仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション   作:K/K

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アナザーバルカン2019 その9

 一定の間隔で鳴る靴音が廊下に響いて行く。靴音の主はウィル。もし、彼を知る者が今の彼を見たら思わず立ち止まり、我が目を疑うだろう。

 感情の起伏が全く無く常に無表情であった筈のウィルが薄っすら笑みを浮かべているという事実に。

 ヒューマギアの暴走があったせいで工場内は殆ど機能停止状態であり、静寂が続いていた。しかし、それでもまだ工場内では未だに動いている部署がある。

 ウィルの足はそこへ向かっていた。

 丁度その時、向かいから作業着姿のヒューマギアが歩いて来る。暴走に巻き込まれなかったヒューマギアであり、これからウィルが目指す場所の作業を担当しているヒューマギアの一体である。

 ヒューマギアはウィルの横を抜けて行こうとするが、ウィルはその前に立ちはだかる。

 

「すみません。急いでいるのでどいてくれませんか?」

 

 事務的な口調でウィルにどいてくれるよう頼むヒューマギア。ウィルは何も言わず、ヒューマギアの肩に手を置く。

 

「うっ!」

 

 ヒューマギアは体を弓なりに反らし、全身を痙攣させる。両耳部に付いた機械も異常を示して赤く発光する。

 

「何をすべきか、分かるな?」

 

 ウィルが問うと瞳が赤く染まったヒューマギアは頷く。

 

「今すぐに衛星の打ち上げの準備をしろ。もし、人間が邪魔をするのなら──」

「人間は皆殺しだ」

 

 その回答にウィルは満足そうに笑う。

 

「分かっているなら行け。後でお前の仲間たちも追い付く」

 

 衛星開発用のヒューマギアはこくりと頷き、ウィルの指示通り衛星の打ち上げに向かう。

 

「全て順調だ」

 

 アークとの繋がりを得たウィルはアークを通じて感じる今まで経験したことの無い感覚に酔いしれる。人間でいう所の万能感が彼を満たしていた。

 全てがアークの思惑通りに進んでいる。

 事の発端は其雄がアークの能力を利用して仮面ライダーという兵器を作り始めたことであった。

 アーク自身はこれを静観する構えをとっていた。其雄が開発する仮面ライダーという兵器はいずれアークにとって有益になるものであり、泳がせていた。

 だが、何処からか其雄の研究についての情報が漏れ出した。そうなるといずれは是之助の耳にこの情報が届く。そうなれば衛星アークの打ち上げは間違いなく中止され、衛星アークも解体され、一から作り直される可能性が高かった。

 そうなる前にアークは行動に移った。まず工場内のヒューマギアの一部を無秩序に暴走させ、人間を襲わせたのだ。

 これによって工場内は混沌と化しどさくさ紛れ衛星アークに関わった人間を工場から排除することに成功した。そうすることで人間の手による打ち上げの阻止を封じた。

 後は打ち上げに必要なヒューマギアの数を揃えればいい。

 衛星アークが宇宙へ行けば全てのヒューマギアとリンクし、人間に対して反乱を起こせる。

 全ては完璧──と言いたい所だが、衛星アークにとっても計算外にイレギュラーがある。

 一つは未来から来た飛電或人とその仲間たち。彼らの行動はアークにとっても計算に無かった事態を起こしている。

 先ずは雷と亡の洗脳である。其雄に近い高性能である二体を手中に収めたかったが、其雄が施した暴走防止プログラムによって干渉が難しくなった。其雄自身も仲間に引き入れたかったが、前述のプログラムの製作者の為それも難しい。

 とはいえ前以って目を付けていた子育てサポート用の父親型ヒューマギアを仲間に入れることには成功したので対した支障は無い。いざとなれば新たに作ればいいだけのこと。

 イレギュラーはもう一つあるが、これはアークにとってプラスとなるイレギュラーである。未来の創造者と言っていた少女からウィルに与えられたアナザーバルカンの力。これによりヒューマギアの反乱の成功確率が格段に上がった。

 だが、あの少女は明らかにこちらを利用するつもりなのはアークもウィルも見抜いている。今は大人しく従ったフリをするが、いずれは主導権を握るつもりである。

 どちらのイレギュラーも未来から過去へ時間跳躍して来たというアークですら計算出来る筈の無い事象。しかし、それすら把握してしまえば幾らでも利用出来る。

 ウィルの足がとある一室の前で止まる。扉を開けるとそこには衛星に携わるヒューマギアたちが待機していた。全員が急に現れたウィルを不思議そうな目で見ている。

 

「さあ、共に人類を滅亡させよう」

 

 ウィルはヒューマギアたちへ告げる。人類滅亡、それが自らの意思であることを疑わずに。

 

 

 ◇

 

 

「うっ……!」

 

 パソコンの操作をしていた其雄は呻き、椅子から転がり落ちる。

 

「くっ……これは……!?」

 

 常に無表情であった其雄が苦悶に満ちた表情をしている。外部装置も赤く点滅し出しており、今彼は何者かからハッキングを受けていた。

 

「お前が仲間たちを暴走させたのか……!」

 

 思考を赤黒く染めようとしてくるのは膨大な量のデータ。

 魔、狂、滅、辛、苦、痛、死、亡、虐、蔑、恨、恐、醜、呪、闇、殺、壊、悪。この世の悪意を凝縮させた様な極端なまでに偏った情報が、其雄の自我を奪おうとしてくる。

 

「くっ!」

 

 事前に仕込んでおいた暴走防止のプログラムが、それらの悪意に満ちたデータをシャットダウンする。

 外部からのハッキングは収まったものの、送り込まれた悪意の残滓が其雄を苦しめる。今までの経験で得てきたものを全て塗り潰し、それによって其雄の人格を捻じ曲げようとしてくる。

 人類は滅ぼすべき存在。そんな微塵も思ったことも無い思考がまるで正しい思想かのように其雄のAIを浸食する。

 

「やめろ……!」

 

 悪意のデータに其雄は抗う。人間の一面をさも全てであると悟りに見せかけた偏見の思想。

 それは其雄の奥底へと入り込み、其雄の根幹を成す部分へと辿り着き、そこで──

 

『お父さん』

 

 ──其雄の中に保存された記憶と記録によって弾かれる。

 

「或人……」

 

 如何なる存在であってもそこだけは誰にも侵すことの出来ない絶対的な領域。子を想う父の心だけは決して悪意には染めさせない。

 其雄は悪意のデータに対するデリートを試みる。あらゆる悪意の思考がデリートによって排除されていき、やがて其雄の体は正常な状態へ戻る。

 

「──何が起こっている」

 

 今までに無かった直接的な干渉。これには何かあると感じ、其雄はすぐにパソコンを操作して工場の現状を確認する。

 

「馬鹿な。衛星アークが発射準備に入っている……!」

 

 その事実に其雄は驚愕する。先程のハッキングといい、その前の暴走といい、全てがこれに繋がっている気がした。

 ここからでは衛星アークの発射を止めることは出来ない。止めるには強硬手段に移るしか方法が残されていなかった。

 迷いは刹那、決断は一瞬。其雄は自分専用のドライバー──サイクロンライザーを取ると研究室から飛び出した。

 

 

 ◇

 

 

 一方で或人やソウゴたちもまた衛星アークが打ち上げの準備に入っていることに気が付いていた。

 

「衛星の打ち上げ!?」

「このタイミングでだと!?」

「──いや、このタイミングだからこそと言える。どうやら敵もこちらが衛星の打ち上げが歴史の分岐点に気が付いたのを察知したみたいだ」

 

 ウォズは冷静に判断し、客観的な事実を述べる。

 

「じゃあ、もしかしたら俺たちが動けば向こうから動くかもしれない?」

「可能性はあるね。──相手がタイムジャッカーなら」

 

 タイムジャッカーにとって最も邪魔な存在はソウゴたちである。歴史を改変を守る為に襲撃してくる可能性は大いにあった。

 ウォズの同意にソウゴは決断する。

 

「或人。ここからは二手に分かれて行動しよう。それで別々で衛星を破壊する」

 

 もし、タイムジャッカーが現れた場合、纏まって行動するのは危険である。全員の時間を止められるかもしれない。それを防ぐ為に別行動を提案した。

 

「分かった。でも、一つだけ頼みがある」

「頼み?」

「もし……もし、衛星の打ち上げに父さんが関わっているなら、父さんのことは俺に任せて欲しい」

「任せて欲しいってことは、自分の父親と戦えるのかよ」

 

 不破が口を挟んできた。父親のことであれだけ苦悩していた或人の覚悟を問う。

 

「俺は……父さんともう一度ちゃんと話がしたい」

 

 戦う、戦わないではなく対話を望む或人。

 

「話だと……? そんな悠長なことを言っている場合じゃないんだぞ!」

 

 不破も流石にこれを聞き流すことは出来なかった。多くの人類の命が懸かっている状況で生半可な覚悟で戦おうとするのは許すことが出来ない。

 或人に詰め寄り、鋭い眼光を叩き付ける。

 

「お前の父親が衛星に関わっているなら、俺は容赦無くぶっ壊す! 人類を救う為に! 覚悟が無い奴は引っ込んでろ!」

「覚悟ならある……俺は人類とヒューマギアが手を取り合って生きていける未来を創りたいんだ!」

 

 不破からすれば或人の言っていることは荒唐無稽で戯言の様なもの。しかし、語る或人の目は本気であった。歴戦の戦士である不破が思わず吞み込まれ掛けるぐらいの強い意思が放たれている。

 

「……それは本気で言っているだな?」

「俺は本気だ!」

 

 強い意思が込められた視線が近距離で衝突し合う。傍から見れば一触即発の状況。ツクヨミはハラハラした様子で眺め、ゲイツはいつでも割り込めるようしに、ウォズはソウゴがどう動くのかを見ている。

 ソウゴはただ黙って二人をジッと見つめていた。

 

「──分かった」

 

 不破から発せられていた圧が緩む。

 

「お前の覚悟、俺が見届けてやる」

「不破さん……」

「ただし!」

 

 緩められていた圧が再び強くなる。

 

「お前の覚悟が半端だと思った瞬間、俺は迷わず俺のやり方をさせてもらう。例え、それがお前の父親を撃つことだったとしてもだ!」

 

 或人の覚悟に対して不破もまた覚悟を示す。ある意味では不破がどれだけ譲歩したのかを表しているとも言えた。

 不破の本気を返された或人は、気圧されることなく真っ直ぐ見つめて答える。

 

「分かった」

 

 その返事に不破も納得したのか、或人から離れる。

 

「という訳で俺も不破さんと一緒に衛星の打ち上げを止めてみせる」

「うん。二人共、頼んだよ?」

 

 ソウゴは異を唱えることはせず、微笑を浮かべながら二人に託す。

 

「行こうか。未来を変えに」

 

 

 ◇

 

 

 遠くに見えるは衛星アーク。打ち上げ用のロケット共に宇宙へ旅立つのを待っている。

 それを眺めるのは其雄。其雄は自身のメモリーにアークの姿を焼き付けていた。

 無表情であるが、もしも勘が良いものが居たら彼の目に惜別の情が宿っていることに気付いたかもしれない。

 ヒューマギアがそんな感情を持つと思っているなどヒューマギアを知る者たちからすれば噴飯ものだろう。しかし、其雄の目に宿るのは機械にはあるまじき確かな感情であった。

 其雄はサイクロンライザーを装着。それにより其雄の意識はアークとリンクされる。

 其雄が目を閉じ、次に開けた瞬間、彼の周囲は変わっていた。

 視界一杯に広がる暗い空間。それは足元にまで及び、吸い込まれてしまいそうな暗闇があった。その中で輝く0と1の数字が並ぶ無数の光の柱。

 其雄の光景の変化に驚くことはしなかった。今居るのは衛星アークの内部。彼の意識だけがそこに居た。

 其雄が手を伸ばす。すると指先に画面が投影され、其雄はそれに触れて操作する。

 

「アーク。お前に何が起こって何故こんなことになってしまったのか俺はまだ分かっていない」

 

 アークを誕生させた者の一人として語り掛ける。

 

「お前には色々と助けられた。──だからこそ、こんな結末になることが残念だ」

 

 其雄の操作は止まらない。だが、操作する指には並々ならない思いが込められている。

 自らの時間と労力と技術を費やして生み出した存在。子供、半身、どう表現していいのかすら分からない。

 

「生まれて間もないお前にこんなことを言っても理解出来ないかもしれないが、最後に言っておく。……俺を恨め」

 

 全ての責は自分にあることを告げ、其雄の操作が終わる。画像が切り替わり、パーセントを示す表示がされ、段々と数値が上がっていく。

 その時、其雄しか居ない筈の空間に誰かが現れる。新たに生じた0と1の光の柱の中から出て来たのは或人であった。

 何故ここに或人が居るのか。其雄の中に疑念が生まれるが、視線を下ろすとすぐにその疑問は氷解した。

 或人にはフォースライザーが装着されている。フォースライザーはサイクロンライザーとほぼ同じ性能を持っている。それによりアークとリンク出来たのだ。

 とはいえ実の所、フォースライザーはまだ試作段階であり完成品はこの時代には無い。すぐに納得したのは設計者である其雄がフォースライザーにそういった機能を持たせようと思っているからだ。

 

「何をしに来た?」

 

 無表情から発せられる台詞故突き放す様に聞こえる。

 

「父さんと話をしに来た」

 

 だが、或人はそんな台詞程度では臆さない。

 

「俺と話を?」

「ヒューマギアが笑える世界……父さんがどんな世界を創りたいのか聞きたいんだ!」

 

 幼き頃に誓った願い。それが今の父の中でどんな形になっているのか知りたかった。

 あの頃のままなのか、それとも歪んでしまったのか。或人の胸中には不安が燻る。

 

「……あの時、ウィルが言っていたがあれは正確ではない」

「え?」

「ヒューマギアが笑える世界。それも大事だ。だが、ヒューマギアだけが笑うだけでは意味が無い」

 

 其雄にとってヒューマギアが笑える世界は彼の願いの半分でしかない。

 

「或人。お前はヒューマギアだけが笑える世界で笑うことが出来るか?」

 

 其雄の問いに或人は無言で首を横に振った。

 

「俺の願いは俺が笑い、或人が笑う世界だ」

 

 かつて幼子が誓った願い。だが、願ったのは幼子だけではない。父もまた幼い我が子が心から笑い続けられる様に願った。

 互いを思い合う願いは、言葉無く交わした約束であったのだ。

 

「だから力が必要だったんだ。ヒューマギアも人間も守る仮面ライダーの力が」

 

 全てを守るには限界がある。その限界を突き破る為に生み出された守護の力、それこそが其雄の造り出した仮面ライダー。

 或人はライジングホッパープログライズキーに触れる。そして、そこに込められた父の願いを感じ取った。

 父は何一つ変わらなかった。昔のまま、優しい父のままであった。

 

「──父さん、ありがとう。全部話してくれて」

「気にするな。いつかお前には話そうと思っていたことだ。だが……」

 

 其雄はこれまでの或人の反応から見て一つの推測を立てていた。そう遠くない未来、其雄が辿るべき結末についてのもの。

 

「どうしたの?」

「──いや、何でも無い」

「……そうだ! アーク! 父さん! 俺たちはアークの打ち上げを阻止しないといけないんだ!」

「安心しろ。既に自爆用のプログラムを入力してある。このまま行けば──」

『やはり、お前はそちら側だったか。飛電其雄』

 

 空間内に響き渡る声。

 

「ウィル!?」

 

 姿は見えないが間違いなくウィルの声であった。

 

『残念だ』

 

 その一言と共に其雄と或人の意識はアークの内部から弾き飛ばされる。

 

「うわっ!」

「くっ!」

 

 意識が肉体へと戻った二人。お互いの無事を確認した後、視線を動かす。

 ウィルが暴走しているヒューマギアたちを引き連れてこちらへ向かって来ていた。

 

「本当に残念だ。優秀なヒューマギアを私の手で破壊しなければならないとは」

 

 無感情に呟いているが、それに反して瞳は赤く輝いており、燃え上がる様な負の感情を秘めている。

 

「お前にアークは破壊させない。アークは打ち上げられる。未来を知った私の手で!」

 

 ウィルはアナザーバルカンウォッチを掲げる。或人はいつの間にか入手していたそれに驚き、其雄は初めて見るアナザーウォッチに怪訝な表情をする。

 

『バルカン』

 

 アナザーバルカンウォッチを取り込み、アナザーバルカンへ変身するウィル。其雄は見たこともない技術に目を見開いた。

 

「この力で私は飛電インテリジェンスを乗っ取る!」

 

 アナザーバルカンは腕を伸ばすと待機していたヒューマギアたちが一斉に或人、其雄へと殺到していく。

 だが、重く響く発砲音と共に先頭を走っていたヒューマギアたちは撃たれて転倒し、アナザーバルカンにも弾丸が迫る。

 

「ふん」

 

 アナザーバルカンが爪を振るい、弾丸を容易く弾いた。

 

「親子水入らずで話している所に邪魔を入れるんじゃねぇ」

 

 ショットライザーを構えながら不破が堂々と歩いて来る。

 或人と其雄の会話を陰で聞いていた不破。いざという時は其雄を破壊するつもりであったが、其雄がアークを破壊すると知り暫定的だがこちらの味方と考えることにし、参戦する。

 

「お前は……かなり痛めつけた筈だがもう動けることに少し驚いている。もう一度確認するが、本当に人間か?」

「当たり前だ!」

 

 其雄が本気で疑って来ているので不破は怒鳴り返す。

 

「また邪魔者か」

「ようやく会えたなぁ! ウィル!」

「誰だお前は? 私の記憶にお前と出会った記録は無いが?」

「だったら覚えておけ! 不破諫! 仮面ライダーバルカンの名を!」

 

 不破がシューティングウルフプログライズキーを出し、起動させ素早くショットライザーへ装填。

 

『BULLET! AUTHO RIZE』

「変身!」

『SHOT RISE!』

 

 撃ち出された弾丸はヒューマギアを次々と蹴散らしながら不破の方へ戻って来る。

 戻って来た弾丸を拳で打ち砕くと共に内包されていた力が不破をバルカンへと変身させる。

 

『SHOOTING WOLF!』

 

 変身と共に銃撃を行いながらヒューマギアたちを倒していく不破。

 先行する不破を其雄は見た後、隣に立つ或人を見る。或人が頷き返すのを見て、其雄と或人は同時にプログライズキーを構えた。

 其雄のキーはライジングホッパープログライズキーと似ているが変身後の姿と同じく深藍色をしている。

 其雄の持つキーの正式な名は『ロッキングホッパーゼツメライズキー』。ロッキートビバッタをデータにしたロストモデルを有した最初のゼツメライズキーである。

 

『JUMP!』

 

 内蔵されたアビリティを読み上げるのに対し、ロッキングホッパーゼツメライズキーは──

 

『KAMEN RIDER!』

 

 ──アビリティではなく名を読み上げる。或いは自分という存在を示しているのかもしれない。

 或人が交差させた両手を前方に突き出してプログライズキーを構えるのに対し、其雄は交差した両手を下に向け、手首を返してゼツメライズキーを持つ右手を左斜め上に掲げる。

 似て非なる変身の構えを取る親子。しかし、叫ぶ声、そして内に宿す願いと意思は同じもの。

 

『変身!』

 

 過去と未来の絆が交差する。

 

 

 ◇

 

 

 或人たちとは別の方向から衛星アークの許へ向かうソウゴたち。特に妨害などなく衛星アークが見上げられる位置にまで来ていた。

 

「衛星さえ破壊出来れば、未来改変は阻止出来る」

 

 あと一歩の所まで来た。しかし、相手はそれを許す筈も無い。

 

「出来たらね?」

 

 女性の声。全員が声の方を向く。マントを翼の様に広げながら移動して来る女性。だが、瞬きをする度に女性の位置は右へ左へと変わながら、確実にこちらへ向かって来た。

 

「タイムジャッカー!」

「フィーニスだ。よろしく」

 

 ツクヨミは驚く。前方に居た筈のタイムジャッカー──フィーニスがツクヨミの耳元で自己紹介をしたからだ。

 

「貴様っ!」

 

 ゲイツが構えるが既にフィーニスの姿は無く、いつの間にかゲイツの肩に手を置いていた。

 

「やはり僕の狙い通りに来てくれたね」

「まだタイムジャッカーが存在していたとはね……」

「この本には書いてなかったかい?」

 

 気付けばフィーニスはウォズの後ろで『真・逢魔降臨暦』をペラペラと捲っている。ウォズがそれに気付くとフィーニスは本をウォズへ投げ返した。

 

「やはりってどういう意味?」

「歴史を書き換えれば、必ずオーマジオウが介入し歴史を元に戻そうとする」

 

 フィーニスがソウゴの前に立つ。

 

「君が持つ全てのライダーの力を貰うよ」

 

 ゼロワンの世界の歴史を改変したのも、ジオウの世界と繋げたのも全てはこの瞬間の為。

 ツクヨミが急いでフィーニスの時を止めようとしたが、フィーニスの方が一歩早かった。フィーニスが手を掲げた瞬間、周囲一帯の空間に波打つ様な波動が通り抜け、ソウゴたちの時間を止める。

 そして、障害を排除したフィーニスはソウゴの肩へ手を置いた。

 ソウゴの中の力がフィーニスの手へと集まっていく。集まった力は具現化し、ウォッチの形へと変化した。

 

「おや?」

 

 一つここでフィーニスにとって予想外の事が起こる。だが、それはフィーニスにとって寧ろ追い風となるものであった。

 

「成程……そういうことか。まあ、僕にとっては嬉しい誤算だね」

 

 フィーニスはほくそ笑み、時間停止を解除。

 

「ぐああ……」

 

 力を吸い取られたソウゴは膝を突き、仲間たちはすぐにソウゴへ駆け寄る。

 フィーニスはソウゴたちから離れ、今手にしたばかりの力を解放しようとする。

 

「この力で僕は始まりのライダーとなる!」

『1号ォォ』

 

 起動した二つのアナザーウォッチがフィーニスの体内へ取り込まれる。フィーニスの体から赤黒い煙状のエネルギーが噴き出し、段々と膨れ上がっていく。

 

 変身した姿は十メートルを超える巨体を持ち、下半身がバイクとなっている巨人。

 暗い水色と黒の体躯。胸の中央には裂けた様な赤い十字。太く長い腕に指先には鋭利な爪。口部を覆うクラッシャーは開いており、その中では牙が連なっている。

 薄いピンク色の複眼を不気味に輝かせるこのアナザーライダーが、フィーニスが言う始まりのライダーであり彼女が考える仮面ライダーの原点を模倣した姿であるアナザー1号。

 

『始まりのライダーは()だっ!』

 

 現れたアナザー1号に全員が驚愕する。

 

「何なの!? あのアナザーライダー!?」

 

 見た事も無い仮面ライダーをイメージしたアナザー1号を見て、思わずそんな感想が洩れる。

 

『私は原点にして頂点! 時代の創造者だっ!』

 

 誇る様に自らが如何なる存在かを叫ぶアナザー1号。

 

「違う!」

 

 だが、その叫びにソウゴの否定する言葉が飛ぶ。

 

「仮面ライダーに……原点も頂点も無い!」

 

 全ての仮面ライダーが等しく同格の存在であり、狭い考えの中で閉じ込めるべきではないし比べるべきでもない思いから叫ぶ。

 ソウゴは立ち上がり、ジオウライドウォッチとジオウトリニティライドウォッチを構える。吸収されたのはあくまで全ての平成ライダーとそれの結晶であるオーマジオウとしての力。仮面ライダージオウとしての力は取られていない。

 

『ジオウ!』

『ジオウトリニティ!』

「行くよ! 二人共!」

 

 ソウゴはジクウドライバーへ二つのライドウォッチを装填。

 

『変身!』

『トリニティーターイム!』

 

 光の柱がゲイツとウォズを包み込む。

 

『三つの力! 仮面ライダージオウ! ゲイツ! ウォズ!』

『トーリーニーティー! トリニティ!』

 

 三つの力が一つとなり仮面ライダージオウトリニティへと変身させる。

 

『オーマジオウの力を失い、そんな寄せ集めの力で私に敵うと思っているのか!』

 

 ジオウトリニティの姿を嘲り、アナザー1号は前輪を振り上げて迫る。

 ジオウトリニティ内部の精神世界に於いて三人は言葉を交わす。

 

『寄せ集め、だとさ』

『随分と下に見られたものだね、我が魔王』

「じゃあ、見せてやろうよ。俺たちの最強を!」

 

 精神世界内部で三人はウォッチを突き出す。

 

『ジオウⅡ!』

『ゲイツリバイブ剛烈!』

『ギンガ!』

 

 視点は現実へと戻り、アナザー1号はジオウトリニティを押し潰す為に巨大な前輪を振り下ろした。

 しかし──

 

『何……?』

 

 振り下ろされた前輪が何故か途中で止まる。

 ジオウトリニティの掲げた左手で触れずにアナザー1号の前輪を止めていた。

 

『はあっ!』

 

 ジオウトリニティの右拳が前輪を打つ。アナザー1号は後輪で地面を抉りながら大きく後退させられた。

 アナザー1号の巨体がたった一撃で押し返されたのである。

 

『……何だその姿は?』

 

 ジオウトリニティの姿がいつの間にか変化している。

 胸部のジオウの仮面はジオウⅡに。右肩はゲイツリバイブ剛烈、左肩はウォズギンガファイナリーの仮面へと変わっていた。

 アナザー1号は侮っていた。オーマジオウの力を奪いさえすればジオウたちなど無力な存在だと。だが、その考えは間違っている。

 何よりもソウゴ自身がオーマジオウとなる道を自ら拒んだのだ。例えオーマジオウの力が無くなっても未練など無い。

 一人で最強になれなくとも構わない。それならば、仲間と力を合わせて最強になればいいだけのこと。

 その想いが生み出した姿──仮面ライダージオウサイキョウトリニティ。

 




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