ループ・コーポレーション   作:餓空 泥暮

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輝く者たちが見えるだろうか。彼らは貴方に手を貸してくれる。
ただ、貴方が手を握る時。向こうも貴方の手を握っている。


DAY2

うむ、いい朝いい天気だ。文句をつけるならここが地下でそのいい天気がテレビでしか見れないところだな。

ゆっくりとベットから起き、腰掛ける。10時間くらいベッドで寝ていたい…が、そうもいかないのだ。何てったって俺は強大なる翼が一つ、lobotomy corporation(ロボトミーコーポレーション)通称、L社と呼ばれるモノに就いているから……そう、だからこそ…殴りたいほどウザい先輩が居ようが、不気味に見つめてくるロボットヤローが待ち構えて居ようと、俺は出社しなければいけない。

 

「…はぁ」

 

別にこの環境が嫌という訳ではないのだ。メシを腹一杯食べることができて、金が貰えて、業務以外の生活に安全性がある。そこらの裏路地から拾ってきたネズミ(下っ端のようなもの)と比べれば天を仰ぐほどの好待遇。しかし、嫌いな人は嫌いだし、不気味なものは不気味なのだ。

 

 

「よう!いい朝だなぁ?」

 

ムカつく先輩こと金の登場。そのまま回れ右して退場していただきたい

 

「うーす。おはようございまーす」

 

「おぉ?言葉遣いたるんでねぇ?」

 

「気のせいだと思いまーす発狂せんぱーい」

 

「ウ"ッ!!やめろぉ!それ最近の黒歴史No.57だから!!」

 

金は自身の胸を押さえわざとらしくうめく。というかあの醜態がNo.3

57ならそれより上は何なんだ…?

 

「こん にちは」

 

「ぎゃああああああっ!!!」

 

「お、おはようジョシュア……うるせーぞ泥暮」

 

そんな事言われたって背後から話しかけられたらそりゃ……

 

「こん にちは」

 

「あーはいはいわかったよお!は!よ!う!!」

 

何度も言うが俺はコイツが苦手だ。どうにも不気味でならん。

それが背後から話しかけられるとなると更に心臓が飛び出そうになる。

 

「オイオイ、仲良くしろよ?折角の後輩だぜ?」

 

「可愛く無い後輩はいらないです。というか可愛く無いどころか怖い後輩はもっといらないです。」

 

「わたし で メンタルダメージ を 受ける 場合 カウンセリング を」

 

「俺の頭はおかしくねーーーーッての!!」

 

コイツもコイツだ。空気の一つも読めやしない…

 

「まぁ上手くやれよ。不仲が原因で脱走したアブノーマリティーの巣に突き落とされたって事例もあるからな?」

 

「俺は突き落とす側です」

 

「いやそう言う意味じゃなくてだな………」

 

 

 

全く気が滅入るぜぇ…

俺はイカしたセンパイ山風金 だ。お前らもこの名前を覚えておくといい。

 

「だーからお前なー?!」

 

「理解 不能 です」

 

「だーッ!!もうお前ブッ殺す!!」

 

「待て待て!まぁまぁ落ち着けってぇの」

 

メイスを振り上げた泥暮の肩を叩き、そのままジョシュアから距離を取らせる。…が、ジョシュアは離れず距離を保って移動してくる。

 

「お前はなんで離れねぇんだよ?!」

 

「コミュニ ケーション を 取る 為です」

 

「肉体言語でコミュニケーション取りたいのか?!!」

 

こいつもこいつで何を考えてるのかさっぱり分からん。泥暮ほどじゃあ無いがそこ知れぬ不気味さは俺もどことなく感じてしまう。今などまさに、近づけばいつブン殴られるか分からないというのに…

 

「コイツ!!コイツ煽ってやがる!!テメーなんざ怖かねー!!野郎ブッ殺してやらーーッ!!」

 

「落ち着けってなぁ!!」

 

俺はやむを得ず拳で泥暮を落ち着かせる

 

「ぐえッ!」

 

潰されたカエルのような声を出してやっと止まった。全く、揉める度に俺が殴りつけなきゃいけねぇと思うとため息が出る。

前の部署は良かった。少なくとも俺はツッコミかというとそうではなく、ボケ側だったから好きに迷惑をかける事ができたからな。

 

『776番、O-02-56に愛着作業をして下さい』

 

「…ったく間の悪ぃ……いいか?俺の居ない間に何か騒ぎを起こしてみろ。ブン殴ってやる」

 

自慢じゃ無いが俺は体力とパワーにだけは自信がある。新入社員程度なら簡単に戦れる。

 

「…へーい」

 

「了解 しました」

 

泥暮は頭をボリボリ掻きながら、ジョシュアは真顔で真っ直ぐに見つめながら応答する。今のうちに腕を回しとくか…

"ガチャン、カシュー"

おや、どうやら見覚えのあるアブノーマリティーのようだ、幸先がいいな。白いもふもふの毛とつぶらな瞳、そして嫌でも目に入る腹の赤い模様。確か名前は…

 

「…罰鳥、だったか?」

 

旧友と再会して握手するような感覚で、罰鳥が嘴でどついてきた。え?嘴ならつつくじゃないかって?そんなレベルの威力じゃ無い

 

「ぐァ………!」

 

豆ほどの嘴から繰り出されるのは成人男性の殴打レベルの打撃唐突すぎて思わず呻いてしまう。もっとまともな防具が欲しいところだが、無いものを乞いても仕方ない。

 

「ほれ、ペン投げるから取ってこい。」

 

愛着作業はアブノーマリティーとの遊戯。時に道具とじゃれさせ、時に逃げ惑い、時に教育番組を見せたりなど…

動物に近しい種類のアブノーマリティーなら、この作業の場合じゃれさせるのが基本だろう。

俺は罰鳥が取ってきたペンを受け取り、ついでと言わんばかりにどつこうとした嘴を片手で受け止め、もう一度投げる

 

「そらよっ…と」

 

それを4〜5回繰り返し、メモとデータを送信。作業室を出た。

 

「お前らただい」

「くたばれーーーーーーーッ!!!」

 

俺は泥暮の振りかぶった『懺悔』をを避けどうやら回りの悪い頭に拳をブチ込んでやった。

 

 

 

「…分かった。お前アホだなぁ?さては」

 

閃いたと言わんばかりの顔で言う金。その口に俺の『懺悔』をブチ込んで…!と、したいところだが弁明する。

 

「違いますよ…また発狂して帰ってくると思ったんで…」

 

「分かった。やっぱりお前アホだ」

 

「……………」

な、殴りたい……!!

 

「アブノーマリティーにゃ大体4種類の攻撃をしてくる奴がいる。ただ単に殴ったり切ったり噛んだりしてくる奴。精神に作用してくるやつ。両方してくるやつ。体力とか関係なしに死のカウントダウンをしてくるやつ、とな。」

 

「へぇ…」

 

「この内俺が発狂するかも知れない(というかほぼする)のは精神のやつと両方のやつだ。」

 

「…………へぇ」

 

「あ、今半分じゃねぇかと思ったな?残念カウトダウン系はほぼ居ねーから三分の一だ」

 

「………………」

より悪いじゃねぇか!!と叫びそうになる自分の声を留める。今更すぎるかもしれないが一応先輩なのだ。…腹が立つので、白い目で見てやるが。

 

「お二人 は 仲良し です ね」

 

「おう!まぁな!」

 

「バカ、だーれがこんなすっとこどっこいと…あ」

 

うっかり口を滑らせてしまった。なんと弁明しようか脳をこねくり回していた時

 

『泥暮、O-02-56に洞察作業をしてください』

「おっ、じゃあ俺行って来まーすでは!」

 

速攻で会話を遮断しこれ以上の悪化を停止、立ち上がりそのまま隙を与えずスタスタと作業室へ走る。

 

「ふぃー…我ながらナイス判断」

 

これは外郭出身の俺も社会人名乗っていい気がする。

"ガチャン、カシュー…"

さて、そういえば金にどんなのか聞き忘れたな…などと思い警戒してアブノーマリティーの気配のする方向に目をやると……木に小さな小鳥がとまっていた。

若干、骸骨とは一つほどの格の違いのようなものを感じるが気にしていても業務は進まない。スルーをして俺はバケツに水を入れる。

 

「とりあえず掃除するぞ〜…」

 

緊張感のようなものを持ちつつも、そっと止まり木の溝に沿って雑巾をかける。小鳥を近くで見るとけっこうモフモフとしていて、特に胸の辺りの赤い肉血の色は正直食欲をそそる。ちょうどそのまま丸ごと揚げてしまえばちょうどよく手に持って食べれそうだし。などと俺は腹でものを考えていると

"ゴッ!!"

 

「いっ……?!」

 

拳骨が飛んできた、最初はそう思った。しかしここにはうざったらしい例の"先輩"は居ない。となると消去法で考えられる、この打撃の原因は…

 

「こ、の鳥公………!!」

 

つやつやのくちばしは見せびらかすように電灯を反射させていた。俺の頭から出た血に塗れて

 

「ぐっ…」

 

俺は滲み出る血を手にあった布でとりあえず拭い、その雑巾の香りに吐き気を感じつつも業務を続ける。

鳥公のフンを拭って、抜け落ちたらしい羽をかき集めて、激突してくる鳥公をかわしつつくちばしの血を拭って…フンを拭った後だったせいか、よりつつかれて。

 

「後は、レポート……だな」

 

別に、誰かに何か特別なことをしろと言われたわけでも、俺の意欲が急に良くなったわけでは無かった。無かったのだが…

何かが俺の中で渦巻いていた。そして、あの小鳥も。何かが渦巻いているようだった。

そう、魂が共鳴していた。

俺は………

 

 

 

「……腹減った」

 

レポートは書いた。そのハズなのだが…

記憶がとても曖昧で、まるでヘドロのように不定形だ。その癖して全力で駆けずり回ったか、3日ほど食事を抜いたような疲労感があるから始末が悪い。神様も記憶と一緒に盗んでいってくれるなら俺も快く迎え入れるのに、どうして忘れていってしまったのだろうか

 

「………うっぷ」

 

適当に神に責任を押し付けたバチなのか、吐き気の波が迫る。たしか間食用の自販機はメインルームにあった筈だから…

 

「あ」

 

…すっかり忘れていた。あの爆弾発言

まぁ、アイツ馬鹿だし忘れてたりしないだろうか、しないか。

待ってても腹が減るだけ、そうさっさと割り切って俺はドアを開ける

 

「ただいまーッす」

 

「くたばれェッ!」

 

俺はその激烈なドロップキックを前になす術はなかったと言う訳だ。

 

 

 

「はいはい、すみませんでしたーもうしませーん。とてもとても罪悪感で押しつぶされそうでーす。」

 

「もっと気持ちを込めてパッションたっっっっぷりに言えこぉの猛獣」

 

「…………うーす」

 

普段ならカチ切れるレベルの暴言に俺は耐えてみせる。なんと誉れ高い社会人精神だろうか。10人中10人の泥暮が涙がちょちょ切れることだろう。

 

 

「ったく…俺だったから良かったがお前………」

 

ここから先は俺の耳が不必要で程度の低い下らなくしようもない話だと判断したので聞いていない。

 

あの収容室から帰ってきて、自販機のボタンを全部押して明日から絶対押さないものを決めていたら一つ思い出した。…いや、正しくは気がついた事がある。だ

それは俺の首から図々しくぶら下がっている"赤い"ブローチ。嘴を模したと思われるそれはいつの間にかあったのだ。

だが、いつからはどうでも良いとして、なぜはハッキリとしている。

あの白鳥公だ。こんな事が起きるのはアブノーマリティーのせいだし、俺はあの鳥以外のヤツらとは接触してないし、あと赤い胸してるし

 

「くどくど……くどくど………ん?…お前ギフト貰ったのか。仕事はしっかりしてんだな」

 

金が何かに気がついたようだ。

 

「ギフトって何です?」

 

「…お前講習しっかり受けろよ……ま、別に大した事じゃねぇ。アブノーマリティーに気に入られたら貰えるモンだよ。大抵得だがぁ…損と引き換えで別のモノが強くなる、ってのもある。」

 

「へぇ……それって支給品にしないんすか?」

 

「まぁ、体に見合わない量のギフトが付くと自我が侵食されるっつー話だし…それに、貰ったヤツ以外付けれないんだよ。」

 

「何だか面倒ですね」

 

「それに大した変化もないからな。…ま、少なくとも損じゃねぇ。食べるなよ?」

 

「食べませんよ!」

 

俺を何だと思っているのか。流石に本物でもない嘴を食べるわけがない。本物なら齧るくらいはするが。

 

"ビーーッ!ビーーッ!"

 

唐突、警報が鳴り響く。

 

「な、何が…」

 

『O-02-56が脱走しました。O-02-56が脱走しました』

 

「げぇっ…!」

 

E.G.O.防具がが支給されるのはアブノーマリティーの管理時に受けるダメージを軽減するため、という意味がある。疑問に思っていた。何のために武器があるのか?

パニックの職員の鎮圧なら、精神攻撃の武器以外必要ない。

俺は、何と戦うのかを忘れていた。

 

白い小鳥が俺に向かって飛んで来る。その嘴は俺の額めがけ飛んできていたので、とりあえず吹っ飛ばされながらも受け身を取り、そしてそのまま攻撃後で無防備になった小鳥に向けて……!

"ガァン!!"

 

「っ……痛ーーー!!」

 

「危ねぇなぁ……大人しくしてろ。」

 

今、何、痛、倒

 

「…………あれ、まずいな……おぉい?しっかりしろよ」

 

「テメーが俺の後頭部ぶん殴ったせいだろマジふざけんなクソヤローーーッ!!!」

 

「お、大丈夫そうだな」

 

信じられないほどサラッと流し俺の安否を確定させる。ふざけんな小鳥に殴られるより頭がガンガン痛みやがる。

真っ赤に煮えたぎる頭を無理やり冷やして状況を整理すると、俺が小鳥を殴ろうとした時、金が俺の頭をブン殴って吹っ飛ばした。そのせいで俺の攻撃は空ぶった上、激痛に見舞われているのだ。

 

「お前、お前ーー…ッ……ぜってー…後で…!」

 

「落ち着け。ちゃんとアレ見てみろ」

 

「あー……?」

 

ブン殴ろうとする腕を収めて、小鳥を探して目を泳がせる。そこには…

 

「ひ、ヒィッ!!こ、こいつ職員をぉッ、ちか、近寄るなァーーッ!!」

 

オフィサーが飛び回る小鳥に向けてのつもりか、やたらめったらに銃を乱射する。アイツ自身が襲われては居ないが、俺を狙った攻撃を目撃したのだろう。俺を助けるつもりなのかどうかわからないが、銃弾がこちらに飛んできてとても危険なのだが。

 

"パァン!!"

 

一発、小鳥に当たった。狙いを研ぎ澄ましたわけではなく、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるという感じに。小鳥はほぼ無傷のようなものだった。

だが、小鳥はその"罪"を許さなかった。

その腹に渦巻く赤色が全身に広がり、そのオフィサーに羽ばたく

 

「あ、い、ヒィッ…!!」

 

オフィサーはその危険信号を察したようだが、もう遅かったらしい。小鳥に背を向けて廊下へ走り出そうとするが…

 

"グチャッ"

 

歩む足はもう無かった。というか、全身丸ごと…

 

「………腹が」

 

ヤツの腹から裂き出た大口に飲み込まれたから。

小鳥は収容室に帰って行き、ここには平穏とは程遠い血溜まりと気まずい静寂が残った




割と好きな方だが影が薄かったジョシュア君に南無三
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