ぶっちゃけ一人称の方が書きやすい。
皆さんはどっちが読みやすい?
でも作者はキャラの心情を上手く描写出来てる気がしない(白目)
あぁ、終わったなぁ…………。
自分でも意外な位、そして呆気無く、私は私の命を諦めた。
「………………ぷっはぁー、いつかなー、まだかなぁー…………早く来ないかなぁー…………お前さんはどう思う?」
私よりも小さな背丈、七五三が頃合い位の年齢に見える幼女の頭には捻れた大きな角が生えていた。岩の上で胡座をかきながら、瓢箪に入っているだろう度数の高いお酒をらっぱ飲みする姿は何とも様になっていた。
「………………」
「………………
そしてまた彼女は月を眺めながら、ぐびぐびお酒を呑み始める。私は別に縄で縛られたりだとか、術で妖力を封じられたりだとかはされていない。それでも、足掻こうとか、隙を見て逃げようとか、そんな考えがちっとも沸かない実力差────────天と地? それとも蟻と龍? 何に喩えればいいかすら………………。
(何が起こったかすら、分からなかったもんなぁー…………)
あっと言う間に攫われて、気付いたら森の中で目の前に彼女が────────鬼が居た。それ以前の記憶は宴会続きで夕飯の支度が無いから、輝雄が居ないのを良い事に居間でゴロゴロしながら煎餅咥えて本を読んでた。今寺子屋で教えてる話だそうだ、そういえばアレも鬼に関係ある話だった気がする。
「なぁ? 付喪神? お前んとこの男は来ると思うかい?」
そんな現実逃避を考えてたら口の端から酒を垂らしながら上機嫌に鬼が聞いてきた、月明かりに照らされるその姿は、凶暴よりも可憐の方が似合いそうだ────────でも知っている、いや妖怪なら誰でも分かる。彼女のその身に宿した力量から妖怪の本能が叫んでいる。“死ぬ、逆らうな”って。
「────────来ないよ…………」
「────────ほぅ? なんでさ?」
「だって…………私、
「………………」
そうだ。どれだけ弱くても大人しくても、私は────────多々良小傘は、妖怪なんだ。どちらかと言えば
里の人達はあからさまに私の事を疎んだり、石を投げたりはしないが、やはり一線を引いた態度をとっている。それは妖怪として、ある意味誇る事なのだろう…………分かってる、理解はしている。
輝雄だって、私が人に危害を加えたりすれば容赦はしないだろう。一つ屋根の下で暮らしているのだ、流石にそれくらい分かる…………私は別に、人を殺したい訳でも、それを見逃して欲しい訳でも無い。
ただ────────
「人と同じ姿で、人と同じ言葉で、人と同じ
────────
「…………なんでかな、なんでなのかな…………
────────なのになんで、半端に近いのかな!? 醜悪な姿でさ!! 言葉なんて理解出来ずにさ!! 本能だけで生きてる方がさ!! 妖怪としてよっぽど理に叶ってない!?」
どうしてなのかな。私、妖怪なのに…………人間に必要とされてない現実が………………輝雄が、私を助ける理由も義務も無い事実が、どうしようもないくらい────────苦しい。
喉が詰まった様な、胸が締め付けられる様な、寒い様な、ひもじい様な、どれとも似ててどれとも違う、そんな悲しさ…………今更、分かった。
最近の輝雄の変化、多分あれは────────許容し切れない悲嘆を背負ったんだ。ちょうど今、死の瀬戸際で私が気付いた様に。人と妖の違い、孤独を生まれながらに背負い、人に近しい心にはそれは重過ぎる事に。
「…………確かに、不思議だよねぇ。どんな法則性かは、私も知らないけど。格の高い妖怪ほど、何故か人間に近づくんだよね。
姿形とか知性とか感性とかがさ…………そのくせ妖怪の本能が消えるのかというと、案外そうでもない。
感情のままぶちまけた私に、意外な事に鬼は機嫌を損ねず、丁寧に答えてくれた。月を見上げながらお酒を呑んでいる姿は────────儚い美しさがあった。溶けて消える雪の様な、悲壮感を漂わせたその横顔は、私には何かを思い出している様に思えた。
「人間が望む平和、妖怪が望む恐怖…………人も妖も、お互いを“なぁなぁ”で誤魔化して過ごすには、この
人と妖がどうしたってぶつかっちまう、昔はぶつかったらそのままどっちか死ぬまで
その為の弾幕ごっこなのかも知れないけど…………まぁ、人間からすればどっちにしろ溜まったもんじゃないだろうね。だって全部、妖怪側の事情だもの」
輝雄と闘う為に私を攫った傍若無人ぶりは、不思議なぐらい消え失せて…………なんでだろう、その瞳が寂しさに潤んでいる様にすら見えた。鬼にも、情と涙があるのか。カラカラ笑ってたけど、ちっとも楽しそうじゃなかった。
「でもさぁ……やっぱり駄目なんだよ、妖怪は────────いやさ、私達鬼は! 人間に期待しちまうんだよ!
それは、彼女自身の考えだけじゃないのだろう。どのくらい居るのか知らないが、鬼は────────人と闘わずにいられない、多分、喰べる為じゃない、喰べる事もあったのだろうけど。きっと、彼女は
「良い満月だ…………美味い酒もある。
────────喧嘩にゃもってこいだ!!!」
勢いよく瓢箪を椅子がわりに使っている岩に叩き付ける。さっきまでの儚さは嘘の様に消えてそこに居るのは、獰猛に牙を剥き、凄絶に笑い、闘志を瞳に宿した────────無念を抱えたまま幾星霜を越え、なお衰えぬ気迫を持った生ける伝説、大江山の酒呑童子。
「…………でもさ、そもそも輝雄が来るとは限らないじゃん」
「ふふふ、かもねぇ…………そん時ゃ、私はアンタを喰わなくちゃならないんだけど…………正直言って、そんな悲壮感漂わせた奴喰っても胃もたれしそうだからイヤなんだよねー」
「じゃあ辞めてよ」
生意気な風にムスッと呟いたが、鬼は不敵にただ笑っただけだった。
「そうもいかない、果たし状にまで残したのに鬼が嘘を吐くわけにはいかないね。例え私に不利であっても無益でも鬼に横道は無し、だ」
自信満々の赤ら顔で言い切った、当人の辿った末路を思えばその言葉は遺言に近い筈だが彼女は何処吹く風で、また呑んでいる…………いつまで呑んでるんだろう。あと数時間もすれば日の出だ、そしたら私はきっと酒の肴にされるのだろう。
────────食べる、食べられる、喰う、喰われる。
生きているなら当然の行い、人間だって妖怪だって、何かから糧を得なくては存在を保てない。人間はそれが肉とか魚とか野菜の食べ物で、妖怪は種によって様々だが、まぁ大体の場合、人間から得られる何かだろう。私の場合は驚かした心────────感情や情動が私の糧と言っていい。
でも『食べる』という行いは、実は栄養の補給以外の意味もある。学術的な意味合いって輝雄は言っていたけど…………多分、この幻想郷では呪術的な意味合いって言い方が正しいと思う。
食べるという行為の意味────────それは食べた物との“同化”や“支配”である。
有名な話では三蔵法師が挙げられる。あの僧侶は天竺までの道のりで様々な妖魔に襲われるが、その理由はその身を喰べた妖魔は不老不死を得られて、
そしてこれは多分、本当の事だったと私は思う。実際に妖怪が仙人の血肉を食べると格が上がると言うし、普通の妖怪の人喰いだって別に人の血肉からしか栄養を得られないわけじゃ無い────────喰べるという行いで、
ならば────────もしも、この食事が
妖怪は精神に依存した生き物、決して永劫不滅の存在では無いが人間よりもずっと長生きして死とは縁遠い。しかしそれは肉体の破壊に限った話、精神に傷をつけられたら妖怪は人間よりもずっと脆い────────心が死ねば、妖怪は死ぬのだ。
そして妖怪同士の喰べるという────────共喰いでは、精神を喰う側の妖怪に取り込まれ妖力も一緒に還元される、人間の時と同じ支配と同化の理屈だ。だがリスクはある、同程度の力量ならばお互いの精神が対消滅したり、相手の方が強いと乗っ取られる事も有るらしい。
(私なんか喰べても、一割どころか一分にだって満たないだろうに…………)
要するに────────私が酒呑童子に喰べられたら、恐らく力量差のリスクによる現象は起こらず、全て彼女に取り込まれる事だろう。妖力も全て彼女に還元されて“多々良小傘”はこの世から跡形も無くなる。復活することは無く、例えあの唐傘から付喪神が生まれても、それはもう私じゃない。
「あ、やべ…………そういや場所書くの忘れてた…………」
絶望感が更に増した。旨そうにお酒を呑んでいた鬼は、ふと思い出したのかそんな事を宣ったのだ。場所が分からず、時間だけ指定って…………じゃあ、輝雄が来ない理由すら分からないじゃない。気まずそうに頭を掻きながら、天を仰いでいる。仰ぎたいのはどちらかと言えばこちらなのだが………………。
(いや、そっちの方がマシなのかも…………)
相手は鬼の中の鬼。恐らく妖怪の山に住んでいる天狗すら顎で使え、同じ鬼であっても格の低い者は道を譲り、その眼光すら到底受け止められないだろう。決して一対一で闘っていい相手じゃない。
これに立ち向かう事は、その身一つで天災に挑む様なもの。山火事に独りで立ち向かい、津波に独りで突き進み、雷纏う渦雲に昇る様な無謀。正に自殺行為、命を惜しむ者には決して出来ない────────出来てはいけない。
そんな事をしていては命が幾らあっても足りない、そんな事をしても輝雄が得る物なんて、何も無い────────
「お前さ────────」
────────
「────────人攫いまでしておいて、場所書くの忘れてましたって…………呆れて物も言えねぇよ」
「────────良いじゃん、別に…………こうして出逢えたんだから。折角の喧嘩の前に
輝雄、
『殺します。泣いて、土下座して、全裸になって許しを乞うても、女子供の姿かたちであっても殺します。例外はありません』
また見捨てられるって、でもそれは…………
「お前との果たし合い、受けて立つ。
「私も別に人質なんて取る気はないけど。アンタが嘘ついてて逃げないとも限らないからねぇ、喧嘩が終わるまではここに居てもらうよ」
「もし俺が逃げたらお前小傘殺すだろ、それに────────」
着流しを脱ぎ捨て、袖の無い黒いインナーと外の世界の素材で作られた幻想郷ではあまり見ない
「────────
鞘に納められて尚ドス黒い瘴気を感じせる妖刀は主の殺意に共鳴して、まるでガスの様に視覚にすら容易に捉えられる程、濃密に呪いを辺りに撒き散らす。その中心で全く悪影響無く佇む輝雄は────────瞳を赫く光らせ、完全に臨戦体勢に入っていた。
「…………ははは、ガキ、餓鬼、餓鬼ねぇ…………
────────吐いた唾は飲ませないよ?」
太古の鬼も、その殺意に感化されて獰猛に牙を向く。
後輩との日常回もメッチャ書きたい。
今、主人公の脳メチャクチャ焼かれてるけど。