前書きで特に書くことは無いんだぜ、でも描写は丁寧にするように気を付けてるんだぜ、まぁのんびり書いていきます。
『国境の長いトンネルを抜けると雪国だった』―――――有名過ぎる小説の一説だが、果たして元ネタを読んだ上で引用している人は現代にどれ位いるのだろうか? 今時の自分と同じ位の若者は純文学なんて全然読んでなさそうだが、汎用性が高いため色々使いまわされている言い回しが今の状況に当てはまっている、当てはまってしまっている。
自分の場合『寝て起きたら森の中だった』――――――いくら何でも突発的過ぎる、これが小説なら場面転換の間に何があったと疑うとこだ、書いた作者の正気を。
「何て考えている場合じゃないよな」
湧きだす様々な疑問に一旦蓋をして、両腕と両足、四肢に力を籠める。次に素早く胴体と頭部を触る、拘束の類はされておらず怪我も恐らくない。
前後左右ついでに上下を確認、周囲は先が分からない木、木、木、森が続く、そして上は僅かに空と太陽光が見える、生い茂る葉で薄暗いが恐らく朝方、地面は落ち葉やらで特に変わった物は落ちていない――――――自身と周りの状況判断を二秒で済ませ、近くの木に背を預けて何が起こったか考える。
(不良共の報復? いや絶対ない。寝ている間にアパートに忍び込むまでは出来ても起こさず、成人男性並みの俺を起こさず運んで森、もしくは山に放置? どう考えても素人の手口じゃない)
今までに不良の報復で帰り道やアパートに待ち伏せされたことはあったが、ここまで計画的に、しかも回りくどい事をされたことは無かった。第一寝ていた自分をどうやって運んだ? 何故目覚めなかった? そもそも目的が一切不明である。
こんな悪巧みする様な知恵を持っているとは思えない、奴らよりもチンパンジーの方が賢いと何度思った事か。
(寝る前の服とは違う、夏用の半袖パーカーとジーパン…………多分俺の私服だよな? しかも靴もちゃんと履いている? ここに連れ去った奴は何を考えている?)
昨日――――いや時間の経過が分からない以上、昨日であるかは不明だが、少なくとも最後に家に帰宅した時荒らされた形跡は無かった。金目のものが目的なら家主が不在時を狙うだろうし身代金目的の誘拐なら目隠しや猿轡の拘束が無いのは不自然だ、何なら屋外に放置も不自然すぎる。態々寝てる間に着替えさせているのは、もはや意味不明である。
(総合的に判断して、犯人もしくは犯人達は俺を起こさない様に食事に睡眠薬か、寝ている間にガスなどで起きない様に細工。そして着替えさせた上で、この森に放置―――――――――これは考えるだけ無駄だな。情報が無さ過ぎるし、仕組んだ奴は単純な金銭目的じゃない事だけは確かだ)
現状から答えを出すことは不可能と判断し、どうすべきか考える事に意識を切り替える。
常人であるならば、慌てふためき闇雲に森を彷徨うのだろうが、生憎今までの人生経験から焦っても、何かに八つ当たりしても、良いことは何一つ無いことは知り過ぎている程知っているので冷静に考える。
周りは木の葉の擦れ合う音以外何も聞こえない、場所が分からない以上確かな事は言えないが人を襲う獣が居ないとは言い切れない。流石に北海道や海外に拉致されたとは考えにくいが本州であっても猪や熊はいるし、素手で野犬と戦うのも例え勝てたとしても、感染症などリスクは高い。人が居るところに出る事がベストだが‥‥‥果たしてそう都合良くいくだろうか。
(大声を出して周りに助けを求めるなんて論外、最悪数日間は迷う事覚悟しないといけない。せめて水、水分は必須。沸す道具は無いが、服にしみこませて啜れば何とかなるかもしれない。あとは木の実、食料からも水分は取れる。今は初夏だが‥‥‥何かあるかもしれない)
兎にも角にも現在地が知りたい、懐やズボンのポケットを一応探ったが何も入っていなかった、着替えさせるくらいならばスマホも入れておいて欲しかったが無い物ねだりしても仕方がない――――――そもそも電波があるか不明だ。
少し考えてから、周囲で一番太くそして高い木を探し可能な限り登る。もしかしたら自分の推理が根本から間違えてて近所である可能性も無くはない、望み薄だが。
身長180を超えている自分では森を見渡す程高い位置にまでは登れないかもしれないが、せめて何らかの目的地が欲しい。
登れる所まで登り周囲を見渡す、流石に周りの木を全て見下ろせるわけではないが地面よりは視界良好である。辺り一面木々の群ればかり――――――いや奥の方にかなり濃い霧が見える、もしかしたら川があるかも知れない、霧の濃さから、恐らく池か湖だと思われるが、もし川だとしたら下ればまず人に会えるはずである。
(良し。ミイラになるのは避けられた、これで数日はもつ………………いや待て、本当に何処だここは? 建物も送電線も何も見当たらない、夜中に俺を運んだとしたら犯人も遭難してもおかしくないだろ、この森の広さ)
しかし、自分の住んでいた土地は確かに自然が多いがここまで人工物が見当たらず、見知った景色が無いのはあまりにもおかしい。
非現実的だがここまで来たら認めるしかない、知らない間に見知らぬ土地に拉致されてしまった様だ――――――せめて県内、最悪でも国外では無い事を祈る。
「‥‥‥クソ、いくら何でも流石に少し焦るぞコレは‥‥‥‥異世界転生とかじゃないよな」
トラックにはねられた覚えも通り魔に刺された覚えも不思議な本から出た光に飲まれた覚えもない。
そもそも自分はあまりその手のラノベは読まない、後輩は結構詳しそうだが。そんな若干現実逃避気味の事を考えながら、猿のように枝から枝へと飛び移りながら素早く地面に戻り、手ごろな石を二つ集めて片方を叩いて尖らせる。目指す場所があるならこのデカい木をスタート地点にする、木の幹に大きな×印を刻む。
「焦るなよ俺、迷ったら今度こそ終わるかも知れん」
そして霧が見えた方向に進みながら、周囲の枝を折ったり木の幹に進行方向の矢印を刻む、これなら少し進んで迷ったとしても先の木に戻れるし、またデカい木があれば登って位置確認、その後登った木に×印を刻み遂次ルート修正すればいい。素人の浅知恵かも知れないが、それでもないよりはマシだろう。
(距離はそう遠くない、水場についたらどうする? 日本でも自然の生水は流石にマズい‥‥‥‥生け簀とか、水門とかあれば管理人に会えるか?)
水場に着いたあとの事を考えながら、歩を進めていく。かつてない程神経を尖らせているとは言え、状況が状況だけに考えずに居られない。何故自分が? 何の目的で? どうやって?
――――――――――いや実の所、自分が標的にされたのは一つ心当たりが無い訳でないが。
「‥‥……綺麗な湖だ、こんな澄んでいる湖生まれて初めて見た。しかもかなり広いな‥‥‥‥ん?」
もしかしてそのまま飲めるのでは? と思う程、美しく揺蕩う水面を見ていると。
黒く、そして小さな人影か視界の隅に映った。近づいてみると十歳位の特徴的な赤いリボンをつけた金髪の少女だ、ムラが無いため不良の様な染めた色ではない。
(やった! 人が居た―――――――いや待て何でこんな所に?)
木に登った時、周りには人工物は全く見当たらなかった。霧の向こう側は見えなかった為にそちらに街などがあるのかも知れないが、何故こんな人気が無い場所に子供が一人でうろついているのか。先の森の広さから人に危害を加える獣が居てもおかしくないというのに。
異常な事に巻き込まれているからか素直に人を見つけたと喜べない。日本では中々見られない奇麗なブロンドヘアーに白いブラウスの上から着る黒い洋服と同じ色のロングスカートは、まるで西洋人形の様な印象を抱かせる。
「‥‥‥‥ん? だれー?」
「‥‥‥どうも、こんにちは。君はこの辺りに住んでるのかな? 自分は嶋上って言うんだけど、今ちょっといいかな?」
可能な限り平静を装い穏やかに語りかける。自分を拉致した犯人と繋がっているとは考えにくいが、念のために情報は小出しにして話す。
傍から見ると自分の方が少女を誘拐しようとしている変質者に見えるかもしれないが、何故か自身の警戒本能が目の前の存在から気を抜くことを許さなかった。
湖を見ていた少女はこちらに気づいて振り向く、その瞳は血のように紅い、自分の瞳も少し赤いが目の前の少女の瞳の紅さは外人でも中々見ないレベルだろう。少女は不思議そうにじっと、こちらを見つめている。
(何故だ…………薄気味悪い、この子から感じているのか?)
「こんなところで朝から人間に会うなんて、めずらしいこともあるのかー」
「(ニンゲン‥‥‥人間って言ったかコイツ?) ああ、自分もまさか森から出て来て、いきなり誰かと出会うとは思ってなかったよ」
この子は今、自分の事を人間と呼称した。その事実に何故か心臓が跳ねた。無意識の内に目の前のいる少女――――――存在が
「…………一応きくけど、あなた外来人なのかー?」
(ガイライジン? ガイライ、人………………『外来』人、か?
幼く間延びした声で尋ねてきた言葉の中には聞き慣れない単語があった、一応と言っている――――――という事は自分の『何か』から外来人であると察したという事に他ならない、そして確認するという事は確証が今現在は得られていないという事。否定することは簡単だが向こうがそれを信じるかどうかは別問題である。
つまり、目の前の少女を騙すなら信憑性がある嘘をつかなくてはならない。考えろ、考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ――――――――
「―――――――こっちも一応、聞くけど服装から判断したんだよね? だったら違うよ? これは珍しいから買ったんだ、動きやすそうだったし偶には違う格好もしてみたかったからね」
「えー? そーなのかー」
「そうなんだよ、申し訳ないけど」
恐らく、服装。
目の前の少女の服装は日本ではあまり見ない服装である事から、此処の地域ではパーカーやジーパンは珍しいのかも知れない、いやそんな地域全く聞いた事も無いが。
見た目から察したのであればそれ位しか考えられない。この子は金髪が地毛の様だが人種は関係ないと信じたい、いくら何でもここが本当に海外とは思えないし、何より流暢に日本語を喋っている。
「じゃあ、人里の人がこんなところでなにしてるの?」
「……ちょっとした用事でこの辺りに用事があってね、でも自分は極度の方向音痴な癖に、ここらの地図を里に忘れちゃって迷ってたんだ」
人里――――――――。言い方は少し気になるがまず間違いなく、人が居る場所だろう。そして物言いから察するにこの子は人里の子では無い様だ、人里の子であるならばどの位の人口かにもよるが自分が人里の人間では無いと、嘘と見抜かれるはずだろう。
それにしても人里? ○○町だとか、××村では無く、シンプルに『人里』。この名称から考えられることは―――――――
(―――――――区別する必要が無いからだ、人里以外に恐らく人はいないから―――――――じゃあ、目の前の子供は………………?)
戦慄、そして直感。
まだ不審者や侵入者として捕らえられるのであればまだいい、しかし目の前の子供から仄かに漂う怖気と言い知れない恐怖から考えるに、俺は―――――――
「…………ねえ、
「うん? 何かな?」
ほんの少しだけ 雰囲気が 変わった気がした。
一歩詰め寄られて 見上げる形で 緋色の瞳が こちらを見上げていた。
「――――――――私と何処かで会った事ある?」
「――――――――いいや? 初対面のはずだよ?」
ゾワリ、と。
今度こそ明確に敵意と殺気が向けられた。いや、自分は武術の達人などでは無いがそうとしか形容できない。
強いて例えるなら、小さな毒虫が千匹も、万匹も、足からゾワゾワ這い上がり周囲も埋め尽くさんばかりに飛び回っている。少しでも刺激しようものなら毒回るよりも早く即座に喰いつくされる、そんな予感。
しかし動揺はマズいと、何を言っているのか分からないと真顔で惚ける。恐怖は一切見せない、おくびにも出さない。見開かれた緋色の瞳は射貫かんばかりにこちらを見つめているが―――――
「…………そーなのかー、まぁ、人里の人間をおそったら博麗の巫女に退治されるからあきらめるわ、めんどくさいし…………日もたかくなってきたし」
「…………そうだね、巫女さんは敵にまわしたくないよね。ところで、さっきも言ったけど自分迷ったんだけどさ、里に続く道の方向とか教えてくれないかな?」
―――――興味が失せた。と言わんばかりに欠伸をしながら背むける少女に呼びかける、本当はもう関わりたくないし何なら全力で走り去りたいが、最後まで気は緩めない。会話できる以上、情報は毟れるだけ毟りたい、目をこすりながら眠たそうな目をする姿は、先の敵意はもう感じない。
「えーーーー? わたし人里にあんまりちかづかないしーー…………もうねむいしー…………霧のむこうの紅魔館できけば?」
もう朝だと言うのに少女は眠たそうに森の中に進む――――――――止めるつもりは、勿論全く無い正直ありがたい。
結局先の質問にどれだけ意味があったのか、それとも鎌を掛けられたのか、そもそも意味など無かったのか。ただでさえ考える事が多いのにこれ以上、面倒な事は避けたい。
「…………二度と会いたくないな、あとハクレイの巫女って何か聞きたかったが…………」
あの流れでは流石に無理だろう、まさしく自殺行為に等しい。
だが重要な情報を手に入れた、霧の向こうにあるコウマ館。コウマ館が何なのか分からないが館である以上誰か住んでいるだろうし、人里への行き方も恐らく知っているだろう。何故か一向に晴れる気がしない霧は少し鬱陶しいが、もうすぐここが何処なのか、どうすれば元の場所に帰れるのか分かる、そう考えれば全て我慢できる。
暫く少女が消えた方向に目をやりながら歩いていたが、もうそこには何の気配も感じられない、眠る為に帰ったのだろうか。家が森にあるとは考えにくいが。
そしてこの湖の外周がどれ程かは分からないが、恐らくそこまで大きくは無いだろう、少なくとも一、二時間も歩けば一周出来るはずだ。
そして湖の外周を伝うように歩いていると何か大きなシルエットが見えてきた、確かに館、形からして洋館である。高い塀に囲まれているようで時計台らしきものも見える。
「紅いな…………紅間、館? でいいんだろうか?」
そして紅い、やたら紅い。目に悪くかなり浮いている、無論悪い意味で。
何を考えてこんな血の様な色に染め上げたのだろう、しかしそんな事は今はどうでもいい、例え家主が出掛けて、留守でもこれだけ大きい建物であれば使用人のニ、三人は絶対に残っているはずである。そもそもこれだけ大きければどんな敏腕メイドが居ても一日の間に掃除や家事炊事など出来るはずがない。
そんな考察をしながら屋敷の周りを歩いて行くと馬鹿でかい門らしいものが見える、檻のような黒鉄で出来ており館の雰囲気に合っている、館が紅過ぎる事に目を瞑れば品のいい学園の門に見えなくもない。
そして門番なのか、紅い髪の暗緑色の中華服らしいもの来ている女性が立っているのが見える。太極拳だろうか、何か武術的な動きを真剣な表情で行っている。
本音を言えば中断してでも話を聞いて欲しいが、こちらは頼む立場。
人を見つける事と帰る方法は恐らく人里まで行けば分かるだろうし、急ぐ必要はさっき金髪の少女がこちらに来ない限り大丈夫なはず。こちらには気付いていない様なのでその場に腰を下ろし、休憩も兼ねて折角なので見学することにした―――――というかいい加減少し疲れた、起きてから水一滴も摂取していないのだから当然だが。
「……………………」
(ほーーー、多分股関節と腰回りの動きで重心を移動させてるな…………)
片足立ちで緩やかに手で弧を描き、呼吸を合わせ美しい動きを作りだす。素人目に見ても理にかなっている動きだと分かる。完成されたパントマイムはそこに無い重みや壁を感じさせるが、彼女の太極拳は見ていると何か中華的な民族曲が聞こえてくるような気がする、それだけ洗練されているのだろう。
「…………こちらに敵意は無いようですが、何か紅魔館に御用ですか?」
「すみません、邪魔してしまいました?」
どうやら気づかれていたらしい音は立てず、視界は霧のせいでかなり悪いはずだが。
「いえいえ、いきなり弾幕を撃たれたりしないだけマシですよ」
「(ダンマク? ニコ動?) そうですか、そう言っていただけると助かります。大変申し訳無いのですが、道に迷ってしまいまして人里まで行くにはどうすればよいでしょうか?」
この紅すぎる館に興味が惹かれないわけではないが、そんな事よりもいち早く家に帰りたい。今日のバイトはもうスタッフリーダーに連絡を出して休むことにしよう、普段は無遅刻無欠勤だから風邪をひいたと言えば信じてもらえるだろう。などと考えながら目の前の女性に事情を話す、が反応が少しおかしい。
「人里? …………失礼ですが、見た限りあなたは幻想入りしたばかりの外来人ですよね? 何故人里の事を知っているのですか」
(ゲンソウ入り、多分『幻想』入りか?)
正直もう勘弁してほしい、さっきから外来人だとか、ハクレイだとか、専門用語ばかり出て来てよその人間に優しくない。
この赤髪の女性からはさっきの少女のような気持ち悪い敵意は感じないが、それでも外来人とバレるのは多分良くない事だと思うので、またもや口八丁で誤魔化さなくてはなら無くなってしまった。
「さっき会った少女にも同じ事を言われましたが、この服は珍しいので買っただけですよ? 自分は方向音痴な癖に地図を忘れてしまったただの愚か者です、厚かましいとは思いますが、地図などありましたら貸していただけませんか? せめて人里の方向だけでも教えて下されば後は自分で何とかしますので」
「………………」
精神誠意、口調も丁寧に。背筋を伸ばした状態で45度まげて礼をする。頭を下げるのは表情から嘘を見抜かれない様にする意図もあるが、礼節というものは意外な程猜疑心を取り除く。
敬語などは間違えていても、しっかり丁寧に言えば誠意は伝わる相手には伝わるものなのだ。形ばかり気にして形骸化している方が礼節や態度という物は鼻につく。中学の頃からバイトをしていた経験は伊達ではない。この人はこの館に仕えているからか、恐らく伝わる側の人間と見た。
何かを考えているのか、無言ままこちらを見ているのが感じられる。不自然な事があっても自分に不利益が無ければ人里の方向位教えてくれそうなものだが、果たして。
「珍しいですね」
「…………何がでしょうか?」
ゆっくり、顔を上げる。女性の顔は真顔だった、無表情と言っても言い。
「人里の人間が迷ったとしてもここに来たこと、その少女に出会って無事だったこと―――――――そしてそれだけ完璧に擬態できること」
瞬間、目前から女性は消えた。比喩ではない。
本当に軽い空を切る音ともに消えた。そして上下の感覚一瞬機能しなくなったと思えば、いつの間にか自分は背後で腕を決められた状態で地面に押し倒されていた。今の一瞬で何をされたのか全く分からない、しかも力も尋常ではない。無理に腕に力を籠めようものならこちらの肩が砕けかねない程だ。
「ガッ――――!!?」
「敵意は無いみたいですが逆に怪しいです、噓をついた相手が悪かったですね。外面は完璧にとりつくろえても内面までは
無理矢理立たされて、何処から取り出したのか後ろの腰当たりで両手をきつく縛られる、いくら何でもあんまりでは無いだろうか。というか内面とは何のことだ、心でも覗かれたのか。しかしそんな事を考えても、こちらに分かり易く話してくれる筈も無い。
「すみません、気分を害したのなら謝ります。本当に人里まで行く道が知りたいだけなんです」
しかし彼女はもうこちらの言葉に耳を貸す気はない様だ、門を開け見事な庭園に感想を思い浮かべる間もなくどんどん館に近づいている――――――何のつもりだ、まさか自分を誘拐してきたのは――――
「―――――――お前らが俺をここまで拉致してきたのか!?」
「…………成程、あなたが何故幻想入りしたのかは分かりました。普段なら助けても良かったのですが…………今は時期が悪い、運が無かったと思って下さい」
全く意味が分からない、だが確実に自分にとって都合が悪いことが進行している事だけは分かる。
もはや腕が折れる事すら覚悟で力を籠めるが、目の前の女性は片腕でそれを押さえ込む――――――有り得ない。自分よりも体格が一回り小さく、体重も軽いだろうにその細腕の何処にそんな力があるのか。
「大丈夫です、死ぬと決まったわけではありません。ただ大事をとってお嬢様にどうするか仰ぐだけです」
「…………逆に言えばお嬢様の匙加減で俺は死にかねないと?」
「…………恐らくそれはありませんよ」
「絶対じゃないなら信じられるか」
力技で解決は出来ない、もはや思考も現実離れした事ばかりでショート寸前で止まりかけている。半ばヤケクソ気味な精神状態で館の中に連れ込まれる。
「ようこそ、紅魔館へ………………そして幻想郷へ」
紅い館の扉を開きながらこちらに向けて言う、幻想郷、だから『幻想入り』だろうか。聞いた事も無い地名の事を考えながら一体自分に何が起こったのか、これから何をされるのか、処刑台に登る罪人のような気分で覚悟を決めた。
作者がもっとも恐れる事は感想欄が荒れる事だと思うけど他の方はそうでも無かったりするのかな。
あとどうでもいい補足。
紅美鈴>>>(圧倒的壁)>>>ルーミア>>>>>>(越えられない壁)>>>>ヒグマ≧刃物装備オリ主>>>素手オリ主。
現状の戦力差。
1/13 作者の馬鹿が露呈しました。大変申し訳ない。