作者は別に恋愛脳な賢者も嫌いじゃないですよ。
この小説では………どうなるかな、重要じゃないし結末による。
「粗茶ですが」
「あ、どうも────────じゃねぇよ!!!!」
妖夢との戦闘で荒れ果てた枯山水庭園から屋敷に上げられて、何故か輝雄はお茶を出されていた。あまりにも自然に出されるものだから、ついうっかり妖夢から受け取ってしまう。
「あら、苦いのは嫌い? 玉露だからマシだと思うけど…………」
「そうじゃねぇし! 粗茶じゃねぇし! そんな事してる場合じゃねぇし!」
(────────何故韻を踏んだ?)
ぽやぽや、なんて擬音が出ていそうな幽々子のお茶を飲む姿に反射的に立ち上がってツッコンでしまう、妖夢はその隣で従者として幽々子に黙って控えていた………………黙ってはいたが、微妙な目で輝雄を見ていた。
その視線に気づいたのか、居心地が悪くなった輝雄は座り直す。そして出されたお茶を少し啜る、日本茶特有の苦みは控えめで自然な甘みが妖夢との戦闘で疲れた体に染み渡る気がした。
「………………ふぅ、話を始めよう。西行寺さん────────」
「幽々子でいいわよ、苗字で呼ばれるのは慣れてないのよ」
力みを感じない、どこか間延びした声に毒気を抜けそうになるが魔理沙と妖夢を倒した以上ここに来て意思を曲げるつもりは毛頭無い、筋を通すとはそういうもの。
湯吞を握る手を僅かに強めテーブルに置き、いきなり本題に入る。
「………………あんたの呼び方なんてどうだっていい、今直ぐに春を返せ。
────────幻想郷中が五月なのに吹雪いてやがる、このままじゃ凍え死にしかねない」
「まぁ、それは大変ね。でも、もう少し待って下さらない? あと少しで西行妖が咲きそうなのよ」
幻想郷がずっと冬が続いているというのに、幽々子はこれといって驚くことも無くサラリと流す。異変による異常気象は分かり切っていた事なのかも知れない。
そのまるで他人事な言動と反応に今度は思わずこめかみに青筋を浮かべかけるが、何らかの儀式を解除しなくてはならないのだとしたら、まだ力づくが最適解とは限らない、輝雄はグッと堪える。
「………………それは、あの枯れた巨木のことか? 完全に枯れているように見えたが…………」
「そうね、でも春を集めたらアレは咲くのよ。今はただ封印されているだけよ」
「……………………………………封印?」
幽々子の口から中々聞き捨てならない言葉を聞いた。輝雄にとって“封印”という言葉から連想されるのはフランの地下室の結界である。
厳密にはあれは精神を正常にさせて落ち着かせるものであって、中にフランを閉じ込めるものでは無かったが意味合い的には同じような物だ。つまり、ほぼ間違いなく厄介事。
(どう考えても解かない方が良さそうだが………………俺にも人里の住民にも関係無いな)
輝雄は厄ネタの匂いを感じたが────────敢えて、捨て置く。
それで冥界や西行寺幽々子に何が起ころうと、それは自業自得の自滅。本人の咎、本人だけの責任。一々他人が関わる事では無いと輝雄は判断した。
「────────あっそ、別に何でもいいけど今晩中に終わらせろ」
そもそも他人にとやかく言われただけで封印を解く事を諦めるなら、最初からこんな大規模で長期間に渡る、
「うーん……ちょっと厳しいわねー、まだ春が足りないかも────────」
「────────なら力づくで今終わらせようか?」
「…………随分と乱暴な人ね」
輝雄は幽々子の言葉を遮って脅しをかける。半ばハッタリに近かったが、幽々子が邪魔が入る事を疎んでいる様子から、儀式の中断は特殊な方法などは踏まえ無くともいいと判断しての発言だった。
「勘違いすんなよ、こっちは被害者なんだよ。別に問答無用で解決したっていいんだ。そういうもんだろ? 異変ってのは。
────────日が昇る前に終わらせるか、今、俺に、終わらさせられるか。二つに一つだ」
「…………」
────────西行寺幽々子の瞳が鋭くなる。
今までのどこかのんびりとした雰囲気は無くなり、急に冥界を統べる者としての顔つきになる。胸元から出した扇子を広げて口元を隠し、輝雄を品定めするように見つめる。輝雄も全く怯まず、赤銅色の瞳で射竦める。
「…………ふふふ、怖いわね。簡単に倒せない事はわかっているでしょうに…………貴方みたいに勝てる確証が無いまま挑みに来る相手の覚悟は、死兵のそれに等しいわ」
「…………褒め言葉として受け取っておくよ、で? 返答は?」
緊迫した空気の中、一人妖夢だけ冷や汗をかいていた。しかしそれも一瞬の出来事、次の瞬間にはまた柔和な雰囲気を纏った幽々子に戻る。内心食えない奴だと思いながらも、輝雄は返事を急がせる。
「そうね…………集めている春は儀式を終えれば、すぐにでも幻想郷に戻るわ。そうすればその日のうちにでも春の気候になる、今夜中に終わるでしょうからそれまで待って下さる?」
「……いいだろう。日が昇っても枯れ木に春が集まっているようなら
────────その時は思う存分、
「────────決まりね。日の出まであと数時間、急がないといけないわ」
話は終わったと言わんばかりに、幽々子は扇子を小気味良く閉じる。そして、そのまま西行妖なる桜の下へと直行する。
輝雄は異変が終わるまで屋敷に居てもいいと言われ、わざわざ枯れた桜を観に行く気にもならないので、その言葉に甘えることにした。何より妖夢との戦いでかなり霊力を消耗した。
(西行寺幽々子と戦う事になるとしたら、今が最後の休憩になる…………ま、数時間もあれば全快するだろう)
そして、妖夢との戦いでまた能力が発動した感覚があった。実に紅霧異変振りだがやはり強者との戦いが発動条件になっていると、疲労しながらも滾る力に確信を覚える。
「…………それにしても良いんでしょうか」
「何が?」
一人物思いに耽っていると残された妖夢が不安そうに呟く。自分に向けられたとは思わないが、暇だったので一応聞いてみる。
「蔵に残された記録には封印の解き方だけで無く、決して解いてはならないともあったのですが…………」
「…………」
────────その問いかけに、輝雄は答えなかった。はっきり言って、どうでも良かった。
(……関係ない、何が起きても自業自得だ)
陽気で呑気そうな雰囲気は見かけだけ、その本質は思慮深い策士であると輝雄は見抜いていた、少なくとも彼にはそう思えた。何を言ったところで止まりはしないだろう、なら好きな様に好きなところまで行って勝手にくたばればいい。
────────それが自他共に強いる、彼の人生観。西行寺幽々子に限らず他人に深入りしないし、させない。
「────────さぁな、でももうすぐ分かるだろ。その桜が咲くんだから」
屋敷の縁側からでも充分見える巨樹、西行妖なる桜の方を見ながら答えるが────────何故か、いつまで経っても妖夢からの返答が来ない。
「……………………………………おい、魂魄?」
体ごと振り返って背後にいたはずの妖夢を探すが見当たらない、どころか畳の上に置いてあった二振りの刀まで消えている。
「………………一体どこに……………………まぁ別にいっか」
「────────良いわけ無いでしょう? あの桜を咲かせる事も含めて」
────────死角から 聞き覚えの無い 女の声が聞こえた。
突然の事に内心動揺しながら急いで振り返ると────────目の前に迫っていたのは女性物の日傘。
「────────────────ガッ!?!?!?!」
柔らかい色合いに反して、その衝撃は首が捻じ切れそうになる程の威力が込められていた。金属バットどころでは無い、まるでクレーン車で鉄球をぶち込まれたかと錯覚する程の衝撃。
その威力を表す様に傘と輝雄が衝突した地点で衝撃波が生じ、一度も地面に着く事無く途中にあった枯山水の岩を幾つも砕きながら、塀に半分以上体が埋まる。その際にも衝撃に耐えかねたのか、頑丈な塀に蜘蛛の巣状に亀裂が走った。
「かっ…………! …………ごぼっ……!?」
────────異変事のフランの一撃と比較しても明らかに格上の一撃。
激痛に叫ぶこともままならない、脊髄反射で息と血を吐く事すら精一杯だった。
突如として現れた金糸のような髪を腰よりも長く伸ばし、紫色のドレスを着た女は死にかけの虫でも見る目つきで言う。
「────────呆れた頑丈さね、今の一撃で殺すつもりだったのだけど」
「……………………成る程、分かりやすくて助かる。
────────取り敢えず俺は、てめぇを殺さない限り明日の朝日は拝めないわけだ」
幾度となく死線を超え、更に強靭に成った筈の肉体をして誤魔化し切れない負傷と負担を、意志と意地と矜持だけで持ち堪える。
そして乱雑に血が混じった奥歯を吐き捨てながら、眼前の遥か格上の敵を見据える。
♢
────────
あの吸血鬼が異変を起こすだろう事は前々から分かり切っていた事だった。
私にとってあの異変は予定調和。
今代の博麗の巫女、博麗霊夢と。元人里の人間、霧雨魔理沙が協力ないしは競争する形で解決する事も計算通りだった。
────────だが、彼だけは全くの
外来人が幻想入りした、までは良い────────珍しくもない。
紅魔館に拾われた、それも良い────────運が無いな、と思うだけだ。
しかしたったの二週間足らずであの吸血鬼の妹を、周りの助けありきとはいえ制し、あまつさえ排他的であった紅魔館に一石投じたのはどういう事だ?
────────明らかに外来人どころか常人の功績の範疇では無い。
そもそもその役目は、その功績は、その役割は、全て今代の巫女である博麗霊夢の物になる筈だったのだ。
そして幻想郷に博麗の巫女あり、と人間と妖怪に宣伝する意味合いがあった。
図らずも口さがない鴉のお陰で大凡予想通りの絵図は描けたが、あの人間の存在は頂けない────────なまじ力と意志が有ることは、幻想郷に混乱を齎しかねないのだから。
────────それはとても美しく、とても残酷な事。
人間と妖怪のバランスを崩しかねない彼を、嶋上輝雄を、野放しには出来ない。
────────妖怪の賢者、八雲紫はそう判断した。
だから待った、機会を。格下でも、確実に、念入りに。
────────
「────────本当の事を言うと、妖夢にはもっと頑張って欲しかったのだけど……いいわ、万全の状態で無いならベストでは無くてもベターでしょう」
「────────火中の栗を拾わせといて、自分は高みの見物…………そしてリスクだけ避けて良いとこどりか、成る程な、俺が一番嫌いなタイプだ」
脳が揺さぶられたのか、輝雄は視界がまるで色水を落とした水面の様に、ぐにゃりと歪み立っている事もやっとだったが────────それでも弱みは見せなかった。
どう考えても明らかに、今の自分が置かれている状況がそんな事を許してくれるとは思えなかった。そして相手もこちらを見逃すつもりは無い。というよりも、その為に先の一撃で仕留めようとしたのだろう。
(クソが…………! かなりイイの貰っちまった……誰だよマジで!? 最低でもフランと同等以上の妖怪……! ほぼ間違い無く、今までで、最も────────)
「短い付き合いになりそうだけど、一応名乗っておきますわ
────────この幻想郷の管理者、八雲紫と言います」
座っていた空間の
「八雲…………だと……」
────────紅霧異変の後、何度か聞いた単語。妖怪の賢者、八雲紫。
『そういえば輝雄、貴方は幻想郷に来る前の事覚えている?』
異変が終わり、傷も癒えて博麗神社に向かう前にレミリアからそんな事を聞かれた。
『ん? 別に記憶喪失とかは無いが……』
『違うわよ、
『………………いや、寝て起きたら森の中だった』
『…………だとしたら…………気を強く持って欲しいのだけど。貴方は幻想郷の妖怪の餌として神隠しされた可能性が高いわ。
────────悪い事は言わないわ、下手な事はせず八雲紫に会ったら逃げなさい。あの賢者がわざわざ人一人に執着するとは考えにくいけど……一応ね?』
また、人里での生活が安定してから博麗神社まで霊夢のところまで奉納品など持って行った際に────────
『八雲紫ね、実際に会った事は…………無いわ』
『そうなのか? 意外だな……』
『でも────────』
────────霊夢は、目に見えない空を掴む様に記憶を辿り、何を思い出そうとしていた。苦しむ、は流石に言い過ぎだが…………明らかに重要な何かが思い出せてないようだ。
『
『………………おい霊夢?』
『────────何でもないわ、確かな事は関わって良い事は無いわよ。
妖怪退治も異変解決も、私に任せてアンタは人里で普通に暮らして、お賽銭を納めなさい』
ぶつぶつと呟き出したと思えば、次の瞬間にはいつもの調子に戻っていた。あれが何だったのかは今も分からないが、確かな事は。
────────この幻想郷において、レミリアと霊夢すら警戒する、一番敵に回すべきでは無い相手が、何故か自分を確実に殺しに来ている事。
「つくづく…………運がねぇなぁ! 俺って奴は!」
逃げる────────という考えはなかった。
何の予兆も無く現れた事から恐らく咲夜の同類、すなわち時間もしくは空間を操る術がある。そう考えた輝雄はまずは能力を見極めようと霊力を────────
「────────甘いわね」
「ぐがッ────────!?!?」
────────弾幕として放つよりも速く鋭い何かが脇腹の肉を抉る、かろうじて防御が間に合い肋骨と肺は無事で済んだが、困惑しながらも八雲紫を見ると前方の離れた場所にいる。弾幕も放った様子も無い、にも関わらず死角からの攻撃に戸惑う。
(傘の石突────────!?)
脇腹付近を見てみると、先程八雲が腰を掛けていた亀裂の様な物から傘の先端が伸びている。それを掴むよりも素早く傘が引っ込み亀裂も閉じる。そして今度は首の後ろから八雲の妖力を感じ咄嗟に首を横に振ると、また石突が頬を掠める。
「グッ…………インチキくせぇな!!!」
悪態をつきながらも想像通り、空間を操る能力に近いと判断した。輝雄はそのまま円を描くように全力疾走し、八雲の死角に回り近づく。
(距離を詰めないと埒が明かねぇ!!! ビビんな! 前に出て攻めろ!)
「────────迫撃戦なら勝ち目があるとでも?」
「────────!!?」
故意に砂利を巻き上げて視界を妨げ、更に左右に緩急をつけて虚実を挟みながら死角から攻めに入る輝雄に対して、八雲紫はその一切を見抜いて迎え撃つ。
飛燕すら追い越す程の速度で詰めながら牽制の刻み打ちを撃つが、軽く受け流される。続く上段の蹴りをワザと外し軸足を入れ替える、素早く態勢を整えて斜め下から海老蹴りで腹部を狙う。
しかし八雲はその牽制も瞬時に見破り木の葉のように軽やかに避け、不気味に酷薄な笑みを浮かべるばかり。輝夫はそれでも退かず大きく右鍵打ちを放つが────────
「────────呆れた、その程度でよく近接戦闘が得意なんて言えるわね」
────────滑り込むように懐に入った紫の掌打がカウンターで入った。女性らしい白手袋の嫋やかな腕から放たれたとは思えない重低音と鈍い衝撃が、輝雄の五臓六腑を引き千切れんばかりにかき乱す。
「カッ………………………………………………………………ごぶッはッッッッ!!!!!」
横隔膜が迫り上がるだけ迫り上がり、息が全く吸えなくなり──────―代わりに大量の血を吐き出す。明らかに内臓が致命的なダメージを負った証左だった。全てが八雲紫に届かない、その吐き出した血すら一滴も。
「ッ…………ラッキーパンチで……! 調子乗んなぁあ"あ"あ"あ"ッッッ!!!!」
「────────!」
────────しかし、それでも輝雄は膝を着かない。
文字通り血反吐を吐きながら絶叫し、紫の腕を全力で掴む。そして白玉楼の敷地全体が揺れる程の踏み込みで────────突き上げる様に全力の中段突きを
踏み込みの強さはそのまま反作用として打撃の威力に変わる、満月時のフランでさえ頭部には決して受けようとせず、腹部であっても効果はあった。
ましてや紅霧異変から遥かに成長した輝雄の一撃は内臓破裂を通り越し、例え妖怪であっても胴体を貫通し即死させ────────
「────────レディーの胸元に手を突っ込むなんてなってないんじゃないかしら?」
「…………………………………………は?」
全身全霊、全力の全霊力を込めた渾身の一撃は
「妖怪の恐ろしさ────────少しは理解して頂けたかしら?」
────────八雲の日傘が上段から振り下ろされ顔面を打ち抜き、周囲の地盤を大きく陥没させ後頭部から地面に埋められた。凄まじい爆砕音と生々しい何かが砕ける音が響き渡る。土煙が晴れた中からは目から光が失われ、頭髪が赤く染まり、力無く仰向けに倒れ、血が地面に滲んでいく。
「逃げ出さずに向かって来たのは流石ね、勘がいいわ…………結界を張っていたから後ろから襲われる無様は晒さず済んだわね。
でも私の能力を誤認したでしょう? “空間を操る能力だろう”と。
────────私の能力は“境界を操る程度の能力”あの
そして今なお自己進化を続ける…………果たしてそれは
隕石が落下したと見間違えそうなクレーターの真ん中で、八雲紫は動かない輝雄に対して朗々と語りかける。勝ち誇っているのか、ただ話したいだけなのか。輝雄は痙攣する事すらなく血に沈んでいる。
「何故、私がわざわざ貴方の土俵で戦ってあげたか分かるかしら?
貴方の能力は恐らく、その反骨精神、精神力がそのまま強さに直結している。能力はあくまでその精神性を投影しているだけ、本質は貴方の心にある。
………………って、解説してあげてももう聞こえてないかしら? なら急ぎましょうか、幽々子にあの桜を咲かせるわけにはいかないから」
紫は空間に裂け目────────スキマを作り出して輝雄をそこに入れようとする、首をわずかに傾げながらスキマを何処に繋げようか考える。
「そうねぇ………………幻想郷の外に捨ててもいいけど、確実性を優先して地底にでも捨てようかしら? 死体好きの妖怪も沢山いるでしょうし」
スキマを地底まで繋げて、輝雄に手を伸ばし、指先が前髪に触れた瞬間────────。
「────────触んなッ!!?」
「ごッ!?!?」
────────反射的に跳び起きた輝雄の頭突きが紫の顔面に炸裂した。
息すらしていなかったはずの人間が、ほんの僅かに触れただけで跳び起き、全く予想していなかった挙動に不意を打たれる。輝雄自身も自分が何をしたのか理解していなかったが、僅かに仰け反った紫の姿を見て────────反射的に顔面を蹴り飛ばして距離を取る。
「~~~ッ………………!? どうなっているのよ貴方? いま息してなかったでしょう…………!?」
「はぁ……! はぁ……! 知るか…………! でも神経質な質でね…………! 寝てるところを知らない奴に近づかれると跳ね起きるんだ…………! 気安く触んな…………!」
「可哀想な人間ね、安らかに眠る事も出来ないなんて………………!」
苛ただし気に紫は毒づく、それを見て輝雄は押し殺すように笑い、紫に指を指す。
「………………格好つけているとこ悪いけどよ、
息も絶え絶えに、頭部から夥しい血を流しながら────────それでも輝雄は獰猛に笑い、血で染まった髪を後ろに撫でつける。圧倒に不利である事を百も承知で、まだその心は全く折れていなかった。
紫は血を指摘され、僅かに驚いた表情をしながらもスキマから出したハンカチで上品に拭き取り、スキマにしまう。そして扇子で口元を隠しながらも怒気の籠った目で睨みつける。
「────────いいでしょう。次は首と言わず全身を細切れにして差し上げますわ」
「────────最初っからそうしとけ! 人間舐めってからそうなんだよババア!」
八雲紫という圧倒的格上、瀕死の重症を負い、追い詰めに追い詰められたからか輝雄の霊力が嘗てない程上昇し、その出力も何倍にも跳ね上がる。八雲紫は目を細め、訝しげにその様子を見つめる。嘗て紅魔館の魔女が見た、異常な成長、生きながらに生まれ変わる様な進化。
「あぁ…………死に掛けてるってのに、良い気分だ。そういえば、俺の能力は未だにちゃんとした命名はしてなかったな」
死と痛みから逃れようとする脳内物質か、それとも能力による大幅な強化によるものか、血に塗れながら心底愉しそうに笑い、パチュリーの考察と自身の中に浮かんだイメージから能力の名称を定める。
「
「そう…………なら抗ってみなさいな、
────────仕切り直され、人間と妖怪の殺し合いが始まる。
主人公の能力出すの遅すぎぃ!!!!!能力の解説とかホントは入れたかったのですが一万字越えそうだったので切りました(作者のパッシブスキル:無計画)。
あと感想で聞かれそうなので、ここに予め書いときますが紫が主人公を殺そうとする理由は
一、話を聞かないし、誘導できなそうな性格の上、人間と妖怪のバランスを崩しそう。
二、そもそも得体が知れない。能力も人間にしては強すぎない?
三、特別生かしておく理由が無いので、「とりあえず」感覚で念の為に殺しておく。
幻想郷が全てを受け入れるというスタンスでも、天子や正邪みたいな例外もいますしね(後に受け入れられるとは言え)。
そもそも所詮外来人の命、そこまで丁重に扱わない、言うて紫も妖怪ですしね。