幻想禍津星   作:七黒八白

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巻いていくよー、何故ならダラダラ続けようとしたら永遠に終わらないからね!


第六十六話 “何の為に?”

 

 

 

 むーかし、むかし、今からもう百年よりもずっと昔の話。

 

 語るには長く、思うには短く、人には嬉しく、鬼には虚しいお話し。

 

 神秘不可思議が満ちていた時代、人は妖と戦う事が常であった。

 

 退治屋や都の陰陽師の手が回らない時は、民間でも知恵や工夫で妖怪をなんとかしなくてはならない────────そんな時代。

 

 “あの頃は良かった”なんて言う程、耄碌(もうろく)しちゃあいないけれど、あの時代が楽しくて、今はちょっと退屈なのは事実だった。

 

 

 

 ────────鬼は、時に人を攫う。

 

 

 

 理由は鬼それぞれだろう。単純に喰いたい奴もいただろうし、ただ一緒に酒を呑みたかった奴もいたし、家事とか雑事を任せた奴もいたし…………稀ではあったけど惚れた奴もいたそうだ。

 

 まぁ大体の場合、産まれながらに髪と歯が生え揃った赤子を気味悪がって碌な目に遭わないが…………少なくとも、()()()はその例に漏れなかったらしい。

 

 

 

 ────────私は、ただ闘いたかった。

 

 

 

 ただ強い奴と戦うなら友とやれば良い、呪術的な技量なら私が上かも知れないが、腕力ならアイツの方が強いかも知れない。本気で闘えばどっちか死ぬ、それくらい均衡した力関係だ。

 

 

 

 ────────でも違う、そうじゃない、そうじゃないのだ。

 

 

 

 きっとアイツでも、そう言うだろう。()()()()()()()()()()()

 

 死に物狂いでこちらの首を刎ねにくる、種としての位置など知るかと言わんばかりの────────あの勢い、あれが良いのだ、あれが良かったのだ。私達は、妖怪である以上に、()()()()

 

 

 

 この角に誓って、私達は別に弱い者イジメがしたいわけでは無い。

 

 

 

 ただ美味い酒を呑んで、ただ騒ぎながら宴を楽しんで、ただ死闘の中で果てればそれで良かった────────でも、人はきっとそうじゃ無かったんだろう。

 

 知っていた。知っていた────────つもりだった。

 

 妖怪と違って人間には必ず他者との繋がりがある、それは血に依る親子だとか家族だったり、友人や恋人や師弟とか沢山あるんだろう。一々数えるのもアホらしいくなる位、沢山あるんだろう。

 

 

 

 だから、人間は策を用いて毒を仕込んで数を揃えて嘘で騙して寝込みを襲って首を刎ねに来る。

 

 

 

 策は良い、闘いの最中のハッタリや引っ掛けは心躍る。

 

 毒も良い、それすら超えて鬼は暴虐の限りを尽くそう。

 

 数も良い、首を狙う猛者が沢山いるのは(さなが)ら夢心地だ。

 

 

 

 ────────でも嘘は頂けない。

 

 

 

 あぁ、死にたくなかったなんて臆した事は言わないし、思いもしなかったけれど────────ガッカリした、騙し討ちで首を刎ねられたあの時、そのまま封印され、目醒めた時、神秘不可思議の時代が既に風化した事実に。

 

 私は地底に封印という形で堕とされたけど、アイツや他の鬼は自ら降りたという。気持ちは分かる、あれが人の鬼に対する答えなのだろう、それこそ()()()()()()。戯れでは無い、真剣な命の遣り取りの解。

 

 

 

 ならば……もう……鬼は人に期待は出来ないのだろう。

 

 

 

 私達の首を力尽くで捻じ切る猛者など現れるまい、そして既にその偉業に國を挙げて褒賞を出す時代でも無い。

 最後まで、私達は負け知らず無法者だった。御伽話の華々しい英雄など、終ぞ現れなかった。

 

 その事実に、友と共に強さに淡い矜持を覚え、それ以上に深い寂寥を肴に酒を煽った。好きな筈の酒が、非道く味が薄い様に感じた。

 

 やり切れぬ無念、そんな風に徒然なるままに時を過ごしていたら気まぐれに地底から出て、久しぶりに幻想郷が少し騒がしくなっていた。

 

 紅い霧が出て、雪の季節が永く続いて────────いつも中心には、見慣れない服を着た人間がいた。

 

 

 

 博麗の巫女じゃない、白黒の魔法使いじゃない、悪魔のメイド(女中)じゃない────────赤銅色の瞳の男。

 

 

 

『愚かだと笑いたければ笑えばいい。俺はお前みたいに勝算の有無で態度を変えたり、覚悟を出したり引っ込めたりしない。不器用なんでね』

 

 

 

 ────何かが始まる、その男を見て、漠然とそんな予感がした。

 

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

 

「ただいま、小傘ー、団子買って来たぞ」

 

 桃色髪の女性との話し合いは夕方まで続き、家路に着く頃には(ひぐらし)の物悲しげな鳴き声が響いていた。鍵が掛かっていない戸をガラリと開けて薄暗い廊下を歩きながら、同居人を呼ぶ。今夜は宴会に参加するならば夕餉の支度も不要だろうと、好物の団子をやろうと居間に向かう。

 

『多分、()()は別に誰かに害したい訳じゃないと思う。

 人里に手を出しちゃいけない決まりを破るとは思えないし、人に対してそこまでして闘いを期待しているとは考えらない。

 ただ宴会を起こして、満足すれば自然とこの異変は終息するわ』

 

 真剣な表情で、だがリスの様に団子を頬張りながら彼女は言った。輝雄はその“彼女”の名前は敢えて聞かなかった。異変を起こした理由が流血沙汰にはならないと知ったからだ、この時点で既に輝雄には異変に飛び込む理由は無くなり、何なら霊夢にも伝える事も考えていた。

 

 だが────────

 

『でも…………ちょっと引っかかる事もあるのよ』

 

『…………引っかかる事? (別に食い終わってからでいいのに…………)』

 

『宴会を期待して今回の異変を起こした割には、彼女の姿が何処にも見当たらない。私の印象だと騒がしい場所の中心にいる感じなのだけど…………そこがちょっと少し予想とズレるのよね』

 

『…………人物像の、ズレ』

 

 結局、彼女にもその知人がいつもとは少し違う様相の理由は分からなかった。だがしかし、人里に危害が出る事は無い事だけは断言して妖怪の山方向へと去って行った。

 

 輝雄は霊夢の所へ行き、その事を伝えようかと考えたが既に日が暮れはじめる時間だったし、霊夢も異変解決に乗り気では無さそうだった事を思い出し、後日にする事にした。

 

「…………おーい? 小傘? 何処だ?」

 

 三時のオヤツにしては遅い時間帯だが、どうせ食べ歩きするのだから団子くらい平気だろうと居間に入るが、そこには水色髪の付喪神は居なかった。いつもなら大体読書をしているか、家事をしている筈だがどれだけ耳を澄ましても全く気配を感じない。

 

「アイツ何処いった…………? もう宴会に? いやでも鍵掛かってなかったし…………?」

 

 彼女らしく無い不用心さに訝しみ、何処かに隠れて脅かそうとしているのかと半ば呆れ半ば仕方ないと思いながらちゃぶ台に団子の包みを置こうとする時に、それを見つけた。

 

「あ? 書き置き?」

 

 飛ばない様に普段は煎餅などを入れているお茶請けの皿、その下に挟まれていた紙。陰に隠れていた為に見えなかったが、それを見つけた輝雄はやはり宴会に一足先に出掛けたのかと思い、浮かれて防犯意識が低くなったな、と溜め息を吐きながら紙を捲ると────────

 

 

 

 ────────付喪神は預かった、夜明けまでに来い。さもなくば喰らう。

 

 

 

「…………………………………………………………は?」

 

 彼の思考が止まった。その殴り書きの汚い字を見た瞬間、それは脳内で音読されたが意味を解するのにたっぷり一分は使っただろう。それほどの衝撃だった。見た事が無い筆跡だった事もある、定規などで筆跡隠しされていないのも真実味を感じさせた。

 

(なんで────────小傘が? 誰が────────何の為に? 来い────────何処に? 夜明け────────喰らう!!!)

 

 未だに収まらない衝撃はそのまま心臓の早鐘と変わる、しかし輝雄はそれが収まるまで待つ気は無かった。荷物を投げる様にその場に捨て置き、小傘の手入れが行き届いた太刀────残華を刃文を一瞥してから腰に佩く。日は既に山の向こう側に隠れていた。

 

「────────クソがッ!!! 名前聞いときゃ良かったッ!!!!」

 

 歯噛みし、悔やみながら言っても後の祭り。桃色髪の女性が妖怪の山に住んでいるなら今から探すのは現実的では無い、かと言って他に宛があるわけでも無い────────それでも輝雄は太刀を抑えながら、走り出す。

 

(────────落ち着け馬鹿か俺は!!! 状況からして異変の首謀者が小傘を攫った!!! この際何の為かはどうでも良い!! それより何処で!? 何処に居るってんだ!!? 俺が狙いなら場所を書いとけよ!!!)

 

 周囲の者達の視線が集まる事も気にせず輝雄は一足で屋根に飛び乗る、猫よりも軽やかに、風より疾く駆け抜けて里全体を見回る。されども小傘も異変の首謀者らしき者は見当たらない。

 

「────────クソ!!! 気配さえ……妖気さえ辿れれば────────待てよ……?」

 

 輝雄は鋭敏に霊気や妖気を感じ取れる。今までは里全体に薄っすらと妖気が漂っていた、故に諸悪の根源が分からなかった。何処かから漏出しているなら僅かに濃淡の偏りが生じる筈だからだ────────しかし、今は妖気自体が無い。

 

(里全体に術を掛けていたのなら…………何でこのタイミングで消した? 小傘を攫い、俺を誘き寄せるのに必要な事だったのか? それとも────────)

 

 ────────さながら気体の様に、()()()()()()()()()()()()()()()()()。それは吸血鬼が霧になる様に、何処かにいたのでは無く、異変の首謀者は里の()()()()()()()

 

「────────だとすれば今は小傘を逃さない為、実体に戻ってる筈…………同じ妖気を探せばいけるか……?」

 

 夜明けまでまだまだ時間はある、全速で幻想郷を隈なく飛び続け同じ気配の持ち主、或いは小傘の妖気を見つければいい。現実的な可能性を見つけた輝雄は、直ぐに飛び立ち────────

 

 

 

「何処に行くのかしら? 折角の宴会でしょ? 楽しめば良いじゃない」

 

「…………霊夢」

 

 

 

 ────────遮る様に、死角から霊夢が輝雄の進行方向に割り込んだ。

 

 

 

「────────退いてくれ」

 

「────────なんで?」

 

「────────小傘が攫われた、このままだと喰い殺される」

 

「────────へぇ、だから?」

 

「────────助けに行くんだよ!! 退けよ!!?」

 

 輝雄は激昂する、感情を交えず能面の如く淡々としている霊夢は、それでも無感情に、無関心に、まるで伽藍堂の様な黒い瞳に光を宿さず輝雄に問いかける。淡々と、真面に取り合う気など無いと。

 

「────────()()()?」

 

「お前……! いい加減に────────!」

 

「────────百歩譲って、里の人が攫われたならまだ分かるわよ? 

 でも小傘って、あの付喪神でしょ? 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「それは…………!」

 

 そんな(矛盾)には気付いていた、気付いて彼は棚上げしていた。しかし霊夢は知ってか知らずか、その治り切っていない輝雄の傷口を広げる様に抉り込む。()()()()()()()()()()()()と。

 

「────────ねぇ、輝雄? 

 貴方は…………()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 なんで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………? その妖怪が、()()()()()()()()()()()()()?」

 

「小傘は……! 小傘はッ!! そんな奴じゃ────────!」

 

「────────分かんないでしょう!? そんな事!? 

 あんな雑魚でも簡単に数百年は生きるのよ!? アンタは精々生きれて八十年くらいでしょうが!? 

 それにアイツが何してるか逐一監視してるわけ!?」

 

「だったら…………だったら!! お前はどうなんだよ!?」

 

 霊夢の叫びに動揺を隠せず、輝雄も冷静を失ってしまう。抉られ広げられた傷口からは流血の様に、堰を切った様に思いの丈がぶちまけられる。

 

「お前が人間の味方するってんなら!!! 妖怪を助けんなって言うなら!!! 

 幻想郷なんざ今すぐに壊しちまえよ!! 何で異変解決なんか馬鹿正直にやってんだよ!? 

 何でこの世界が人の屍の上に成り立ってんのにそれを許容してんだよ!? 

 陰摩羅鬼の件があるんだ! 知らないとも分からないとも言わせねぇぞ!? 

 ────お前の方がよっぽど矛盾してんだろうが!!?」

 

「それは……っ! そんな事はアンタには関係ないでしょ!!」

 

「あ゛ぁ゛!!? じゃあ俺が誰を助けようが殺そうがお前には関係ねぇだろうが!?」

 

「あるわよ!! 私は博麗の巫女なんだから異変解決は私の仕事よ!! 里の人間を護るのも私の仕事よ!!」

 

「だから!!! 里を護りたいんだったら!!! 幻想郷を────!!! 

()()()()!!! ()()()()!!! それなら霊…………!!!」

 

 “霊郁は死なずに済んだ”と言いかけて止まる。

 

 ────────そんな事を言うのなら、彼女を目の前で死なせた自分は何なのか。

 

 妖怪にも原因の一端はある、幻想郷が無ければそもそも博麗の業を負う事も無かった。

 

 だがしかし、霊郁を救いたいと願ったのは嶋上輝雄自身であるのなら、それを叶えられなかったのも彼自身の責任である。

 どうして棚に上げて霊夢を責められるのか────────親を失い、十年間独りで生きてきた少女、側に居てやる事さえ出来なかった男が。

 

「…………………………っ!」

 

「…………もういいわよ、どうせ説き伏せられるとは思っちゃいなかったし

 ────────暫く動けない様にしてあげるわ」

 

 日が完全に沈み、輝雄よりも上空に陣取る霊夢の姿が闇に包まれる────────ただ、黒曜石の様な瞳だけが鋭く細まり、彼を射貫いていた。

 

神技『八方鬼縛陣』!!!」

 

(スペカの術式!!! 馬鹿正直に発生まで待たない! 発動前に────!)

 

 霊夢が博麗の梵字が書かれた札を掲げて、高らかに宣言する。瞬間、術式発動を阻止しようと反射的に輝雄は彼女に向かって全速で飛んで向かったが────────攻撃は輝雄の足元から発生した。

 

「────────でしょうね!! 魔理沙から聞いているわよ!」

 

「────────!!?」

 

 霊夢の周囲に眩い光が発生し結界が展開される、霊夢に近づいた輝雄は寧ろ攻撃範囲に飛び込む形になり圧倒的な霊力の本流に飲み込まれる。自身の悪手を悟り、即座に範囲外に逃げ出そうとするが結界に阻まれて耐えるしか出来ない────そして霊夢が更に駄目押しにスペルカードを宣言する。

 

神霊『夢想封印』!!!」

 

 空中で飛ばされない様にその場に留まり続ける輝雄に対して色とりどりの光弾が殺到する、上下左右から鈍器で殴られるような重撃が連鎖的に身動きの取れない彼にぶち当たるが────────

 

(………………まともに入った。大妖怪でも、これ喰らったら二、三日は動けないけど)

 

「────────痛ってぇな!!!」

 

「ハイハイ元気一杯ね!!! (まぁ退魔の術だし、人間相手じゃ効果薄いわね……それでも全く堪えてないのはどうなのよ!!!)」

 

 ────────弾幕の衝撃によって生じた粉塵からは、衣服以外とくに負傷の無い輝雄が突貫してくる。霊力で強化された視力でさえ残像しか映らず、夜になり光量が限られた環境で霊夢の周囲を緩急をつけて超速で飛び回る。

 

(速い…………! もうこれは人間の速度じゃない! 吸血鬼────いや、あの文屋にすら────!)

 

 姿が出ては消え、姿が出ては消え、まるで分身体が出来ているかのような速度で霊夢の意識を攪乱する。その内の一体が霊夢に迫る────と見せかけ寸前で消えて背後から輝雄が彼女の首に腕を回す。

 

「安心しろ!! 絞め落とすだけだ!! 夜明けまで大人しく寝てろ!!!」

 

 輝雄はそのまま力を込めて、一時的に呼吸を止めて意識を落としにかかる。霊夢の霊力の総量と出力なら輝雄の腕力で殴っても致命傷にはなり辛いだろうが、それでも彼は霊夢に手を挙げるのはどうしても忌避感が拭えなかった────────だが、その程度で倒せる霊夢では無い。

 

「────────夜明け? 成程、それがアンタにとってのタイムリミットなわけ?」

 

(────────声が、背後から!?)

 

 しかし、完全に締め技が極まっていた筈の霊夢の声が背後から聞こえてくる。僅かにそちらに意識が逸れた、瞬間に組み付いていた霊夢は大量の博麗の札に爆ぜて変わり、輝雄の体に纏わりつき動きを止める。

 

「ぐっ!!? んなもん焼き尽くして────────」

 

「────────アンタが夜明けまで寝てなさい」

 

 輝雄が霊力を焔に変換し札を焼き払う────────よりも速く、早く、何よりも疾く、霊夢は珍しくお祓い棒を上空に投げ捨て徒手空拳となる。尋常では無い霊力が漲り、身体能力が向上する。

 

()()()────────!?)

 

 武器の放棄という分かり易い弱体化────────にも関わらず、輝雄はその姿を見た瞬間、霊夢に()()()()()()()の姿が重なり、全身に小さな針が突き刺さる様な怖気を感じ取った。何故ならその技に()()()()()()から、受ければ最後、夜明けまでの回復など叶わない。

 

()()()()()────」

 

「────────流石にそれはヤバい!!!」

 

 完璧なタイミング、完全な隙、絶対絶好のチャンス、よもや熟達の術者であり体術も持ち前のセンスで一流の霊夢。不意を打ち、隙を作る事に成功したこの状況下は後は技を叩き込み、暫くの間再起不能にするだけだった。

 

 数秒あれば輝雄は札を力尽くで破り脱出するだろうが、その数秒を潰すための札による分身体からの束縛術────────()()()()()

 

「何────!?」

 

 身動きが取れない筈の輝雄が一瞬にして札から脱出し、霊夢の技の起発に割り込み衝撃を最小限に抑え込む。初撃の蹴り技に間に合う筈が無い防御が間に合い、続く二撃目を完全に防御したが反動で空から地面まで真っ直ぐに落とされてゆく。

 

「…………多分、今のは……()()()()()()()()()()()()()

 しかもアイツ一体何を…………? 目の前で起きたのに何が起こったのか全く分からなかった…………まるで瞬きの合間に全て事が終わっていたかの様な…………?」

 

 百戦錬磨の霊夢をして得体の知れない術式が発動した、それ程に不自然な事だった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして初見の反応とは思えない対応、ただ彼がそれほどの天賦を備えているだけなのか、それとも────

 

「────いや、有り得ない。流石に年齢が違いすぎる…………何かタネがあるわね……」

 

 二人からすれば戦いとも呼べない些細な小競り合い、しかし終始霊夢が主導権を握っていた────だが、霊夢は地面まで落ちていった輝雄に追撃出来ずにいた。

 

(ダメージは…………無い。でもどうする? 術者としての未熟さが諸に出たな……シンプルな火力なら俺の方が上だが、霊夢の術の拡張性や対応力が半端じゃない! すぐに決着は付かないだろう……だがモタモタしてたら小傘がどうなるか…………)

 

 輝雄の戦闘力(ポテンシャル)は既に霊夢に追い付くどころか単純な霊力の総量や出力なら上回っている、肉体の強度に至っては言わずもがなである。しかし、どれだけ性能が良くとも戦術や戦略が真っすぐ行って殴るだけなら木偶も同然、知恵無き獣は罠にかかるだけだ。

 

 

 

 霊夢にとって、博麗の巫女にとって────────自身よりも強大な敵に立ち向かう事など日常茶飯事。

 

 

 

(────────()()()()()()で逃げるか? 否、()()は逃走向けじゃない。

 距離を取ると術式の詳細が割れるだろう…………それは避けたいし、何より霊力を感知されたら視界から消えても全く無意味!! 

 完全に霊夢の感知から逃れながら術の行使なんて、右を見ながら左を見るような無理難題────)

 

 運良く、或いは霊夢が狙ったのか周りに一般人はいない。物陰に霊力を消しながら隠れているが見つかるのは時間の問題だろう、しかし上空に陣取られている為に幾ら韋駄天の如く駆けられる輝雄でも、開けた場所で霊夢相手に走って逃げるのは分が悪すぎた。

 

「………………悩んでても仕方ない! 何とか隙を作ってその隙に────」

 

「────もしもーし?」

 

 焦りで思考が回り切っていない事を自覚しながら、何とか隙を作ろうとすると背後から声が掛かる。不意を突かれた事に驚きながらも、素早く振り返ると────────

 

「ひっさしぶりー! おにーさん! なんか楽しそうな事しているねー!」

 

「────────こいしか!」

 

 ────────可愛い着物を着たリンゴ飴をしゃぶる覚妖怪の少女がいた。

 

 

 

 





 霊夢の幻想郷を護るモチベーションって、個人的には東方一番の謎。
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