幻想禍津星   作:七黒八白

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 あからさまに貼っていくぅ!!

 ───ついて来れるか(CV,弓を使わない弓兵)


第七話 違和感

 掌底と同時に放たれた霊力弾を受け、エントランスホールの壁面に叩き付けられ瓦礫に埋もれた十六夜咲夜を見ながら輝雄は周りの気配探る。

 

(レミリアは……こっちには来てないな、我関せずか、それとも十六夜さんへの信頼か。紅魔館の外では何か大きな力の衝突があるな、霧の湖辺りか……誰か来たのか?)

 

 尤も逃げるにせよ隠れるにせよ、彼女をどうにかしなくては始まらないが。それなりに加減はしたとはいえノーバウンドで壁を突き破る程の打撃、美鈴ならまだしも耐久力は人間の範疇であるはずの十六夜咲夜にはそれなりに効いたはずだ。

 

「…………なんてこと……まさか時の止まった世界に入り込んでくるとは」

 

 少しふらつきながら立ち上がった咲夜は思った以上にダメージがあるようだ。先程の衝撃でメイド服は端が千切れたように裂け、全体的に薄汚れている。しかし戦意はまるで衰えていない、霊力もまだ有り余っている。

 

(ちょっと浅かったか……? 手加減し過ぎたな、もう一発────)

 

 そしてまた咲夜の姿が瞬時に消える。

 

「──────!」

 

()()()()()()()止まった時の中を。嶋上────いいえ、輝雄」

 

 そしてほぼ同時に、輝雄の背後の吹き抜けとなっている二階の手摺部分に腰を下ろし現れる。腕と脚を組み、値踏みするような目つきでこちらを一瞥している。

 

「よりにもよってこの忙しい時に……恐らく幻想郷で唯一と言っても過言ではない私のアドバンテージは消えてしまった……」

 

 また消え、今度は正面の階段の踊り場に現れる。

 自分の存在を誇示するように規則正しく革靴の足音を立てながら、手元でナイフを優雅に弄ぶ。不意を打つのは不可能と開き直ったのか。先程とは雰囲気が打って変わり空気が張り詰めている、輝雄はその変貌を敏感に感じ取る。

 

(ここからが本番か…………『時間を操る程度の能力』、恐らく他にも加速、減速……流石に巻き戻す事は出来ないよな?)

 

「そこで私は考えたの──────『果たして輝雄は一体止まった時間の中をどれ程動けるのか?』と、私でさえ無制限に時間を操作出来るわけじゃない。輝雄、あなたは一体何秒動けるの、一秒? 二秒? ひょっとして私と同じように停止中無制限動けるのかしら?」

 

「…………さぁ? どれ位動けると思います?」

 

 紅魔館で滞在している間何度も感じた世界が灰色に染まる現象、その間体が動かなくなり一人で何度も焦った。そしてその間誰も動いていないにも拘らず、一人だけ動いている人物がいた──────言うまでも無く十六夜咲夜だ。

 

 始めは錯覚だと思った、しかし美鈴との戦闘中やパチュリーの講義中に何度も起これば流石にこの現象を十六夜咲夜が起こしていることを理解した。気分はまるで百年の眠りから覚めた吸血鬼だった、本物の吸血鬼に会っているのに。

 

(漫画貸してくれた後輩に感謝だな、でなきゃこんな真似思いつかなかった)

 

 だがしかし全てが思い通りでは無かった、時間が停止している間強制的に能力が発動しているのかゴリゴリ霊力を消費する。そして一定時間経つと霊力が底をついていなくとも動けなくなってしまう、自分の能力でも抵抗しきれない強制力。

 

 しかも予想と違い、ただ時間を停止させる能力では無く思い通りに操る能力。

 

 こちらが時間停止した中でも動ける事が判明した以上、もう容易には近づかせてはくれないだろう。輝雄の戦闘力はほぼ全て近接に特化している、弾幕も打てるが咲夜の機動力を考えると仕留めるのは難しいだろう。

 

「(一撃で仕留められなかったのは痛いな……俺が動けるのは────―凡そ、十秒。どうやって近づく?)…………ちなみに、十六夜さんはどの位動けるんですか」

 

「咲夜で構いませんよ、そうですね…………霊力を節約しながらなら一時間位余裕ですよ」

 

「…………ナルホド、ソウデスカ(DIO様ボロ負けで草ァ!!)」

 

 ──────まるで話にならなかった。

 

 輝雄は精々二、三分ぐらいだと思っていたが想像以上に時間を操れるようだ。節約しながらという事は、この後に控えている戦いや弾幕を併用すればもっと短いのだろうが何の慰めにもならない。

 

「貴方は言いたくないのね……まぁそれもそうね。私の見立てでは恐らく────―十秒か二十秒程度といったところ、能力で無理矢理動いているだけで時間に干渉出来るわけじゃないのでしょう?」

 

(……流石にお見通しってわけか)

 

「しかし時間停止が効かないと分かった以上、下手に近づくのは賢い者のする事ではないわ…………」

 

 輝雄は左拳を固め脇を絞めた状態で、右手は汎用的に使う為緩く前に添える。そして前足に体重三割、後ろ脚に七割。攻防どちらにも移れる態勢を解かずに階段上の従者を睨みつける。

 

 対する咲夜は自然体でナイフを構える。先の一撃は決して軽くないはずだが、まるで弱みは見せない。

 

「──────―だからここからは全力! 針の筵になりたくないなら早く降参することね!」

 

 瞬間、咲夜は跳躍と同時に扇状にナイフを投擲する。降り注ぐ銀の輝き、輝雄当然それを避けようとするが──────

 

「なっ────―」

 

 ──────それよりも速くナイフが腕を掠る、直撃しなかったのは殆ど偶然だった。

 

 驚いている暇も無く凄まじい勢いでナイフが一瞬前まで輝雄が居た場所に突き刺さる。霊力で強化されていたとしても尋常ではない威力と速度だった。

 

 低い姿勢で連続でバク転を繰り返し避けていく、その後を追うように岩を掘削する様な音を立てながら銀の刃が床に突き立つ。

 

(停止じゃない──────加速で攻めてくる気か!!)

 

「ナイフを限界まで加速させたわ、この速度と量──────いつまで避けきれるかしら!」

 

 十六夜咲夜の『時間を操る程度の能力』はその名の通り時間を操る。

 

 しかしそれは世界の時間を停止するだけでなく、自身や物体の時間をも操れる。彼女は距離を詰められない様に、そして彼が対応できない程の加速と物量で遠距離から押し潰す事を選んだ。だが大量のナイフや弾幕を限界まで加速させるこの手段は誘導性と大量のナイフと霊力を犠牲にする。それでも咲夜は────

 

(この後博麗の巫女との戦いがあるけど──────彼、輝雄の方が厄介ね!)

 

 ──────目の前の脅威を優先した。

 咲夜は美鈴やパチュリーが負けた際に、博麗の巫女か魔法使いと戦うことが役目であった。その為可能な限り輝雄相手には力は消耗したくなかったが時間停止が効かない事で後の事を考えるのは辞めた。

 

 ──────今ここで、何が何でも嶋上輝雄を仕留める。

 

 博麗の巫女と魔法使いは他の二人に任せるしかない、底のしれない相手に咲夜は全力を尽くす事を決めた。ナイフと霊力全てを使い尽くす勢いでエントランスホール全体に展開する。

 

「敬意表し、全力でいかせてもらうわ──────メイド秘技『殺人ドール』!」

 

(来る────!!)

 

 敢えて減速されたナイフが逃げ場を奪うように展開され弾幕はナイフを後押しする様にで形成される。花弁状に展開されたナイフと弾幕は、決して狭くは無いエントランスホールが全て咲夜の支配下に置き──────輝雄から逃げ場を奪った。

 

(避け────―多ッ! ──────無理! 防御し──────)

 

「避けきれないから防御してやり過ごそう──────なんて許すと思う? 駄目押しよ!! 時よ止まれ!!!」

 

 ──────そしてまた世界が停止する。

 

 時間が停止すると同時に減速されていたナイフと弾幕は一律の速さに戻り、輝雄を中心に人が通り抜けられない程の圧倒的な物量が迫る。

 

「──────ウオォォオッ!!!」

 

 三百六十度、上下左右全てから殺到する弾幕とナイフを片端から撃ち落としていく。

 

 時間が止まっている為か、肌に食い込む事は無いがそれでも凶器が肌一枚手前まで迫るのは決していい気分ではない。それでも一切怯むことなく急所に届くナイフと弾幕だけを冷静に捌いていき、奪ったナイフでナイフを弾き続け、弾幕も同じように相殺し続ける。

 

 ──────しかし、輝雄にそれが許されるのは僅か十秒だけ。

 

「ッッッ!!! (動け、動け、動け動け動け動け──────!!!)」

 

 徐々に体は油を指していない歯車の様に鈍くなり、そのまま全く動かなくなる。たった十秒、されど十秒。輝雄は圧倒的な死線をくぐり抜けたが──────弾幕はまだ半分以上残っている。

 

「凄まじいわね……………………貴方……本当にただの外来人なの……?」

 

 咲夜のほぼ全てのナイフと霊力を消費し形成した弾幕網、並の妖怪ならば数十回殺してもなお有り余る物量と威力。それが一切身動きできない輝雄に迫り──────

 

「──────そして時は動きだす」

 

 ──────鋭い金属音と共に弾幕による爆音に包まれる。

 

「…………死んだ……のよね……?」

 

 ナイフと弾幕をその一身に受け、煙の中から現れた輝雄は全身が創傷だらけになりもはやシャツは血で染まっていない場所はほぼ無く、至る箇所に弾幕の着弾後があった。うつ伏せに倒れており微動だにしない、むしろ咲夜は原型を保っているだけでも驚きだった。

 

「手加減出来なかったとは言え……殺ってしまった……仕方ないわね」

 

 これから来るであろう博麗の巫女に見られると厄介だ。お嬢様も手加減出来ない程強かったという事実を考慮して下さるだろうと、輝雄の遺体に近づこうとし──────

 

「──────待って、こいつ本当に死んだの?」

 

 ──────踏みとどまる。

 輝雄は止まった時の中でも十秒程なら動けていた、もし彼が生きていて間合いに入れば一撃でこちらは仕留められかねない。迂闊に近づくのは危険だ、ただでさえこちらはガス欠気味だというのに。

 

 咲夜は未だに動かない輝雄を階段の上から観察する、体には幾本かナイフが突き刺さっているが致命的な箇所には刺さっていないようだ。呼吸はしていないのか胸は上下していない、考え過ぎだろうか…………。

 

(…………動けない状態で殺到した弾幕、いくら身体能力が人外並でも人間には違いないはず。霊力が使えても軽く十回以上死ねる物量と威力だった──────)

 

 ありえない、生きている筈がない、もし逆に自分に同じことが起きれば間違いなく死んでいた。

 

 しかし相手はこちらの手札を読み切って、逆手に取る程抜け目のない策士である。咲夜は階段下で輝雄が死んでいると信じ切れなかった。そしてこれで生きているとすれば間違いなく報復でこちらの命は無いだろう。この戦いはもはや弾幕ごっこでは無く、殺しの領域だった──────殺らなければ確実に殺られる。

 

「近づくのは危険ね…………念の為、背後からもう一度ナイフで頭部と正中線上に突き刺して完全な安心を得るとしましょう──────ねぇ輝雄?」

 

 静かに宙を飛び玄関扉側に位置を変える、これなら例え急に輝雄が飛び起きても対処出来る距離だ。そしてホール下の輝雄に聞くように最後のナイフを構える。

 

「今度こそ、さようなら──────私の世界に踏み込んだ、ただ一人の人」

 

 ──────そして、無防備なその背中に銀の輝きが突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁッ!!?」

 

「あんた、何してんの?」

 

 ──────ただし、嶋上輝雄では無く十六夜咲夜の背中に。

 

 全く警戒していなかった背後から何者かの攻撃を受けた。咄嗟に残り僅かな霊力を防御に回したが完全に防ぐことは叶わず、痛みからして恐らく針の様な鋭い物だろう。

 

「──────博麗の巫女!? 美鈴の奴! しくじったわね!?」

 

「メイリン? あぁ、あの赤髪の中国人のこと? …………それよりも下にある死体について聞かせてもらえる?」

 

 ──────考え得る限り最悪の状況である。

 

 手元にあるナイフ以外もう手持ちの武器は無い、霊力も殆ど底をついている。今の咲夜では勝てる相手は妖精メイドくらいであろう、霊力とナイフが無い咲夜など博麗の巫女にとってその辺の雑魚妖怪と同レベルだ。

 

「……ちょっとした手違いよ、人様の家の事情に首を突っ込まないでくれるかしら? 後、巫女を招いた覚えはないわよ」

 

「…………まぁ、確かに。外来人は殺しても幻想郷のルールには抵触しないけどね──────あんまり好き勝手すんじゃないわよ。あと外の霧! さっさと何とかしなさい!」

 

「‥‥‥‥‥‥‥嫌だと、言ったら?」

 

「──────問答無用でぶっ飛ばす」

 

 勝つことは絶望的だ。

 咲夜は目の前の少し変わった巫女服を着た少女から感じた霊力から、今の自分では天地がひっくり返っても勝てない事を悟った。

 

(ならば逃げるだけ! 最後の霊力を振り絞りなさい! これが正真正銘、最後の時間停止!!)

 

幻世『ザ・ワールド』!!! ────―時よ止まれッ!!!」

 

「何を──────?」

 

 ──────そしてまた世界の時間が停止した。

 

 今日だけで一体何度時間を止めただろうか、普段の紅魔館の家事でもここまで時間を操作する事は無かった。それもこれも急に現れ、好き勝手暴れた輝雄のせいである。しかも停止した時間の世界に入り込む特異性、美鈴に並ぶ近接戦闘能力、イレギュラーにも程がある。

 

「良かった…………流石に博麗の巫女まで時間停止が効かないなんてことは無いみたいね──────」

 

「──────あぁ、みたいだな。あわよくば手伝って貰おうと思ったんだが」

 

「貴方──────ぐッッッ!!?」

 

 振り返った瞬間喉を掴まれ呼吸が出来なくなる、そこには血に塗れナイフが刺さったまま幽鬼の如く浮いている輝雄がいた。咲夜と輝雄以外全てが灰色に染まった世界で、それは酷く浮いていた。

 

 紅魔館で過ごしている間、彼の表情が真顔から変わる場面を見たことが無かったが──────今だけは裂ける様に薄く微笑み、赤銅色の瞳は燃えるかの如く輝いている。

 

(輝雄……やっぱり生きて……! でも何で……!?)

 

「『何で生きてんだ? コイツ?』って面だな…………ある意味お前のおかげだよ」

 

「……?」

 

「お前さ、一度に操れる時間の現象は()()()()だろ? 違うか?」

 

「──────!?」

 

「図星か……『加速』している間は『停止』と『減速』は出来ないという風に、能力の容量(キャパシティ)上の問題か、時間という概念的性質なのかは知らんが……同時に複数の現象は操れない」

 

 時間が停止している時、大量のナイフと弾幕に囲まれた時、はじめから咲夜がこちらが認識出来ない程加速し、攻撃すればもっと早く決着はついた。だが彼女はそれをしなかった──────否出来なかった。最初は停止だけでなく、加速と減速にも上限と下限があるのかと思ったが──────恐らくそれだけではない。

 

「時間が停止していても動ける俺に接近するメリットと比べて、自分を加速出来ない停止世界ではリスクの方がデカかった…………かと言って停止してない時でもカウンターを警戒して近づかなかった──────だから、俺が限界まで動いても避けられない程の物量で潰そうとした」

 

 その時に気付いた、一度に操れるのは一つの現象までだと。

 あの時減速され、宙を停止していた弾幕は時間が停止すると()()()通常の速さに戻った。もしあの時、通常の速さではなく加速された弾幕であれば恐らく、輝雄は避けきれなかった。

 

「お前が自分の意思で解除した可能性もあったが…………それなら俺が対処出来ない位『加速』させて一気に串刺しにすればいい…………おかげでギリギリ霊力の防壁と衝撃波が間に合った──────それでもゾンビみたいになったが」

 

(この私が──────この、咲夜が!!!)

 

「答え合わせはこんなもんでいいだろ? ──────覚悟はいいな? 俺は出来ている」

 

 停止時間最後の一秒、咲夜が目にしたのは、圧倒的な霊力を纏った拳が迫る瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────する気よ? って、え? 何? 何でメイドが壁に陥没してんの!?」

 

 博麗の巫女──────こと博麗霊夢がメイドが最後の微かな霊力を集中させて何かを行おうとした次の瞬間目にした物は、メイドと入れ替わるように宙を飛んでいる血祭りで死に体の青年と、その青年に殴り飛ばされたのか壁に叩きつけられ気絶しているメイドだった。

 

「あんた…………そのメイドの敵、だったの?」

 

「あぁ……まぁ…………そんなところ、だ」

 

 喋るのもかなり辛いのだろう。霊力はまだ余っているようだが青年は緩やかに降下し壁にもたれかかる。

 

 流石の霊夢も、異変解決の邪魔するのであれば腐れ縁の白黒魔法使いも問答無用でぶっ飛ばすが、目の前の青年は既に死に掛けなので攻撃する気は全くなかった。何より博麗の勘が言っている()()()()()

 

「ちょ、ちょっとあんた…………それ、大丈夫なの?」

 

「傷はそこまで深くない、急所もちゃんと避けた…………でも、出血がヤバいかもな……とりあえず止血しねぇと…………」

 

「少しジッとしてなさい、簡単な治癒術なら使えるから」

 

 言いながら霊夢は術を行使する、だが飽くまでも簡単な傷を塞ぐ程度のもの。失われた血液までは戻ってこない。

 

 もっと高度な術なら血液の補填も出来るのだが、如何せん霊夢は普段から修行も勉強もサボりがちである。それに敵の攻撃を受ける事も、大量の血を流す程の大怪我も負った事も無い。

 

「すまん……助かる」

 

「いいわよ。別にこれくらい………………?」

 

 傷を塞ぎ、止血しながら霊夢は目の前の青年を観察する。服装は白かったであろうカッターシャツと黒いスラックスとかいうズボン背はかなり高い、優に六尺以上はあるだろう。髪は自分と同じ黒髪で瞳はやや赤い、赤銅色だ。

 

(……やっぱり人里の人間じゃないわね。ここまで戦えて霊力が使える人はいないでしょうし、でも外来人がここまで戦えるものなの……?)

 

 

 

 ──────それに初めて会った気がしないのは何故だろう? 

 

 

 

 博麗の巫女としての勘も嘗てない程、強烈に自分に働きかけてきた。

 

「なぁ、君がハクレイの巫女か……?」

 

「……ええ、私が博麗の巫女。博麗霊夢よ、貴方は?」

 

「一週間程前に幻想入りした外来人の嶋上輝雄だ……異変が起こるまでここに軟禁されていた……」

 

 紅魔館に軟禁、穏やかな話では無い。

 自分の記憶では、ここの頭は確かかなり強い吸血鬼だったはずだ()()()()()()()()。思わずお祓い棒を握る力が籠る。

 

「そう……本当なら助けてあげるべきなんでしょうけど、今は異変解決が優先よ。貴方を助けて助かるのは貴方だけ、異変解決はこの幻想郷全体の問題だから悪く思わないで」

 

 死に掛けている人間をその場に残す、常人とは考え方や価値観も違う霊夢自身それが褒められた行いではない事は分かっていた。しかし自分は博麗の巫女なのだ、やる時はやらなくてはならない。

 無論彼からしてみればそんな事は知った事ではないので、引き留められると思ったが──────

 

「思わない、止血してくれただけでも十分だ……気を付けろよ、さっきのメイドは時間を操作出来たし、ここの吸血鬼は運命とか操れるらしい…………あと図書館と地下室には行くな……異変の首謀者は上の時計塔だ」

 

 ──────予想以上に物分かりがいい。

 かなり戦い慣れている様だったし、もしかしたら外の世界でも退治屋などを生業にしていたのだろうか、霊夢は何とも言えない違和感を感じたがやはり勘は何も警鐘を鳴らさないので気にしない事にする。

 

「上ね、分かった──────取り敢えずあんたは異変が終わるまで隠れてなさい」

 

 その場に青年を置いて、博麗の巫女は行く。

 普段の自分から考えれば信じられない、とまでは行かずとも珍しい位世話を焼いてから。

 そして感じたことが無い感情を、胸中に少しだけ自覚しながら。

 




 
 別にシリアス一辺倒にしたいわけじゃないんですけどね、やっぱ書きたいものを書きたいので。

 どうでもいい補足
 今回は三つ独自設定をぶち込みました。別に気にしなくても平気です。
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