幻想禍津星   作:七黒八白

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 今更ですけどタグに幻想入りを加えました。



第五話 七曜魔女の幻想的考察・・・・・考察編

 霊力、妖力、魔力。他にも神力や仙力など色々な種類の力があるが、例外的な方法──────外法や一時的増量を除いてこれらの力の上限を一気に増やす方法は無い。

 

 霊力なら長い年月を掛けて修行や荒行で霊力を溜める器を広げなくてはならない。それすらも持って生まれた才能に左右される、現に有名な陰陽師も遅咲きであった。

 

 妖力ならばその妖怪自体の格が上がらなければ器の容量は増えない。長い年月を生きる人外だからこそ中々成長というものはしない、故に大妖怪というのは基本極少数である。

 

 魔力も似たようなものである。瘴気が濃い場所、代表的な場所だと魔界などで滞在しながら修行をしなくてはならない、それも捨虫の魔法──────不老の術を取得してからが前提条件となる。

 

「不老の術? それは何故?」

 

「他の力と同じ理由よ。要するにそれだけ時間が掛かるから、私のように生まれた時から膨大な魔力を持っている魔法使いはいるけど後天的に急激に強くなるというのはあまりない」

 

 何故なら────────()()()()()()()()()()()

 虎や熊や鯱が生まれた時から、誰に教わるでもなく強者であり頂点捕食者であるように()()()()()()を持つべくして持って生まれてきた者は元からあった力を引き出すだけで十分強い、だからそれ以上求めないし、急に強くなったりしない。

 

 パチュリーの様に魔導を研究する事が趣味や目的であり、結果的に強くなるという事はあるが強くなる為だけに修行するという事は滅多にない。だからこそ、常人では太刀打ちできない妖怪すら退治できる才覚を持った博麗の巫女は幻想郷において抑止力足りえるのだろう。

 

「恐らく博麗の巫女も、最低限の修行だけで死に物狂いで修行して強くなったとかじゃないと思うわ…………会ったことは無いから予想だけどね」

 

 ──────つまり、何を学ぼうと学ばなかろうと強い奴は初めから強い。

 

 夢の無い話だがこれはどんな分野にも言える事であり、幻想的な才覚にも同じことが言える。元から持っていた力が何かのきっかけ覚醒する等といったケースを除いてそれらの力が急激に増えるなどという事は決してない────────筈なのだ。

 

「それが自分の異常性と何か関係あるんですか?」

 

「関係あるっていうか、本題も本題よ─────────貴方いきなり霊力が()()()()()()()?」

 

「…………界王け───」

 

「違う」

 

「…………………………」

 

 先の戦いでは素人らしからぬ立ち回りした目の前の青年の意見をパチュリーはバッサリ切り捨てる。弾幕ごっこはパチュリーの勝利で終わり、今は小悪魔が淹れた紅茶を飲みながら向かう形で二人は話していた。

 

 輝雄は服がややボロボロになってしまったが咄嗟に霊力で防御した為に無傷で済んだ。少し変わった味がする紅茶を飲みながらパチュリーの話を輝雄は自分なりに解釈してみる、霊力等の不可思議な力は後天的に増やすことは決して不可能ではないが時間はかなり掛かる上、場所やそれを含めた準備などが要るという事だろう。

 

「自惚れかも知れませんがそれだけの力が自分にあって、先程覚醒したという線は?」

 

「まず無いわ、私はこれでも百年以上魔女として生きている。普通の人間には見えないものも聞こえないもの全て感じ取れる…………それにあれだけ霊力を自在に操作出来ていたのならあれが貴方の本来の力の上限、一気に覚醒するような潜在的な能力は恐らく無い」

 

 でも、と一旦区切り紅茶を口につける。普段は図書館に引きこもりあまり会話をすることが無いため少々口が乾いてしまうようだ。初めレミリアに任された時は面倒くさいと感じていたが何だかんだ言って彼女は真面目で意外に面倒見が良かった。

 

「私が最後に放った弾幕が直撃する時、貴方は霊力で防御したわね?」

 

「はい、それはそうでしょう」

 

「──────私は貴方の霊力の残量から、例え防御されても突破できると踏んだから最後に接近してとどめを刺したのよ」

 

 つまり多少服が破けた位で体は全くの無傷で済んでいるのはおかしい。あの距離とあの威力なら気絶してもおかしく無いが、目の前の青年には全くその様子が見受けられない。どころか、殆ど底をついていたはずの霊力が増えている。

 

(流石にこの短期間で全回復してるとは考えられないから………………弾幕ごっこで消費した分も考えて()()()()上限が二倍は伸びている──────美鈴は一体何を拾って来たの?)

 

 もしも際限なく伸び続けるのだとしたら、目の前にいる人間は間違いなくそう遠くない未来パチュリーは愚か友人であるレミリア、いや下手をすれば博麗の巫女すら──────

 

「サラっと言いましたけどパチュリーさん結構危ない事しましたね、怪我で済まなかったらどうするんですか」

 

「大丈夫よ。丁度試したい治癒魔法があったから」

 

「悪びれない上露骨なマッチポンプやめて下さい」

 

「いいじゃない、私にも益があって…………何なら念の為掛けてあげるわよ?」

 

「……一応、お願いします」

 

 パチュリーは席から立ち上がり座ったままの輝雄の背後に回り、何やら呟き薄い桃色の燐光が彼を纏う。その様子を少し不思議そうに小悪魔が見ている、そのまま数秒ほど経つが特に何も起こらずパチュリーは少し目を細めて、話し始める。

 

「…………何も違和感を感じないなら、そのまま私の話を聞いてくれる?」

 

「ええ、お願いします」

 

「恐らく貴方の能力は霊力が覚醒する前から発動していた、少なくとも発動することが有った──────―その条件は恐らく何らかの危機が迫った時、正確には貴方の危機感や警戒心がトリガーになったと思われる」

 

 小悪魔が空になったティーカップに新しい紅茶を入れる。魔法か何かで温度を保っているのかしばらく経っても程よい温度を保ちながら湯気と共にいい香りが鼻腔をくすぐる。パチュリーは彼に燐光を纏わせながら自身の考察を続けていく。

 

「そして、その効果は『迫る危機に対して必要な能力値の限界を引き上げる』。もしかしてだけど貴方のその異常な身体能力は、それが必要とされるような状況が外の世界で続いていたからじゃない?」

 

「さて、どうでしょうね」

 

 輝雄は何も言わずただ少しずつ紅茶を飲んでいる。その様子を見て、パチュリーは少し眉を顰めるが何事もなかったかのように話を進める。

 

「………………続けるわね。さっきの話の続きだけど貴方は私の弾幕から身を守ろうとした、でもその攻撃に対して霊力の防御が足りていなかった。貴方がそれを意識していたのか無意識だったのかまでは分からないけど、その危機に対応しようと自己強化──────いや一時的なものでは無く、恒久的な向上から自己進化というべきかしら…………ハイ終わり、体の方は流石ね。()()()外側も全く異常なしよ」

 

 体の診断を終えたのかパチュリーは術の行使を辞める。何故か少しだけ含むものがある様な言い方だったが、彼は特に気にせず彼はパチュリーに向き直る。

 

「ありがとうございました──────自分がレミリアさんの能力を無効化したのは?」

 

 念の為、体の各所を動かしてみるが特に違和感は感じない。消費された霊力も時間経過によって少しずつ戻ってきている。その様子を興味深そうに小悪魔がジロジロと見ている。

 

「今私が言った効果は()()()()()()()()()()()()()()()() 主効果は他にある。ただ推測は出来るわ、身体能力向上が能力を無意識に発動させていた副次効果ならそれだけ貴方に危険が迫る事が多発していた────────それらに対抗、或いは抵抗するために」

 

 パチュリーは自分の席に戻り、栞を挟んでいた本をまた読み始める。

 

「発動条件は二つ『自分に対しての干渉』そして『その干渉が害ある物、又は貴方の意にそぐわない物』であること…………能力の上限が分からない以上確かなことは言えないけど、あらゆるものに有効なら驚異的ね」

 

 恐らく自分に対してしか働かないという制約的条件ある代わりに驚異的な防御力が────────────ブツブツと一人パチュリーは自分の世界に入り込み考察を進めていく。もはや輝雄も小悪魔のことも目に入っていない。置いてけぼりにされた輝雄はどうすればいいか小悪魔に目を向けるが。

 

「いやーすみません、輝雄様。パチュリー様はこうなったら満足するところまで考えがまとまらない限り戻ってきませんから部屋に戻って下さって構いませんよ」

 

「そうですか、分かりました…………いくつか本を借りたいんですが」

 

「勿論構いませんよ、魔導書は危険なので無理ですが普通の読み物なら向こう側にございます。よろしければ持ってきましょうか?」

 

「結構です、自分で探すのも楽しいので──────ちなみに危険な魔導書ってどんなものがあるんですか?」

 

「そうですねー物理的に捕食してきたり、幻術をかけてきたり色々ですねー。はっきり言って魔法使いとしての力量が足りないと読む事すら難しいですね」

 

「自分が魔法を覚えたりとか無理ですかね?」

 

「さっきの戦いを見る限り、輝雄様なら普通に鍛えた方が圧倒的に強くなれますよ」

 

 回復魔法は覚えられそうにない事に少し肩を落としながらパチュリーをその場において輝雄は一人本を探しにいく、目的の物を探すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんパチュリー様、少しよろしいでしょうか?」

 

 小悪魔は先程輝雄が使っていたティーカップを片付けながらパチュリーに話しかける。パチュリーは考察がひと段落したのか独り言も呟かなくなり静かに本読んでいた、読んでいる本は精神に対して幻惑を掛ける魔導書。本の内容が穏やかではない、と小悪魔は内心ビクつく。

 

「何? まぁ何が聞きたいか大体分かるけど」

 

「先程輝雄様に使っていた魔法、あれは治癒魔法などではありませんよね? それに彼の紅茶に混ぜるように指示したこの薬は────────―」

 

「研究中偶然出来た精力剤、あとさっきの魔法は目の前の異性に興奮する魅了魔法」

 

「え”」

 

「私、召喚魔法や精霊魔法は得意なんだけど製薬とか他の魔法はそこまで得意じゃないから人間相手に試してみたかったのよね」

 

「さっき輝雄様の背後に回ったのはその為ですか!? 何かおかしいと思ったら私危なかったんですね!?」

 

 あの時、魔法をかけると言って輝雄の背後に回ったのは彼の視界から消える為。不自然だとは思っていた、手の届く距離であれば魔法の有効射程なのにわざわざ後ろに回る必要は無いのだから。

 

「大丈夫よ。多分 効かないと踏んでいたから」

 

「なーんだそれなら────────多分って言いましたか今???」

 

 知らない間に自分の主人が実験していた。しかも自分と客人を対象に。

 

 その事実にも驚きだが何故そんな事をしたのだろう。彼の能力についてはもう判明したのではないか。差し出されたからティーカップに紅茶を注ぎながらパチュリーに聞いてみる。

 

「自覚や警戒心が無い状態でも能力に引っ掛かるのか調べてみたかったから、結果は彼の自覚が無い状態でも作用するみたいね。肉体面だけでなく精神面でも、恐らく自身の意に沿わないこと全てに対して有効──────それこそ概念的な干渉も関係ないわ」

 

 注がれた新しい、勿論薬など盛られていない紅茶を含みながら目論見が全て破綻したことを考える。まさか薬物も効かないとは、内臓器官諸々人間のそれではない。

 

(本当なら紅魔館に敵対できないように暗示を掛けたかったけど、やっぱり無理だったわね。レミィに無茶なことはさせるなって言っておかないと)

 

 どんな能力にも向き不向きや、術者の力量にも依るが能力の有効な限界値があるもの。だが現時点では彼の能力は限界未知数という事しか分かっていない、せめてもの救いは攻撃性や殺傷力がある類ではないことか。

 

「何というか…………人間が持っていていい能力じゃないですよね。咲夜さんもですけど」

 

「そうね、正直まだまだ分からない事が多いわ」

 

「分からない事? 例えば何ですか?」

 

「現時点でも彼の能力は十全に発揮されているわけではない」

 

「…………つまり?」

 

「彼は現時点でも能動的に能力を発揮できていない、つまり自分の意思では操れていないのよ──────完全に能力を操れるようになったらどうなるんでしょうね?」

 

 魔女はいつもと同じようにただ読書と魔導の研究に勤しむだけだ、だがいつも付き添っている従者にしか分からない程微かだが。その横顔は────────────。

 

「あぁそうそう、あとでいつも通り地下に本を運んであげて。あの子そろそろ読み終える頃だろうから」

 

「…………いつも思うんですけど私よりも咲夜さんの方が適任じゃないですか? あの人ならいくらでも逃げる時間作れるんですから」

 

「うだうだ言ってないでさっさと運ぶ」

 

 永遠に紅い幼き月 動かない大図書館 完全で瀟洒な従者 華人小娘。

 何もかもイレギュラーな外来人 嶋上輝雄──────そしてまだ舞台にまだ上がっていない少女が一人。

 

 

 

 

 

 ──────紅い満月まであと少し。

 

 

 




 
 四倍ぇだぁぁぁあああ!!!(CV,にんじん) 嘘です、違います。
 
 ちょい短め、きりが良かったので。

 あまりしたくないメタ的な補足
 解説と考察はあくまでパチュリーの主観によるもの。一応ね
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