幻想禍津星   作:七黒八白

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 一応後輩が出る異変まで予定してるけど、まだ春雪異変すら行ってないんだぜ?笑えるだろ?(真顔)


第十七話 紅魔館な日々

「フランとの用事は済んだのかしら? じゃあ早速始めましょうか」

 

「まーたいきなり弾幕ごっこですか?」

 

「いいえ、違うわ…………そういえば貴方スペルカードは作ったの?」

 

「うーーーん…………まぁ、俺は別に異変解決を生業にするつもりは無いので作らないと思いますね、飽くまでも自己防衛ですので」

 

 紅魔館内、パチュリー・ノーレッジの私室もしくは研究所もしくはテリトリーと言っても差し支えない馬鹿でかい図書館の中で輝雄とパチュリーは向き合っていた。

 

 そしてパチュリーが思い出したかのようにスペルカードの事を聞いてくるが、輝雄は結局スペルカードを作っていない。そんな複雑な弾幕を創作出来そうにないし、霊夢の様に異変解決などで生計を立てるつもりは無いからだ。第一野良の妖怪はスペルカードルールなど関係なく殺しにくる、なので彼は同じ様に問答無用で素手で殺している。スペルカードルールは飽くまで『血を流さない、流したくない』という考えや理性がある者にしか適応されない。

 

 あの後、アリスとパチュリーが何やら怪しげな魔女の契約をしている間(輝雄の勝手な予想)、輝雄はフランとダーツしたり、ビリヤードしたり、なんか学園ジュブナイルRPGの様に遊んでいた。別にコープランクが上がったりはしなかったが、心なしかフランもあれ以来明るくなったようだ。

 

「そのおかげでレミィは連日連夜今までの憂さ晴らしか振り回されてるけどね」

 

「物理的に? 精神的に?」

 

「両方」

 

「草」

 

(…………意味は解らないけど、辛辣なことを言ってるのは確かね)

 

 ジト目で明後日の方向を見ながら悪い笑い方をする輝雄を見てパチュリーは、彼が中々良い性根をしている事を再確認した。まぁこんな人外だらけの館に好んでくるのだから、そのくらい精神的にタフで無いとやっていけないだろう。

 

「んで? 修行って何するんですか? まさか美鈴さんみたいに体術教えてくれるんですか?」

 

「まさか、私にそんな事させてみなさい──────準備運動だけで息切れするわよ」

 

「アンタもっと運動しろ」

 

 ──────だから喘息マシにならねぇんだよ。

 

 そんな事を考えていると、パチュリーが何やら机の下でゴソゴソと探っている。すると何やら紙のような物を取り出した。四辺が同じ長さの紙だった、一見するとただの折り紙である。差し出された紙を受け取りまじまじと眺めてみる。

 

「なんだこれ」

 

「東洋における五行思想って知ってる?」

 

「あー…………火・水・木・金・土、五つの元素で世界は出来てるって思想でしたっけ?」

 

「30点ね、それだけじゃ。陰陽五行説や陰陽五行論についても纏めた本があるから持って帰って読んでおきなさい。そしてその紙は貴方の適性を調べるための呪具みたいなものよ」

 

 パチュリーが軽やかに指を鳴らし、重量感ある音と共に隣に百科事典くらいある本が山詰みで現れる。分厚さは角で殴れば人を殺せそうなレベルである、それがざっと十冊程。いくら読書家の輝雄と言えどこれにはドン引きした。

 

 半ば現実逃避気味にソレは後で考えることにして、今は渡された紙を揺らしながら眺めてみる、当然何も起こらない。明りに透かして見ても特に変なものは無い。呪具というがやはりただの紙にしか見えなかった。

 

「…………どう使えばいいんですか?」

 

「霊力流せば、その反応で判別出来るわ」

 

「水見式かよ…………」

 

「どちらかと言うと狩人より忍者のほうじゃない?」

 

「前から思ってましたけど、妙にサブカルチャーに詳しいですよね???」

 

「そんな事よりも早く試してみなさいな」

 

 ──────誤魔化したな………………。

 

 そう思いながらも素直に紙に霊力を流してみると、紙がアルミ箔のような銀色に変わり、発火し燃え始めた。発火した瞬間指が焼けると思ったが、火が指をなめても熱さを感じなかった。不思議に思いながら燃え続ける紙を見て、パチュリーが言う。

 

「へぇ、“火”と“金”ね。案外バランスいいんじゃない?」

 

「火は何となく分かりますけど、金は何が出来るんですか?」

 

 火は霊力から炎など生成出来るようになると想像しやすいが、金はやや思いつきづらい。輝雄は少し考えるが、どうしてもフルメタルなアルケミストしか思いつかなかった。実際出来るのであれば便利なのだろうが、その領域は完全に魔法の域だろう。

 

「五行思想において火は『夏』の象徴、光り輝く炎が元となっていて火のような灼熱の性質を表す。

 金は『秋』の象徴。土中に光り煇く鉱物・金属が元となっていて、金属のように冷徹・堅固・確実な性質を表す………………そうね、金はどちらかというと防御向きかしら? 金の性質を持たせた結界とか作れたら便利かもね。

 そして今更だけど、貴方がフランのレーヴァテインを掴んで“熱い”程度で済んでたのは火の適性があったからでしょうね」

 

 本来なら骨まで“溶けていた”と続けるパチュリーの見解にゾッとするものを覚える。それはつまりあの炎剣は三千度弱あるという事、流石にスペルカードのレーヴァテインは非殺傷に調整されている筈だが、あの夜のフランは本気で殺しにかかっていたからこその威力だったのだろう。

 

「我ながらよく生き残れたな………………」

 

「呆れた…………今更理解したの? それよりも火の性質を利用した術式を学ぶわよ、戦闘以外にも色々生活に活用できるでしょうし、覚えて損はないわよ」

 

「…………因みにパチュリーさんはどの属性を持っているんですか?」

 

「全部」

 

「実質三代目火影じゃん」

 

「馬鹿な言ってないで。ほら、霊力を熱に変換するところから始めるわよ」

 

 そして始まるパチュリーのパーフェクト魔法教室。厳密には霊力を使った術なので法術に近いのだが、勿論輝雄はまだそんな事を知る由もない。大魔女指導のもと霊力を弾幕ではなく火として顕現させようと奮闘するが────────

 

 

 

「違うそうじゃない、もっと霊力を絞って。今度は火力上げすぎ!」

 

「注文が多い!」

 

「弾幕と同じように制御出来たら対象を焼くも焼かないも思いのままよ、集中して!」

 

「そんな事を言っても勝手に燃え上が────────あ」

 

「ちょ、本棚に────────」

 

 

 

 ────────手から出た炎が本棚を飲み込む。

 

 

 

 ♢

 

 

 

「それで? ボヤ騒ぎ起こしかけてパチュリーと咲夜にこってり絞られたわけ」

 

「どうやら俺は術のセンスは体術程じゃないみたいだ」

 

 あの後霊力から火の生成法を習得したが、うっかり火力を上げすぎて図書館の全焼しかけパチュリーが水浸し覚悟で水をかけまくり、騒ぎを聞きつけた咲夜が時間停止させてその間に二人がかりでせっせと消火活動に勤しみ。

 

 

 

『壊すなって言ったわよね? 何? 放火ならいいと思ったの?』

 

『霊力の扱いからもっと早く上達すると思ってたのだけどね……』

 

 

 

 ──────最後に二人にメチャクチャ叱られた、言われた通りにやっていただけなのだが。

 

 

 

「まぁパチェが耐火性の結界とか張らずに図書館で始めた事も悪いと思うけどね」

 

「だよな? あの人だって、メラゾーマぶっぱしてたから大丈夫だと思うよな?」

 

「『めらぞーま』って何よ」

 

 バルコニーでティータイムをしていたレミリアに付き合い、今輝雄はゆったりと過ごしていた。そろそろ日が沈み始める時間帯だが、夜になっても別に輝雄には何の問題も無い。久しぶりに珈琲を飲み、カフェインが脳に染みる感覚に酔いしれていた。因みにアリスはとっくに帰ったらしい、人形の用事は済んだのだろうか、ぼんやりとそんな事を考える。

 

「ふー……で? その後、フランとはどうなんだよ? 仲良くやってんのか?」

 

「あー………………まぁ、それなりに?」

 

 何処か気まずそうに、レミリアは明後日の方向を見ながら言う。まさか物理的にも振り回されているなどとは口が裂けても言えないだろうし、言いたくないだろう。無論、輝雄はパチュリーからどのような扱いというか関係なのか知った上で聞いているので内心ニマニマしているのだがレミリアが知る由は無い。何気に輝雄は紅魔館に監禁された事を、少しだけ根に持っていた。

 

「へぇ、そりゃあ良かった。心配してたんだよ、あれ以来仲良く出来ているのか」

 

「も、勿論よ! 当たり前じゃない、今までの五百年なんてすぐに取り戻せるわ」

 

「言っても、フラン自身にちょっと引き籠り気質な所があるのも問題だったんだろうがな」

 

「確かにね、私達吸血鬼は基本夜行性だし。どちらかと言うと昼夜逆転してる私の方がおかしいのよ」

 

 思い返してみれば、輝雄が紅魔館に囚われていた時から殆どレミリアは日中活動していた。人間で言えば完全に昼夜逆転した生活である、しかも吸血鬼は日光が弱点なのでさらに身体に悪いだろう。

 少し輝雄は考える、フランとの交流は夜の方がいいのかもしれない。彼女が部屋から出ない理由として真っ当な吸血鬼として日光を避けているというのもあるからだ。それに考えてみればレミリアにとっても、ずっと日中活動はそれなりに負担だろう。

 

「…………なぁレミリアよ。お前さ、ちょっと生活リズム吸血鬼基準に戻してフランに合わせてやったらどうだ? 霊夢とかよりも優先してあげるべきだと思うが」

 

「でもそれだとフランが私や紅魔館の面々としか関わらないじゃない、私としてはもっと外に興味を持って欲しいわ」

 

「ん──………………痛し痒しだな。急に交流を広げるってのも良くないか……ある程度事情知ってる霊夢辺りから関わらせりゃいいか、あとよく知らんけど魔理沙って奴」

 

「マリサ…………あー、パチェが蔵書が盗まれたって怒ってたけどソイツね。関わらせない方がいいんじゃない?」

 

「世間には良い奴ばっかじゃないって勉強になるだろ」

 

 姉であるレミリアは当然にしても、まるで輝雄まで兄であるかの様に今後のフランについて案じる。常識的に考えれば家庭事情に首を突っ込むなど余計なお世話だが、紅茶を飲みながら話を聞くレミリアは酷く穏やかな表情であった。

 

(私も焼きが回ったかしら………………)

 

 しかし日が沈み始め輝雄にはレミリアの表情はやや見えづらいのか、気づいている様子は無い。何故だろう、レミリアにはそれが酷く間が悪い気がした。

 

「………………ねぇ輝雄? 貴方外の世界では恋人とかいたの?」

 

「急にどうした? 年齢=恋人いない歴だが」

 

「フッ………………」

 

「なに(わろ)てんねん」

 

 ──────そういうお前はどうなんだ。

 

 レミリアに恋愛遍歴を鼻で笑われ、若干キレ気味にそう聞き返そうとしたが。

 

「──────輝雄、少し聞きなさい」

 

 真面目な顔と声色で呼ばれ、押し黙る。先程の談笑とは打って変わって真剣な表情であった。

 

「私達妖怪は精神に依存した生き物よ、種族や個体差はあるけどね」

 

「………………急にどうした」

 

「まぁ聞きなさいって、それ故に人間の様に肉体の老化現象はほぼ無く、肉体的な外傷で死に至る事もほぼ無いわ。吸血鬼はその最たる例かもね」

 

 一区切りし、彼女は紅茶を口に含む。何故今妖怪の生態の話になるのか、輝雄には分からなかった。しかしレミリアの纏う雰囲気が疑問を挟ませない。

 

「逆に精神的な攻撃には弱く、人間の様に立ち直る前に死んでしまう事もあるわ。

 私たちにとって『心』というものを傷つけられるというのは並大抵の事で無いのよ…………………………異類婚姻譚(いるいこんいんたん)ってあるでしょう? あの手の話ってよく悲恋や悲劇で終わるけど、人間だけじゃなく妖怪側も大体碌な目に合わないか、死んじゃうじゃない? 

 ────────―あれはね、その妖怪が精神的に死んでしまうから。私達(妖怪)は人間の様に『新しい恋に生きる』だとか、『愛が無くとも生きていける』なんて柔軟な構造に出来ていないのよ。大きな思いを寄せた相手が死ねばそれに引き摺られてしまう、人間以上に」

 

「………………………………」

 

 

 

 ──────なんて難儀な生き物だ。

 

 

 

 輝雄はそう思わずに居られない。

 人間を思うが儘襲い、畏れさせ、殺したい時に殺せるだけ殺す。そう思っていたが妖怪はその精神性を一貫させていなければ、すぐに衰えて死んでしまうという事だ。人間を見下すのも、殺すのも、必要以上慣れ合わず唯我独尊を貫くのも妖怪が妖怪である以上避けては通れない生存戦略なのだろう。変化変容しながら、太く短く生きていくのが人間。それらを一切拒絶しながら細く長く生きていくのが妖怪…………………………どちらが良い生涯かは意見が分かれるだろう、少なくとも輝雄は無駄に長いだけの人生はただ疲れるだけだと思った。

 

「だから、あまりフランを甘やかさない様に………………周り回ってあの子の為にならないわ。無論貴方が紅魔館に住まうのなら話は簡単なのだけど、ね?」

 

「………………成程な、覚えとくよ」

 

「あぁ、あとね吸血鬼にとって相手を────────―」

 

「──────輝雄?」

 

 しかしレミリアが何かを言い切る前に後ろから声が掛かる。その声の主を見たレミリアの顔がやや引き攣る、何かと輝雄が思い振り返るとそこにはフランが居た………………のだが、少し様子がおかしい。どんよりとした雰囲気を纏い、目にはこちらを非難するかのような色がある様に見える。

 

「私との約束は早々に切り上げたのに、何でお姉さまと逢引してるの?」

 

「いや別にそういうわけじゃ──────」

 

「そうよフラン! ただコイツが図書館を全焼しかけて修理の間ここで時間潰してただけよ! 私はフランの方へ行くことを勧めたのだけどね!!!」

 

「え? 何言ってんのお前?」

 

 輝雄の台詞を遮り口早にレミリアが言う。輝雄は状況が飲み込めず、何故レミリアが焦っているのか。独り置いてけぼりで事が起き、進んでいく。それを見たフランは面白く無そうに一瞬真顔になり、次の瞬間にはにこやかに笑っていた────────────薄く弓なりに引き絞られた目以外。

 

「そう………………じゃあ鬼ごっこしましょう。最初の鬼はフランね」

 

 

 

 ──────―あ、これあかんヤツや。

 

 

 

 レミリアと輝雄の思考が図らずに同期する。二人共素早く我先にバルコニーから飛び出し、一拍遅れてレーヴァテインが二人がいた場所を薙ぎ払う。

 

「うふふふふふふふふふふふふ、待て待てー」

 

「おい呼ばれてんぞレミリア逝ってやれよ!!!!!!!!! (超早口)」

 

 なお、誤字に非ず。

 

「いやいやいやいや貴方が遊んであげる約束だったのでしょうだから貴方が逝きなさい!!!!!!! (超早口)」

 

 なお、誤字に非ず。

 

「てかフランそれって弾幕ごっこ用に非殺傷のヤツだよな!? そうだよな!? そうなんだよな!?」

 

「二人共頑丈だし本気でいくね」

 

「落ち着きましょうフラン私達はきっと分かり合えるわだから剣をしまって!!!!!!」

 

「私はお姉さまを焼き尽くしたいけど分かり合える?」

 

「「逝ってこい輝雄/レミリア!!!!!!!!」」

 

 後ろから迫りくる炎剣を避けながら全力で逃走しながら醜い争いを繰り広げる。

 

「輝雄! お姉さまの物になる位なら死んで!!!!」

 

「嫌じゃボケェ! せめて道連れカリスマガード!!」

 

「え、ちょ、何で私を羽交い締めに──────―『禁忌レーヴァテイン!!!!!!』あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 

 

 ──────二人仲良く火柱に飲み込まれる。

 

 

 

 門番をしながら寝ていた美鈴が驚き、飛び起きる。中庭から上がる火柱とその中に見える二つのシルエット、暴走してる妹様からおおよその状況を察し──────。

 

 

 

「……………………今日も紅魔館は平和ですねー」

 

 

 

 ──────異常なし、と立ちながら二度寝する。

 

 






爆発オチなんてサイテー。ギャグ補正的なアレで死んでないからセーフ。
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