空戦シミュレーターを極めたので異世界でエースとして君臨します   作:PlusⅨ

24 / 26
 更新再開しました。
 AI任せの展開と、私の悪い癖が出始めたせいで、会話ばかり増えて話が進まなくなってきた……


第21話・大統領、誘拐(1)

 基地へ帰投した俺たちは、すぐさま作戦会議室へと集まるように指示された。

 

 会議室には非番のパイロットが既に全員集まっていた。どうやら俺たちが最後だったようだ。

 

 パイロット全員が揃ったことを確認し、狭山司令が口を開いた。

 

「緊急事態だ。今から話すことは一切他言無用の最重要機密である。心して聴け」

 

 いつにない真剣な声色に室内の空気が張り詰めた。司令が言った。

 

「海外訪問中の大統領閣下を乗せた政府専用機が、ハイジャックされた」

 

「っ!?」

 

 司令の言葉に、その場に居た全員が息を呑んだ。司令は目を瞑り、深く呼吸をした。気持ちを整えたのだろう。無理もない、大統領は彼女の父親なのだから。

 

 狭山司令はいつもと変わらぬ風を維持しながら、続けた。

 

「政府専用機は今から五時間前、大統領閣下を乗せ、訪問中のフィリピンから離陸した。しかしフィリピンの防空識別圏を超えた直後、ダミーとして編隊飛行していた二番機が空中爆発し、墜落した」

 

 重要人物を乗せる政府専用機は必ず同型機の二機編隊で飛行するのがセオリーだ。万が一攻撃を受けたとき、どちらに重要人物が乗っているかわからないようにするためだ。

 

 墜とされた二番機は大統領を乗せていないダミー機だ。

 

 その一番機から二番機爆発の報告が入ったすぐ後、通信機から激しい銃声が聞こえ、交信が途絶えた。そしてその後の消息は不明。現在この事実を知っているのは大統領府以外では、直轄組織である満州湖水上警察のみ、と狭山司令は説明した。

 

「これが反乱軍によるもの、又は反乱軍を支援する勢力による仕業であることはほぼ間違いないだろう。大統領閣下が行方不明となった今、敵はこの隙に総攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。──これより我が第八八隊は総員戦闘配置へと移行する」

 

 続いてホワイト軍事顧問が前に進み出て、俺たちに言った。

 

「第二、第三、第四小隊による定期哨戒飛行はこれまでどおり維持する。第五、第六小隊は地上攻撃用の武装で待機だ。なお各員の武装、整備、修理に関するKPは基地側で持つ。各員は自機を万全の状態に保っておけ。なお現在機体を失っている、または修理で飛べない者にはデルタダガーを充てがう。各小隊で欠員が生じた場合に補充要員として速やかに前線に出てもらうから、こちらも整備を怠るな」

 

 それから、とホワイトは俺に目を向けて言った。

 

「第一小隊は政府専用機が発見された場合、そちらの対応にあたってもらう」

 

「対応、とは?」

 

 俺の質問には、ホワイトではなく狭山司令が直接こう答えた。

 

「わからん。その時の状況次第だ」

 

「つまり出たとこ勝負か」

 

「そうだ。だからさまざまな状況に対応できるよう、第一小隊の面子を一部変更する。──ミッキー、今任務はレイの指揮下に入れ。元情報部員である貴様の知見を当てにしたい」

 

 狭山司令の指示に、ミッキーが「了解した」と頷いた。

 

「以上だ。各員、配置につけ」

 

 作戦会議の後、俺はクラリス、マオにミッキーと鷹峰、そしてホワイト教官を加えたメンバーと共にパイロットスーツに着替え、格納庫へと移動した。

 

 スカイレイを始めとした俺たちの愛機は既に影人たちの整備を受け、万全の状態で待機していた。俺たちはそれぞれ自分の搭乗席へ乗り込み、最終チェックを開始した。機体の動作確認、武器の状態、燃料、弾薬の確認、レーダー/センサー類、無線機器、エンジン、冷却系、操縦桿、フットペダル、スロットルレバー、操縦系統の異常の有無、それらを入念に行う。

 

 特に俺のスカイレイはつい先日、新たな、そして大幅な改装を施したばかりだった。その箇所は主に二つ。機体後部のエンジンノズルと、主翼内の機関砲だ。

 

 スカイレイの単発エンジンのノズルには、新たに一回り大きなノズルが覆うように追加されていた。これは推力偏向ノズルだ。従来の戦闘機のそれと違い、噴射の方向を制御できるというものだ。これにより戦闘機は高速で旋回することが可能となる。

 

 また主翼内部の四門の20ミリ機関砲だが、この砲身を内側二門は2度、外側二門は2.5度、機体の中心軸より上側に仰角をつけて搭載しなおしていた。

 

 あえて仰角をつけたのは、機関砲を使用した戦闘がほぼ旋回中に行われるからだ。機体を90度パンクさせて急旋回しながら逃げる敵を狙う時、機首を敵機に向けたまま機関砲を撃っても、弾丸が届く頃にはその位置に敵機はもう居ない。命中させるには、敵機の旋回予想位置にあらかじめ機首を向けておく必要があるのだ。

 

 しかしそのためには、敵機よりも旋回半径を小さくする必要がある。だかそうすると敵機が反対方向へ切り返して回避行動を取った場合、それに気づけなかったり、気づいても切り返し機動が遅れてしまうという欠点があった。

 

 だが、機関砲に初めから仰角をかけておけば、機首を敵機に向けたままでもその予測進路方向へある程度は弾丸を置くことが可能になる。もっとも、そのための最適角度はまだ試行錯誤の段階ではあるが。

 

 正直なところ、この改装が実戦で本当に効果があるかどうか半信半疑な部分はある。特に推力偏向ノズルは、この時代、まだどこの国でも戦闘機で実用化した機体は無いはずだった。

 

 それでもこの改装に踏み切ったのは、トムキャットへの改装案を早く試してみたかったからだ。普通の国なら机上プランで終わるようなこんな改装も、マッキー婆さんという何でもアリの調達屋と、影人という便利な職人集団、そしてパイロット個人の機体への裁量や自由度が異常に高いこの部隊ならではの環境のおかげで、プラモデルの改造並みの気軽さでできてしまうのは有り難かった。

 

 とはいえ、その効果は自分の命を的にして確かめなきゃならんのだが。

 

 コクピットでの点検を終えて機体から降り、俺は同じ格納庫内にあるもう一機の愛機へと向かった。

 

 VFX-14トムキャット。俺の要望によりアメリカから強引に調達し、そして手塩をかけてテストと改良を重ねてきた最新型の試作戦闘機。スカイレイへの無理やりな改装もこのトムキャットを実用化を目指してのことだ。

 

 今このトムキャットのコクピットには、新たに俺の部下になった鷹峰徹が神妙な顔つきをして座っていた。

 

「機種転換は上手くいっているか、鷹峰」

 

「ん…ああ、隊長、どうかしたんスか」

 

 鷹峰は一瞬、自分が誰だかわからなかったのか頭を二、三度強く振ってから言った。

 

「なんでしょうね、この変な感覚は。頭や体中に勝手に知識や経験が流れ込んでくる…チートってやつ…どうも慣れない。気持ち悪いッスよ」

 

 そう言って鷹峰は顔をしかめた。

 

「まあ無理もない。俺だって最初はそんな感じだったからな」

 

「はは、マジすか。けど、なんかこう、あれッスね。俺の体が俺のじゃないみたいです」

 

「チート、つまりズルさ。予科練からパイロットとして厳しい訓練を受けてきたお前にしたら、ふざけた能力だと思うだろう。何しろズブの素人でさえたった二週間で戦闘機パイロットに仕立て上げてしまう悪い冗談みたいな能力なんだからな」

 

「ホント、マジで洒落にならねえッスよ。単にコクピットに三十分も座ってりゃ機種転換が済むなんてね。俺が十代の青春を捧げて血の滲むような訓練をしてきたのはいったいなんだったんだよって話だわ」

 

「お前のような正規パイロット上がりなら文句をいう資格はある。…俺は文句も言えん」

 

「どういうことっスか?」

 

「俺は素人あがりだ。チートに頼らなきゃ自動車の運転さえも怪しい凡人さ」

 

 俺は自嘲気味に笑って言った。

 

 実際、俺自身の能力なんて大したもんじゃない。確かに戦闘機の操縦技術や兵器の扱いに関する知識などは前世からたんまり頭の中に入ってる。でも、それだけだ。所詮はゲームや漫画、後はネットを漁って得た知ったかぶりの知識でしかない。そんな調子だから、この世界に転生した後、役に立った知識なんて結局一つも有りはしなかった。

 

 この世界で俺がやっている戦争は現実だ。何度でもやり直せるゲームとは違う。そのくせチートスキルなんていう都合のいい、人を戦うための兵器に仕立て上げる不可思議な現象だけは存在しているときた。

 

 俺自身、自分がどうしてこの世界に来たのかもわからないし、この先どうなるかも見当がつかない。だが少なくとも、俺のこのチートは間違いなくこの世界を歪めていると感じていた。

 

 この力があれば俺は戦場で生き延びれるかもしれない。いや、もしかしたらどんな敵にも負けない最強の存在になれるかもしれない。

 

 だけど、それは同時に、誰かを不幸にするだけの忌まわしき呪いでもある。俺はこの力を、そして自分自身を呪っていた。

 

 そんなことを内心で思っていると、頭上のコクピットから鷹峰がくっくっと笑う声が降ってきた。

 

「凡人とはね。隊長のそのセリフ、日本空軍のパイロット連中に聞かせてやりたいッスわ。アイツら、どんな顔するかな」

 

「どういう意味だ?」

 

「満州国きっての空戦エース、スカイレイこと巣飼零士の名は日本軍でも有名なんスよ。平和憲法に縛られた敗戦国の空軍パイロットじゃ足元にも及ばない、本物の死線を潜り抜けてきたエースパイロットだ。誰もがアンタに憧れてるのさ」

 

「莫迦莫迦しい、何がエースパイロットだ。俺は名を上げようなんて思っちゃいない。必死に生き延びてきただけだ。……憧れているのは俺じゃなくて、実戦という名の幻想だろう」

 

「ま、そうかも知れないッスね。専守防衛の名の下に手足を縛られた軍隊モドキでしかないことへのフラストレーションが半分、そして隊長、アンタへのやっかみも半分ってところッスよ。練度じゃ負けていない。憲法の縛りさえなけりゃ俺たちだって実戦で縦横無尽に活躍してみせる、って誰もが思ってる」

 

「…お前もか。実力を証明したくて、だから好き好んでこんな最前線へやってきたってのか」

 

「迅雷のトールこと、鷹峰徹の名が歴史に刻まれる日がいよいよやってきた、ってところッスかね」

 

「刻むのは歴史じゃなく墓碑銘の間違いだろう。今のうちに石材屋に電話しておけ。その小っ恥ずかしい異名を墓石に刻んでおいてくれってな」

 

「日本空軍でのTACネームはスターホークでしたよ。スターファイターの鷹、その空戦機動の鋭さは雷鳴の如し。故に迅雷のトールの異名で呼ばれた。…あ、トールってのは雷神トールと、俺の名前である徹を掛けて──」

 

「無駄に異名の多いやつだな。やかましい。今のお前はせいぜい猫の運転手だ」

 

「なるほど、トムキャットドライバーの鷹って訳ッスね。略してトムホーク。いいね、俺の新しいTACネームはこれで行きましょう」

 

「能天気な奴だ。言っておくが、この戦闘機の機長はお前じゃない。ホワイトだ。お前の任務は彼女の指示に従い、彼女を守ることだ」

 

「ホワイトってのは、ブリーフィングで作戦説明してたあの美人さんッスね。俺、ああいうクールビューティータイプも好みッスよ」

 

「彼女はお前のことなど好みじゃ無かろうよ」

 

「あ、ひでえ」

 

 鷹峰は苦笑しながら肩をすくめた。そこへちょうど、ホワイトのその人が格納庫内へ姿を現したのが見えた。

 

「噂をすれば何とやらだな」

 

 リリィ・ホワイトはロシア系アメリカ人だ。髪は短く切り揃えられていて、化粧気のない白い肌と切れ長の目が印象的な美人だ。

 

 その側にはもう一人、アビーも一緒に付き従うように歩いていた。

 

 アビーはトムキャットのそばに居る俺に気がつくと、すぐに俺から目を逸らすように別の方向に目を向けてしまった。とはいえ二人はそのままトムキャットに向かって歩き続けていた。つまり俺はあからさまにアビーから目を背けられたわけだ。

 

 なぜだろう、と訝しむには心当たりがありすぎる。俺はくすぐったいような感触を頬に思い出した。

 

(まあキスされた俺の方が目を逸らしたい気分なんだがなぁ……)

 

 あれ以来、どんな顔してアビーと会えばいいのか頭を悩ませていたわけだが、クラリスから、キスなんてものは欧米じゃ挨拶代わりで深い意味なんて無い、と聞いて俺も考え過ぎかと気が楽になった……

 

……と思っていたのに、その当の本人からこんな反応されたんじゃ、いよいよもってどんな顔をすればいいのか俺もわからなくなってきた。

 

 そんなことを考えている横で、トムキャットのコクピットから鷹峰が降り立ち、二人を出迎えた。

 

「はじめまして、ミス・リリィ。貴女のナイトの任を賜りました、鷹峰徹です。トムホークとお呼び下さい」

 

 そう言って鷹峰が右手を差し出すと、ホワイトはその手を握り返しながら言った。

 

「君が私のアッシーくんか。どうぞよろしく」

 

 鷹峰は一瞬だけ、その顔に戸惑いを浮かべたが、すぐさま笑顔で応じて見せた。

 

「こちらこそ宜しくお願いします。ところでその……アッシーくん、とは?」

 

「なんだ、知らないのか? 日本では

女性のエスコート役をそう呼ぶと聞いたのだが」

 

「それはいったいどこの日本のことっスかね……」

 

「あぁ、なるほど。転生者連中の前世日本のことだったか」

 

「転生者連中?」

 

「気にするな。それよりアッシー、私のことはホワイトと呼べ。ファーストネームを呼ぶには半年早い」

 

「たったそれだけの期間で良ければ喜んで我慢しましょう」

 

「ここで新入りが二週間生き残る確率は二割だ。せいぜい頑張るんだな」

 

「俺たちは同じ機体に乗る一連托生のパートナーでしょう?」

 

「脱出装置は後席の方が先に作動するんだよ」

 

 鷹峰はホワイトの言葉に苦笑いを浮かべるだけだった。

 

「じゃ、またあとでなアッシー」

 

 ホワイトは鷹峰の脇をすり抜け、そのままトムキャットの後部座席に座った。

 

「やーれやれ、俺の女王様は敵より手強いみたいッスね」

 

 鷹峰は苦笑いのままため息を吐くと、俺に背を向けてパイロット控室の方へと歩き去っていった。

 

 トムキャットのそばに残っていたのは一緒についてきたアビーだけだったが、彼女もまたラダーを登り、後部座席のホワイトの側で、機器操作の説明を始めた。その間、俺に声どころか視線すら合わせてくれなかった。

 

(嫌われている……訳ではなさそうだな)

 

 俺のそばを通り過ぎたとき、彼女の顔が耳まで赤く染まっていたのが見えたからだ。

 

(うーむ、分からん)

 

 俺は女心どころか他人の内心すら理解できないコミュ障の元引きこもりだ。だからこれ以上は考えるだけ無駄だった。なので俺も控室へ戻ろうと思い、トムキャットの側から離れかけた、その時だった。

 

「あ…レ、レイ、待って!」

 

 背中にアビーの声を受けて、俺は足を止めて振り返った。

 

 アビーがラダーから降り立ち、何か言いたげに俺の顔を見つめていた。

 

「レイ……」

 

 数歩ほど離れたところで足を止め、俺の名を口にしたきり、彼女は口籠もった。何か言いたいけれど、うまく言葉が出てこない、と言った感じだ。

 

 正直、俺もそうだ。先日、彼女の唇が触れた頬が熱くなってきた。

 

「どうした?」

 

 俺は努めて平静を保ちながらそう訊ねた。するとアビーは一瞬目を伏せたがすぐに顔を上げ、真っ直ぐに俺を見つめてきた。

 

「この前の約束、覚えてる?」

 

「約束?」

 

 口では訊き返しておきながら、俺は無意識に自分の手で頬を撫でていた。

 

「生きて帰る、って約束よ。……私を独りで置いていったら、ダメなんだからね」

 

 アビーの言葉を聞いた瞬間、俺の顔はさらに赤くなったと思う。

 

「あ、ああ。わかっている」

 

 かろうじてそれだけ口にできた。

 

 アビーは俺の言葉を聞くと、ようやくホッと安堵したような笑みを浮かべた。

 

「レイ、あのね」

 

 アビーは再び顔を赤くして俯いた。今にも消え入りそうな声で言った。

 

「私、あなたのこと、好きよ」

 

 アビーはそういうと、駆け出して格納庫から出て行ってしまった。

 

「え……へ……?」

 

 いったい今、俺は何を聞いた? 何やら奇妙な幻聴を聞いた気がする。気のせいだろう、聞き間違いだ。そうだ、そうに違いない。

 

 なぁ、そうだろう、ホワイト?

 

 俺はトムキャットの後部座席に座るホワイトを見上げた。

 

 彼女はヘッドレストに頭を預けたまま、ニヤリと笑いながら俺を見下ろしていた。

 

「君も罪な男だな、レイ」

 

「なんの話ですか!?」

 

「アレックスには黙っておいてやろう」

 

「だからなんの話ですか!?」

 

「アビーから相談されたんだ。勢い余ってレイにキスしたけど、今更どんな顔して会えばいいのか分からないって。だから私は言ってやったんだ。自分の気持ちに素直になれってな。それでやっと決心がついたようだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。つまり…その…アビーは俺を…?」

 

「目の前で今はっきりと言われただろう」

 

「聞き間違いだ…あ、ありえない…お、俺なんかが……」

 

 ホワイトは呆れたようにため息をつくと、後部座席から降り立って、俺の肩を叩いた。

 

「君は自分を過小評価しすぎる。度が過ぎるとクソボケと呼ばれるぞ」

 

「自分でもそう思ってますよ…」

 

「童貞を拗らせた見本だな、君は。アビーも面倒な男を好きになったものだよ」

 

 ひどい言葉だが一切反論できない。パニックになりかけて動けない俺を残し、ホワイトもまた控室へと去って行ってしまったのだった。

 

※※※※※※

 

 アビーさんがレイ隊長に何かを伝えたその光景を、私は、同じ格納庫にある愛機・フィアットの側から眺めていた。

 

 ここからトムキャットまではそこそこ距離があるので、アビーさんが何を言ったのかは聞こえなかったけれど……

 

 顔を真っ赤に染めながら全力疾走で格納庫から飛び出して行ったアビーさんと、呆然とした顔で立ち尽くすレイ隊長の様子を見れば、だいたい何を言ったのかは想像がついた。

 

(アビーさんの気持ち、やっぱりそうだったんだ……)

 

 アビーさんがレイ隊長にキスしたという話を聞かされた時から、まあそういうことだろうとは思っていたけれど、しかしこう、直接その光景を目の当たりにしてしまうと、うん、その、なんだろう。

 

 すごくモヤモヤする。

 

「やっほー、ク〜ラリス」

 

 不意に、傍から能天気な声をかけられた。相棒のマオだ。彼女は振り向いた私と目が合うなり、うわ、と声を漏らした。

 

「どしたのさ、そんな怖い顔しちゃってさ?」

 

「別に何でもないわ」

 

 私が答えると、マオは私の隣に並んでトムキャットが駐機している方向を眺めながら、「ふぅん」と呟いた。

 

「クラリス、もしかして隊長からまた罰でもくらった?」

 

「どうしてそうなるのよ」

 

「隊長のこと睨んでりゃ、そう思うって。まして前科ありだし?」

 

「…………」

 

 マオに言われたくは無いけれど、隊長から何度か雷を落とされてるのは事実なので、言い返すことができなかった。

 

「なんだ、またやらかしたのか?」

 

 マオとは違う、男性の声がそう問いかけてきた。同じく近くにいたミッキーこと三木光さんだ。

 

 彼は私のフィアットの隣に駐機していたF-5フリーダムファイターの点検を終え、私のそばに歩み寄ってきたところだった。

 

「また、と言われるほどしょっちゅうやらかしているわけじゃありません」

 

「どうだかな。クラリス、君はレイが絡むと対応が素っ気なくなる。あまり上手くいって無いのか?」

 

「そういうんじゃありません」

 

「なら良いがな。今回はいつものミッションとは違う。何が起きるか分からん状況だ。個人的な感情でチームワークを乱さんようにな」

 

 それだけ言うと、整備を終えたばかりのF-5のコックピットに潜り込み、機体の最終チェックを始めた。相変わらず真面目で仕事熱心な人だ。

 

 私は小さく嘆息すると、改めてトムキャットの方を見た。アビーさんはまだ戻ってきていない。レイ隊長はというと、まだぼんやりとした表情で佇んでいた。

 

(ミッキーさんの台詞、レイ隊長にこそ言うべきじゃ無いかしら)

 

 モヤモヤが晴れないままそう思っていた時、格納庫内にスクランブルを告げる警報が鳴り響いた。

 

 出撃だ。警報に続き、格納庫内のスピーカーから狭山司令の声が響いた。

 

『たった今、地上レーダーが政府専用機らしき目標を探知した。位置は黄海海上空第32エリア。第一小隊は現場の状況確認のため直ちに出撃せよ!』




ーーあとがきーー

 基本的にアビーの言動はAIに任せてます。こちらでシチュエーションとレイの言動を書き込み、アビーがどんな反応するかをAIに書かせるという形式。

 AIさん恋愛脳なもんですぐにアビーとレイをくっつけたがる。これまでも「早い、早すぎるよ!?」ってな感じでイチャラブに持ってこうとするAIの文章を訂正してきましたが、流石に抑えきれなくなり、告白されてしまいました。

 こっから先、どうすっかな……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。