仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
(さっきから攻撃が見えねぇ……!?)
目にも止まらぬ速度で打ち込まれる連続攻撃。しかも一発一発が重い為、常人離れした耐久力を持つバルカンであっても膝を折ってしまう。
(こんな仮面ライダーが居るのか……!?)
十二年前の技術であってもバルカンを圧倒する謎の仮面ライダー。まだ相手が全力を出していないことに戦慄すら覚える。
「殺しはしない。ただ質問に答えろ」
淡々と語る謎の仮面ライダー。実力の方は客観的に見ても謎の仮面ライダーの方が上である。しかし、バルカンの力の根幹は性能によるものでは無い。
変身者である不破の不屈の精神力がバルカンの力なのだ。
「くっ……」
蹲るバルカン。相手が喋るのを待つ謎の仮面ライダー。
それが仇となる。
『REVOLVER!』
「待て。何をしている?」
蹲った姿勢でバルカンが何かをしていることに気付き、バルカンを引き起こそうとするが、その前にバルカンの方から上体を起こす。
ベルトに装着された状態のショットライザーの引き金が引かれる。謎の仮面ライダーは間近で受けるのは危険と判断して瞬時に後方へ飛ぶ。
『SHOT RISE!』
ショットライザーから撃ち出された弾丸は軌道を自在に変えて謎の仮面ライダーを追尾。しかし、十分な距離があったので謎の仮面ライダーは撃ち出された弾丸を回し蹴りで迎撃した。
その瞬間、弾丸は分解され内部から幾つものパーツが飛び出す。
「何?」
飛び出したパーツに向かってバルカンが突っ込んで行くと、パーツは深緑色のアーマーへ再構築されバルカンに装着される。
『GATLING HEDGEHOG!』
ガトリングヘッジホッグへと換装したバルカンが拳を突き出すと、そこから無数の針が伸び、相手を刺し貫こうとする。
「また知らないプログライズキーを」
謎の仮面ライダーは冷静さを保ったまま右足を振り上げ、伸びて来る針を側面から一蹴し全て蹴り砕く。
針を砕かれた衝撃でバルカンの腕は横に弾かれるが、すぐさま反対の拳を突き出す。今度は前方に伸びるのではなく、フレイルの様に様々な角度に向けて伸ばす。
先程の様に防ぐことは出来ないと判断した謎の仮面ライダーは、すぐに後方へと下がり、針の射程から離れた。
距離が開いた瞬間、バルカンはショットライザーを構えて弾丸を発射。
ガトリングヘッジホッグの影響で撃ち出される弾は深緑色のエネルギーで出来た針となっている。ガトリングの名に相応しく一回引き金を引かれただけでその何十倍もの針が銃口から撃ち出された。
弾速で飛ばされる多数の針。だが、謎の仮面ライダーにとっては脅威ではない。
『ROCKING SPARK!』
彼はそれよりも速いからだ。
首周りの装甲から赤いエネルギーが放出されると共に謎の仮面ライダーは高速で動き始め、撃ち出された針を回避或いは拳、足で弾き飛ばしていく。
バルカンが反応しきれない内に背後へと移動し、戦闘不能にする為に拳を握り締めると一気に突き出した。
無防備な背中へ吸い込まれていく謎の仮面ライダーの拳。だが、ある程度まで近付いた時、バルカンの背面の装甲に変化が起こる。
装甲が隆起し、針となって伸びて来たのだ。背中から無数に棘を生やす姿はヘッジホッグそのもの。
謎の仮面ライダーは咄嗟に拳を止めると同時に体勢を変える。伸びてきた針は拳の側面を掠め、半身となった謎の仮面ライダーの肩や胸部の装甲の一部を削る。
あと一歩踏み込んでいたら針が密集した箇所に拳を打ち込む、拳がズタズタになっていただろう。それだけでなく体も貫かれていた危険もあった。
カウンターとして発揮されたガトリングヘッジホッグの能力だが、バルカンは未だに謎の仮面ライダーの攻撃を認識していない。能力が発動したのは、バルカンが長年の戦いで得た経験による攻撃に対する直感に反応し、無意識のうちに発動したからであった。
戦士としての経験とプログライズキーが合わさることで出来た。バルカンですら知らなかった自動迎撃能力である。
間一髪の所で制止出来たが、同時にそれは動きを止めてしまったことを意味する。
高速移動状態が解けてしまった謎の仮面ライダーは、再び高速移動を開始しようとするが──
「掴まえたぞ……!」
後ろに伸ばされた手がドライバーに触れようとしていた謎の仮面ライダーの腕を掴んだ。
バルカンは上半身を捻り、後ろに立つ謎の仮面ライダー目掛けて拳を繰り出そうとする。しかし、バルカンの腕が伸びる前に謎の仮面ライダーの拳が顎を打ち、続けて肘で頬を叩く。一撃と錯覚する程の素早い二撃であった。
高速移動をしなくとも徒手空拳に秀でている謎の仮面ライダー。バルカンの動きが止まる。
「っおおおお!」
が、それは一瞬だけのこと。痛みを無視して拳を突き出す。
謎の仮面ライダーはダッキングで回避し、バルカンの脇腹へ拳の一撃。体が折れて顎が下がると膝で突き上げる。バルカンが仰け反ったところに胴体への中段蹴りが命中する。
お手本の様な連続攻撃によりバルカンは壁へ蹴り飛ばされる──
「むっ」
──腕を掴まれた謎の仮面ライダーと一緒に。
謎の仮面ライダーにとっては少々予想外であった。彼の計算では先程の三連続攻撃を受ければ手が緩まり、解放される筈であった。
だというのにバルカンの手は全く離す気配が無い。ミシミシと音を立て、寧ろより掴む力が増した気がする。
壁に背中から激突するバルカン。それに引き寄せられる謎の仮面ライダーであったが、引き寄せられる力を利用し、バルカンの鳩尾に射抜く様に爪先を捻り込む。
まず間違いなく意識が飛ぶレベルの攻撃。だが、バルカンの力は緩まない。
「そんな、もんかっ……!」
バルカンは至近距離でショットライザーを発砲。謎の仮面ライダーは銃口を下から腕で持ち上げることで狙いを逸らし、バルカンの胴体に四連続で蹴りを打ち込んだ。壁に挟むことで衝撃の逃げ場を無くす徹底した攻撃。
衝撃はバルカンを突き抜け、壁に罅や亀裂を生じさせる。
「がはっ!」
キックの威力でバルカンの口から衝撃によって絞り出された空気が吐かれる。だが、やはりと言うべきかバルカンは意識を保ち、謎の仮面ライダーの腕を掴んだままだった。
「……お前、本当に人間なのか?」
謎の仮面ライダーは通常の人間を基準に計算し、攻撃している。とっくに気絶していてもいいダメージを与えている。それどころか人体に重大な影響が出ていてもおかしくない。
だというのに意識を手放さないバルカンに対し、思わずその疑問を口に出してしまう。実はヒューマギアであると言われた方が計算の違いに納得が出来る頑丈さである。
「当たり前だっ!」
人外扱いされたことに憤慨しながらショットライザーで殴り掛かる。謎の仮面ライダーは屈んで回避すると同時に前に踏み出し、バルカンに肩から衝突した。
再び壁へ押し付けられるバルカンであったが、それにより罅が入っていた壁が壊れる。
バルカンは構うことなく銃撃または針による刺突を行い、謎の仮面ライダーはそれを華麗に捌きながら的確にダメージを与える。
何かの研究室へ二人揃って強制突入しながらもまるで意に介さず至近距離での攻防を続ける。
◇
ソウゴに頼まれ不破を一人探し続けるツクヨミ。
「もう……何処へ行ったのよ、不破さんは」
未だに見つからない不破に思わず愚痴を零す。ツクヨミは不破を探す過程で暴走したヒューマギアに襲われている作業員の救助も行っていたので中々思う様に事が進まないこともツクヨミを焦らせる要因になっていた。
足音が聞こえ、ツクヨミはファイズフォンXを構えながら壁に張り付く。そして、慎重に壁の向こうの様子を窺う。
「ニンゲンハミナゴロシダ」
「ニンゲンハミナゴロシダ」
ヒューマギアが何体か通路を走っている。言葉通り人間を探していた。
同じ言葉を繰り返しながら通路を移動するヒューマギア。ツクヨミはこちらに向かっていることに気付く。
戦う選択肢もあったが、今のツクヨミの目的は戦闘ではない。無駄な戦闘は避けようと考えていた時、ツクヨミは扉の開いた部屋を見つけた。
ヒューマギア達に発見される前に部屋の中に入り、身を隠すツクヨミ。ヒューマギアらが走り去って行くのが壁越しでも分かった。
遠くへ行ったことを確認し、ツクヨミは深く息を吐きながら隠れていた部屋から出ようとする。
そこでツクヨミはある物に気付き、足を止める。
「これって……!」
机の上に置かれている既存の設計ではない銃火器。ドライバーと思わしき機械。どれも塗装などされておらずプロトタイプを思われる。
「何でこんな物がここに?」
ヒューマギアを開発する工場としては不似合いな物にツクヨミは疑念が覚える。
他に何かないかと探した時、電源が入ったパソコンを見つけた。
そこには3Dで作成された図面が映し出されている。殆ど専門用語で描かれていたが、ツクヨミにも読める部分はあった。
「衛星アーク……?」
設計図は人工衛星のものらしい。他にはないかとパソコンを操作すると、ツクヨミの手が止まった。
「仮面ライダー開発計画……!?」
見たこともない仮面ライダーの設計図がそこには在り、ツクヨミは驚愕する。もしかしたら、今見ている仮面ライダーがこの時代に於ける始まりのライダーかもしれない。
まだ情報が無いか調べようとした時、地響きの様に室内が揺れ、凄まじい破砕音が聞こえてきた。破砕音は一回だけでなく二回、三回と一定の間隔で聞こえてきており、しかも段々と音が近くなってきている。
情報収集するのを止め、部屋から出るツクヨミ。次の瞬間、壁を突き破って二人のライダーが出現する。
「きゃあっ!」
かなり近かったので思わず驚いて悲鳴を上げるが、戦い合う二人のライダーはツクヨミに害を与える前に再び壁を突き破って何処かへ行ってしまう。
突然のことで少しの間、呆然としてしまうツクヨミ。だが、我に返るとあることに気付いた。
二人の仮面ライダーの内、一人は先程の見たばかりの仮面ライダー開発計画の設計図に描かれていたライダー。もう一人の方はツクヨミも知らない仮面ライダーであったが、消去法から考えて不破が変身した姿だと思われる。不破が仮面ライダーに変身すること自体はツクヨミも知らされていた。
「追い掛けないと!」
二人が破壊した残骸を踏み越えてツクヨミは後を追う。
◇
001とジオウ達の戦いは一方的なものであった。
001の拳がヒューマギアの顔面に命中。大きくよろけた所に強烈なハイキックが当たり動かなくなる。
ジオウは拳による左右の連打を素早く打ち込み、怯んだ所を掴んで他のヒューマギアへ投げつける。
ゲイツは群がるヒューマギアの内、目の前に居るヒューマギアを膝蹴りで離し、続いて右肩を掴むヒューマギアの顔面中央を肘打ち。両手が自由になると背後にしがみついているヒューマギアの首を掴んで投げ飛ばす。
ウォズは前方に並ぶ二体のヒューマギアの顔を鷲掴みにして後頭部を床に叩き付ける。体を起こすウォズに殴り掛かるヒューマギアが居たが、片手でその拳をいなし、掌打で胸部を突いて壁へ突き飛ばした。
元々のスペック差もあるがそこに個々が持つ戦闘技術が加わることにより、数の差など関係ない圧倒的な戦いとなる。
このまま一方的な戦いで終わると思いきや──轟音が場に響き渡る。
「何?」
「何だ?」
音の近くに居た001とジオウは音の方へ向かう。すると、砕けた壁面の上で二人の仮面ライダーが対峙している。
「不破さん!?」
独断専行していた不破を見つけたこと、変身して未知なる仮面ライダーと戦っていることに001は驚く。
「何あのライダー……?」
ジオウはバルカンと戦っている謎の仮面ライダーを警戒する。
声を掛けられたバルカンは001達の存在に気付く。また謎の仮面ライダーもまた001達に気付くが、その視線はすぐに別の方へ向けられた。
『フィニッシュタァァイム!』
『フィニッシュタイム!』
ジカンザックスとジカンデスピアを取り出し、必殺の一撃を放とうとするゲイツとウォズ。
『ゲイツ! ザックリカッティング!』
『爆裂DEランス!』
ジカンザックスの刃が赤く、ジカンデスピアの穂先が緑に輝くと最大まで高められたエネルギーが刃に乗せられ振るわれ、周囲のヒューマギア達を切り裂き一掃する。
「あっ……!」
謎の仮面ライダーが止める間もなく多くのヒューマギアが爆散し、粉々になる。元が何なのか分からない程の細かな残骸が床へ落ちていく光景を見て、謎の仮面ライダーは伸ばそうとしていた手をゆっくりと握り締めて拳に変えた。
「──離せっ!」
同胞を救えなかった手が拳となってバルカンへと打ち込まれる。
「ぐおっ……!」
胸部へと拳が入った瞬間、バルカンは拳から今までにない重さを感じた。体の奥底、芯まで届く様な言葉に出来ない一撃。やがて衝撃は全身へと伝わっていき、四肢の力を奪う。不死身の様な耐久力と執念を持つバルカンは、その一撃によって崩れ落ち、掴んでいた手を離してしまう。
「その声は……!?」
謎の仮面ライダーの声に001は聞き覚えがある。声の主は──
「お前も何故そのドライバーとプログライズキーを持っている」
敵意に近い眼光が001を貫き、言葉が詰まる。
「そのドライバーとプログライズキーはまだ存在しない筈だ。……お前達もこの男と同じ未来から来たと言うのか?」
「俺達は──」
001は敵意が無い事を示す為に謎の仮面ライダーに近付いていくが──
「ふっ!」
「ぐあっ!」
間合いに入ると同時にハイキックが001に打ち込まれる。001は腕で咄嗟にガードしたが、威力を殺すことが出来ず蹴り飛ばされ、窓ガラスを突き破って研究室へ入って行く。
「くっ!」
謎の仮面ライダーが敵対する意志があると判断し、ジオウ、ゲイツ、ウォズが挑んで行く。
『ROCKING SPARK!』
音声が響くと同時にジオウ達は見えない攻撃により弾き飛ばされ、床や壁へ叩き付けられた。
「うっ!」
「ぐわあっ!」
「っつ!」
全身で障害物の硬さを味わった時にようやく攻撃されたことを認識する。その時には既に謎の仮面ライダーは001の前に立っていた。
「待って!」
立ち上がろうとする001に前蹴り。腕を交差して咄嗟に受け止めようとするが、寸前で止められ、伸ばされた足の膝が曲がり交差した腕が下から蹴り上げられる。
バンザイでもするかの様に両腕の防御が解かれ、がら空きになった胴体に横蹴りが入り001は後退させられる。
謎の仮面ライダーは距離を詰めると同時に膝蹴りを打ち込み、001の体がくの字に曲がった所で振り下ろしの右拳で頬を殴り付け、001を床に這わす。
そこへ001を助ける為にジオウが駆け寄って来る、だが、謎の仮面ライダーは振り返ることなく後ろ蹴りを放ち、ジオウの腹部に足裏を叩き込む。
完璧な形でカウンターが入ってしまい、ジオウの息と呼吸が止まる。謎の仮面ライダーは跳躍しながら振り返り、ジオウの側頭部を蹴り飛ばした。
「うわああっ!」
置かれていた机や椅子、研究道具などを巻き添えにして飛んで行くジオウ。
二人の戦闘力を削ると謎の仮面ライダーは淡々と言う。
「お前達の目的を言え。そして、そのドライバーとプログライズキーを訳も言え」
感情を排した声は尋問でもしているかの様な気分にさせられる。
ジオウは反撃する為に立ち上がろうとする。
「待って!」
だが、それを001が止めると001の方が立ち上がる。
そして、001の手がフォースライザーへ触れる。謎の仮面ライダーは抵抗する意志があると判断し構えるが、予想に反し001は自らドライバーを外して変身を解除した。
戦いの最中での武装解除。自殺行為に等しいが、謎の仮面ライダーは生身となった或人に攻撃を加える様な真似はしなかった。
「歪められた未来を変える為。その為に俺達は未来から来たんだ……父さん」
「え?」
謎の仮面ライダーを父さんと呼ぶ或人にジオウは驚く。謎の仮面ライダーの方を見ると攻撃する意志は無く、探る様に或人を見詰めていた。
これ以上戦いが起こることはないと判断したジオウも変身を解除する。
「お前が……或人だと?」
謎の仮面ライダーのセンサーは或人の輪郭をスキャンする。そして、今の或人のデータと照合し、体格から推測して約十年後の或人の姿を計算する。その結果、細かい差異を計算に入れても96パーセント合致する答えを導き出した。
謎の仮面ライダーはドライバーからプログライズキーを抜き取り、変身を解除する。そこには或人の記憶と寸分違わない嘗ての父──飛電其雄が現れる。
「父さん……!」
過去とはいえもう一度父と再会出来たことに或人は目頭が熱くなる。
「未来の或人……」
一方で其雄は信じ難いという表情をしていた。しかし、彼の中で行われたあらゆる計算が目の前の青年を或人であると認めている。それが荒唐無稽な事実であっても。
「信じ難いが……俺の中ではそれが答えだと導き出されている」
「そうだよ! これだって父さんが俺にくれたんだ!」
フォースライザーを見せる。あの窮地で或人に戦う力を渡してくれたのは紛れもなく其雄であった。これがあったからこそ戦え、生き抜き、過去に来ることが出来た。
其雄は一瞥するとまるで興味が無いかの様に後ろを向いてしまう。
「父さん! 何処へ行くんだよ!」
「──まだ暴走しているヒューマギアが居るかもしれない。俺が暴走を止めなければ、お前達が破壊する危険がある」
「何で父さんが変身しているんだよっ!」
父が仮面ライダーだった。その事実を或人は今知った。幼い頃、そんな片鱗など微塵も無かったというのに。
「ヒューマギアが……笑える世界を造る為だ」
「ええ……」
それだけ言い残し、其雄はこの場から去って行く。
すぐに追い掛け様とする或人であったが、彼の耳に人の呻く声が届く。それも一人や二人では済まない。逃げ遅れた者、怪我をした者達が発する助けを求める為のものであった。
今すぐにでも父の後を追いたい。だが、助けを求める声が或人の足を先に進めさせない。
拳を握り締め、歯を強く食い縛ると或人は父に背を向けた。
「また後で会いに行くから!」
人々を救うことを優先し、ソウゴへと駆け寄る。ソウゴの傍には戦闘を終えたゲイツとウォズが並んでいた。
「或人のお父さんが始まりの仮面ライダーだったんだね」
「この世界の仮面ライダーの歴史はヒューマギアから始まったという訳か」
「謎は深そうだね……」
「うん……でも、今は工場の人達を助けよう!」
或人の言葉に反対する者は居なかった。逃げ遅れた人々の為に研究室から出る。
「──そうだ! 不破さん!」
研究室外に其雄によって動けなくされた不破が居ることを思い出し、彼の許へ行こうとする。
「大丈夫よ」
或人の声に応えたのはツクヨミ。彼女は未だに胸を押さえて苦しんでいる不破に肩を貸してこちらへ歩いて来ている。
「はぁ……はぁ……! 飛電或人……! あの仮面ライダーは……何処へ行った……!?」
痛みによる冷や汗をだらだらと流しながらもその目からは覇気を失っておらず、今にでも戦いに向かいそうな程である。
「不破さん! 安静にしてなきゃ!」
「いいから……言え……!」
「今の不破さんと……父さんを会わせる訳にはいかない」
「何……!? それはどういう意味だ……!?」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
或人へ飛び掛かりそうになる不破をツクヨミが押さえようとする。
「お前の父親が、あの仮面ライダー……おふっ!?」
不破は仰け反り、白目を剥いて気絶してしまう。
「全く……」
不破の暴れっぷりに呆れた様子のツクヨミ。その手にはファイズフォンXが握られていた。
「ええっ!? 撃ったの!? 撃っちゃったの!?」
「気絶させただけよ。不破さんのことは私に任せて。安全な場所へ運んでおく。それと皆に知っておいて欲しい情報があるから後で合流しましょう」
不破を引き摺って行くツクヨミの後ろ姿を或人は啞然とした様子で見ている。
「おしとやかな人かと思ってた……」
「ツクヨミは強いからねぇ」
「あいつも俺と同じ戦士だからな」
「まあ、見掛けだけじゃ全ては分からないといことさ」
「ええ……何その慣れたリアクション……」
平然としているソウゴ達に或人は自分が過剰に反応し過ぎているのでは、と思ってしまいそうになった。
或人やソウゴ達が作業員らの救助に向かう一方で其雄の方も暴走しているヒューマギア達を正気に戻す為に動く。
「其雄」
其雄を呼び止めたのは雷と亡。暴走寸前であったが、其雄のお陰でギリギリの所で踏み止まれた。
「無事だったか。他の仲間達はどうなっている?」
其雄の問いに亡は顔を伏せる。
「……急に暴走を止めた。だが、かなり深刻な記憶障害を起こしている者も居る。もしかしたら、廃棄されるかもしれない……」
「一体何が起こったんだ!? どいつもこいつもおかしくなっちまった!」
「心当たりはあるのか? 其雄?」
「……まだ確信は無い。だが、俺はアークが関与していると思っている」
「アークが?」
「んな馬鹿な……!? あれは俺達も関わっているんだぞ!?」
雷は衛星アークの為に造られた宇宙飛行士型のヒューマギア。そして、亡はシステムエンジニアとして派遣されたヒューマギアである。どちらもアークと関わりがあり、少なくとも彼らの視点からではアークの不具合は無かった。
「それにアークのお前とウィルがプログラム構築をしていた筈だ。お前達が、こんな事を起こすとは私には思えない」
「言った筈だ。まだ俺にも確信は無い、と。調べなければならないことが大量にある」
時間が惜しいと言わんばかりに自分の研究室へと向かおうとするが、何かを思い出して足を止める。
「お前達も後で俺の研究室へ来い。暴走を抑える為のプログラムを用意してある」
暴走を恐れる彼らを安心させる為の言葉を残し、其雄は時間を惜しむ様にこの場を去って行く。一刻も早く原因を究明し仲間がこれ以上犠牲にならない為に。
◇
飛電インテリジェンス社長室にて激震が走る。
「兵器開発!?」
「しかもヒューマギアがですか!?」
是之助から告げられた内容に福添と山下は声を裏返しながら驚く。
「ある人物からの情報でどうやら衛星アークの知能を利用し、『仮面ライダー』なる兵器を開発しているらしい」
「衛星アークの知能を!? ですが、アークを利用できる者など限られています!」
「ああ。現在それが可能なのは其雄とウィルだけだな」
どちらも是之助が信を置くヒューマギアである。しかも、福添達の感覚からすればヒューマギアは人間の生活をサポートするロボットであり、自主的に活動し、しかも兵器開発などするなど考えられない。
「それは確かな情報なんですか?」
「デマの可能性は……?」
疑う二人に是之助はある報告書を渡す。その報告書内には『仮面ライダー』という兵器についての詳細が記載されていた。
「い、一体誰がこの情報を!? その人物は信頼出来る人なんですか!?」
それでも福添は食い下がる。
「彼は優秀な人物だ。君達も名前を知っている筈だ」
是之助の口から情報を齎した人物の名が出される。
「天津垓。この情報は彼から報告されたものだ」
雷は雷電という本来の名前が有りますが、亡の元の名が不明なので過去編でも雷と亡の名で書いております。