最近ちょい忙しくて期間が空きそうです、期待してる方々すみません。
あと凄く今更ですがこの小説は主人公だからといって無意味に優遇し過ぎない様にしてます、同時に原作キャラも同様です(但しリスペクトは忘れ無い)。
なので「俺の嫁がこんなに弱いはずが無いだろう!」的な方はお気を付けてください。
────────ずっと前から気になってはいた。
『輝雄? そうねぇ………………案外普通よ。逆に何が気になるのよ』
『そうだなぁ、珍しくお前が友好的に接している所とかかな』
『なによ、まるで私が普段は傍若無人みたいな物言いね』
『無かったのか………………自覚…………』
普通の魔法使い、霧雨魔理沙は霊夢との会話を思い出していた。
化け猫や雪女と一戦交えてようやく雲の上に手がかりがあると知り、魔力と体力を回復させるためにも輝雄についての会話を思い出しながらゆっくり雲の中を上昇していた。
『私はまだ実際に会って話したことは無いんだよな…………アイツ普段は人里に居るから近づけないし、紅魔館では遭遇しないし』
『紅魔館で遭遇しないのはアンタが窃盗犯で彼が客人だからでしょ』
顎に手を当てながらフームと考える魔理沙に対して辛辣な、或いは真っ当なコメントを霊夢はするが聞き流される。実のところ人里上空から寺子屋の子供達と歩いている所や慧音と甘味処に入っている所や白髪赤目の女とタケノコを抱えている所は見かけた事はある。
(確かに紅霧異変の時みたいな荒々しい感じは見受けられなかったんだよなぁ……)
結局のところ、霊夢からも碌な情報は得られず、紅魔館では話にもならない。
人里は実家もある為、魔理沙としてはただそれだけの理由で近づきたくない。
(────────ま、いっか。そのうち話せるチャンスもあんだろ)
そしてその時に聞き出せばいい。
何故吸血鬼と戦える程の力を有しているのか、どうやって幻想郷に来たのか。魔理沙の知的好奇心を満たす事と、何か魔法の研究で役に立つ事があるかも知れない。そんな希望を膨らませながら、博麗神社を後にする。
『おいコラ! 障子を開けっ放しにするんじゃないわよ!』
『へへ! 寒いんならまずガラ空きの脇をなんとかしろ!』
そんな腐れ縁の声を背に曇天の空へ飛び立ったのが、今朝方の博麗神社でのこと。
霧の湖や妖怪の山などかなり寄り道をしてしまったが、なんやかやで魔理沙は雲の上に辿り着く。久しく見ていなかった太陽と、
────────そこで遠目に見えた件の外来人、輝雄。
「…………………………!」
距離はかなりある。豆粒程の大きさだったが遮る物が何もない為、辛うじてその輪郭が里で見たものと同じだと判別が出来た。そして何やら騒霊の三姉妹と話している。
(異変の仲間…………は流石に無いか。多分輝雄も雲の上に手がかりがある事を掴んで此処に来たのか、先を越されるとは────────さて、どうする?)
輝雄と手を組む────────という選択肢は魔理沙には無い。魔理沙は勿論異変を解決する為にここまで来た訳だが、決して世のため人のため等と言う殊勝な心掛けでは無く飽くまで自身の好奇心と魔導の追及の為である。
積極的に倫理や道徳を踏み越えるつもりは毛頭ないが、さりとて異変解決の先を越させるつもりも毛頭無い。
(────────よし、マスパ撃とう。一発なら誤射だろ)
まだこちらには気づいていない様なので、高度を下げて雲の中に身を潜める。輝雄が騒霊に挑んで負ければ自分が出て、奥にある“春”が流れている孔に飛び込む。輝雄が勝てば、少しの間眠ってもらう。
そして話を終えると輝雄はその場で胡坐をかいて、何やらヴァイオリンの演奏を聞き始める。
(あー………………終わったな、アイツ。ルナサの演奏を聞いちまったら戦うどころじゃないぜ………………こりゃ私が三人ぶっ飛ばすことになりそうだな)
魔理沙にも僅かに演奏が聞こえてきたが、距離があるからか精々少し気持ちが落ち着いた程度。しかし目の前で聞いていた輝雄はそうはいかないだろう、そう高を括って魔理沙は演奏の終わりに合わせて自身の得意技を放つ準備を整える────────が。
「…………マジかよ」
────────輝雄は平然としていた、そしてそのまま孔に向かおうとする。
予想に反したその結果を、魔法や幻想郷における様々な現象に照らし合わせて考察してみるが、相手は元外来人。精神干渉に対する高度な術など修めているはずがない、そう結論づけた魔理沙のとった行動は────────
「恋符『マスタースパーク』!!!」
目を輝かせながら、いたずらっ子の様な笑みを浮かべて全力で魔法を放った。
♢
「誰だてめえ」
「霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ。お前は?」
「………………嶋上輝雄、普通の教師だ。(魔理沙! こいつが…………)」
輝雄はルナサが気絶した妹達を回収し、雲の下へと消えていったのを視界の端で確認しながら目の前の少女を警戒する。その名前は何度も紅魔館では聞いたからだ。
紅美鈴曰く、『近接戦闘は恐らく出来ない、だが弾幕のパワーと速力は博麗の巫女よりも高い』
咲夜曰く、『紅魔館の調度品をよく荒らしていく、特に図書館の被害が酷い』
パチュリー曰く、『輝雄、見つけたら捕まえなさい。見返りはそれなりの物を用意するわ────────だから簀巻きにしてでも捕まえなさい』
レミリア曰く、『アイツあんなナリで和食派なんだってさ』
フラン曰く、『マリサ? 誰? ていうか最近あんまり来なくなったよね? なんで? どうして? フランなにかした? 輝雄怒ってるの? ねぇ、ちゃんと目を合わせてよ話してくれないと分からないよなんでアイツばっかりに構ってるのパチェとか美鈴とか咲夜は分かるけどお姉様はダメだよなんで返事してくれないのねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ────────ねぇってば? 』
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………」
────────いや、美鈴さん以外碌な情報が無いな。
特にパチュリーは一体何があったのだろう、垂れる前髪のせいで目が見えなかったがかなりの怒気を含んでいた。なんのかんので穏やかで、魔女という妖怪であっても人を積極的に害するような人ではない筈なのに、どんよりとしながら明確にキレていた。
フランに至ってはもう意味不明である、いや確かに冬が長引いたせいで少し疎遠になっていたが何故あそこまで拗らせているのだろうか。輝雄には訳が分からなかった。
脳内でレミリアに責任転嫁しようとするが、
「おーい? なんか具合悪そうだな、人里帰るか?」
「あぁ…………気にしないでくれ…………それで? 一体何の真似だ?
百歩譲って、あの三姉妹は異変の共犯者だから攻撃するのは分かるが、何故俺まで巻き込もうとした?」
「んー? そうだな………………私はな、自分が興味を持った事はとことん追求する性格なんだよ」
「……………………で?」
輝雄は興味無さげに、実際興味無いが一応聞き返す。
「輝雄、お前の強さと力がなんなのか知りたい。────────だから試させて貰うぜ」
「そんな事してる場合か? 異変解決が先だろ。手合わせなら解決した後でいいし、俺が邪魔なら先行は譲るが?」
輝雄は自分が異変解決する事には拘らない、結果的に巫女が解決しようがメイドが解決しようが魔法使いが解決しようが何でもいいし、もっと正確に言えばどうでもよかった。自分の生活と人里の平穏が戻ってくるのなら名誉や活躍など至極どうでも良かった。
「論点をズラすなよ、私は、今、試したいんだ!」
────────しかし魔理沙にもそんな事は関係無い。
懐から出した陰陽太極図が刻まれた小道具を輝雄に向け魔力が上昇する、内部に溜まり切らない魔力が熱量として周囲を陽炎の様に歪ませ、紫電が迸る。
(────! さっきの波動砲みてぇなのはアレで撃ったのか!)
「もう一発! 恋符『マスタースパーク』!!!」
スペルカードルールに則って技名を宣言すると同時にさっき放たれたものより広範囲のレーザーが輝雄に迫りくる。降り注ぐ太陽光よりも眩い光線が輝雄を飲み込み────────そして弾幕が通り過ぎた後には何も無かった。
「…………? なんだよ、呆気な────!?」
自身の放ったマスタースパークで輝雄が何処かに飛ばされたと思ったのも束の間、下から霊力を感じて咄嗟に箒を手繰りその場から飛び退く。そして入れ替わる形で輝雄のショットガンの様な弾幕が通り過ぎた。
「流石に戦い慣れてるな…………これ位じゃ落ちないか」
(コイツ…………! 今の範囲と距離から放たれたマスパを避けたのか!?)
当然、魔理沙は自身の弾幕の強みも弱みも知り尽くしている。知り尽くしたうえで輝雄が先程いた距離なら着弾まで一瞬で、範囲なら上下左右全てにおいて対応できると踏んでいた────────にも拘らず相手は全くの無傷だった。
「お前も中々早いな! ま、私程じゃあ無いけどな!」
内心避けられた事を驚愕しているが、魔理沙はそれを悟られぬように強気に出る。
マスタースパークはその威力から連発は出来ない。魔力も回復させなければいけないだけでなく、彼女が使う陰陽太極図が刻まれたマジックアイテム────────ミニ八卦炉の冷却に時間が掛かる。それを悟らせないように振る舞う。
「………………粋がるのは結構だが、俺は別にお前の事を脅威とは認識してないぞ」
「────何?」
カチンと魔理沙の何かが刺激されるが、輝雄は知ってか知らずかそのまま続ける。あからさまに見くびる様に、嘲るように、如何にも慢心しているといった風に朗々と語りかける。
「今ので大体分かった。お前は咲夜やフラン程厄介じゃない、確かに弾幕の威力は凄まじい物があるが
────────球速がどれだけ速くてもストレートだけじゃあな、変化球が無いなら脅威じゃねぇよ」
「……………………………………………………そうかよ」
“魔法を使う程度の能力”それが霧雨魔理沙の能力。
魔法使いにはパチュリー・ノーレッジの様な先天的な者と、アリス・マーガトロイドの様な後天的な者がいる。霧雨魔理沙は職業的な意味で魔法使いを名乗っているがどちらかと言えば後者である。
────才能はあった。でなければ妖怪退治など生業に出来ないし、異変の解決など望むべくもない。
────努力は惜しまない。魔法の研究は好きでやっている事だし、徹夜など気にもならない。手探り状態から光明が見えた時の達成感は
────────しかし、同時に時折魔理沙は思う。
怠けていながらも魑魅魍魎を叩き伏せる博麗霊夢を。
時間という形而上の概念を好きに操る十六夜咲夜を。
紅魔館でほんの少しの修行で吸血鬼を倒す
────────それに比べて自分はどれほどのものなのか? と。
劣等感というには細やかな、しかし錯覚にしてはあまりにも存在感がある胸中の蟠り。霊夢にせよ咲夜にせよ自身が勝っている点はある、客観的に見ても自信はある。これからも魔法の研究を続ければ伸びしろだってあるだろう。
────しかしやはり彼女達は自分に無い物を持っている、目の前の男もそうだ。
「────────
「なら、見せてみろよ。或いは魅せてみろよ
────それが
三角帽子の鍔を摘まみ表情を隠し、しかし剣吞な瞳で輝雄を睨みながら魔力と息を整える。輝雄も霊力を漲らせ身体能力を強化し、全力で魔理沙と距離を置く。
♢
「おい! どうした!? あれだけ大口叩いておきながら逃げ腰かよ!」
「別にどう戦おうと俺の勝手だろ。お前こそ速さに自信があるなら撃ち落としてみろよ」
雲の上で魔理沙が輝雄を追いかけながら弾幕を放つ、散々悪態をついておきながら相手は大したこと無い弾幕をお茶濁すように撃つだけだった。魔理沙は後ろから挑発し、そしてスペルカードを使用する。
「どうした輝雄!? フランと戦った時はそんなもんじゃなかった筈だ! 魔符『スターダストレヴァリエ』!」
(なんか戦闘民族の王子みてぇな事言ってんな………………
魔理沙は輝雄に対して大声で挑発しながらさらに速度を上げる。輝雄は魔理沙と入れ替わる形で敢えて速度を落とし、もう一度距離を置く。その途中、スペルカードによって放たれた星形の弾幕が周囲の回りながら広がっていくが隙間を縫いながら躱していく。
「星の弾幕が好きなのか? さっきビームもそうだったが」
「まぁな! 流星って綺麗だろ!? それと覚えとけ────弾幕は火力だぜ!!」
急降下で雲の中に隠れ、不意打ちの弾幕を仕掛ける輝雄の攻撃を魔理沙は難なく回避する。戦い始めて五分ほど経つが魔理沙が距離を詰めては、輝雄が距離を取るというイタチごっこが続いている。
────────そして魔理沙はそのことをずっと訝しんでいた。
(なんでだ? なんで距離を詰めてこない? お前の強みは近接での殴り合いだろう、こんなへっぽこの弾幕で私に勝てると思ってんのか?)
またもや輝雄がショットガンの様な散発的な弾幕を放つ、悪くはない、しかし良くもない。少なくとも魔理沙がよく戦う霊夢や美鈴やパチュリーに比べるとへなちょこもいい所だった、精々が雑魚妖精に毛が生えた程度。
「おい! お前本当にやる気あんのか!? まさかその程度で私に勝てると思ってんのか!?」
────魔理沙の狙いは至近距離からの全力のマスタースパークを放つ事。
輝雄の飛行速度と敏捷性はフランとの戦いと、先の回避で十分理解した。その上で確実に、尚且つ一撃で決着を着けるとしたら自分の最も火力が出せる弾幕を当てる事。既にミニ八卦炉の冷却と魔力充填は済んでいる。
そのために敢えて前に身を晒し、カウンターを狙っているのだが輝雄は決して手の届く距離に入ってこない。こちらの狙いを理解しているのか、はたまた本当に逃げているだけなのか。
「さぁ…………どうだろな?」
「お前────────!?」
遂に業を煮やし、異変の首謀者と戦うために温存していた魔力を一気に使い決着をつけようとした時────────
(ぐッ!?!? 頭痛!? 吐き気も………………しかも眩暈、もだと……?)
急激な頭痛、それも感じたことが無い程の。まるで五寸釘でも打たれたかのようだった。同時に起こる吐き気と眩暈によって魔力に意識がいかずに霧散する。
「あぁ、やっとか。意外と時間が掛かったな」
魔理沙は箒を掴む手すらかじかみ姿勢の制御もままならなくなる。それを見た輝雄は、特に驚くことも無く警戒したまま魔理沙の周囲を飛行する。
「お前…………! まさか、毒を…………! いつの、間に…………?」
「アホか、流石にそんな事しねぇよ。お前さ、
優位に立ったというのにまるで感情を見せず、淡々と説明をする。輝雄は振った指を下に向ける────────当然、そこには雲がある。
「
暖かいから忘れていたか? この高さの半分でも発症する人間がいる事を考えたら、お前も大概頑丈だな」
「はぁ────! はぁ────ぜぇ、ヒュゥ…………だったら…………なんで、お前は平然と、してんだよ…………!」
「妖怪にもドン引きされるくらい頑丈でね、
胸を抑えながら青ざめた顔で魔理沙は呼吸に専念するが、一向に息は収まらない。どころかどんどん悪化していく。
(私に近づかなかったのはこれを待ってたからか…………! しかも挑発して、冷静さを欠いて、体力を消耗させた……!)
視界も霞んで輝雄のことすらまともに見れなくなってきた、そこで魔理沙は────────。
「────────戦略的、撤退だぜ!」
「………………!」
────迷わず逃げの一手を打った。箒の上に立ち、まるで水面に飛び込むように雲の中へと落ちていく。当然輝雄も後を追おうとするが、残った箒が顔面目掛けて飛んできたため、一瞬遅れてしまう。
「なんだ……箒無くても飛べんのかよ……
雲の中を落ちていく魔理沙と、その後を付いて行く箒を追って輝雄も降下していく。魔力を辿り弾幕による反撃を警戒しながら距離をとって、分厚い雲の中を真っ直ぐ進む。
(速く速く速く! せめて息さえ整えば魔力を練れる! そうなればマスタースパークを────────!)
後ろから輝雄が迫っている事を感じながら魔理沙は垂直に下に向かって飛んでいく。一分と掛からないはずの雲の中が永遠と続いているかのように長い。
凍傷すらしかねない雪雲の中では呼吸もしづらい、飛行速度を限界まで上げてやっとの思いで抜けた先は────────青い水面。
「!? ここ霧の湖か!? いつの間にこんな場所まで────────」
「当然俺が誘導した」
「!?」
魔理沙は魔法の森から雲の上に来た、だからてっきり降りる場所も森だと思っていたが想像以上に移動していた事に驚く。
まさか真冬の湖面に飛び込む訳にもいかず、急ブレーキをかけてギリギリで止まる────────その硬直を輝雄は逃さなかった。
祈るように掌を合わせて霊力を凝縮する、そして漏れ出る紅い焔。通常の弾幕と違い霊力に性質を与えて変化させる技術。パチュリーから教わり、輝雄は既に物にしていた。
「微調整が難しくてな、念の為水場の近くで使いたかった」
「!? 恋符『マス────────」
「遅ぇよ」
圧縮された焔は右手で添えられ左手で引き伸ばされる、さながら弓と矢の様に。そして魔理沙がミニ八卦炉を構えるよりも早く湖面に紅蓮の矢が放たれ。
────────凍結していた湖面は砕かれ、一瞬にして約千七百倍の体積となって衝撃と爆音は容易く魔理沙の意識を刈り取った。
イェーガー!嘘です。すみません。
輝雄が魔理沙を殴らなかったのは警戒とあとは純粋に殺しかねないからです。
空気云々のところは多分間違って無い……はず。あと皆さん現代の日常回と本編どっちが先に読みたいですか?試しにアンケート取ってみますので気軽にどうぞ。