仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション   作:K/K

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今年最後の投稿となります。


ニュージェネレーション2019

 仮面ライダージオウ。それは人々の幸福を願い、それを叶える為に王を目指した青年──常磐ソウゴとその夢に惹かれ仲間となった明光院ゲイツ、ツクヨミ、ウォズらによって紡がれた物語。

 彼らの歴史に存在する数多の仮面ライダー達。それらが作り上げた歴史に介入し、力と歴史を奪うことで生み落とされる歪められた存在──アナザーライダー。

 ソウゴ達はアナザーライダーと戦い、歪められた歴史を正すと共にその力を継承していった。

 やがて、戦いはアナザーライダー達を生み出す元凶──タイムジャッカーとの戦いへと移り、激戦を繰り広げる。

 やっとの思いでタイムジャッカーを倒したソウゴ達を待ち受けていたのは歴史の管理者クォーツァー。全ての戦いは平成ライダーと平成という時代そのものを無かったことにしようとするクォーツァーの掌の上の出来事だったのだ。

 その衝撃的事実にもソウゴ達は屈することはせず、クォーツァーとの死闘を経て遂に彼らの手から時代も平成ライダーも守り抜くことが出来た。

 長い戦いを経て、ソウゴ達はやっと平穏な日々を取り戻せた。

 しかし、忘れてはいけない。これは束の間の平穏であることを。悪というものは常に息を潜めて機会を伺っていることを。

 真の平穏への道は長く、険しい道のりであることを。

 

 

 

 

 タイムジャッカー、クォーツァーとの戦いを終えたソウゴ達を待っていたのは──

 

「……何で俺がお前と一緒に買い物なんてしないといけないんだ」

「もー、ゲイツー。それ言うの三回目だよ? ジャンケンで決まったんだからしょうがないでしょ?」

 

 ──拍子抜けする程に平和な日々。それを表すかの様にソウゴとゲイツはお使いをしている。ソウゴは困った顔をし、ゲイツは不機嫌な表情となっているが。

 事の発端はソウゴの大叔父である順一郎に買い物を頼まれたことであった。丁度ソウゴ達の手も空いていたので二組に分かれることとなったのだが、組み分けの仕方はジャンケンであり、ソウゴとゲイツは見事に負けて男二人で買い物をする羽目になった。

 ゲイツは今でも組み分けに納得していない様子。

 

「何? そんなにツクヨミと一緒が良かったの? デートでもしたかった?」

「ば、馬鹿を言うなっ! お、俺が何時そんなことを言った! 俺は! ただ! ウォズがツクヨミに迷惑を掛けていないか心配なだけだっ!」

 

 分かり易く動揺するゲイツ。純情な性格をこれでもかと見せつけて来る。ソウゴは愚痴を続けるゲイツを少し揶揄うつもりで言っただけなのだが、予想外の過剰な反応に思わず笑ってしまった。

 

「何が可笑しい!」

「ごめん、ごめんって!」

 

 顔を真っ赤にしてソウゴの首を腕で締め上げるゲイツ。照れ隠しのそれを敢えて受けながらソウゴはこみ上げてくる笑いをどうしても堪えることが出来なかった。

 傍から見れば同年代の友人同士の戯れ。周りの歩行者達も特に気にすることはせず、視線を一度チラリと向ける程度で足を止めずに通り過ぎていく。

 何のおかしくもない平和な光景の一部分であった──この瞬間までは。

 

「ははは──っ!?」

 

 ソウゴは突如として悪寒を覚えた。何か良くないことが起こる。彼の直感が警報を鳴らす。

 ソウゴの変化をゲイツも察し、締めていた腕を離して怪訝な表情となる。

 

「ソウゴ、どうした?」

「何か……何か嫌なことが起こる気がする……」

「嫌なことだと……?」

 

 ゲイツはそれを考え過ぎだと一蹴しなかった。それを聞いた途端にゲイツの表情は戦士のものへと切り替わる。ソウゴの言葉を即座に信じるのは、彼らの間にある信頼関係の強さの表れであった。

 

「──来るっ!」

 

 ソウゴの悪寒が最大まで高まった瞬間、世界に虹色の波紋が広がる。

 

「何、あれ……?」

「何が起こっている!」

 

 虹色の波紋は急速に広がっていき、ソウゴ達にもその波紋が迫って来る。

 

「うわあっ!」

「くっ!」

 

 思わず両腕で眼前を防御する二人。波紋が彼らを通過していく。

 

『……?』

 

 体に異変は無い。それが分かった二人は空を見上げる。

 

「……あんなのあったっけ?」

「……いや。それよりもあんな物が今の時代にあるのか? それにここにはこんなにビルが建っていたか?」

 

 再び見上げた空には大きな飛行船が浮かんであり、そこには巨大なスクリーンが吊るされていた。そして、それを囲う様に大きなビルがいつの間にか並んでいる。さっきまでこんな光景は無かった。

 映し出された映像の中ではアナウンサーらしき女性がニュースを読み上げている。そして、二人はアナウンサーの容姿に奇妙な点を見つける。

 アナウンサーの両耳は翼の様な形をしたパーツで覆われていた。イヤホンとしては大き過ぎるし、目立ち過ぎる。

 

『──これにより、我々ヒューマギアの占領区は拡大され、人類滅亡まであと僅かとなりました』

「ヒューマギア?」

「人類滅亡だと……?」

 

 聞いた事の無い単語と物騒な言葉に二人は揃って戸惑う。間違いなく異常事態が起こっている。

 

「もしかして、タイムジャッカーが……?」

「馬鹿な!? 奴らはもう居ない筈だ!」

「でも、こんなことが出来るのってタイムジャッカーぐらいでしょ?」

「それは……そうかもしれんが……」

 

 認めたくない事実だが、こうも周りが現実を突き付けて来るとゲイツも認めざるを得ない。

 

「兎に角、ツクヨミとウォズに連絡を──」

「待て」

 

 スマートフォンを取り出そうとしたソウゴをゲイツは制止する。

 

「……周りを見ろ」

「周りって……えっ!」

 

 ソウゴはそこで気付く。周囲の老若男女が全員足を止め、自分達を無機質な凝視している光景に。

 全員に共通しているのは、映像に映っていたアナウンサーと同様に両耳に機械のパーツが付けられている。

 

「人間だ」

「人間だ」

「人間を発見」

「人間を発見」

「人間だ」

「人間だ」

 

 一同が口を揃えて同じ言葉を発し続ける様子はホラーそのものでしかない。

 

「人間は──皆殺しだ」

 

 スーツ姿の中年男性がその言葉と共に襲い掛かり、ソウゴの首を締め上げる。

 

「ぐうっ!」

「ソウゴ! うおっ!」

 

 助けようとするゲイツであったが、彼もまた買い物帰りの主婦に攻撃される。

 

「何、だよ……!」

 

 ギリギリと首を締め上げられていく。ソウゴは中年サラリーマンの両手を引き剥がそうとするが、凄まじい怪力で中々剥がすことが出来ない。

 

「この力……! 人間じゃないのか……!」

 

 ゲイツも主婦の両腕を掴んで抵抗する。だが、普段から鍛えているゲイツですら主婦のか細い腕の力に押されていた。

 

「まさか……こいつらが……ヒューマギアだというのか……!」

 

 ゲイツの疑問に答える様に周囲の者達は同じ言葉を発し続ける。

 

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

 

 無機質な殺意を浴びせられる中でゲイツはまだ大丈夫であったが、ソウゴは追い込まれていく。

 

「う、く……」

 

 ヒューマギアの指が喉に食い込み、息が出来なくなる。サラリーマン型ヒューマギアの力の前にソウゴの抵抗も無意味なものであり、酸素だけでなく血流も止まり始め意識が段々と遠のいて行く。

 そんな中、ソウゴは抵抗を諦めたのかサラリーマン型ヒューマギアの指から手を離す。だらりと下げられる両手。だが、その両手がズボンの中へと突っ込まれる。

 ズボンから手が引き抜かれた時、その両手には二つのウォッチが握られていた。

 ウォッチのスイッチを押し、渾身の力で放り投げる。

 

『スイカアームズ! コダマ!』

『タカウォッチロイドー!』

 

 ウォッチから小型のロボットとなったのはコダマスイカアームズ。飛翔するタカへと変形したのはタカウォッチロイド。

 コダマスイカアームズはサラリーマン型ヒューマギアの体を足場にして数度跳躍。顔面前まで跳び上がるとサラリーマン型ヒューマギアの顔目掛けて両手指先からスイカの種型の弾丸を飛ばす。

 

『あ、コダマシンガン!』

 

 タカウォッチロイドもゲイツを襲っている主婦型ヒューマギアに向かって飛翔。

 

『サンダーホーク! 痺れタカッ! タカァァ!』

 

 その顔に電撃を帯びた突撃を喰らわす。

 思わぬ攻撃に怯み、攻撃の手が緩む。その隙にソウゴは指を引き離して体当たりで突き飛ばし、ゲイツも相手の体勢を崩して投げ転がす。

 

「ゲホ! ゲホ! ──ツクヨミとウォズを呼んで来て!」

 

 咳き込みながらもソウゴはタカウォッチロイドに指示を飛ばす。

 

『探しタカ! タカァァ!』

 

 その指示に従い、ツクヨミ達を見つける為にタカウォッチロイドは飛び去って行く。

 

「──人間は皆殺しだ」

「──人間は皆殺しだ」

 

 ソウゴとゲイツに転倒させられたサラリーマン型ヒューマギアと主婦型ヒューマギアが何事もなかったかの様に立ち上がる。

 二体のヒューマギアは同じ動作、タイミングで衣服の中からある物を取り出す。

 銀色のバックルらしき物体。何かを挿し込むスロットが設けられているだけで殆ど飾り気が無い。意匠があるとしたら赤いチューブが何本か付けられている程度。

 『まさか……』と二人はそれだけ見て経験からこれから起こることを察する。

 二体のヒューマギアの目が赤く輝き、両耳の装置から円形の赤い図が投影される。

 

『人間は皆殺しだ』

 

 同調した動き銀色のバックルを腹部に押し当てると、バックルからベルトが射出される。ベルトの裏側にはびっしりと棘が付けられており、食い込む様にしてバックルが装着される。

 

『KUHENEO!』

『EKAL!』

 

 長方形の物体のスイッチを押すとその物体の名、或いは込められた力が読み上げられる。

 それをバックルのスロットに挿し込み、反対側に設けられたスイッチを押し込む

 

『ZETSUME RISE!』

 

 バックルから赤いチューブが伸び、スロットに挿し込まれた物体を貫く。

 発生するエネルギーによりヒューマギアの表面を覆っていたコーティングが剥がれ落ち、下から機械そのものと言える白い装甲の本体が露出する。

 目を赤く発光させながら口を開き、無数のケーブルを吐き出すとそれがヒューマギアを繭の様に覆い、一瞬にして二体を異形へと変形させる。

 

「これがヒューマギアの本当の姿だと言うのか……?」

 

 現れた二体の異形にゲイツは表情を険しくする。

 扇形の赤い頭部に胸から皮膜の付いた両羽を生やすのは、クエネオスクースという絶滅した爬虫類をモチーフとしたクエネオマギア。

 青い複眼にげっ歯類に似た顔から長い牙を伸ばす、こちらも絶滅種の哺乳類であるエカルタデタをモデルにしたエカルマギア。

 二体のマギアは体からコードを伸ばし、周囲のヒューマギア達へ突き刺す。

 そこから送られたデータによりヒューマギア達の表層を覆うコーティングは剥がれ、機械部分が露出。更に顔面や体の各部を覆う白い外装も弾け飛び、骸骨の様な内部が剥き出しとなる。その後、顔面部分がシャッター状のプロテクターで覆い隠された。

 マギアの力によって作り直された即席の戦闘員──トリロバイトマギアはナイフや銃を生成してソウゴ達を囲む。

 

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「人間は皆殺しだ」

「それしか言えんのか!」

「……何か壊れちゃってるみたい」

 

 無感情だろうと悪意に塗れた言葉を言われ続け、ゲイツは苛立ちながら吐き捨てる。一方で同じ言葉しか繰り返さないマギア達にソウゴは僅かながら憐憫の感情を抱いた。

 傍から見れば絶体絶命の状況。しかし、ソウゴ達は絶望などしていなかった。

 見たこともない怪人の出現には少々驚かされたが、その間に彼らは身に沁みついた動きでジクウドライバーを装着しており、手にはライドウォッチが握られている。

 

「厄介なことになってる……早くツクヨミ達と合流しないと!」

「なら、とっととこいつらを倒すぞ! ソウゴ!」

『ジオウ!』

『ゲイツ!』

 

 多勢に無勢。だが、何一つ恐れることなど無い。隣には頼れる仲間が居るのだから。

 ジクウドライバーにライドウォッチを挿し込み、中央のロックを外す。マギア達もその行動に畏怖を抱いたのか、一斉に襲い掛かろうとしてきた。

 

『変身!』

『ライダーターイム!』

 

 二人の背後に文字盤を模したエネルギーが発生。そこから飛び出す『ライダー』と『らいだー』の具現化した文字が迫っていたマギア達を弾き飛ばす。

 殺到してきたマギア達を薙ぎ倒し、安全圏を築いた所で文字盤型エネルギーが発する力が二人の姿を変える。

 

『仮面ライダージオウ!』

 

 黒のボディスーツに胸部中央に時計のベルトを模した銀の装甲を付け、その仮面にはマギア達を薙ぎ倒したマゼンタカラーの『ライダー』の文字が嵌め込まれ複眼となる。

 

『仮面ライダーゲイツ!』

 

 赤をベースとしたスーツ。ジオウと同じく中央に時計のベルトに似た装甲を付けているが色は黒となっている。蝶の羽根の様に広がる仮面に『らいだー』の文字が収まると同時に複眼が黄色く輝いた。

 ジオウとゲイツ。激戦を潜り抜けてきた二人のライダーがマギア達と対峙する。

 

「たあっ!」

「はあっ!」

 

 二人の変身に戸惑ったかの様に一瞬硬直するマギア達。その隙にジオウ達は駆け寄り、先制の拳をトリロバイトマギア達に喰らわす。

 二人の拳が命中するとマゼンタと黄色の閃光が発せられ、二体のトリロバイトマギアは顔面のプロテクターを破壊されて転倒する。

 転倒したトリロバイトマギア達は、破壊された部分から青白い電流を迸らせながら痙攣の様に手足をばたつかせる。ジオウとゲイツの一撃によって既に戦闘不能状態にさせられてしまったのだ。

 この段階で変身した二人を脅威と捉えたクエネオマギアとエカルマギアは少しでも情報を得る為にトリロバイトマギア達を先行させる。

 同胞の惨状を見れば敵わない相手だと判断出来る筈だが、機械である彼らがそれに恐怖心を抱くことはせず、与えられた指示通りに動く。

 数体のトリロバイトマギア達がナイフを構えてジオウへと押し寄せる。

 

『ジカンギレード! ケン!』

 

 側面に『ケン』と描かれた片刃剣がジクウドライバーから召喚され、その柄を握ったジオウはトリロバイトマギア達のナイフが振るわれるよりも速く接近し、擦れ違い様にジカンギレードで斬り付けていく。

 第三者が見れば流れる様な動きでジオウがトリロバイトマギア達の間を通り抜けたかと思えば、いつの間にかトリロバイトマギア達の体に斬撃の痕が刻まれていることに気付くと同時にトリロバイトマギア達が爆散する光景を目撃しただろう。

 瞬時に数体のトリロバイトマギアを破壊したジオウを見て、近距離戦は不利と判断し離れた場所から残りのトリロバイトマギア達が銃撃を行おうとする。

 

『ジカンザックス! Oh! No!』

 

 ゲイツのドライバーから飛び出した赤い光がその内の一体へと向かい、側面『おの』と描かれた斧として実体化すると同時に眉間へと刃が突き刺さる。

 頭部を叩き割れて行動不能となるトリロバイトマギア。しかし、仲間が行動不能されても他のトリロバイトマギア達は動揺することなく銃を構え続ける。

 ゲイツが手を翳す。そのタイミングでトリロバイトマギアは爆発し、爆風で飛ばされた斧──ジカンザックスが翳していたゲイツの手に収まる。

 トリロバイト達が一斉に銃弾を放つ。ジオウ達は息を揃えて側方宙返りをし弾丸を回避する。尚且つその間に武器を変形。

 

『ジュウ!』

『You! Me!』

 

 ジカンギレードは銃形態に、ジカンザックスは弓形態となると視界が回転し、足が宙に浮いているという不安定な体勢から同時に引き金を引く。

 撃たれた光弾はトリロバイトマギア達の頭部や胸部を撃ち抜き、射られた光矢は眉間や胴体を射抜く。

 二人が地面に足を着けた時、トリロバイトマギア達は爆発。全てのトリロバイトマギア達はあっという間に全滅してしまった。

 

「人間は皆殺しだ……」

「人間は皆殺しだ……」

 

 その光景を目の当たりにしてもクエネオマギアとエカルマギアは同じ言葉しか吐かず、逃げる素振りすら見せない。恐怖という感情は無い様子。

 クエネスマギアは胸部に付けた両翼を取り外し、ジオウ目掛けてそれを投擲。

 

「おっと」

 

 ジオウはそれをしゃがんで回避。放たれた翼剣はジオウの頭上を通過していく。

 すぐに立ち上がり、ジカンギレードの銃口をクエネスマギアに向ける。クエネオマギアは前傾姿勢となりいつでも反応出来る様にする。

 ジオウの背後では投擲された剣が旋回してクエネオマギアの方へ戻って来ている。剣ではなくブーメランであった翼がジオウを背後から襲おうとする。

 

「気付いてるよ」

 

 ブーメランが背中を切り裂こうとした瞬間、ジオウは後ろへ倒れ込む。ブーメランがジオウの眼前を通り過ぎていく。

 そして、ジオウは倒れながらも銃口をクエネオマギアへと向けており、ブーメランを回避と同時に発砲。光弾はクエネオマギアの体の各部に命中し、火花を上げる。

更に銃撃によって怯んだことで本来ならばキャッチする筈のブーメランを取り損ね、ブーメランは使い手であるクエネオマギアの体を切り裂いた。

 この戦いの間にゲイツとエカルマギアの戦いも行われていた。

 エカルマギアは素早い動きでゲイツへ接近すると同時に前蹴りを繰り出す。しかし、ゲイツはそれを難無く躱しつつ、ジカンザックスを弓形態から斧形態へと変形させていた。

 

『Oh! No!』

 

 エカルマギアが両手を左右から振るう。ゲイツは右手を手刀で叩き落としながら左手にはジカンザックスを叩き付ける。

 

『タイムチャージ!』

 

 ジカンザックスのスイッチに接触させたことでジカンザックスがカウントダウンを始める。

 

『5、4、3、2』

 

 ジカンザックスが読み上げる中、エカルマギアは獣の如き俊敏さで連続攻撃を繰り出す。だが、それら全てはゲイツにダメージを与えることは出来なかった。全部躱され、弾かれ、叩き落されてしまう。

 数々の怪人らを撃退してきたゲイツからすれば、エカルマギアの動きは教科書のお手本の様な常道的な攻撃であり、こう動けば相手はこう動くという感じで先読みし易いもので手に取る様に分かる。

 今もゲイツが自然な動きで距離を開けるとそれを追撃する為に蹴りを放とうとするが、ゲイツはその動きが分かっていたのでエカルマギアの脛に爪先を当て、エカルマギアの蹴りを潰す。

 

『1、 ゼロタイム!』

 

 ジカンザックスがエネルギー充填完了を告げる。そのタイミングでエカルマギアは生やしている牙を延長させ、槍の如く突き出す。

 相手の不意を突く完璧な奇襲。ゲイツは為す術無く牙によって貫かれる──エカルマギアのAIの計算はそう導き出していた筈だった。

 

「!?」

 

 この時、エカルマギアのAIは一瞬計算を止めた。伸ばした牙の先に貫くべきゲイツの姿が無かったのだ。

 牙の根元に赤色に輝く刃が当てられる。いつの間にか側面に移動していたゲイツがジカンザックスを当てていた。

 エカルマギアが計算ならゲイツは戦いで培ってきた経験によりエカルマギアの奇襲を読み切る。

 

『ザックリ割り!』

 

 振り上げられたジカンザックスがエカルマギアの牙を二本とも斬り飛ばす。

 牙を根本から切断されたエカルマギアは、それを痛がる様に牙があった箇所を押さえて後退する。

 ジオウ、ゲイツは共に相手へ大きなダメージを与える。それにより必殺の一撃へと繋げる。

 

『フィニッシュタァァイム!』

 

 ジオウは自らのライドウォッチのスイッチを押す。クエネオマギアは何かが起こると判断して身構えるが何も起こらない。

 注意深く周囲を観測し、そこで気付く。自分の足元に『キック』と描かれた文字が文字盤の如く十二並んでいることに。

 クエネオマギアはすぐに『キック』の文字の囲いから逃げようとするが、地面に描かれた文字が実体化し、クエネオマギアに衝突。

 体をくの字に曲げて吹っ飛ばされるクエネオマギア。その背に別の『キック』の字が当たり、斜め上へ打ち上げられる。

 そこへ来る『キック』の追撃。クエネオマギアに次々と体当たりをして空へと上げていく。

 十二番目の『キック』が顎を突き上げた時、クエネオマギアは真上を見させられる。クエネオマギアの頭上には既に跳び上がっていたジオウが右足を突き出して待ち構えている。

 

『タイムブレーク!』

 

 クエネオマギアを打ち上げ続けていた『キック』の文字がジオウの右足裏へと重なり、破壊の為のエネルギーへ戻る。

仮面にある『ライダー』、右足裏にある『キック』の文字が同時に輝くとクエネオマギアの胴体にジオウのキックが命中。打ち込まれた瞬間に余剰エネルギーであるマゼンタの光が波紋の様に広がっていく。そして、マゼンタの波紋が広がる光景の中で衝撃とエネルギーを同時に流し込まれたクエネオマギアは爆散した。

 

『フィニッシュタァァイム!』

 

 ゲイツのライドウォッチが叫ぶとエカルマギアの体がノイズの様に一瞬だけブレる。

 すぐさまエカルマギアは自分の体に異変が起きていないか識別するが異常は見られなかった。

 だが、直後に視界センサーがすぐ側に何かが現れたことを告げる。即座に構えながらセンサーが告げた方向を見るエカルマギア。

 この時、エカルマギアの人工知能は一瞬だが完全なフリーズ状態となる。

 そこに居たのはエカルマギア自身。半透明の姿となり状態を大きく仰け反らせた体勢になっている。

 何故そんなものが出現したのか。エカルマギアの人工知能は理解不能な出来事に遭遇してしまい、答えが導き出せず思考を強制的停止してしまう。

 ゲイツが必殺の体勢に移行しているにもかかわらず。

 

『タイムバースト!』

 

 跳躍したゲイツからエカルマギアまで連なって伸びる『らいだー』と『きっく』の文字。その文字の終着点はエカルマギアの胸部前。

 

「はあああっ!」

 

 文字を仮面と右足裏に収めながら降下するゲイツ。不可思議な現象に思考を取られていたエカルマギアは迫っていることに意識が向けられず、気付いた時には回避不可能程までに接近されていた。

 エカルマギアの胸部にゲイツのキックが直撃する。致命傷と即座に判断出来る衝撃がエカルマギアを貫いた。

 キックの反動で少し離れた位置にゲイツが着地すると、エカルマギアはダメージの影響でおぼつかない足取りでフラフラと移動し、エカルマギアと先に投影されていたエカルマギアと重なり上体を仰け反らせることで完全に一致。

 定められた未来の答え合わせをするかの様にエカルマギアの胸部に亀裂が入り、そこから爆炎を噴出させ、エカルマギア爆発しては粉々となった。

 状況が分からぬまま敵を全て倒したジオウ達であったが、勝利の余韻を味わう暇は彼らには無かった。

 

「やばっ……!」

「まだこんなに居るのか!?」

 

 ジオウ達の周りには戦闘に気付いたヒューマギア達が集まっていた。その数はさっきの戦いの二倍、否、三倍は居り今も数が増えている。

 息つく暇も無く次の戦いが始まろうとしていた。ジオウとゲイツの戦闘力ならヒューマギア達にも無難に勝てるだろうが、いつまでも続く訳では無い。戦い続ければ体力を消耗し、消耗が増えれば集中力などを欠き相手に付け入る隙を与えてしまう。

 飛行船のアナウンサーが喋っていた情報が確かなら、この世界では人類は僅かしか存在せず、殆どがヒューマギアに置き換わっている。

 こんな状況で戦っても終わりの無い不毛な戦いにしかならない。叩くならば世界がこんなことになった元凶を叩くべきである。

 ジオウはゲイツにアイコンタクトを送る。ジオウの視線の意図に気付き、ゲイツは無言で頷く。

 脱出口を開く為にまず周囲を囲うヒューマギア達を蹴散らそう考えた矢先──不可視の力が風の様に吹き抜け、ジオウ達以外を全て停止させてしまう。

 ジオウ達はその現象に驚かない。時間操作による対象の時間停止。これは彼らの仲間の能力である。

 

「ソウゴ! ゲイツ!」

 

 白いワンピースの上にマントの様な衣を羽織った黒髪長髪の女性──ツクヨミがジオウ達に名を呼ぶ。その傍では彼女を見つけてここまで導いてきたタカウォッチロイドが飛び回っている。

 

「ツクヨミ!」

「無事だったか!?」

 

 仲間の一人の無事を確認でき、安堵しながら二人はツクヨミの許へ行く。

 

「あれ? ウォズは?」

 

 そこで彼女と一緒に行動していた筈のウォズが居ないことに気付く。

 

「ウォズのことはどうでもいいから! 先ずはここから離れましょ!」

 

 心なしか怒っているツクヨミに二人は黙って頷くしかなく、言われた通りに安全な場所を目指してこの場所から移動を始めた。

 移動すれば簡単に見つけてしまうヒューマギア。戦闘開始になる前にツクヨミの時間停止を使って逃げる。懸念していたことが正しかったと示す様に移動する度にヒューマギアと出会ってしまう。

 そんな苦労の末、やっとヒューマギアの目が届かない路地裏へと三人は辿り着く。

 

「えーと……ウォズはどうしたの?」

 

 先程聞いてツクヨミが不機嫌になったので、ソウゴは恐る恐る不在のウォズについてもう一度尋ねる。

 

「……ウォズったらこの世界がおかしくなったタイミングで『少し調べることが出来た』って言って私を置いて一人で何処かに行ったのよ! おかげで私一人でどれだけの相手をしたか……!」

 

 世界の異変を感じ取った瞬間に独断専行をしたらしいウォズ。勝手な真似をされた挙句、敵しか居ない場所で置いて行かれたツクヨミはよっぽど腹が立ったのか可愛らしい顔立ちが般若の如き表情と化している。

 

「ウォズめ……また勝手なことを」

 

 色々とあって蟠りは解けたが、今でも何を考えているのか読めないウォズにゲイツは愚痴るが、その声には心配も含まれていた。

 

「まあ、ウォズも強いし大丈夫な気がする」

 

 ウォズの実力を信頼し、不安など無い様に言うソウゴ。その前向きさは周囲の不安などを吹き飛ばす力があった。

 

「はあ……それは分かっているけど、万が一の場合もあるでしょ? ──この世界はもう私達の知っている世界じゃないのよ?」

 

 少しだけ溜飲を下げたツクヨミが不満そうに言う。置いて行かれたことへの怒りの他にも一人で危険な行動をとったウォズに対する怒りもあり、結局のところは彼女もまたウォズのことを心配しているのだ。

 

「そんなに心配なら呼んでみる? ウォズー」

 

 ソウゴは適当な方向を向いてウォズの名を呼ぶ。

 

「……私は犬や猫じゃないんだけどね?」

 

 灰緑の近未来的なデザインのコートに灰色のストールを持ち、手には『真・逢魔降臨暦』と描かれた分厚い本を持った青年──ウォズが不機嫌そうな表情でソウゴ達のすぐ傍に音も無く姿を現す。

 

「ウォ──」

「ウォズッ!」

 

 ソウゴよりも先にツクヨミが怒りの表情でウォズのストールを掴み上げた。

 

「勝手にっ! 一人でっ! 行動しないっ!」

 

 ツクヨミは感情のままウォズの体を前後に揺さぶる。ウォズは詫びの意味を込めてかツクヨミにされるがままであった。

 それを見兼ねてソウゴとゲイツが助け舟を出す。

 

「まあまあ。ツクヨミ、落ち着いて」

「気持ちは分かるが、前からこういう奴だったろ?」

 

 二人に宥められ、ツクヨミは渋々ながらウォズのストールから手を離す。解放されたウォズは、乱れたストールを直していた。

 

「本当に悪かったとは思っているよ、ツクヨミ君。──しかし、今回は前触れの無い異常事態だったから、一刻も早く調査する必要があったんだ。……それにツクヨミ君の実力なら相手が百体、二百体程度でも──」

「引っ叩かれたいの?」

「──失礼」

 

 ペラペラと喋るウォズを睨み付けながらの一言の威圧感に、流石のウォズも口を慎むしかなかった。

 

「それで? 勝手な事をしたからにはそれなりの成果はあったんだろうな?」

「勿論さ。恐らく今回の異常事態の発端はこの会社からだ」

「会社?」

 

 ウォズは『真・逢魔降臨暦』を開き、間に挟まれていた折り畳まれた紙を取り出し、広げる。

 それは古びたポスターであった。

 

『新たな時代に新たな技術を』というキャッチフレーズを添えられた会社の名は──

 

「飛電インテリジェンス?」

 

 

 




ジオウsideはここまで。次はゼロワン視点となります。
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