このままじゃ本編完結まで百話くらいかかりそうで、内心青ざめてます。
オラにセンスとやる気と文章力を分けてくれぇー!!!(ごみ野郎)
あ、あとまだ先ですがタグを追加するかもしれません、ご了承ください。
第二十二話 雪、時々、春
「ふぅ………………マジで冷えるな」
真昼時であるにも関わらず、曇天の空。吐いた息は一瞬で白くなり、代わりに入ってくる空気は口の中を冷たく乾かしてくる。針が突き刺すような寒さの中、輝雄は熱いお茶の入った魔法瓶を口に傾ける。
「さてさて、痕跡からしてこの辺りのはずだが…………?」
膝ギリギリまで積る雪に、葉が殆ど散っているとは言え森の中、視界の効かない場所で一人呟きながら獲物を探す。翳した手の先には樹皮が捲れた木が一本、輝雄は自分が風下にいる事を意識して周囲の気配探る。
(──────────見つけた)
手前の茂みの中に音を出さず姿を隠す。数十メートル先、木々が少ない開けた場所に大きな角を生やした
(確か角が生えてるのは雄だけなんだよな? 良し、繫殖の妨げにはならない。好都合!)
輝雄は親指を撃鉄に見立て、人差し指と中指を銃口に見立てる。圧縮させる様に霊力を指の間に溜め、牡鹿に向ける。
「──────ごめんな」
何かに気付いたのか牡鹿が食事を途中でやめて周囲を見渡すが、その時にはもう輝雄の準備は整っていた。弾幕ごっこのソレとは違いビードロ玉程に圧縮された霊力弾は、ライフル弾さながらの威力で真っ直ぐに射出され────────―鹿の脳を的確に打ち抜いた。
「………………」
妖怪を殺すのとは違い、少しだけ心に良くないものを感じながらも、無益な殺生では無い事を意識しながら鹿の遺体を運ぼうとする────────が、何も飢えているのは人と鹿だけでは無い。
「■■■■………………!」
「おぉ……“穴持たず”って奴か? 初めてお目にかかる」
血の匂い釣られたのか、はたまた輝雄よりも先に狙っていたのか以前に戦った陰摩羅鬼と同等の大きさの熊が、敵意と牙を剝き出しで輝雄を睨みつける。
本来は憶病で警戒心が強く、明確に弱みを見せたり餌と認識しない限り人間に近づかない筈だが、彼から何かを感じ取っているのか────────―既に臨戦態勢に入っている。
「………………? お前……ツキノワグマか? それともヒグマか? 幻想郷の位置によるけど……あり得るのか?」
「■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!」
雪が降り積もる森の中、吞気に熊の生態や生息地について思い返している輝雄に対して、咆哮を迸らせ立ち上がり、熊がその剛爪を振り下ろす。
それを何一つ、焦る事無く眺めている彼は──────────。
「────────熊鍋だな」
まるで子犬が駄々を捏ねる様に、嫌がる叫び声を二、三度上げたのち。
湿っぽく繊維質の物が千切れる様な、そして太い幹が無理矢理ねじ切られる様な音が森に響き渡る。
時は
♢
「考え過ぎよ、今年は春が来るのが遅いだけでしょ」
「俺は幻想郷で冬を迎えるのは初めてだ、だがそれでもこの時期に積雪が膝まではおかしいだろ。もう田んぼの稲を植えないといけない時期だぞ?」
しんしんと、雪がまるで綿毛の如く無限に降ってくる昼下がり。博麗神社で輝雄は霊夢を訪ねていた。この簡潔に言えばこの時期のこの気候は、幻想郷において有り得る事なのか。尤も、輝雄も人里の人達も異変を疑っているが。
「人里の人達もかなり生活や仕事が制限されている、暖を取る燃料も食料もこの寒さじゃいつか底をつく。今はワカサギ釣りとかで誤魔化しちゃいるが……それも限界だ」
「言っても自然現象なんだからしょうがないでしょ? そりゃあ日照りとかで雨乞いしろってんなら分かるわよ。でも雪を止めるのは流石に私も無理、専門外よ」
言いながら霊夢は炬燵で丸くなりながら蜜柑を食べて、茶を啜っている。輝雄も対面で炬燵足を入れている。流石にいつもの縁側は寒すぎるので、火鉢で温め、閉め切った博麗神社の一室で話していた。
人里では今、前例のない長期の冬に悩まされている。寺子屋は去年の十二月から数ヶ月ずっと休止している、多くの店舗や職人たちも毎日の様に続く雪に仕事が滞っている。輝雄も猟師に狩りを教わり、鹿などを仕留める事によって食い矜持を稼いでいた。
「へぇ、確かにアンタなら山の昇り降りも簡単だし向いてるかもね。普通の人じゃ妖怪は勿論、熊とかに襲われる可能性あるし」
「お陰様で里の肉屋の人達にも重宝されているよ──────って、そんな事はどうでもいいんだよ。このままじゃ皆遅かれ早かれ凍死か餓死しかねない」
「大袈裟ねぇ……それより今日も獲物仕留めたんでしょ? なんか無いの?」
「熊の手なら……」
「うん、いらない」
「……美味いぞ?」
「いらない」
「……本当に?」
「いらない」
「そうか……」
紙に包まれた熊の手を出したが霊夢に断られてしまう、何故か輝雄が少し凹んだ。今日仕留めた分は殆ど店に卸した、そうでもしなければ餓死とまではいかないが里が回らない。それだけ常人にとって雪の中で動き回るのはリスクが高いと言える。
何より輝雄には充分に蓄えがあったし、霊夢には以前にお裾分けしている。博麗の巫女と言えど必要以上に差し出すつもりはない。彼女からしてもこのままでは里から奉納品が滞るはずなので他人事ではいられないはずなのだが、中々頑なに動かない。
「だって吹雪いているのよ? こんな中で飛び回るなんて冗談じゃないわ、滅茶苦茶寒いし……」
「脇出しているからじゃね?」
「それになんでか知らないけど、やたら身体冷えやすいのよ私」
「脇出しているからじゃね?」
「そういえば、こないだ魔理沙が来たけど信じられない物見るような目を向けられたわね……何でかしら」
「脇出しているからじゃね?」
「兎に角! アテが無いまま飛び回ったりしたら私が凍え死にし兼ねないわ! 異変調査はせめて雪くらい止んでからよ!」
輝雄の返答が聞こえていないのか、散々愚痴った後に霊夢は大声で断言し
(こりゃ梃子でも動かんな……………………はぁ、慧音さんになんて言やいいんだ……………………)
それこそ炬燵を剝ぎ取っても異変解決には行かないだろう、というかそんな事すれば真っ先に輝雄がボコボコにされる。流石に諦めて心の中でため息をついた後、炬燵から出て輝雄は博麗神社を後にすることにした。
♢
「そうか………………霊夢は動かないか」
「えぇ、炬燵から動きません。動かざること猫の如しですよ」
「山だろ、ソレ」
その日の夜、輝雄は慧音の宅に招かれた。輝雄が取ってきた熊肉で鍋を囲んでいる、妹紅も酒とタケノコを持ち寄ってやって来た。下準備等は慧音と妹紅がやってくれた、彼も手伝おうとはしたが『里の為に頑張ってくれているから』とのことで、座って待たされた。
「てか妹紅さん料理できたんですね」
「どういう意味だコラ、一人暮らしなんだから出来るに決まってんだろ」
「以前家に訪ねた時、中が廃屋みたいになってたから……」
「ばっ────いやいやいや! いつもはあんな感じじゃないんだぞ!? ただちょっと忙しかっただけで────」
「妹紅……? 私言ったよな? いくらお前の
輝雄が口を滑らせたせいで、どうやら地雷を踏みぬいたのか。慧音が怒りを滲ませながら妹紅に詰め寄る、心なしか慧音の背後に明王のようなものが見える気がする……彼は気にしない事にした。
「……まぁ、それは後でとことん追求するとしてだ。実際問題どうするかだ」
((とことん追求されるのか………………))
妹紅が内心青ざめて、輝雄が心の中で合掌する。
そして三人とも意識を切り替える、理由は当然五月にもなるというのに依然吹雪いている、この気候についてだ。
「一応聞きますけど、幻想郷でも有り得ないんですよね? この時期にこの気候は?」
「当たり前だろ、北国でもねーのに五月に雪なんか降るかよ。本当なら今頃鯉のぼり上げて、
鍋から熊肉を大量に取って、口いっぱい頬張りながら妹紅が言う。幻想郷にも鯉のぼりの文化がある事は初耳だが、やはり長年幻想郷暮らしの二人にとっても異常気象らしい。そして妹紅は結構食い意地が張っているんだな、と輝雄は思った。
「今はまだ何とかなっているが………………このままでは寺子屋どころじゃないな……」
教師だけでは無く歴史家として、そして人里の守護者としても現状に大いに悩んでいるのだろう。慧音は寺子屋以外の事も心配しながらバランス良く鍋から肉と野菜を取り、口に運びそれを酒で一気に流し込む。意外とイケる口らしい──────というか既に一升瓶は半分以下だった、常識人かと思ったらとんでもない
(妹紅さんは人里の外に住んでるんだから俺よりも強いだろう、異変を解決しにいかないのか? それとも既に動いているのか? 慧音さんは…………人里の護りもある、俺よりも信頼されているだろうし、俺が思っている以上に自由に動けないのかもしれない)
菜箸で熊肉を追加しながら輝雄は考える。もしこの異常気象が異変である場合、時間経過で解決するとは限らない────────下手をすれば来年までずっと雪景色の可能性もある。そしてその場合確実に人里は滅ぶ、半年も持たないだろう。
二人の実力がどれ程のものか知らない以上、『解決しにいけよ』と無責任な事は彼には言えなかった。既に知っているからだ、スペルカードルールがあるとはいえ、決して命の危険が無いわけでは無い。輝雄は戦える力があるからこそ、その言葉を軽々とは口にしない。
(────────―そういや、最近紅魔館に行ってないけどパチュリーさんなら何か知ってるか?)
「おーい? どうしたー?」
「ん? あぁ、いえ、熊肉は初めてなものでして」
「大丈夫だ、牛や豚と比べてちょっと硬いが美味いぞ。それより酒が進んでないようだが?」
「いや俺、未成────―って幻想郷じゃ関係ないか……では少しだけ」
既に出来上がっているのか、妹紅と慧音が赤ら顔で酒を進めてくる。お湯に浸けていた熱燗の徳利をそのまま飲んでいる妹紅、冷酒にも拘わらずそのままお猪口に注いでいる慧音。先ほどの曇った表情はどこへやら、酒、肉、酒酒、酒肉酒、酒肉酒酒肉酒酒酒酒肉酒酒、時々野菜。
──────いやいや多い多い、明らかに酒のターンが多い、流石にこれ以上はマズいと思い止めようとするが、時すでに遅し。
(何処からどう見ても酔っ払いです本当にありがとうございました)
「おらぁ! 飲めコラァ! つまんねえ面してんじゃねぇぞ! それともアタシの酒が飲めないってのか! おぉん!?」
(しかも、からみ酒…………………………)
ガシリ、と肩に腕を回されて透き通った白髪が顔に掛かる。女性特有の香りが漂うがそれ以上に赤ら顔で酒臭かった、美少女が台無しである。『夢も希望もありゃしねぇ………………』、そんな事を考えながら輝雄は死んだ目でお猪口を口に近づける。
「もこうぉぉぉおおおお!!!! どうしておまえ人里に住まないんだぁ!! みんなお前のことをしたっているのにぃぃぃぃ………………!」
(こっちは泣き上戸…………………………)
空っぽになった一升瓶に何を見ているのだろうか、いつもの知的な雰囲気をかなぐり捨てて赤ら顔で一升瓶を抱きかかえながら畳の上をゴロゴロと慧音は転がっている。一升瓶全部飲んでしまったのだろうか、『教師の姿か? これが………………?』、ストレスなんだろう……きっと彼女は疲れているんだ……輝雄はそう思う事にした。
「お~い酒がねぇぞー? けいねーさけぇ~どこぉ~」
「ああ~、たしかぁ~だいどころのぉ……どこだっけ?」
「二人とも落ち着いて下さい。それ以上は死にかねませんよ、いや本当に」
てんやわんやと二人が騒ぎだし、一升瓶が空になった事に気付いたのか、新しい酒に手を出そうとした二人を輝雄が止める。
「だってさぁ~さいきんアイツもやしきからでてこないからさぁ~さけのむぐらいしかやることないんだよ~」
「アイツが誰か知りませんがジッとしてて下さい妹紅さん。熱燗離して、もう空ですからソレ」
「どうしてなんだ……どうしてわたしよりもかがおのじゅぎょうのほうがにんきあるんだ……うっうっ…………うぷっ」
「自分の興味ある事が相手も興味あるとは限らないって事ですよ────────今ちょっと吐きかけましたか?」
二人が火傷したりしてはいけないので火を止め、一通り鍋などを片付けておく。
「ていうかさぁ……なんかあつくない? けいねぇ~ぬいでいい?」
「ッ!?」
「いいぞ~わたしもぬごう……あれ、このふくどうぬぐんだっけ……?」
「ッ!? ッ!?!?」
そうこうしている内に、暑いと言い出し服を脱ごうとした二人を止める。
止める、全力で止める。二人とも尋常じゃない暴れ方をしたが全身全霊全力で、『もうこれで終わっていい……だから、ありったけを……!』と力を尽くして何とか布団に二人を入れる事に成功する。全てを終わらせた後、結局後片付けは一人で輝雄がする事になった。
(………………………………………………二度と、あの二人とは飲まない)
────────― 一人自宅までの帰り道、そんな事を決意していた。
そして異変の調査で人里を離れる事を慧音に伝える為、翌日にもう一度慧音宅に訪れる。戸を叩き、慧音を呼んでみると──────凄まじい勢いで出てきたのは妹紅だった。かなり急いでいたのか服がかなり乱れている、そして目が彼を射貫かんばかりに鋭い。
「──────―あぁ輝雄、昨夜は悪かったな。後片付けを任せちまったみたいで」
「……イエ、オキニナサラズ」
「──────私は途中で記憶がないんだが……お前が寝室まで運んでくれたのか?」
「……ハイ、ソウデス」
「いや本当にすまなかった! 久々に飲み過ぎちまったよ! ハハハ、ハハハ!!! アッハッハッハッハッハ────────」
妹紅が悪びれながらも謝罪と感謝してくるのを、無機質かつ機械的に返す。そのまま異変の調査に赴く事を伝えて妹紅と別れようとし────────。
「──────―で? 本当は昨夜何があった?」
「………………………………なにも……!!! な”かった……!!!」
────────────鬼気迫る表情で迫ってくる妹紅から、彼は全力で逃げ出した。
慧音=記憶が残らないタイプ
妹紅=記憶が残るタイプ
輝雄=一升瓶程度では精々ほろ酔いか、シラフ。
因みに常人なら日本酒は200ml超えたら危ない。呑みすぎは良くないですよ。
日常回と本編どっちを優先して欲しい?
-
日常回
-
本編
-
作者の好きにして