早く次の異変の話にいきたいよ!日常回とかも描きたいよ!
そんな作者の愚痴でした。多分あと二、三話くらい。
────────西行妖、かつて歌聖が詩を詠み。死に場所に選んだ桜。
西行妖は昔、ただ大きいだけの桜に過ぎなかった。しかし有名な歌聖がその桜に見惚れた事、亡骸が桜の下に葬られた事────────そしてそれに憧れ、あやかろうとした人々が同じ様に西行妖の下で死んでいった。
少なくとも、間違いなく最初は人々の意志で行われた行動だった。歌聖の死に様に死に方に美しさだとか、個々人によって違うだろうが琴線に触れる何かを見い出して、死んでいった。
────────いつしか、西行妖に
あの桜には歌聖の意志が宿り、人々を死に誘っている。はたまた、人々の死により生じた怨念や呪怨により西行妖が妖怪化した────────鶏が先か卵が先か…………当事を生きていた者以外には知りようが無い。
確実な事は、あの桜は生きとし生けるもの全てを、死に誘うという事。この桜を現世に置いておけば、三日と経たず死体の山が出来るだろう、賢者の厚意と富士見の娘の決意から冥界に移す。
────────何人もあの桜を咲かせてはならない。
「────────的な事が書かれていました」
「んなもん解くんじゃねぇよ!!!!!!!!」
西行妖に走り向かいながら、蔵と幽々子の私室から見つかった新しい書物に書かれていた記述を聞いて輝雄は全力でブチギレながら叫んだ。西行妖の来歴と由来、そして元は現世にあったという事、誰が書いたものか気になるが今は捨て置く。
「厄ネタも厄ネタじゃねぇか!!! マジでなんで封印解こうとした!!!?」
「こ、これは先程見つけたものです!! …………確かにお爺様もあの桜は咲かせてはならないと言ってましたが!!」
「じゃあ解くなよ!!! お爺様キレ散らかしてんぞ!!!! あと禿げ散らかしてんぞ!!!」
「解いちゃいけない理由は言ってくれなかったんです!! 気にもなるでしょう!? あとお爺様は禿げてません! フサフサでした!!!」
「クソ!! 主従と爺孫揃って
「…………………………お浸しにすれば良いんですか?」
「────────女だからって殴らないと思うなよ?」
隣を並走する妖夢に向けて怒りを隠さず静かにキレる輝雄。妖夢は別にふざけているわけでは無い、ただ“青菜野菜にそういう効果があるのかな? ”と思っただけだ。だが状況から輝雄にそれを笑う余裕は無かった。
(富士見の娘が誰の事かわからないが………………賢者って、まさか八雲紫のことか!? 確かにあの
────────冗談では無い。勝ち負けどころか勝負にすらならないかも知れないと輝雄は冷や汗が滲む。
内心毒づきながら霊夢の元へ走り続ける、行ったところで何が出来ると確信があるわけでは無い。ただ霊夢は見殺しには出来ないだけだった…………らしくない事だと自嘲しながら、人里に危害が及ぶかも知れないからと、誰に向けるわけでもない言い訳をする。
「お前ら無事に事が終わったらマジで一発殴らせろ…………!」
「幽々子様の分は私が引き受けます、代わりに一発と言わず百発殴っても構いません」
「…………」
────────輝雄は、何も答えなかった。
その言葉を信じていないのもあるが、何よりも信じていないのは無事に終わるという事。
(自惚れちゃいない…………俺は多分、八雲に負けた。何でか生きているが恐らく八雲紫にとっても
咲夜と戦った時よりも、フランと戦った時よりも、圧倒的な実力差があった。能力が効かないアドバンテージでも埋まらない程の。輝雄は恐らく自分が生きている事がただの偶然であり、八雲紫の油断を突けただけと考えていた。
「────────見えました! 西行妖と博麗の巫女です!」
(さて、実際問題どうする? 霊夢だけ連れて逃げれるか? だが、いや、しかし────────)
霊夢の事を助けるだけなら一緒に逃げればいい、しかし霊夢が戦っているという事は幻想郷に対して危害が及ぶと考えたからだろう。自分の言う事に従ってくれるとは限らない。そして何故か、妖夢を見捨てる事への
「────────鉄火場で悩むもんじゃねぇな、やれるだけやるしかねぇ」
遠くから見ても異常な大きさ、遠くから感じても異様な妖力、そして────────近づいて初めて分かる異質な空気が漂っている。まるで極限まで飢えた際に湧き上がってくる希死念慮や、死にたくなる程の絶望感、輝雄にはどちらも身に覚えがある感覚だった。
「…………なるほど、死に誘うってのはマジみたいだな」
「予想はしてましたが、平気そうですね…………」
「まぁな……お前もか?」
「はい、どうやら純粋な生者にしか効果が無いみたいですね。私は半分霊ですので」
記述が確かなら生きている者を自死させようとする筈だが、輝雄は恐らく能力が無効化している。そして妖夢は半分幽霊という種族的特性から西行妖の能力から逃れているか耐性がある様だった。
一先ず戦いの土俵に上がる資格は二人とも有る事に安堵し、輝雄は霊夢を探す。周囲には西行妖の妖気が漂い感知能力が上手く働かない────────しかし西行妖の反対側から見慣れた光が見えた。
「────────! あれは夢想封印か! 合流するぞ!」
「はい────────って待ってください! 近づき過ぎたら弾幕が飛んで来ますよ!!」
返事を待たずに飛翔し、反対側にいるであろう霊夢と合流しに向かう。直径がどれほどかも分からない桜の大木は飛んで見てみると尚の事、巨大だった。あまりの巨大さから切る事は現実的では無いと輝雄は分析する。
(それに膨大な妖力から頭抜けた耐久性や、植物なら再生力が考えられる………………と、なるとだ。燃やすのが正解か?)
完全に焼却することが目的なら殺さない様に加減する必要は無い。問題は全霊力を注いでも足りないかも知れないという事。的が大きく根を生やしている以上避けられる事は無いだろうが、まだ西行妖の全容は明らかになっていない。
「────────霊夢! どうだ西行妖と戦った感じは!?」
「────────は!? 輝雄!? 生きてるの!?」
「何で死んだ事になって…………いや後にしよう。手を貸す、お前の所感を教えてくれ」
────────何故か、死んだ事にされていた。
霊夢はまるで幽霊でも見たかの様な驚いた顔をしていたが、西行妖との戦闘中であった為、即座に意識を切り替える。二人で桜から距離をとり、遅れて妖夢も合流した。
「手応えが無さ過ぎる…………こっちの弾幕を上回る圧倒的な出力に耐久性、それでも何度か陰陽玉をぶつけたけどウンともスンとも言わない…………針に至っては無意味ね、樹皮硬すぎ」
「と、なると打撃も効果薄いか……? なんか俺の戦う奴悉くそんなんばっかだな」
「私の刀でもあの大きさは…………流石に無理ですね」
霊夢の攻撃は陰陽玉が唯一効果があるようだが、いかんせん相手は植物。効き目がイマイチ不明であった。輝雄の白兵戦能力は近づけば大量の弾幕を浴びる事になり、自殺行為になる。これは妖夢も同じ事であり西行妖を斬るには刃渡りが足りなさ過ぎた、霊力で補強しても同じことだろう。
「このままシバキ続けても望み薄ね…………ちょっと妖夢、輝雄を連れて来たのはありがたいけど再封印の方法とかは? なんか無いの?」
「いえ…………残念ながらそのような記述はありませんでした、厳密に言えば
「はぁ!? 何よそれ! 誰がそんな事を────────!」
その言葉を遮る様に、余所見した霊夢目掛けて西行妖の枝が矢の如く真っ直ぐ狙い伸びた────────が、
「────────危ねぇな」
即座に輝雄が割り込み拳で撃ち落とした。無造作に振るった拳は当然の様に空気を穿ち音を置き去りにした、鋼の鞭がしなり弾ける様な音が鋭く響いた。しかし西行妖の枝は千切れる事なくそのまま戻っていく。
「……ありがと」
「いい、このぐらい」
油断したためバツが悪いのか、ぶっきらぼうな感謝だったが特に輝雄は気にする事も無く、今の攻撃から西行妖について考察する。西行妖は警戒しているのか、自分の周囲に桜の花弁と弾幕の蝶を展開したまま沈黙していた。
(今の攻撃……霊夢を狙ったのは偶然か? それとも学習して霊夢から仕留めに掛かったのか……桜でも妖怪なら知性があると見るべきか。
しかもさっきの枝の感触は植物というより、金属のワイヤーに近いな…………末端でコレかよ、やっぱ打撃と斬撃は期待しない方がいいな)
ほんの僅かに、輝雄の手の甲の皮が捲れていた。この時点で西行妖の威力と硬度は最低でも妖夢の真剣以上と考え、殴って勝つという選択は無くなった。輝雄の決定打になる手札は焔の弾幕だけ、だが三分咲きの現在でも質量も西行妖の妖力も圧倒的過ぎる。
「お前らなんか策とかあるか? 無いなら一つ提案がある」
「私は特に無いわね。妖夢、アンタは?」
「…………斬り続けたらなんとか────────」
「よし、無いんだな。話を続けるぞ」
最後まで聞かずに妖夢の提案をぶった切り、輝雄は自身の焔で焼く事を二人に提案した。妖夢は少し渋る表情をしていたが、霊夢は神妙な面持ちで輝雄の考えを肯定した。
「…………アリね。通常の弾幕や打撃は妖力の強化と出力で防げるけど、炎という熱の性質までは完全には防ぎ切れないはず…………霊力や術によるものなら尚の事」
「待って下さい! 中には幽々子様がいるんですよ!? 西行妖ごと焼き殺す気ですか!?」
「賭けになるが……西行妖の耐久性が幽々子まで熱を伝えない事に期待するしかない。
問題は西行妖に知性があるとしたら、対応される前に仕留める…………つまり一撃で決めるのが望ましい」
「しかし幽々子様が────────!」
霊夢は輝雄の策に乗る事を決めたが、尚も妖夢は食い下がる。それに対して輝雄が胸ぐらを掴み勢いよく額を突き合わせ黙らせる。輝雄の突然の行動に思わず妖夢は息を呑む。
「いいか聞け! 妖夢!
あの桜は俺達だけじゃ本来どうにもならない程の存在だ! 幽々子を助けるどころか、まず勝てるかすら怪しい! 全ては西行妖を無力化してからだ! お前が駄々を捏ねればどんどん手が付けられなくなる!!」
「…………!」
時間が経つ程、封印が解けているのか妖力が増していき桜の怪しい輝きも増している。現在は三人とも何とも無いが、西行妖の妖力を考えればいずれ自殺衝動に支配されてもおかしくなかった。
特に一番危ういのが霊夢、既に体力と霊力をかなり消耗していた。能力かはたまた何らかの術かは不明だが、自殺衝動が湧かなくとも永遠無限に戦う事は出来ない。それは全員同じだが霊夢が恐らく一番早くガス欠を起こす。
「まずは死に物狂いで勝つ! 話はそれからだ! いいな!?」
「……わかりました」
「よし……なら二人は揺動で西行妖の気を引いてくれ、アレに目や耳があるとは思えないが、妖力が少しでも割かれてる間に可能な限り至近距離から焔をぶち込んでみる」
作戦が決まり、三者三様に距離をとって構える。その中で輝雄だけが一番遠い位置から全体を俯瞰する。霊夢と妖夢が可能な限り西行妖の力を削り、機が来るのを待つ。
(………………二人が隙を作る、俺が討つ、単純な役割分担だ…………)
妖夢が二振りの日本刀を抜いて突貫し、霊夢は札と陰陽玉で援護に回る。西行妖を弾幕には人が通り抜けられるような隙間は無い、霊夢の援護によって辛うじて妖夢は西行妖まで近づく。当然のことだが妖夢は輝雄のとの戦いでの負傷がある、霊夢も既に戦い続けている事から万全ではない────────しかし、二人には迷いは無い。それはある種の信頼。輝雄ならやり遂げるという信頼が無謀にも近い特攻をさせた。
「………………………………」
────────輝雄の胸中に湧く、身に覚えがない感覚。
しかし、今はそれが何なのか考えるのは辞めた。自分の役割を疎かにしそうだったからだ。目を閉じ、精神の奥深くに満ち満ちている水────自身の霊力。
紅魔館で紅美鈴に覚醒させてもらって以来、何となく使っていたものを、一滴残らず絞り出すように、丁寧に丹念に吸い上げ両の掌に集める。
仏に祈る所作に似た構えの間には赤い焔が出来上がる、朱色の自然な炎よりも鋭く、
(────────足りない)
根拠のない確信、そして今まで以上にその力の核心に迫る。八雲紫との戦いで輝雄は自身の能力に名を与え、
今までは霊力を身体で練り、流す事で勝手に発動していただけ。その効果は身体の
(思い出せ、記憶が無くとも体は覚えている。あの死に近づいた際に感じた力の核心を────────!)
霊力は徐々に焔に注がれ、火力に変換していく。『主に理不尽や不条理に抵抗する程度の能力』、それが自身が定義した能力。ならば、今輝雄が抵抗するものはなんなのか?
(決まってる……! このクソ不条理で理不尽な現実だ! 西行妖……元を辿ればこの枯れ木が全ての原因だと言うなら!
────────焼き尽くせ、その穢れきった御霊の一片に至るまで!!!)
迫り来る試練が大きければ大きい程、その輝きは増してゆく。何故ならその光は日輪では無く────────逆境にて輝くものなのだから。
(────────いつでもいけるぞ、霊夢)
(────────あんまり待たせんじゃないわよ)
輝雄の霊力と最大出力が安定した状態で待機する。無言の合図を感じ取った霊夢は妖夢に事前に伝えていた合図として、陰陽玉を引っ込める。妖夢は陰陽玉の護りが無くなった事により、西行妖から距離を取る。
(分かってはいましたが硬い!! 間違いなく西行妖は既に大妖怪の域に達している! これ以上妖力が上がろうものなら────────)
自身を捉えようとしてくる枝を楼観剣で斬り捨てる。その一本一本が異常な硬度を秘めている為片手では斬れない程だったが何とか距離を取り、西行妖の有効射程外に出る。
「枯れ木も山の賑わいと言うけれど……アンタはちょっと元気良すぎるわね!」
陰陽玉が退魔の光を纏う、霊夢の霊力を吸い上げてその意志の通りに動き、真っ直ぐに西行妖の幹をへし折りにかかる。それに対してその場から動く事は叶わない妖樹は枝を束ね、迎え撃つ。
されど神が造った博麗神社に伝わる祭具は、西行妖をもってしても砕けない。しなやかに動けどやはり枯れ木なのか小気味よい音を立てながら勢いよく折れていき、陰陽玉が大きく西行妖の幹を抉った。
「駄目押しよ」
「夢符『「二重結界」』」
西行妖の攻勢が落ちる瞬間を見逃す程、霊夢は甘く無かった。大量に砕けた枝、大きく抉れた幹、それら全てを消滅させるつもりで博麗の札をばら撒く、巨大な西行妖の周りに帯状に札が舞い────────連鎖的に降り注ぐ。
「────────輝雄!!!」
「────────急かすな!」
枯れた枝や幹が連鎖的に砕けていく中、勢いよく輝雄が駆け抜ける。本来なら身体能力を強化すれば亜音速すら達するが、全ての霊力を焔に使ったために精々が時速数百程度の速度────────だが霊夢の術なら、それで充分過ぎる時間を稼げる。
(────────いける! 今の妖力なら確実に祓える!)
(────────いくら西行妖でもあの弾幕の中から反撃は無理だ!)
(────────例え反撃されようが! くれてやるよ! 腕や脚の一、二本!!!)
霊夢は確信する、輝雄の炎が今の西行妖にトドメをさせるだけの威力を秘めている事を。
妖夢は時間稼ぎとはいえ直接斬り合った事から、弾幕の嵐の中では何も出来ない事を理解した。
輝雄には覚悟があった。自分の命すら引き換えに二人の努力を報いる覚悟が、死を厭わない決意すらあった。
────────
「────────幽々子様!?!?!?」
「────────────────は?」
弾幕の煙が風に流され、割れた樹皮からまろび出たのは────────蔦や根で雁字搦めに拘束された西行寺幽々子。
────────八雲紫すら知らない事だが、西行妖という妖怪はその生誕法から人間という生き物の事を理解していた。
血も涙も流れていない合理性だけで生きている
────────
無論、西行妖が実際にそう思考したわけでは無い。そもそも植物であるため脳が存在しない、だが、確実に理解した上で大妖怪は人を盾にした。
────────そこにあるのは悪意では無く、純粋な生存本能。故に最速で最適解を導き出した。
「────────────────」
たった一秒、されど一秒。自分の命すら省みなかったはずの輝雄に隙が生じた────────碌に霊力が無いまま宙空に跳んだ輝雄を、見逃す程西行妖は甘くはなかった。
「輝雄!! 逃げ────────」
────────霊夢の叫びも
報連相
しっかりしろや
ドブカスが
かがお
ごめんなさい。なんか思いついただけで、なんでもないです(笑)。