バーにちょっと色が入ってて驚いた作者です。名前出していいのか分からないので出しませんが、投票入れて下さった方々ありがとうございます!あなた方の想像の数千倍は喜んでます!
さーて、どう書けばいいのやら……。
今回も紫ファンはちょい閲覧注意、でもやっとこの展開まで持っていけた……ここまで約四十話か、先が長い……。
────────無様だなぁ? えぇ? あんだけ大口叩いて、死に物狂いで戦って、泥臭く噛み付いて、限界すら超えたってのに!!
最後の最期はもう人かどうかも分からない炭の塊だ。傑作だなぁ!? オイ!!! 実際見応えあったぞ! 勝てない相手に立ち向かい! あそこまで勢い良く死ねる奴はそういないとも!!! あぁ! 見事! 実に見事! 人間ってのはそうじゃないとな!!!
……………………………………。
………………ん? なんだ? 意識────────いや魂まで疲弊しきっているのか? 夢を見る事すら億劫だと? ハッ、いっそ清々しいな、そこまで力を使い果たしたのか。
まぁ、最後の攻撃は霊力を詰め込み過ぎだな。無意識だったんだろうが。文字通り精魂尽き果てたか。
……………………………………。
良い良い、オレはこれでも寛容だからな。お前の勤勉、研鑽、覚悟、矜持、思想、死闘。全て認めよう、例えその最後があと一歩で届かず、志半ばで
いや正確に言えば、まだギリギリ死んでないのか?
……………………………………。
……………………全く返事しないな、お前…………ずっとオレの独り語りじゃないか。いいさ、わかった。休めよ、疲れてるんだろう?
本当は出しゃばるつもりは無かったんだが────────お前の死闘に心が動かされた。中々無い事だぞ? オレの気が変わるなんて事はな。
────────暫く身体を貸してもらうぞ? 何、無賃乗車なんて
♢
「つくづく、妖怪、反吐が出るな」
────────未だに熱が残り、小さな火が燻る爆心地の中心で、
(嶋か────────
それを見て八雲紫は知性よりも理性よりも、先に直観が真実に辿り着く。爆心地の中心に有ったはずの黒焦げの遺体が無くなり、それと変わる形で
「ん? あー……あっ、喋りづらいと思ったら奥歯も根っこから抜けてんな、ゴリラにでも殴られたか?」
何か違和感に気づいて口の中に指を突っ込んだと思えば────一瞬で無くなった奥歯が
(一瞬で無くなった
先程まで原型すら保っていなかったその肉体は、傷一つ無い。服こそ戻っていないが、紫の弾幕で捨て身の攻撃によって消し飛んだ右肩すら綺麗に生えていた。紅霧異変でも紅魔館の魔女に魔法で傷を治されていたが、あれは飽く迄応急処置的な物。
その場で完全に回復とはいかなかったし、ましてや妖怪と違い人間の欠損した四肢を一から生やすなど言う芸当、幻想郷という非常識が集う場所においてもそう出来る事ではない。当然、輝雄が逆立ちしても行使できるような術ではない。
「あまりそうジロジロと見るな。正直言ってこの力はあまり好きではないんだ、外様というか………………ある種の風評被害の結果から得た副産物みたいな物で、オレの本質には遠いからな」
「…………………………………………そもそも、貴方は誰なのかしら?」
「………………………………分かってはいたが、実際に言われると精神的にクる物があるな……」
輝雄と同じ姿の青年は、その質問にあからさまに肩を落として落ち込む。まるで日常風景から切り取ったかの様な気楽な仕草、とても死闘の後のやり取りとは思えない。その落差に紫の警戒心が一気上がる。それは大妖怪を前にしても油断が許される実力があるという自負の現れ。
「…………貴方は、輝雄のなんなのかしら」
彼我の距離、凡そ二十数メートル。しかし相手が輝雄と同等、もしくはそれ以上ならコンマ数秒かかるかどうかという距離。紫は時間稼ぎに質問を投げかけてみる────────同時に彼女の本心でもあった。
「ん? そうさなぁ……定義にもよるが……お前なんぞに語る気は無い。ふつーにカガオと呼べ、別に
のらりくらり、と質問の答えになっている様でなっていない答えが返ってくる。その態度に思わずこめかみの血管が浮きそうになるが、冷静になり残り少ない妖力を練り上げ、バレないようにスキマの中で準備を整える。
「……そう、正直興味はあるけど私には時間が無いのよ。これからする事を邪魔しないなら見逃してあげてもいいわ」
「────────────────」
その言葉に輝雄────────否、
「クッ────────ハハハハハハハハハッハッハッハッハッハ…………ゲホッゲホッ! 笑い過ぎてちょっと咽た……はぁー腹痛ぇ! マジかよ、お前!? 自分が見逃す側だと!? 傑作だわホント────────」
涙を目尻に浮かべながら腹を抱えてゲラゲラと笑いだす、余りにも傑作だったのか堪らず膝まで叩き出した。誰が、どう見ても、間違い無く八雲紫の事を見下し見縊っている。紫は表情から一切の感情が消え去り、自身の中で何かが静かに切れるの感じた。
そして、当然紫は────────
「────────そう、じゃあ死んで下さる?」
「お?」
「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」
────────能力を行使して扇子を振ると、カガオの左右の視界からギリギリ外れた場所にスキマが現れ、古めかしい電車が出現した。
一車両数十トン、そんな鉄の塊が何両も連なり紫の妖力で強化された物体が両側からカガオを挟む形で最高速度の状態で出現し、そのまま轟音と共にカガオに直撃した。
十重二十重に硝子が砕け散る音が響き、鉄がひしゃげる重低音が周囲一体を振動させる。
質量だけでも普通の妖怪なら、まず即死。しかも紫の妖力が籠っている物体の直撃は、身体能力に優れている鬼や再生力がある吸血鬼であろうと、防御もせず受ける事は許されない。そんなものが、左右から、まともに挟撃した。
「…………直撃したわね、いくら私が弱ってるからって舐めすぎよ。強いからって勝つとは限らない、駆け引き次第で幾らでもやり方は────────」
「────────友人が危篤だからって死に急ぐなよ、もう少し話をしよう。今は気分が良いんだ」
「────────」
「────────言っとくが
妖怪が普通の人間の抵抗なんて歯牙にもかけない様に、ただ単に
「……………………………………………………誰なのよ……貴方は………………!?」
────────輝雄との戦闘で弱きり、何の対策も無い自分では、絶対に勝てないという動かし難い事実。
妖怪を越える身体能力を持つ輝雄以上の、圧倒的なフィジカルの怪物。そんなものが唐突に炭の塊だった輝雄を、神業と称せる術式で蘇生させ、その体を乗っ取り現れた。しかもタイミングも最悪だった。もう西行妖が咲くまで時間が無い。紫は歯嚙みしながらカガオを睨みつける。
「誰でもいいだろう……お前はきっと、頭は良いんだろうが、妖怪としての主観的な価値観から幻想郷の為なら自分を含めて全てを犠牲にする………………そんな奴にとって誰が何かなんて、どうでもいい事だろうし、関係しない事だ
────────何故なら、結局お前の思考は“幻想郷の為なら”と帰結、或いは停止するからだ」
その殺意と憎悪の籠った紫の眼を、冷め切った眼で一蹴する。紫は焦燥感から思考が回らなくなり始めるが、それでも相手のセリフからその正体を探る────────さもなくば、己の身まで危うい。
(“外様”“風評被害”“本質”“カガオ”………………! 駄目、情報が少なすぎる! 何故このタイミングで、どうして嶋上輝雄に、こんな化け物が乗り移っ────────待って………………?
「……………………何か考えているようだが、無駄だぞ? お前はここでオレにその魂まで切り刻まれ燃やし尽くされ妖怪であろうと、蘇るどころか輪廻すら廻らせはしない」
「────────!」
輝雄とは違う、天上天下唯我独尊のドス黒い殺意。それを感じ取った紫が選んだ行動は────────逃走だった。
紫の最優先目的は西行妖の再封印、輝雄の殺害もしくは洗脳は二の次。ここで死ぬようなことが有れば、幽々子は助からない。例えどれだけ屈辱であっても命を捨てる真似は出来ない、後ろに大きく飛び退き着地点にスキマを開き潜り込む。
(先に西行妖を封印する! あのカガオはその後で藍と、事と次第よっては隠岐奈も────)
「────────そんなに急いで何処へ行く?」
「………………………………え」
ブチブチと、まるで処女を無理矢理引き裂く様なグロテクスで痛々しい音がスキマ内で鳴り響く、痛みに耐えかねる様に背後の空間に広がる無数の瞳が涙を浮かべながら不規則に痙攣しながら蠢く。紫は、自身の領域に無理矢理干渉された事に、今度こそ────────完全に思考が止まった。
「下らんな、所詮妖怪。非力な人間をイジメ殺す事しか出来んか?」
そのままスキマに入り、呆けている紫の顔面を鷲掴みに急降下する。本来なら、スキマ内には地面どころか上下左右の感覚すら無いがカガオの勢いに紫は全く逆らえず、そして勝手にスキマが開き────────否、引き裂かれ、白玉楼の敷地に先程と同程度の轟音と共に叩きつけられた。
「ッッッ!? ────────?!」
「おい、足掻くな。此れでも蟻を摘む様に加減してるんだぞ? うっかり潰してしまったらどうする?」
紫が在らん限りの力で腕を引き剥がそうとするが、それ以上の力で顔を掴まれどうにもならない。頭蓋が軋み、このまま握り潰せるというのも嘘では無いと紫は悟った。
「どう転んでもオレの情報が流出する事はないから教えてやろう、“主に理不尽と不条理に抗う程度の能力”…………だったか?
この能力はな、抵抗する物を認識し、“どう抵抗するか”ある程度選べる。
さっきのはスキマとの空間に抵抗するという形で
(………………ありえない)
────────理論上は可能だろう。
人間も妖怪も、それ以外の存在も。生まれながらにその身に刻まれている能力は本人による本人の為だけのもの────────突き詰めれば、その者が出来ると認識して理論とそれに相応しい技量が有れば不可能では無い。
しかしその理論とはまさに“机上の空論”に過ぎない、八雲紫でさえ操れる境界線には限界と上限がある。事実、もしも本当に紫の能力が全能なら西行妖を倒し、
「ぐっ…………! 貴方の目的は何?! 私を殺したいなら、せめて幽々子を先に助けさせ────────」
「────────当然、そんな事は信じない。お前が嘘をついているかどうか判断出来んからな…………まぁ、
────────言葉巧みに騙される…………かも知れない、だから耳を貸さない」
例え、八雲紫と同等の知能を有していなくとも。そもそも話を聞かなければ騙される事は無い。顔を握る手を離し、カガオは空気椅子の様に
足を組み、手で後頭部に持っていきリラックスしながら八雲紫を見下す、隙だらけにも関わらず、紫は何もする気が起きなかった────────それ程の格差があった。
「そもそも西行寺幽々子とお前が友人というのも、余人からしてみれば怪しいものだ…………まだ西行妖を手中に収めるとか、封印に最適な物が他に無かったとかの方が解せる。
────────平気で人をゴミの様に殺せるお前が人間とオトモダチ? 非常食の間違いじゃないのか?」
「────────────────」
興味無さげに、耳を小指でほじりながら八雲紫に言う。“化け物のクセに何をおままごとに興じているのか”と。カガオは紫から目を離し、西行妖の方に向くと桜が咲き始めていた。感慨深いのか、物珍しい気に眺めている。
「あれが噂の…………ま、いいんじゃないか? お嬢の生前の徳、死後の功績を鑑みれば、まず極楽浄土へ逝けるだろう、閻魔天もそこまで無情でも無慈悲でもない…………いつまでも怨霊でいるのも────────!!!!」
────────カガオが言い切るより先に、
「────────貴様に、あの子の何が分かる?」
ただでさえ既に妖力は半分を切っている、例え勝ったとしても、もう紫には西行妖を封じる力は残されていない。それでも────────
「幽々子は!!! 生きたがってた!!! 私だって死なせたくなかった!!! でも私が来た時には自刃した後だった!!!
例え、例え彼女が!!!
────────怒りと悲しみが妖怪の賢者から理性と建前を剥がした。度重なる予想外の出来事と死闘も後押しせたのかも知れないが、感情を剥き出しに叫ぶ。もしも普段の紫の姿を知っている者がいれば驚愕しただろう。その取り乱しように攻撃の手を緩めすらしたかも知れない、だが────────
「………………お前の方こそ、その理由が分からないからこそ、幽々子を救えず、ここで死に────────幻想郷に
────────
片手で、ひしゃげた電車を上空まで殴り飛ばす。やはり当然の様に無傷、精々服がはだけた程度。鍛え抜かれた上半身を晒しながら、片手だけで指を鳴らす。
「…………夢見がちな
「…………いいえ、お気になさらず。お互い様よ、私も時間が有れば化粧直ししたいのだけど…………」
「案ずるな、俺が血化粧してやる。いい女に尽くすのがいい男というものだろう?」
そして、飛蝗が蟷螂に喰われるように、蛙が蛇に喰われるように、兎が虎に喰われるように、
♢
「あぁ…………もう直ぐなのね、もう少しで桜の下で眠る貴方に会える」
時は少し遡り、紫が張った結界の中で輝雄と戦い始めた時の事。
西行妖に“春”が集まり、そしてその勢いが徐々に落ちてきた。それはつまり器が満ちそうになっている証左、賢者すら持て余す妖怪桜の封印の軛が解き放たれそうになっている────────当然、そんな事は幽々子は知らない。
「それにしても…………彼といい、貴方といい。今日はお客様が多いのね」
「────────えぇ、流石に人里の一般教師が出張っているのに、私が炬燵に丸まってちゃ格好がつかないでしょう?」
胴部と袖が切り離された変わった巫女服、寒いからか襟巻を巻いて手袋を付けている。彼女を守る様に周囲を陰陽玉が二つ回り、片手には梵字風に書かれた“博麗”の札、片手には紙垂が付けられた祓串────────妖怪退治、妖魔調伏、囚われぬ巫女、博麗霊夢その人。
「あら? 貴方が紫が言ってた博麗の巫女かしら。会えて嬉しいわ、あと邪魔しないでもらえると嬉しいのだけど…………」
「そういう訳にもいかないのよ。それにやっぱりアイツ首を突っ込んでんのね、輝雄は何処よ? 先に着いたんでしょう?」
「…………………………」
────────事の発端を有体に言うと、西行寺幽々子は退屈していた。
冥界の主として閻魔を裁きを受けて流れてくる幽霊達を受け入れ、そして次の輪廻を見送る。その仕事や役目に飽きていた、蔑ろにするつもりは無い、だが刺激を欲していたのも事実。そんなある日、何となく蔵を漁ってみると西行妖に関する書物を発見した。
長年白玉楼に住んでいたが、亡霊として目覚めた時からただの一度も咲いたところを見た事が無い、冥界で一番大きな桜。咲けばさぞ見応えがあるのにと、ずっと惜しんでいた。
だが遂に全くの偶然とはいえ咲かせる方法を見つけた、だから試した。“退屈を紛らわしたい”大雑把に言うとそれが西行寺幽々子の異変を起こした動機である。桜の下にある遺体は興味があるが、楽しめるのなら別に西行妖に拘る理由は無い。なので幽々子は────────
「────────あぁ、
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」
────────博麗霊夢を、
何を言っているのか、何を言われたのか、霊夢はたっぷり十秒間固まった。
そして、どう考えてもそれ以外に意味が無いと悟った。幽々子が噓ついているという発想には思い至らなかった、何故なら冥界に入った時には感じられていた輝雄の霊力が突然消えたから────────何かあったのかも知れない、予めそう考えていたから。
「そう………………そういう事だったのね………………分かったわ」
(…………あら? 意外に冷静そう────────!?)
幽々子がそう思ったのも束の間、尋常では無い殺意と憤怒がブレンドされた霊力が吹き荒れる。周囲の“春”と桜の花弁は悉く吹き飛ばされる、霊力特有の透き通る青い波動はやや黒が混じり、霊夢の表情を隠す────────
「────────アンタは退治じゃなく、
────────しかし、その瞳から眼光が失われている事だけは幽々子にも見えた。夜よりも深く、濃く、黒い瞳が真っ直ぐ幽々子を見つめている。
「あらあら…………これは、要らない発破かけちゃった?」
いくら幽々子でも博麗の巫女を殺す事は出来ない、実力だけでなく幻想郷を揺るがす事になるからだ。さりとて手加減出来る様な相手ではない………………後悔するも、後の祭り────────しかし開花するまで時間を稼ぐだけなら、やりようはいくらでもある。
「どいつも、こいつも…………スペルカードルールが何の為の物だと思ってるのよ………………!」
「………………純粋ね、無垢とさえ言っていいわ。貴方は幻想郷という世界の残酷さを理解してないのね」
────────無数の針と札が殺到する。
霊夢がなんでキレてんのかは、多分異変が終わった後と次の異変で回収します。
あと妖夢は紫にスキマで冥界の端に送られました、只今全力で戻ってます。
そして作者にリョナ趣味はありません、友人は信じてくれなかったけど。