幻想禍津星   作:七黒八白

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 何年代とか時系列とかあんま気にせんといて。
 そして、本編もそうですがこの小説は現実における全ての事象と人物と関係ありません。反社会的行動が出ても、それを推進推奨する意図は一切ございません。
 

 つまりこの小説を読むときは頭を現実から離して見てね!


現代紀行 輝けない星と言祝がない風
風 独白そして回想


 吾輩は巫女である、名前はまだない。

 

 噓である。伝統を感じさせ、尚且つ可愛らしい名前がちゃんとある。

 ついでに言うと厳密には巫女でも無かったりする。

 

 でも知り合いの皆には巫女で通しているので、巫女を自称している。

 まぁ神道に興味がない人達からすれば「へぇー、そうなんだ」と返ってくればまだいい方で、大概の人は「だから何?」とせせら笑う人も多くいる。

 

 祟ったろうか。巫女ぞ? 我巫女ぞ? 

 

 と、少し話が逸れた。今私は一人でいて周りには誰もいない。

 

 だからこれは誰に語るでも無い、何のことは無い独り言の様なお話。

 

 私が思い返す──────ただの思い出。

 彼のとの軌跡──────ただの日常だ。

 

 どうせ聞く人なんていないだろうし、過去形だったり現在形だったり未来形だったり安定しない語りだが気にしないで欲しい。

 

 私は気にしない。だって私理系だからリケジョだから。文系じゃないから。

 

 それでは始まり始まり────────彼との終わりまでの始まり始まり。

 

 

 

 

 

 

 ♢

 

 春の桜はとうに散り、山間に見えていた桃色の波はすっかり青々とした緑色。

 四季折々の自然が顔を見せる私の生まれと育ちを兼ねる故郷は梅雨に入り始めていた。

 

「あーーー…………今晩の夕飯の当番は私かーーー……」

 

 さて、何にしようか? 続けてそんな事を独りで呟いている。

 中学校が終わり、一人で帰る通学路。もう少しで黄昏時になるだろう。

 私は部活はしていなかった、何故なら代々うちの家系に伝わる家業があったからだ。

 

 それについて私は不満は無いし、疎かにするつもりもないので真っ直ぐに自宅に向かっている────────―しかし、だ。

 

「………………なんか、面白いこと起きないかなーーー」

 

 誰に向けたわけでもない無責任な呟き。年頃の女子というものは、いや恐らく同い年位の男子も飢えているのだろう。非日常とまで言わずとも刺激に。

 

 実のところ私は半身どころか全身どっぷり非日常に浸かっているのだが、それはそれ、これはこれ。普通の女子中学生と同じように歩いて学校を行き帰りし、授業を受け、試験や行事に一喜一憂する。

 

 人知れず斬魄刀を使って虚と戦ったりだとか、マフィアの十代目として戦ったりだとか、超次元的なサッカーで全国や世界を制覇したりだとか、タコや古典的な火星人っぽい担任教師を暗殺したりもしない。

 

 飽き飽きするほど、辟易するほど、普通のなのだ。

 

「……………………」

 

 ────────悪いことじゃないのだろう。

 

 別に今の生活に不満があるわけでは無い、少なくとも明日にでもすぐ命懸けの戦いに身を投じれるか? と問われたら否だ、ていうか普通に嫌だ。

 

 しかし折角、中学生になり地元以外からも電車で色々な生徒が通っているのだから少しくらい変わった事が起こってもいいのではないか? とも思うのだ。

 

「でもまあ…………そんなものですよねー…………」

 

 そして大きなため息をつきながら横の河川敷の方に向いて──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘーイ! ヘイヘーイ! ヘイヘイヘイヘーーーーーイ!!!! 先輩のぉ! ちょっと良いとこぉ!! 見って見たい!!!」

 

 

 

 ──────────────自身よりも大きな学生をサッカーボールの様に蹴っている少年を見た。

 

 

 

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ──────────違う、そうじゃない。私が求めてたのはそうじゃない。

 

 これが漫画ならば白目をむきながらブボァと噴き出しているところだが、生憎現実………………ところがどっこい…………夢じゃありません…………! 現実です…………! これが現実……! 

 

 

 

 嘘だと言ってよバーニィ。

 

 

 

「おらおら、ケンカ売っといてなんだそのザマ? なめてんじゃねーぞ。立てオラ、二度と舐めた口聞けねーようにしてやんよゲボカス」

 

 なんて私が現実逃避している間にも、少年は既に虫の息の学生に追い打ちをかける。

 もうやめて! その学生のライフはゼロよ! 

 

「ちょ、ちょっと!? 何してるんですか!!?」

 

「ん?」

 

 流石に見ていられなかったので上からの声をかける。こちらが大声を張り上げた事に気付いた事で大柄やられている方の学生に攻撃を止めた。

 

「何か?」

 

 ──────いや『何か?』って、こっちのセリフなんですけど??? 

 

 何? 何でそんな真顔なの? 何でそんな曇りなき眼で人を傷つけられるの? 

 

 今までの人生で会ったことがないタイプの人種に戸惑いを隠せない、反射的に声を出してしまったので何を言うか考えていなかった。しかしここで退けば色々と後味の悪い物を残すだろうことは想像に難くない。

 

 ──────意を決して口を開き

 

「そにょ人を離しにゃさい!!!!!!」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 ──────盛大に噛んだ。うせやろ。

 

「………………噛んだろ」

 

 ────―しかも指摘された。死にたい。

 

「…………嚙んでません」

 

「嚙んだろ」

 

「…………嚙んでませんってば」

 

「嚙んだろ」

 

「嚙んでま────────―」

 

「嚙んだろ」

 

「あーーーーはいはいはいはい!!! 嚙みました! 嚙みました! 嚙みましたとも!!! ええ!! 盛大に!!! それはもう盛大に!!! カッコつけた癖に盛大に嚙みましたとも!!! 何か!? 何か文句でもあるんですか!?」

 

「かっこ悪」

 

「ムキィィィィィィイイイイイイ!!!!」

 

 全く同じ口調で全く同じ文言で全く同じタイミングで繰り返され、逆ギレするような────────―というよりも完全に逆ギレしたが相手は露ほども悪びれない、寧ろ煽ってくる。

 

 祟ったろうか。巫女ぞ? 我巫女ぞ? 

 

「んなこたぁどうだっていいんですよ!? 私は! 何してるか! 聞ぃてんですよ!」

 

「大丈夫かお前、キャラぶれてない?」

 

「一から十まで何から何まであなたのせいですけど!!??」

 

 ──────なんだコイツ、いや本当に何なんだコイツ。

 

 未だかつてない程イライラさせられる、人生における怒りの最大沸点をぶっちぎりで更新してしまった。

 

「何かわけのわからん事ほざきながらケンカ売ってきたから返り討ちにした、以上」

 

「この流れで説明するんですか…………いやもういいですよ話が進まないので」

 

 本当に話にならないから、物語的にも。

 

 自由奔放過ぎる、常識にとらわれて無さ過ぎる。改めて観察してみるとどうも少年は自分と同じ中学の生徒の様だった。学ランの襟についているⅡのピンバッジを見ると自分よりも上の学年らしい。

 

 マジかー…………いや、確かにそこまで特別偏差値が高いとか品がいい学校では無いから不良がいる位想像の範疇だったし、実際に教師と言い争っている現場を目撃した事もあるがまさか自分が関わることなるとは。

 

「で、あれか? ケンカは良くないですよってか?」

 

「ま、まぁその通りですけど…………」

 

 ズイ、とこちらに一歩詰め寄る少年。背丈は私と同じ位の170弱位か。女子にしてはやや高い方だと思っていたのだが彼もそこそこ発育がいいらしい。

 

 転がっている方の生徒はピンバッジそのものが違う、恐らくうちの中学校と繋がっている高等部の生徒だろう。背丈やガタイは明らかに彼と私をよりも大きい………………よく勝てたなコイツ。

 

「な、何ですか!? やろうってんですか!? いいですよ巫女の奇跡パワーで──────────」

 

「じゃあ俺帰るわ」

 

「──────え」

 

「そろそろ駅前のスーパーのセールあるし」

 

 いかにも喧嘩なんて慣れてないへっぴり腰で構えるこちらをよそにシンプルな学生鞄を拾い上げて、横をするりと通り抜けていく。

 

 人を殴っていたことに対する申し開きとか、こちらに対する文句とか、弁明の類も一切なく「あばよ緑髪」と言い残してそそくさと土手上に上がっていった。

 

「……………………」

 

 残されたのはボロ雑巾の不良と入学したばかりの女子中学生、アホの子を見るようなカラスの鳴き声だけが二回、三回と夕暮れ時に響いている。

 ぽかーんとあっけにとられながらどうすればいいのか迷っていたが────────

 

「……………………み、見えた。水縞…………」

 

「フンッ!!!」

 

「ごはッ!!?」

 

 ────────―取り敢えず、転がっていた不良に蹴りでとどめを刺す。

 

 八つ当たりでは無い、決して違う。

 

 ♢

 

 不埒な不良にローファーで腹に蹴りでとどめを刺したあの後、まさか私が不良を倒したと思われるわけにはいかないので全力疾走でその場から立ち去った。

 

 その間に彼はいつの間にか消えていた。足が速い、そして判断が早い。これには天狗の面お師匠もニッコリ。

 

 ──────まさかと思うが彼は私を体の良いスケープゴートにしたのではあるまいな? 

 

「くそぅ…………名前くらい聞いとくんだった…………」

 

 そうすれば教師にチクれたのに。彼は髪も染めていなければ制服も改造していない様だったので一見するとただの生徒にしか見えないので名前も知らないのでは探せないし、教師に聞けない。

 

 朝早くからそんな少し陰険な事を考えながら学校に向かう、何故なら日直だからだ。眠い、その上つまらない。

 

 あまりにもつまらないのでこの前当番だった時にコメント欄にハガレンのエドを描いたが、先生はハガレンを知らなかった上に叱られた。ますますつまらない。今時の教師ならハガレン位履修してしかるべきだろう、そして痛みの伴った教訓を生徒に授けて欲しい物だ。

 

「しかも今日は現国と歴史の授業があるんだっけ…………文系科目諸々滅んでほしい」

 

「爽やかな朝早くからテロリズムか? 元気いいねぇ、何かいい事でもあったのかい?」

 

「いやなんで怪異のプロフェッショナルみたいな言い回し──────って、え!?」

 

 現れる、不良をのして足早に消えた彼が。いつの間にか隣にいた。

 

「なんでいるんですか!?」

 

「そりゃお前同じ中学だし、俺今日日直だし」

 

「日直とか真面目にやるんですか!?」

 

「健全な男子中学生なら真面目に取り組むさ」

 

「不良とケンカしてた癖に…………」

 

「現実には3年B組の担任みたいな熱血教師はいない、成績と授業態度が良けりゃ不良との諍いくらい目こぼししてくれるさ」

 

 などとクツクツと笑いながら、或いは嗤いながら彼は悪びれず宣う。確かに言いたいことは解るがそれを堂々と言うのは、はっきり言って悪童だろう。

 

「…………ねぇ、あなた名前なんて言うんですか」

 

「ん? 先生にチクりたいのか? ま、好きすればいいさ」

 

 話しながら歩いていると、もう学校の正門が見えていた。山が多い場所に造られたからか坂道になっているのが毎朝毎朝憂鬱だった。古い木造建築の校舎と新しく造られた食堂などがミスマッチしている。古くからある割と歴史ある学校らしい。

 

「嶋上輝雄だ──────────よろしく、後輩。敬えよ」

 

「だったら敬えるような態度を見せて下さい」

 

「ハハハ、前向きに検討する事を善処しよう」

 

「不祥事起こした議員ですか」

 

「おいおい滅多なこと言うんじゃないよ、奴らはもっと堂々と開き直るだろ」

 

「先輩の方が色々と発言が危ないんですよ!」

 

 混ぜ返すようにこちらを笑い揶揄いながら、坂道を駆け上がっていく彼を────────先輩を私は追いかける。

 

 

 

 毎朝辛く憂鬱なはずだった坂道が、不思議と今はそこまで気にならなかった。

 

 

 





 何か爽やか青春ものになっちった・・・・・ま、いいか。
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