「昨日の東京の新規感染者は600人を超え昨年の9月の感染者ピークの時期と同じような傾向となっています。このことから政府は.......
例年より短い正月休みが終わりを告げ
いつもだったら、休み明けの絶望感で一回は吐いているところだが、今年は清々しい仕事始めを迎えることができた。
勢い余って1時間も早く職場に着いてしまった私は、やることもとくに無いので休憩スペースでダラダラとテレビを見ていた。
今日もTVは新たに流行り始めたコロナ変異株の話題で溢れかえっている。
こうもずっとこの状態が続くと、ほぼ引きこもりの私でも嫌気がさしてくる。
久しぶりにどこか旅行にでも行きたい気分だ
シンガポールとかタイとかあったかい東南アジアの方に行ってゆっくりしたい。
しかしまあ、こんなに穏やかに色々と悩んだり、考えたりできるのはここに来て心に余裕ができたからなのかもしれない
そんなことを思いながら時計を見ると、針は8時50分をさしていた
気づかないうちに始業時間を過ぎていたようだ
そろそろ管理室に戻るとするか。
私がここに配属されてからもう9ヶ月がたつ。
去年までいた、あの地獄のような職場では、1年が過ぎるのが非常に長く感じていたが、今の職場では1年が経つのがなんと早いことだろう。
人間、責任感や嫌な人間関係がないと時間の流れというのは早く感じるのかもしれないな。
ただ暇すぎて何もやることが無いので、1日1日が過ぎるのは異常に長い。
本当に前の職場とは180度違う場所である。
同じ宮仕えだと言うのに、こうも状況や仕事内容が変わるのはあまりにも問題があるのではないかと思うほどである。
だからこそここは私たち職員の中では影で「療養所」と呼ばれているわけなんだが...
管理室のドアを開けると、そこにはまだだれもいなかった。
といっても、ここにくるのは私と綾小路さんだけなのだが。
どうやら彼女は今日も大遅刻のようだ。
綾小路さんは明るく仕事もそつなくこなすとてもいい子なのだが、異常に時間にルーズだ。
そのためよく遅刻をする。
しかし、仕事がほとんどない職場とは言え、正月明けの1回目ぐらいは遅れないよう気を遣って欲しいものだ。
こう言う場合、1度しっかりと叱った方が彼女のためにもなるのだろうが、残念ながらこの事務所には彼女を怒ってくれる様な者は存在しない。
じゃあこの管理事務所の総括をするお前が注意しろとおもうだろ?
私もそう思う。
しかし、今はコンプライアンスやセクハラ・パワハラどうのこうのでなかなか女性の彼女に対し、管理職でもないおっさんのわたしから怒るというのはどうもやりずらい、というかやらない方がいいらしい。
全く生きづらい世の中になったものだ。
まあ、一応それとなく嫌味ぐらいは言っておこうとは思う。
流石に彼女もそろそろ来るだろうし、一応形だけでも御用始め式でもやろうか。
そんなことを考えながら今月発注予定の外部への委託業務の準備を始めた。
この委託業務の発注という仕事は非常に簡単で、わかりやすいもので本気でやると二、三日で終わってしまう内容だ。
そのため、これをいかに長引かせ、かつ本庁には仕事をやってるふうに見せるのが非常に重要となってくる。
仕事が無いはないので、なかなか辛いものだ。
ちなみに今月決まっている仕事なら予定はこれしかない。
これを早めに終わらせてしまうとダラダラとネットサーフィンを続けるだけになるか、綾小路さんのどうでもいい世間話に付き合わされることになる。
それを1ヵ月近く続けるのだけはどうあっても避けたい。
その時、バタバタと裏口で物音がした。
そうこうをしてるうちに彼女がきたようだ
時間はもう9時を過ぎている。
30分の遅刻
とりあえず、pcの使用時間と実際の出勤時間に乖離があると本庁にバレてまずいので彼女には時間休を取らせるか、なんかしらの対策をまた取らせなくてはならない。
バレると色々面倒だからな...
正直毎回彼女の尻拭いをするのは非常に疲れるので、できれば時差出勤とかにして欲しい。
ただ時差出勤にしたらしたでその時間にも遅れてきそうな気はするが。
大袈裟に足音を立てて廊下を走る音がきこえ、バンとドアが乱暴に開かれると、彼女が飛び込んできた。
「おはようございます!遅れてすいません...
電車に乗り遅れちゃって。年初めからやっちゃいました。」
彼女は大袈裟に息を切らしながら笑ってそう言った。
年明け1番目の言葉がこれは、彼女もなかなかの大物である。
私もこれぐらいの図々しさが欲しいものだ。
「あけましておめでとうございます、綾小路さん。」
私がゆっくりそういうと。
彼女はハッとしたように答えた。
「そうでした!あけましておめでとうございます。」
そして笑顔で言った。
「今年もよろしくお願いします。地獄大使」
私は、地獄大使
ここではそう呼ばれている。