"ピピピピ ピピピピ ピピピピ"電子音のアラームが鳴り響く。
"ピピピピ …ピッ"ストップボタンを押して背を伸ばす…俺の名前は、
"コンコン"
「こんにちは!あなたが今日からここで働く泥暮君ね?」
小さめの鉄箱がドアから進入してくる。
「ノックはちゃんと……マルクト様でしたか、申し訳ありませんでした」
思わぬ訪問者に睨みそうになったが、慌てて態度を軟化する。
「あぁ、別にいいの!私が悪かったんだし…でも、他のセフィラさん達には言葉遣い、気をつけてね?中には厳しい人もいるから」
…割と良いやつだな、この鉄箱
「ご忠告、ありがたく受け取っておきます。…ところで、如何様でここにいらっしゃったのですか?」
「別に特別な用事とかは無いんだけど…敢えて言うなら、入社記念の挨拶かな?」
「…はぁ、そうですか」
わざわざこんなところまで来て何も用事なしとは、マルクトはとんでもない馬鹿か下らないお人好しか狂人なのだろうか
「あ!それより朝会に早く行かないと!君にも伝えるつもりだったんだ、じゃあね!」
…は?
「うるるるぅぅぅううぁぁあぁあああ!!!」
獣の様な雄叫びを上げ、全力で廊下を走り抜ける。一応真っ直ぐ行けば着くとはいえ、L社は比類なき会社達翼の一員なのだ、会社がデカくて突然だろう。
「よーう、朝っぱらから元気だな、新入り」
隣からセグウェイに乗った緑髪が追い越してくる
「ゼェ……先ぱ…ゼェ……い…ゼェ…」
一応、知り合いではある社内寮に荷物を運び込む時、手伝ってくれたL社の先輩
「ははは、お前面白いな」
カラカラと金は笑う、顔面殴りたくなってきた
「と……とにかく、今は真っ直ぐ急ぎましょ……ゼェ」
「俺は大丈夫だよ、ほら三ヶ月乗り続けた俺のセグウェイターン!」
クルクルと滑らかに回って、そして全力ダッシュの俺の前を行く……やっぱ殴るか
「ほらほら頑張れ〜あとちょっとだ…あべし!」
「あっはっは、危ないですよ走ってる人の前に出るなんて。今何でか全力で降った腕が顔面にあたっちゃったじゃないですか」
してやったり、ザマァみやがれ、そんな感情が俺の足取りをどんどん軽くする。
「いってぇぇぇ……コンチクショウ、後で覚悟しとけよ」
「ほらほら、前見て、もうすぐ着きますよ」
呼吸を落ち着かせて扉を開く…
「で、あるからして…あれ?泥暮君遅れちゃったの?次からは気をつけてね」
「…は、はい」
一気にこちらに視線が集まり、硬直してしまった。金の方向へ顔を向けると元気にサムズアップしていた。もちろん、その後全力で顔面を殴ってやったのは言うまでもないだろう。
「…はい、申し訳ありません、本当に……以後気をつけます…はい、有難うございました……はぁ」
そらそうだよ、あんな公衆の面前で先輩の顔面ぶん殴る様な奴1〜2時間の説教聞かされて当たり前だよ。
「ドンマイというか何と言うか、お前口調丁寧な割に結構バイオレンスだな?」
「生まれが外郭なもんで、口より先に手が出る性分が染み付いちゃってるんですよ」
「…へぇ、珍しいな?外郭出身なんて。何かの抽選にでも当たったか?」
外郭の連中はなんかやらかした会社の放逐や単純に都市のルールから外れた者たちが殆ど。だから滅多に巣はおろか、正式な路地裏にすら入れない。しかし、一部例外がある。翼のイメージアップのためされる、抽選というものだ。それに選ばれた幸運な奴は無事、数日チヤホヤされて忘れられた頃にそこらの裏路地に捨てられると言った感じだ。…だが、俺はそれ以上に例外だ。
「昔、ちょっと会社で働く為に住民権を貰ったんですよ。ここの前に働いてたとこで」
ある意味、抽選に当たるより幸運かもしれない。仕事と飯と住民権が同時に貰えるのは
「くくく…やーっぱりお前面白い奴だな?」
俺の奇妙な出生を気に入ったのか「ほら、面白ぇ話聞かせてもらった礼だ」と言ってグレープ味のウェルチアースを奢ってくれた。……俺の苦手なやつだ…
「…どうも、ありがとうございます」
なるべく少しだけ飲んで、我慢しておこう
「おいおい…すげぇ顔になってるぞ、もしかして苦手だったか?」
「い、いえ、これはその…感激のしかめっ面というか……」
男二人の部屋に苦笑いが響く…
「ま、取り敢えず飯食いに行くか」
そんな訳で朝飯な訳だが…かなり美味い、少なくとも缶に入った腐ったドブよりかは。だが…金以外の奴らは死んだ顔をしている。もしかすると俺の舌がクソしか食ってこなかっただけで、この飯実は不味いのかもしれない。だとするとこいつらにとって美味い飯って一体…?
「…!!……………!」
遠くから誰かが叫んでいる、野次馬も集まってるみたいだ
「恐ろしすぎるんだ!私はもう耐えられない!こんな仕事続けてたら頭がおかしくなってしまいそうなんだ!」
一人の男がドアに縋り付く様に訴えている
「それは君…もう出来ないってことなのかな?」
女性の声が冷たく響く
「助けてください・・・お願いします。ここから出して・・・もうここにいたくない・・・お願い・・・」
男のそれはもう要求ではなく命乞いのように涙を流しつぶやく。暫く向こうで何かを話していてその内容を察したのか突然叫ぶ
「そんな・・・待ってくれ!助けて管理人!管理人!」
「あーあ、死んだなあいつ」
野次馬の1人が呆れる様に言った、叫んでいた男は引きずられながら廊下の闇へ消えていった。
「どこに行ってたかと思ったらこんなん見てたのか…まぁ、一つ先輩として忠告するなら、職場環境の改善とか安全性の向上とかは考えない方がいいってことだな」
うるさい程の金の顔も、その時はひどく諦めた様な顔だった。
物語をここで書くのは初めてなのでちょっぴりドキドキ…まぁ、期待しない程度に待っていてほしいです。