんは、どっちでもいいって、根負けしてくれた。