分かりにくかったらすみません。
「何だってんだよ一体」
美鈴さんに力を解放して貰った後、生まれて初めて空を飛ぶ感覚に少し感動しながら、宙を魚の様に縦横無尽に動きながら霊力弾の生成できる量を増やしていた。空を飛ぶために使う霊力と霊力弾(正式には弾幕と幻想郷では呼ばれる)を別々に操作する感覚に慣れる為に自主練していたのだが。
『すみませーん! ちょっと図書館に行ってパチュリー様に会って下さい!』
いきなり何処かに美鈴さんが行ったかと思えば、帰ってくるなり図書館に行ってくれと頼まれた。弾幕を何処まで出せるのか限界を試そうと、あと少しで四桁に達するという所で急にそんな事を言われたので全て霧散してしまった。さして疲労してないからいいが。
(俺が霊力を使い始めた時かなり驚いていたが…………そんなに異常な事だったんだろうか? 別に何でもいいか、敵意が無ければ特に何もしてこないだろう)
紅美鈴という女性の性格はだいたい掴めてきた。真面目で面倒見の良い人────もとい妖怪だ。自分を逃がさないのはあくまで主人の意向だから、前日に自分を捕えたのも紅魔館の為であったのだろう。
勿論こちらからしてみれば迷惑極まりないのだが、職務や仲間意識が高いというのは、裏を返せばそれらを害する様な真似をしなければこちらを攻撃してくる事が無いとも取れる。彼女の感性は至ってまとも、少なくとも自分から争いの種をまく様な横暴な真似はしないだろう。
(人間の常識を何処まで妖怪に当てはめていいのか分からないが、少なくとも美鈴さんは根は善良な妖怪………………問題はレミリアとこれから向かう図書館にいる魔女だな)
パチュリー・ノーレッジ、図書館でずっと本を読んでいる魔女らしいが一体何故自分が呼び出されたのか。
確かレミリアが気になる事を言っていた、自覚が無いとか何とか。吸血鬼特有の何かが自分の異常性を嗅ぎ取ったのだろうか。思い当たる節は全くないのだが。
そんな事を考えながら紅魔館の廊下を泳ぐようにスイスイと飛びながら進んでいく、もはや始めからそれを飛べていたかの如く霊力操作に馴染んだ。床と並行に高さ一メートルと歩く程度の速さを一定に維持する、もはや意識せずとも出来る。
これなら空を飛んで人里を探すことも出来るだろうが、飛行できるのは妖怪も同じらしいのでまだ逃げる算段がついたとは言えない。何より紅魔館の面々がその程度の事を考慮していないとは全く思わない。
「ここか──────―取り敢えず飛ばないほうがいいか」
そうこうしている内に両開きの馬鹿でかい扉の前につく。前日では十六夜咲夜に案内されただけで入る事は無かった、どうもここは魔女の自室でもあるらしい。魔法の研究だとかで滅多に出てくることは無いとのこと。
古めかしい設計の扉は年代を感じさせるが何故か老朽化している様子は無い。不思議に思いながら扉に手を当ててみると、何やら不可思議な力が扉だけでなくその向こう、恐らく図書館全体に感じる。
(魔女って言ってたし…………何らかの魔法か魔術で保護しているのか?)
勿論実際にはどんな効果があるのかは分からない、だが霊力が覚醒した事によってそういった神秘的な力に対して感受性が出来たようだ。自分や美鈴さんから感じていた力とも少し違う、色というか模様というか波長というか言語化が難しいがその手の力にも色々種類があるのだろうか。
(人間が霊力なら妖怪は気や妖力を操るのか? でも魔女っていうなら魔力だとかマナだとかオドとかじゃ無いのか?)
無論その手の知識は全てやたらサブカルチャーに詳しい後輩仕込みだ、具体的な違いや意味は自分には全く分からない。第一魔女といっていたが『魔法が使える女性』だから魔女なのか、『魔女、魔法使いという種族』なのかも分からない。
「魔法を学べるなら、ベホマとは言わないからベホイミ位は使える様になれたら便利なんだが」
そんな願望を言いながら扉を開ける、その向こう側には壁と見紛う程高い本棚が夥しい程並んでいた。分かる者には分かる古書の香り、古いインクの臭い、図書館によく行く習慣があった自分は好む雰囲気だった。
初めて入る場所にも関わらず郷愁すら覚える程安堵する、自分で思っている以上に精神的に疲弊しているのか。魔女の用件が何かは知らないが事を終えたらここで読書が許されるか聞いてみる事にする。
(で? 何処にいるんだ、その魔女様は?)
しかしやはり広い、というか広すぎる。
地下にあるという事を差し引いても明らかに外観と釣り合っていない、図書館に入ってからは歩いているのだが、どこがどうなっているのか全く分からない。特に急がなくてもいいなら本の背表紙を流し見しながら歩き回ってもいいのだが用件がある以上急いだ方が良いだろう。
(待つのは兎も角、待たせるのは嫌いだ。さっさと魔女を見つけないと…………そういや美鈴さんは気で相手の位置とか把握出来るんだよな?)
気を使う程度能力とか謙遜しながら言っていたが、色々と応用の効きそうな能力だ。自分にも似たような事が出来ないか試してみる、先程扉から感じた力は恐らくこの図書館にいる魔女による物だろう。
(だったらそれと同じ力を感じる方に行けばいいわけだ…………いけるか?)
雑念を消し、言語すら曖昧になる程、意識を深く沈めて霊力を内側で静かに漲らせる。自分の感覚を強化するイメージ、強化出来たら今度は外側にその強化された感覚を向ける。
最初美鈴さんに霊力を解放してもらった時、美鈴さんから何か自分と違う力を感じた。霊感なのか第六感なのかは知らないが、恐らくその手の力を感じる土壌が自分に芽生えたのだろう。この方法であっているのかは知らないがまずは試してみる。
十秒ほど集中していると無音が精神を揺さぶり、肌で空気の流れが分かる程感覚が研ぎ澄まされる、弾幕になっていない微弱な力の流れも見えそうな位。
(────────―小さな力と大きな力が向こうにあるな)
小さい方は何かせわしなく動いているようだ、大きい方はよく分からない。恐らく動いてはいないのだろうが、如何せん現時点で自分に把握できる量を大きく超えている。それ以外に力は特に感じない、同じ屋敷ならレミリアの力も感じ取れるかと思ったが自分が感じ取れる範囲がそこまで広く無いのかもしれない。
(美鈴さんは目上の人の様に言ってたし、やっぱり美鈴さんよりも強いのか? レミリアとどちらが強いんだろうか)
やはり普通に逃げ出すのは無謀か。異変が終わったあと無事に解放されるとは限らない事を考えると、異変なる物が始まりどさくさに紛れて、こっそり逃げ出すことを考えた方が良いかも知れない。
戦力分析と今後の展開を予想しながら力を感じた方向へ向かう。高さも横幅も何メートルあるかも分からない本棚を歩きながら眺めていると日本語で書かれている物も散見される。霊力を使い方やそれを利用できる術の本などないだろうか。
「────────来たわね、あなた飛べるんじゃないの?」
そんな事を考えながら歩いていると急に声が掛けられる。
本棚が途切れ、沢山の本が乱雑に積まれているアンティークの書斎机がある、その山積みとなった本の向こう側から聞こえたようだ。その隣には赤い長髪に小さな黒い羽が生えた司書のような女性が本を抱えながらこちらを見ている。
「へー、ホントに居たんですね。外来人さん」
司書の女性はレミリアと同じ吸血鬼なのだろうか、それにしてはあまり力をあまり感じない。向こうが隠し自分が感じ取れていないだけかもしれないが。興味深そうにこちらを見上げながらジロジロ見ている。
「どうもお世話になっております、嶋上輝雄です。飛ばなかったのは一応図書館ですので」
「別にお世話するつもりはないのだけどね…………でもある程度常識人のようで助かるわ。ここにある本は危険な物も多いから勝手に触らない様に──────死んでも知らないから」
声が聞こえる方に回るとレミリアと似たような帽子、しかしこちらは月のアクセサリーがついている。魔法の法衣なのか、寝巻の様な服装は眠たげな目と相まって如何にもインドアな印象を抱かせる。
彼女が大きな力の主、図書館の魔女パチュリー・ノーレッジだろう。
「小悪魔、貴方は仕事に戻って。用事があったら呼び戻すわ」
本を読みながら司書の女性、小悪魔に指示を出す。小悪魔が名前なのだろうか、それにしても「悪魔」。聖書においては悪魔よりも神の方が多く人を殺しているというが、それでも悪魔と言えば人を誑かし悪意で貶めるイメージがある。
「ハーーーイ、ではカガオ様。また後で」
「はい、今後ともよろしくお願いします」
だが自身の上司に対しても気さくに応じ屈託のない笑みはあまり悪魔らしいとは思えない、擬態かそれともそういう種類なのか。背中にある小さな羽をパタパタと羽ばたかせながら本棚の向こう側に消えていく。
「全くあの子は…………まぁいいわ、さっさと始めましょうか」
少し呆れた様子でそれを見送る魔女の姿を見るに、どうやら彼女は真面目でクールな司書という訳では無いらしい。感じた力量的にもあまり警戒する必要は無いかもしれない。
「始める? 何をですか、すぐに向かうように言われただけで何も聞かされていませんが」
「…………レミィに説明されて無いのね────────まず貴方には幻想郷における『能力の定義』について話しましょう」
そこに座って、と椅子を触れずに浮かばせ自分の隣に着陸させる。魔女だからといって、杖を振ってウィンガーディアム・レヴィオーサとかチンカラホイとか言わないようだ。少し夢を壊された気がしないでもない、等と馬鹿な事を考えながら素直に椅子に座る。自分の方が圧倒的に背が高いためやや前のめりになって目線を合わせる。
「能力の定義、について?」
「そう、幻想郷では『~程度の能力』って感じ言い回しているのだけどね。簡単に言えばそれに特化しているという意味よ」
程度の能力、美鈴さんが言っていた『気を使う程度の能力』というのはこの幻想郷風の言い回しだったようだ。彼女の例で考えれば、気を使うことに特化しているという意味なのだろう。
「この『程度の能力』はほぼ自己申告制みたいなところがあるから本当に千差万別、先天的の者もいれば後天的に身に着けた場合もあるわ。少ない例だけど元からあった能力が後天的に変化したなんて例もあるわね」
つまり『程度の能力』というのはあくまで分かり易い幻想郷風カテゴライズであって、実際にそういう能力名とかでは無いという事なのだろう。先天的な物も後天的な物も一緒くたにしてるのはそれだけ数が多く、法則も違っているからという事か。
どうしていきなりそんな話を始めたのかは分からない。それでも何を言おうとしているのかは分かる、流れからして──────────
「──────自分にも何か、その能力があると?」
「察しが良くて助かるわ、レミィ曰く貴方の運命が見えなかったそうよ────────── 一応聞くけど、心当たりある?」
「いえ全く…………というか運命?」
「『運命を操る程度の能力』それがレミィの能力よ、これで大抵の人妖の運命が覗けるそうだけど貴方には何も見えなかったらしいわよ?」
初耳である。だが成程、あの時こちらを見ながら怪訝な顔をしたのはその為か。
運命を覗く、抽象的な概念のため勝手な想像になるが自分のこの先どうなるか未来視をしてみたのだろう、時間軸に関係無いのだとしたらもしかしたら自分の過去も覗こうともしたのかも知れない。
(あのガキ──────―いや待て落ち着け冷静になれ失敗したんだ気にするな)
その事実にこめかみの血管が浮き上がりそうになるが、即座に冷静になる。油断も隙もあった物ではない。美鈴さんには能力で自分の擬態が見抜かれた為、もしかしたら自分は外面如菩薩内心如夜叉のろくでなしと思われているかも知れない。
それは別にいい。実際自分の事を善人と思った事は無いし、善人と思い込む事に自己満足など露程も見出せない。警戒されても幻滅されても何とも思わない。
だがしかし自分の過去や経歴を勝手に覗かれるのは内面を相手が勝手に考えるのとわけが違う、余人の憐憫も同情も鬱陶しいだけだ。
「(プライバシーもクソもねぇ能力だな)成程? それで自分に興味が沸いたと?」
「それだけじゃないわ────―貴方美鈴に霊力を覚醒させてもらったのよね?」
「それが何か?」
「何で美鈴の能力や干渉は受け付けたの? レミリアの能力の方が実力的にも格上よ? しかもその時はまだ霊力も能力の事も知らなかったんでしょう──────―それも自覚無し?」
「………………」
──────―確かに、言われてみれば少し不自然な気もする。
仮に自分に『相手の能力や干渉を弾く程度の能力』があったとしよう。もし無意識かつ無差別に発動していたとしたら美鈴さんの能力も弾いていたはずだ、しかし自分はつい先程まさにその能力の干渉によって霊力を覚醒させてもらった…………ということは。
「────―能力は、ただ有しているだけで発動したりするんでしょうか?」
「物によるわね、でも能力を有している事によって独自の感覚────────―そうね、『世界観』と言い換えてもいいわ。レミィなら運命が、美鈴なら気が、そういった持たざる者には理解できない物が見えたり聞こえたりする事はあるわね」
「つまり霊力を使用していない、出来ない状態でも勝手に発動してる可能性は十分にある、と」
問題は一体何がトリガーで、何を基準に干渉を阻害したかという話になる。基準、基準、基準…………反芻させるようにあの時状況を思い浮かべるが何か特別な事をした覚えはない、そもそも特別な事など何も出来なかった。
「本当に心当たりはありませんし、実際問題判明させないといけないんですか?」
今後の展開によってはそれは切り札にもなる、出来る事なら紅魔館側の陣営には知られたくない。目の前の魔女からは敵意を感じないが‥‥‥‥どころかそもそも調査自体レミリアに頼まれたらしいので興味も薄いのかもしれない。
「手の内を明かしたくない気持ちは分かるけどね、もし自分の能力は何か分からないまま暴発させたりしたらそれこそ貴方の身に何が起こるか分からないわよ?」
(…………もしかして、俺今リミットの分からない爆弾抱えてる様な状態?)
ただ単純に自分だけに許された特権やアドバンテージだと思っていたが、どうやらその効果と使用方法を確立させないと自身の身も危ない様だ。しかし本当にどうやって発動させたのか、どんな効果なのか分からない以上自分にはハッキリ言ってどうしようもない。霊力が使えたら自然と使えるというわけでも無いようだし。
「頼まれた以上それを解明するのが私の仕事よ…………正直、私もちょっと興味深いわ。まず現時点で分かっている事を整理しましょう、『自分を対象とした干渉に何らかの影響を及ぼす』しかもある程度の力量差があっても有効で対象を明らかに選別している、基準はまず間違いなく貴方の『何か』ね」
でも参考に出来る事例が少ないし、実際に調べてみるしかないわね。
言いながらパチュリー・ノーレッジは法衣の皺を伸ばすように少し叩きながら立ち上がり、何やら長方形のカードの様な物を取り出す。
「…………一応、聞きますが、何をする気ですか?」
「レミリアの能力を防げたという事は貴方の能力は概念的な事象にさえ及ぶと考えられる、しかも霊力を用いず自覚無しの状態でも。幻想郷でも中々類を見ない強力な能力よ………………恐らく先天的な物。外の世界でそんな強力な能力を後天的に取得できるとは思えない────────」
目の前の魔女の徐々に力が高まっていくのを感じる、もう大体何が起こるかは分かってしまった。椅子から立ち上がり、こちらもの霊力を体に漲らせて十分に距離を取る。
要するにデータ不足だから今から直接調べてみる、という事だろう。
「──────ついでに幻想郷の決闘法スペルカードルールについても教えて上げるわ、弾幕ごっこって言うんだけどね? 大丈夫、死にはしないわ」
「魔女という知的なイメージとは裏腹にそういう手段を使うんですね意外です」
「私の考察が正しければ、貴方は極限の状況下の方が能力を発動しやすい。構えて、日符『ロイヤルフレア』」
長方形のカードを上空に振りかざす、すると魔力なのか、何かの力が注ぎ込まれて巨大な熱球が形成され周囲を赤く照らす。
「メラゾーマ?」
「今のはメラゾーマでは無いわ、ロイヤルフレアよ」
「いやその反応完全に元ネタ知っ────────」
しかし自分が言い切るよりも早く──────―灼熱が落ちてくる。
「霊力や妖力や魔力等といった力を用いず、能力を発動させるのはそれほど珍しくないわ」
色とりどりな光弾────―弾幕が外来人、嶋上輝雄という青年に殺到する。パチュリー・ノーレッジはそれを座る様に飛行し、眺めながら誰に語るでもなく朗々と独り言の様に喋る。
「でもそれは効果や範囲が極小規模で細やかな物に限られる。例えば自分自身に能力を適応させるのはそこまで力は消費しないわ、これはレミリアの運命視なんかが当てはまるわね」
「──────―成ッ!! 程ッ!!」
顔に目掛けて飛んで来た弾幕を首を反らし避け、天井スレスレまで上昇し急カーブで追尾してくる弾幕をやり過ごす。曲がり切れなかった追尾弾は天井に着弾し消滅する。本棚の影から挟み撃ちする形で配置しておいた弾幕は急停止後に急降下で避ける。
(直線、曲線、急停止、急発進、急カーブに後方へのターン。確かにかなり良い動きするわね──────でも私が知りたいのはそこじゃないのよ)
霊力を使えるようになって一時間程度の練度ではない、しかしそれ自体はただ単純にそれだけ早熟だったともとれる。美鈴は兎も角、パチュリーには驚くには値しない。
(他者の干渉を弾く、それ以外にも対して能力が働いていると見られる現象────―それが知りたい)
現時点で疑わしいのは人間らしからぬ膂力、美鈴曰く何十年も鍛えた武道家と並ぶ程だという。喘息で身体能力は人並み以下のパチュリーにはどれ位のものなのか想像が難しい例えだが、恐らく美鈴と立ち合える時点でかなりのものだろうと考える。
「因みに弾幕ごっでは気絶などの例外は除いて、被弾数で勝敗がつくわ────────あと一回被弾したら貴方の負けだから緊張感持ちなさい」
「先に言ってくれませんかねぇ!? そういうことは!!」
「いい具合にひりついて来たわね──────月符『サイレントセレナ』」
「ダメ押し!? クッソ鬼畜!!」
天井から青い小さな光弾が降り注ぎ、パチュリーから放射状に水色の弾幕が連なり、放たれる。上空をゆらゆら動いている為かなり不規則な軌道となっているので、速さよりも正確に動く事が求められる。
(霊力と関係無しに発動出来るなら異常な身体能力も能力の産物と考えるのが自然────────だとすれば単純に概念的干渉を弾いたり無効化する能力ではない?)
既に強引に始めた弾幕ごっこは十分以上経過している。パチュリーが使用したスペルカードはこれで四枚目、輝雄は二回の被弾、もっとも能力の調査が目的の為被弾した位で辞めるつもりはパチュリーには無い。
(操作できる能力の類なら干渉を弾く基準は彼の意思次第で変わる、はず────────でも感情や意思だけで格上の能力まで無効化出来る? 能力が有効な上限は何処まで? それがどうして身体能力の強化にも繋がるの?)
「うぉぉおおお──────ッ!!」
雨の様に降り注ぐ弾幕、ただ避けるだけならまだしもパチュリーが進行方向を防ぐように輝雄の上空に居るため弾幕よりも上に逃げる事は出来ず、周りにある馬鹿でかい本棚が邪魔になっており左右にも上手く避けられない。
逃げ切る事は不可能と考え輝雄は即座にその場に留まり、数秒鷲掴みの様に両手を合わせ意識を集中させ、膨大な霊力が球体となり掌の中で圧縮される。
「消し飛べ!!」
腰だめに構えられた両手に大量の霊力を収束させ、パチュリーが居る方向へと放出する。青白い極大の光線が弾幕を次々に消し去りながらパチュリーに迫るが──────────
「あら、放射状に霊力を放つ事も出来るのね────────でも届かないわよ」
──────直前で六芒星の結界の様な物が展開され、轟音と共にかき消される。
素人の弾幕にしてはかなり高威力ではあったが、持病の喘息が出ていないパチュリーならこれぐらい防ぐのは難しくない。涼しい顔で全力の攻撃を防がれた事実に少し怯むが、輝雄はすぐに意識を切り替える。
(今のを防ぐか…………どうする? あと十発位なら同じ威力の打てるが、あの結界を破れるとは思えない──────ゼロ距離ならいけるか?)
ほぼ全力で飛行し続け、怪我をしない様に霊力で身体能力の水増しをしながら弾幕を放ち続ける。当然だが霊力には上限がある、そしてお世辞にも輝雄の霊力は多いわけではない、既に全力時の半分を切っている。このままいけば確実に先に息切れするのは間違いなく彼の方だろう。
「色々考えているみたいだけど無駄よ。貴方の能力が発動したと思うまで続けるから、でもそうね貴方結構強いし、とっておき見せてあげるわ─────────避けれるものなら避けてみなさい」
──────火水木金土符『賢者の石』
瞬間、パチュリーの周囲に本が一人で浮き、五色の魔方陣が展開される。
それぞれの魔方陣が特性の違う弾幕を放っているのか、速い弾と遅い弾が図書館を埋め尽くすようにばら撒かれる。膨大な魔力を弾幕に錬成したにもかかわらず、パチュリーは相変わらず椅子座る様な体勢で輝雄の事を観察している。
「(今までより多い!? しかも無作為に動いているものと追尾弾がある!?)──────チッ!!!」
とてもでは無いが裁き切れないと諦め、急降下し輝雄は即座に逃げに徹する。
しかし今までも決して余裕があったわけでは無く霊力も底をつきかけている状態ではあまりに分が悪い。飛行している体に掠る弾が少しづつ増えていく。それでも避けようと身を捩り、弾幕を掻い潜ろうとするが──────
「──────そこね」
「しまっ────―!」
──────それを先読み出来ないパチュリーでは無い。
本棚の影から突如現れたパチュリーからゼロ距離の弾幕を喰らう──────────―直前それは起こった。
「クソがァッ!!!」
「──────!!」
直撃前に霊力を防御に回すが、まともに正面から大量の弾幕に押しつぶされ支給された黒い華人服から煙を上げながら輝雄は墜落していった。
「……………………成程確かに、異常ね」
身内以外経験が無く死蔵していたスペルカードを使った初めての弾幕ごっこでの勝利にも喜ぶことも無く。今し方目の前で起こった現象を冷静に分析する。
それは長年生きてきた魔女をして寡聞にして聞いた事も無い現象だった。
主人公にもきっとかめはめ波を練習した幼少期があったんでしょうね。
あとこの手の知識人キャラは結構動かしづらいですね、パチュリーにしてはちょい強引だったかな、反省。
分かってるかもしれないけど補足
この戦いでのパチュリーは喘息が治まっている時なのでhard~lunatic位の実力です。
勝てるわけがないYO!!