空戦シミュレーターを極めたので異世界でエースとして君臨します   作:PlusⅨ

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 ここはAI支援なしです。


第2話・転生者、巣飼 零士

 俺の名はスカイレイ。通称「レイ」とここじゃ呼ばれている。満州湖水上警察航空隊第八八特別戦術隊に所属する戦闘機パイロットだ。

 

 俺の名前は、愛機がF-4Dであることから、この機体の通称である「スカイレイ」をそのまま名乗っている、と周囲からは思われている。

 

 まあそれはあながち間違ってないが、全部正解ってわけでも無い。俺の本名は「巣飼 零士」と書いて「すがい れいじ」と読む。俺が生まれ育った日本では、ありふれてはいないが、特に珍しくも無い苗字と名前だ。

 

 俺がまだ幼い頃、誕生日祝いに親にねだって模型屋につれてもらい、そこで見つけたのがF4Dのプラモデルだった。箱絵に書かれていた水平尾翼のない三角翼の特異な形状。それでいて機首や主翼の先端が丸みを帯びており、どことなく羽根を閉じた蛾を思わせるシルエットに、俺は興味を惹かれた。

 

 だが何より俺の目を引いたのは、その機体の愛称だった。「F4Dスカイレイ」、箱にはそう書かれていた。「巣飼零士」と「スカイレイ」。自分の名と似た名前を持つその戦闘機に親近感を覚え、俺は親にねだってそのプラモデルを買ってもらった。これが、俺が戦闘機オタクになるキッカケだった。

 

 そう、俺は単なるオタクだ。だった、というべきか。確かに今じゃ戦闘機のパイロットをやってはいるが、これは別に幼い頃の夢を叶えたとか、そういうものじゃない。

 

 幼い頃、パイロットに憧れていたのは事実だ。だけど義務教育を終える頃には、俺の学力や体力じゃパイロットなんて目指すのは到底無理だと気づいてしまった。いや、パイロットどころか、まともに人並みな仕事さえできるとは思えなかった。俺は、引きこもりになっていた。

 

 世の中全部に背を向けて部屋に閉じこもっていた俺の唯一の楽しみは、パソコンゲームの空戦シミュレーターだけだった。実機とほぼ変わらないリアルな操縦が体験できるVRゲームで、オンラインネットワークで世界中のユーザーと対戦することができた。

 

 このゲームは爆発的にヒットしているわけじゃ無かったが、いつログインしても対戦相手に困らないくらいには売れていた。アップデートも滞ることなく行われ、バランス感覚も絶妙な、良心的な運営だった。

 

 俺はそのゲーム内じゃエースとして持て囃されていた。それが単なる称賛じゃなく、暗にゲーム廃人、社会不適合者と皮肉られていることも承知していたが、俺は意図的に見えないフリをしていた。

 

 昼夜もわからないカーテンを閉め切った暗い部屋の中で、俺は一日中VRゴーグルを被り、ネット通販で購入した専用コントローラー(操縦桿、スロットル、ペダル)を握りしめ、仮想世界の空を縦横無尽に駆け回り、トップエースとして君臨し続けた。

 

 飯も食わず、何夜も徹夜してプレイし続けた挙句に、気絶するように眠ることもしばしばだった。

 

 そして、俺はある日、気絶したまま死んだ。死因は火事だったそうだ。隣家が失火を起こし、我が家まで巻きこんで全焼したらしい。

 

 同居していた家族は外出していて無事だったらしいが、引きこもってゲームに興じていた俺は、火事に気付かないまま煙に巻かれ、意識を失って、そのまま焼け死んだそうだ。

 

 神とやらは俺にそう説明した。

 

「巣飼零士くん、君は本来、ここで死ぬはずではなかったのだが、現場の者が火加減を間違えてしまってね、君の家まで燃やしてしまった。申し訳ない。したがって君を別世界に転生する。この書類にサインしたまえ」

 

 俺の生死に関わる重大な事実を、神はひどく淡々と事務的に説明し、そして俺に一枚の紙とボールペンを差し出した。まるでお役所だ。そういえば俺はいつのまにか、安そうな机を前に、神と対面に向かい合って座っていた。

 

「…手違いって…?俺、ほんとに死んだのか?」

 

「死んだよ。だけど生き返る。別の世界だがね。安心したまえ、君の才能を十分に活かせる世界だ。さらにチートもつく。詳細は書類に書いてある通りだ」

 

 俺は書類に目を通した。

 

 日本語で書いてあったが、ひどく小さな字でびっしり書いてあり、しかもその中身は妙に回りくどく、そう、お役所言葉のようでひどく読みづらかった。

 

 それでも何度か目を通して、俺は転生後、戦闘機パイロットとしての人生を送ることができる、ということだけはなんとか理解した。

 

「サインしなかったら、俺、どうなる……すか?」

 

「人と話し慣れていないのが丸わかりだな。もちろんこのまま死ぬだけさ。引きこもりのままね」

 

「………」

 

 神の態度は明らかに俺を嘲っていた。それが面白くなくて、俺は黙ったまま、その書類に乱暴な筆跡で自分の名を書き殴った。

 

 それだけじゃ自分の怒りは伝わらないと思って、持っていたボールペンを机に叩きつけ、書類と一緒に神へ突き返す。

 

 神はそれを無表情に受け取り、俺の背後を指差して言った。

 

「お出口はあちら」

 

 俺は椅子を蹴立てながら立ち上がり、その出口へ歩き出した。

 

 自分でも一体どうしてこんなに不愉快な気分になっているのか分からなかった。ただ、無性に悔しかった。誰も俺に敬意を払おうとしない。俺は死んだんだぞ。死んでしまったんだ。畜生、畜生!!

 

 俺は怒りを込めて、目の前の出口と記された扉を押し開けた。

 

 転生チートで戦闘機パイロットというなら、最高じゃないか。俺はそこで、世界を見返してやるんだ。今度こそ!

 

 そう思いながら、俺は転生への扉を潜った。その先が、俺の甘っちょろい人生観など簡単に消し飛ばすような、本物の地獄だとも知らずに……




―――第2話あとがき――――

 私が最後にやった据え置きゲームはPS2の「エースコンバットZERO」だった……

 それ以降の新ハードはどの機種も手さえ付けてませんね。興味が無いとかそういう問題じゃなく、「艦これ」にハマって時間が全部そちらにとられただけですがね。

 「艦これ」や「ウマ娘」みたいな兵站や育成を中心としたいわゆる「盆栽ゲー」みたいなに慣れ切ってしまって、エースコンバットやアーマードコアみたいな複雑な操作と反射神経が求められるゲームは、多分もうできない気がする……
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