互いに空を覆い、星々は眠ってしまった。
ーーそれでも私は手を伸ばす
詳しく聞けていなかったが、俺はどうやらアブノーマリティーとかいう奴らの世話をして[PEボックス]とやらを抽出し、それらを今後の世話等の為の道具にしたり、この会社の収入源であるエネルギーにしたりと。…胡散臭いというか、夢物語というか、何でエネルギーになる物が道具にもなるんだよと問いただしたいところだが、まぁ、とにかくアブノーマリティーの連中に構ってやれば万事解決という事だ。
「おう、暴力的バイオレンス新入り、準備は出来たか?」
…暴力的とバイオレンスって同じ意味だろ
「はい、完了しました」
「んじゃ、一応かくにーん…情報記録・確認用のタブレット、及び対応したペン、プロテクトスーツ(裸じゃ無いから答えは分かりきってるけどな)、警棒…こんなもんだな」
身の回りを確認してみる…オッケーそうだな
「はい、それでは指示をお願いします」
「…あ?お前ちゃんと講習受けたのか?」
「へ?」
いや、普通こういうのって先輩とかに従ってた方が安ぜ…
『泥暮、O-03-03に洞察作業をして下さい』
「ほら、アレに従うんだよ」
"ガチャン、カシュー"
声の言うまま、O-03-03とやらの収容室へ向かう…そこには、十字架のブッ刺さった頭蓋骨がいた
「…アブノーマリティーってそんな感じなのか……外郭の化け物みてぇだな」
"ギリギリ…ギリ"とその骸骨は歯軋りする。その見た目も相まって妙な威圧感を醸し出している。
「あー…ちょっと掃除していきますよー…」
掃除用具を取り出し、軽く掃き掃除してみる
気まずい
向こうから何も話しかけては来ないが、目がないのに視線を感じるし、何か怖い、カタブツの爺さんを相手してるような気分だ。
「い、いやーいい天気ですよねー…」
勿論L社に窓なんてない、それどころか地下である。けどこんな気まずさの中でどうしてまともな判断が出来ようか。
「汝、己の罪を告白せよ」
⁈しゃ、喋った⁈
「…っと、それどころじゃねえ、作業終了だ」
適当に見た目や行動をメモしたデータを送信し、そそくさと収容室から逃げ出した。
"ガチャン、カシュー"
「お、おかえりー泥暮どんな奴だったんだ?」
「何か爺さんみたいな頭蓋骨でしたよ…何か疲れた…」
何だかアイツを見てると妙に圧倒されて気分が悪くなった
「あー…多分それは精神攻撃だろうな、そういう風に介入してくる奴もいるんだよ」
「何ですかそれ…物理よりやな感じですね」
実際食らって見ると分かるが、物理よりもっと触って欲しくない所に触られて、手で遮る事が出来ないような、そんな気分になる。
『776番、たった一つの罪と何百もの善に抑圧作業をして下さい』
たった一つの罪と何百もの善というのはO-03-03の名前だ、俺の作業で回収したPEボックスで判明したらしい…もっと他に調べる事あるだろ
「お、今度は俺みたいだな…俺の番号ってあと一つでスリーセブンなのにな」
どうやら俺以外は番号で呼ばれ、指示されるらしい…なんか嫌な気分だ、それに何で金は何もそれに触れないんだか
"スタスタスタ…"
金もいないし口に出さないから正直に言うが、俺はああ言うタイプが苦手だ、例の猫とネズミのケンカするアニメで言うとネズミの方の性格だ。定期的にこちらをからかってきては安全圏からイラつきを与えてくる。そのおかげで顔面殴って怒られたし…まぁ、そこは自分も改善の余地アリだが。
"スタ…スタスタ……"
そんな感じに思考を巡らせてたら先輩が戻ってきた…全身に血を滴らせて
「えーと…大丈夫ですか?先輩」
流石に心配になって声をかける
「俺……だから…もう……ッあ"あ"あ"あ"!!」
「は⁈」
"ビュン"警棒がスーツを掠める、大振りだったから避けられたが、結構なパワーだ
「俺は……ただ……それが…欲…?」
うわ言のように呟いて、時々何かが切れたように叫んだと思えば殴りかかってくる。確かマニュアルに書いてあったが、これがパニックという物らしい。
「何だかわかんないですけど、取り敢えずくたばれ!」
まさか突然襲ってくるとは思わなかったので半ギレしながらタコ殴りにする。
『泥暮、たった一つの罪と何百もの善に愛着作業をして下さい』
「うっそだろ⁈出来るかクソが!」
俺がこんなピンチにも関わらず、声は無機質に流れ続ける。しかし、収容室は外部からの影響を大体遮断する、絶好の逃げ場だ。
「お前も……欲…罪深い……」
金の顔の一部がねじれ、宝石の様になる。あれもあの頭蓋骨の力か?
「って、そんなん考えてる場合じゃねぇ!あばよ!」
"ガチャン、カシュー"金が入る前に急いで扉をロックする。即座にタブレットを開き有用な情報がないか調べる為だ。作業時間を伸ばす方法とか俺以外の職員を消し飛ばす作業とか…
「…なるほど、そういう事か」
頭蓋骨の能力の記述欄を見て納得する
「汝の罪を告白せよ」
「…私は、先輩の顔面をぶん殴りました」
割と目新しい罪を話してみる……だが、ヤツは
「汝の罪を告白せよ」
そう繰り返した…俺の罪ねぇ?跪いて指を組み祈るポーズをとる。
「私は…生きる為、同種である人を喰いました」
俺が何度も犯してきた、人としてのラインを踏み越えた罪
「汝の罪を、告白せよ」
事実ではある、罪悪感も感じてる、罪だと認識している、俺に何を求めるのか
「汝は、告白せねばならぬ」
「何を、だ?」
頭が痛い、視界が霞んで眩暈もする。金の奴もこれにやられたのか?確かにずっとこれだと狂いそうだ。
「汝を救う命綱であり、地獄に縛り付ける縄でもある、大罪だ」
意味が分からない、分かりたくないのかもしれない。頭痛が囁く『もうお前は答えを知っている』俺の…罪……
「それは……」
"ガチャン、カシュー"
「あ、あれ?俺何して…?」
数十のオフィサーの死体の上に金は立っていた
「…うまく行ったみたいですね」
たった一つの罪と何百もの善の能力、それはPEボックスを最大まで回収すると、その近くの職員の精神を回復させるという物だ。
〜DAY1終了〜
はい、いかがでしたでしょうか?
金には巣の出身という設定があるんですが、実はパワーとスピードのみで考えると外郭出身の泥暮より高いんです。バトルフィールド的なところでやれば(本当にまっさらな地形で)金が勝つのかも知れません。
でも、路地裏とかジャングルジムみたいにごちゃごちゃした所だと泥暮の圧勝ですかね。