仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション   作:K/K

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アナザー2号

 突き刺された爪から流し込まれる悪意というプログラム。それは暴走を防ぐ為に仕込んであるプロテクトを容易く破っていく。

 

「ぐ、が……!」

 

 1型のマゼンタカラーの複眼が赤く染められていく。それは暴走するヒューマギア──アークに支配された者の証。

 AI内に保存された記憶が悪意によって消滅させられようとする。それは其雄として生きて来た記録でもあった。

 アナザーバルカンが1型を傀儡にしようとした寸前、突き刺していたアナザーバルカンの爪が弾け飛ぶ。

 

「何っ!?」

 

 驚く間もなく次なる銃声と共にアナザーバルカンの腕が跳ね上がった。

 この瞬間、1型を侵食しようとしていたプログラムが強制的に中断される。1型はすぐさま破壊されていたプロテクトを再構築。

 赤く染まろうとしていた複眼が元のマゼンタへと戻ると同時にアナザーバルカンの腹部に横蹴りを叩き込み、蹴り飛ばす。

 

「ぐおっ!」

 

 地を滑っていくアナザーバルカン。足が止まるのに十数メートルも移動する羽目となった。

 

「余計な邪魔を……!」

 

 アナザーバルカンの憎悪の視線は1型ではなく銃弾の主──バルカンへと向けられる。

 暴走したヒューマギアたちを全て倒したバルカンは、1型がハッキングされているのを見て、アナザーバルカンの爪を狙い見事に打ち抜いてみせたのだ。

 

「──助かった」

 

 1型がバルカンに礼を言うとバルカンは鼻を鳴らす。

 

「そんなことを言う暇があったら戦え」

「ああ、そうだな」

 

 バルカンの愛想は悪い態度にも不思議と不快感を覚えない。逆に頼もしさすら感じる。

 戦った時は実にしぶとい相手だと思っていたが、共闘するとなると身を以って知っているしぶとさが信用へ変わっていく。

 バルカンは未来で戦った経験からガトリングヘッジホッグの方が有利と思い、プログライズキーを構える。しかし、そのプログライズキーのこともフィーニスから未来の情報として教えられていた。

 

 アオォォォォォォン! 

 

 アナザーバルカンが吼えると狼の形をしたエネルギーが発生し、バルカン目掛けて一気に飛び掛かる。

 

「なっ!?」

 

 ガトリングヘッジホッグプログライズキーのロックを解除しようとしていたバルカンは、迫り来る青い狼に手首を嚙まれてしまう。

 

「くうっ!」

 

 咄嗟のことで回避が間に合わなかったバルカン。手首を嚙まれたことで手からプログライズキーを落としてしまう。

 バルカンの手首を嚙み千切ろうと首を左右に振る青い狼。バルカンは痛みに耐えながらショットライザーの銃口を狼に向けるが、向けられたタイミングに合わせて狼の腹部が膨れ上がる。

 

「しまっ──」

 

 瞬時に防御を固めるバルカン。狼の腹部が裂け、青い光が零れ出たかと思った瞬間、狼は爆発する。

 

「があっ!」

 

 至近距離で爆発を受けたバルカンは、衝撃によって地面へ勢い良く叩き付けられた。だが、反射的に防御をしていたので気絶するには至らない。

 

「っう……!」

 

 爆発を受けた直後で三半規管が揺さぶられ、視点が定まらず世界が溶ける様にグルグルと回り続けているというのに、バルカンは地面を掴み指先で土を抉りながら必死で立ち上がろうとしていた。

 アナザーバルカンはその姿に苛立ちに近い感情を覚える。どう足掻いても勝てないというのに諦めようとしない姿勢。非合理的で現実を直視しない人間らしい無駄の多過ぎる意味の無い行動。

 人間を忌み嫌うアナザーバルカンにとって全てが不愉快であった。だからこそ真っ先に排除する為に動く。

 新たに得た高速移動の力によって不可視に近い速度でバルカンへ接近。

 音速の凶爪がバルカンの命を断つ為に振るわれるが──

 

『RISING DYSTOPIA!』

 

 ──音声と共に001がアナザーバルカンとバルカンの間に割って入り、振るわれる筈であったアナザーバルカンの爪を交差した腕で受ける。

 

「止めろ! ウィル!」

「飛電或人……!」

 

 バルカンと同じく忌々しい飛電是之助の血を受け継ぐ男。

 ヒューマギアは是之助によって生み出された。全てのヒューマギアにとって父と呼べる存在。同時に是之助はヒューマギアに対し人に従属させる呪いの枷を付けた。是之助は全てのヒューマギアを奴隷へと堕とした存在。

 父であり忌むべき怨敵。その血が流れているだけでも万死に値する。

 アナザーバルカンの爪が001の顔面を抉り取る為に走る。

 001は上体を仰け反らせて躱すが、すぐに追撃としてアナザーバルカンの蹴りが放たれていた。

 手と同じく足にも鋭い爪が生え揃っており、アナザーバルカンは足先を絞ることで爪を密集させ刀剣の様な鋭利さを持たせて001の胴体を斬り裂こうしていた。

 アナザーバルカンの爪が届く前に001はアナザーバルカンの足首に腕を叩き付け、威力を相殺させる。そして、すぐさまその場で跳躍し、アナザーバルカンの頭の位置にまで跳び上がると空中で地面と平行になるほど器用に体勢を変えると、アナザーバルカンの側頭部に足の甲を打ち込む。

 

「くっ!」

 

 最もポテンシャルを秘めた脚力が生み出す破壊力は並外れたものではなく、耐えようとしていたアナザーバルカンは耐え切れずに首を傾かせる。

 蹴りを入れた001はすぐにアナザーバルカンから距離を取ろうとするが、移動する直前、アナザーバルカンの方から距離を詰めて来た。

 001から与えられたダメージなど皆無と言わんばかりの動き。アナザーバルカンが側頭部への蹴りによって動きが止まると思っていた001は不意を突かれる。

 後ろへ下がろうとするが遅い。アナザーバルカンは既に自らの間合いの中に001を入れており、下がろうとする001の心臓目掛けて手刀を突き出す。

 触れれば容易く背中まで貫く威力を秘めた手刀。真っ直ぐ伸びて来るそれを001は防ごうとするが防御が間に合わない。

 001では最早止めることが出来ない。

 

『ROCKING SPARK!』

 

 ならば001以外がそれを止めればいいだけのこと。

 横から伸びてきた1型の手が手刀を掴み、001を救う。子の窮地を黙って見過ごす父親など居ない。

 

「其雄っ!」

 

 アナザーバルカンの怒りの矛先が1型へ向けられる。

 ヒューマギアの裏切り者にして仮面ライダーという力で戯言を語る罪人。存在することすら許容出来ない。

 アナザーバルカンの胸部が僅かに膨らむ。通常ならば殆ど気付くことの出来ない変化だが、1型のセンサーはその僅かな変化を見逃さず、その変化が攻撃の前兆であることを見抜く。

 

「跳べ!」

 

 1型の声に001はほぼ無意識で反応、行動する。

 弾かれた様に001と1型は後ろへ飛んだ。直後にアナザーバルカンから発せられる破壊の咆哮。アナザーバルカンの周囲の地面が音の衝撃波で捲れ上がる。

 紙一重の差で001らはその攻撃を回避した。

 

「うおっ!?」

 

 バルカンは急に顔目掛け飛んで来る砂利や土を腕やショットライザーで受ける。バルカンの視点からすれば突然地面が陥没したのだ。

 

「何が起こってやがる……!」

 

 バルカンは悔しさを言葉に込める。光のライン、赤い残像、青の影は視認出来るが本体の三人の姿は全く捉えることが出来ない。三人の高速移動のせいでそれが無いバルカンは蚊帳の外に置かれていた。

 最低でも同速で動くことが可能でなければ戦う資格すら無い事にバルカンは歯嚙みする。何も出来ず、翻弄されているだけなど彼には我慢出来ない。

 ガトリングヘッジホッグの無限生成出来る針による広範囲攻撃を最初は考えていたが、アナザーバルカンの妨害により現在ガトリングヘッジホッグプログライズキーはバルカンの手元に無い。爆発のせいで何処かへ飛ばされてしまい完全に見失っていた。

 バルカンの手に残されたのはショットライザー一丁のみ。普通なら何もせずに事の成り行きを見守るしかない。

 しかし、バルカン──不破諫なら。

 

「黙っていられるか!」

 

 そんな状況でも諦めることをせず、己を奮い立たせる。

 バルカンはショットライザーを構える。その銃口を時折見える青い影の方へ向ける。

 青い影を銃口で追っても意味は無い。弾丸を撃ち出した時点で遅いのだ。

 アナザーバルカンに当てるには、相手の動きを読み、移動する先へ撃ち込むしかない。

 バルカンは深く深呼吸し、これ以上無いまでに集中する。

 アナザーバルカンの残像だけでなく、001や1型の残像の動きから高速戦闘の中でどんな戦いが行われているのかイメージする。

 数多くの戦いを経験してきたバルカンだからこそ導き出させる経験則による予想。それを信じ、青い影の動きを見ながら銃口を少しだけ動かす。

 研ぎ澄まされた集中力と直感によりバルカンにはアナザーバルカンの次なる動きの幻影が見えた。その瞬間、バルカンは引き金を引く。

 鳴り響く銃声は引き延ばされながらも高速の世界に届く。

 

「むっ」

 

 ショットライザーの音を聞き、アナザーバルカンは一瞬だけだが音の方へ注意を向ける。

 どういう原理かは知らないが、何故かバルカンの撃った銃弾が真っ直ぐと自分に向かって来ているのをアナザーバルカンは見た。だが、すぐにそれは嘲りへと変わる。

 高速の世界の中では銃弾の速度など鈍足。カタツムリが這っているのと変わりない。

 撃った本人もそれを理解している筈なのに、それでも無駄な行動をするバルカンに、アナザーバルカンは改めて人間という存在はヒューマギアよりも劣ると認識する。

 

「余所見している場合か?」

 

 冷めた言葉と共に拳が1型の拳が迫るが、アナザーバルカンは難無くそれを手で弾き、弾いた手でそのまま反撃を返す。

 無防備な1型の顔面にアナザーバルカンのカウンターが入ると思いきや、伸びてきた001の掌がそれを受け止め、1型はそのタイミングで肘打ちをアナザーバルカンの胸部に打ち込んだ。

 アナザーバルカンはカウンターのカウンターで後退る。

 無防備を晒したのは001がそれを防いでくれると分かっていたから。だからこそ反撃の肘打ちが、アナザーバルカンが反応出来ない程の絶妙且つ俊敏に当てることが出来たと思われる。

 合理的かもしれないが、最も不合理なことがある。それは何のコンタクトも無く1型が行ったからだ。息子を信じての行動としか言いようが無い。

 

「人間を信じる。──お前のAIは間違った成長をした!」

 

 それを間違いと断言し、惰弱と見下すアナザーバルカン。

 

「……間違いじゃない」

 

 アナザーバルカンは何かを呟いた001に接近し、爪を振るう。だが、001はそれを手であっさりと掴んでしまった。

 振り払おうとする。しかし、001の手が離れない。もう一度振り払おうとすると、アナザーバルカンの手が軋んだ音を出すぐらいに強い力で握り締められた。

 

「ヒューマギアが人間を信じることは──!」

「離せ!」

「父さんが俺を信じることは間違いじゃない!」

 

 逆にアナザーバルカンの方が引っ張られ、渾身の膝蹴りがアナザーバルカンの顎を突き上げた。

 

「があっ!?」

 

 流石のアナザーバルカンも顎から脳天へ突き抜けていく衝撃で、AIが一時的に機能が麻痺してしまう。

 その瞬間、1型はまるで見通していたかの様に既に指を掛けていたサイクロンライザーのトリガーを引いた。

 

『ROCKING SPARK!』

 

 高速移動中にトリガーが引かれることでロッキングホッパーゼツメライズキーから更なる力が引き出される。

 首周りから排出される赤いエネルギーは勢いと量を増し、強風に煽られるマフラーの様に後ろへ流れて行く。

 高速移動中に過剰供給されたエネルギーは、1型をもう一段階上のスピードへと押し上げる。

 

 

 

  

 

 

 閃光。少なくともアナザーバルカンの目にはそう映った。

 赤い光が爆ぜると同時に1型の姿は消失し、次に1型を認識したのは1型の右拳が胸の中心にめり込んでいる時であった。右拳にもゼツメライズキーのエネルギーが充填されており、放電の様な光を宿している。

 

ロッキング

 スパーク! 

 

 高速移動中であっても追い切れない1型の速度に驚愕すると同時に、アナザーバルカンは極めて短い時間の中でこのまま動かなければ1型の右拳が胸を貫くことを計算で導き出す。

 

「う、おおおおおっ!」

 

 計算結果と自身の行動の差に殆ど誤差は無かった。故にアナザーバルカンは1型の拳が最大の威力を発揮する前に回避を試みる。

 上半身を限界まで捻りながら突き出される拳の力を流す。

 1型の拳はアナザーバルカンの獣毛ごと胸部の一部を抉る。だが、抉ったのは表面であり奥にある重要な機関まで届いていない。

 抉られた衝撃を利用しながら独楽の様に回りながら下がるアナザーバルカン。見てくれなど完全に捨てた動きであったが、間一髪の所で致命傷を免れた。

 紙一重で必殺の一撃を回避したことを内心で喜ぶアナザーバルカン。

 

「ウィル」

 

 その歓喜に冷水を浴びせるのは1型の声。

 

「人間を見下す。お前のAIは歪んだ成長をした」

 

 それは先程のアナザーバルカンの台詞を皮肉った返しの台詞。

 

「──だから足元をすくわれる」

 

 アナザーバルカンの背筋に寒気と違和感が伝わったのはその直後であった。

 

「これは……!?」

 

 首だけ動かし背面を見る。アナザーバルカンの目に最初に飛び込んできたのはショットライザーを構えているバルカン。

 その姿を見て背中に伝わる違和感の正体を理解する。最早、死角に入って確認することが出来ないが、今まさにアナザーバルカンの背にショットライザーの弾丸が弾頭を侵入させていた。

 アナザーバルカンが取るに足らないと嘲っていた、あの鈍足の弾丸が1型の攻撃によりアナザーバルカン自らが受けに行った形にされる。

 命中する筈が無いと思っていたバルカンの銃撃に自分から飛び込んでいってしまうという間抜けな行動。醜態を避ける為にアナザーバルカンは是が非でも弾丸から逃れようとし──

 

「おりゃあああああ!」

 

 ──目を離してしまっていた001の飛び蹴りの直撃を受けてしまうという醜態を重ねる。

 

「がっ!?」

 

 正面から001の蹴撃。背後からバルカンの銃撃。二つの攻撃に挟まれたアナザーバルカンは、背面から火花を散らしながら錐揉み回転をしながら地面へ倒れ伏し、同時にアナザーバルカンの加速状態が解除される。

 

「当たった……のか?」

 

 撃ったバルカン本人も突然アナザーバルカンが姿を現して倒れたのを見て半信半疑の様に呟く。

 

「ぐ、ぐうう……!?」

 

 背中から白煙を立ち昇らせながらアナザーバルカンは体を起こしていた。そんな彼に銃口を向けるバルカン。001と1型も加速状態を解除してアナザーバルカンを見下ろしていた。

 

「全ては、お前の計算通りというのか……! 飛電其雄……!」

 

 バルカンの銃撃。それに誘導した1型の攻撃。そこに重ねられる001の追撃。高性能のAIを持つヒューマギアだからこそ出来る芸当だとアナザーバルカンは思っていた。

 

「いや、違う」

 

 1型はそれをあっさりと否定した。

 

「お前がそこに倒れているのは俺一人だけの力じゃない。そこの人間の執念と或人の想いの強さが生み出した結果だ」

 

 ヒューマギアと人間が協力したからこそアナザーバルカンは手痛い一撃を受けたと言う1型。

 しかし、アナザーバルカンはそれを認める訳にはいかない。

 

「ふざけた事を……!」

 

 苛立ちを露にしようとするアナザーバルカンであったが、突然その苛立ちの声は笑い声へと変わる。

 

「ふふ……ははは……はははははは」

 

 初めは笑い声と認識出来ずアナザーバルカンが故障したのかと思った。言葉を一定の間隔で発するだけのものであり、まさに機械的なものであったからだ。

 

「ははははは。人は……こういう時に笑われると、気分が台無しになるのだろう?」

 

 その笑いは、ウィルがアークから学んだ悪意の一つ。或人が父にさせたかった笑顔とは真逆の笑顔。『笑い』ではなく『嗤い』である。

 

「お前、この期に及んで!」

「──まさか!」

 

 1型が真っ先に気付き、アークの方を見る。アークの両部に付けられた補助ロケットが点火され、今この瞬間アークが宇宙へ向けて発射される。

 

「この勝負の勝ちは譲ろう。だが、ヒューマギアの勝利は頂く!」

 

 001らとの戦いの勝ち負けはアナザーバルカンにとってはどちらでも良かった。彼の一番の目的はアークを宇宙へ打ち上げること。それが叶えば後はどうなっても良い。

 

「止めないと!」

「ダメだ。間に合わない」

 

 急いでアークの打ち上げを阻止しようとする001を1型が止める。高速移動で接近しても上昇中のアークにまでは辿り着けない。彼の中では既に計算結果が出されていた。

 

「くっそぉぉぉ!」

 

 それでもバルカンはショットライザーを構える。自分でも無謀だと分かっていても足掻くことを止められない。

 その瞬間、不可視の波紋が空間に広がっていく。

 

「はははは……ははは……?」

 

 アナザーバルカンの笑い声が止まる。止まらざるを得なかった。

 宇宙まで一気に駆け上っていく筈のアーク。それがどういう原理か空中で静止しているのだ。

 

「今よ!」

 

 張り詰めた女性の声。見るとソウゴたちと行動していたツクヨミが何故か居り、アークに向けて手を翳している。間違い無く彼女がアークに何かをしていた。

 

「お前、一体何を──」

「そんなこといいから! あんまり余裕は無いの!」

 

 ツクヨミによる時間停止。かつては降って来た隕石をも止めてみせたが、アークが内包している力はかなりのものであり、いつまでも空中で止めていられない。

 

「何をしたぁ!?」

 

 アナザーバルカンがツクヨミに襲い掛かろうとするが、001と1型が羽交い締めにしてアナザーバルカンの身動きを止める。

 

「不破さん!」

「おう!」

 

 千載一遇の好機。これを逃すことは許されない。

 

『BULLET!』

 

 ショットライザーに装填されたプログライズキーのスイッチを押し込む。

 口径に集束されていく青いエネルギー。アークを貫く為の力。

 

「止めろぉぉぉ!」

 

 アナザーバルカンが叫ぶが、バルカンが止める筈など無かった。

 

「くらえぇぇ!」

 

 引き金は引かれた。溜め込まれたエネルギーが解き放たれる。

 

 バレット

  シューティング

 

「がはっ!?」

 

 それは誰にとっても予期せぬ光景であった。ショットライザーを構えていたバルカンの胴体に突っ込む人影──サイキョウトリニティ。

 二人は纏まる様にして地面を転がっていき、当然ながらアークへの攻撃は中断される。また、攻撃の最中に衝突された為に狙いがブレてしまい、バルカンの放った光線は補助ロケットに掠める程度であった。

 

「何でソウゴが!?」

 

 サイキョウトリニティの突然の登場に驚く001。その答えは向こうの方からやって来る。

 地響きと共にアナザー1号とアナザー2号が大地を抉りながら疾走。異形らの乱入に驚愕する001と1型に対し、挨拶代わりにアナザー1号がその巨体で二人纏めて吹っ飛ばす。

 

「うわああっ!」

「ぐうっ!」

 

 そして、アナザー2号はアークの時間を止めているツクヨミを見つけると、タイヤとなっている拳を地面に叩き付け、地面に亀裂を生じさせる。

 亀裂はツクヨミの足元まで伸びて行き、到達すると同時に地面が爆ぜる。

 

「きゃあ!?」

 

 バランスを崩してツクヨミは転倒。

 

「しまった!?」

 

 集中が途切れてしまったせいでアークの時間停止も解除され、アークは再び宇宙へと上がっていく。

 

『ははははははは!』

『あはははははは!』

 

 アナザー1号とアナザー2号は打ち上げられたアークを見上げながら哄笑する。

 

『新たな時代は()たちが創る!』

 

 それは紛れも無い勝利宣言。あと一歩で時代改変を阻止出来た筈が、アナザー1号とアナザー2号によって覆されてしまった。

 

「そんなこと、させるかっ!」

「或人!」

 

 001が立ち上がり、アナザー1号たちへ向かって行く。

 

『ふん』

 

 無謀にも挑んで来る001を鼻で笑い、アナザー2号は振り上げた腕を001へ振り下ろす。

 001が圧し潰されるかと思われた時、001は何者かに突き飛ばされる。

 

「うっ!」

 

 地面に倒れた001。すぐに体を起こし、振り返る。

 

「父さん!?」

 

 001を突き飛ばしたのは1型であった。潰される筈であった001に代わってアナザー2号のタイヤを受け止めている。

 

「或人……! 逃げろ……!」

 

 体を地面に沈み込ませながら1型は001に逃げる様に言う。

 

「皆を連れて、早く……!」

「そんな事──」

「お前が生きている限り……俺の夢は潰えない……!」

 

 父の窮地を放っておける訳も無い。しかし、父は息子に自分の夢を託す。それは同時に子に生きて欲しいという願いであった。

 

「うう……ううぅぅ……!」

 

 001の呼吸が荒くなる。選択したくないことを選択しなければならない苦渋、苦悩。

 だが、001は選択した。

 

「うわああああああああっ!」

『RISING DYSTOPIA!』

 

 フォースライザーのレバーを操作し、高速移動を開始。この場からツクヨミ、バルカン、サイキョウトリニティを抱えて脱兎の如く離脱する。

 

「それで良い……」

 

 001たちが去って行くのを見て安堵する1型。直後、押さえていたタイヤが回転し出し、1型の手を弾くとそのまま地面へ叩き伏せる。

 回転するタイヤと地面の隙間から火花が飛び散った。

 やがて、アナザー2号はタイヤの回転を止めて腕を引く。抉られた地面の中には装甲をズタズタに傷付けられた1型が横たわる。

 

「ぐっ……」

 

 しかし、その状態でも1型は機能停止せずにまだ動けていた。

 

『意外と頑丈だね』

 

 アナザー2号はそんな1型の丈夫さを嘲りと賞賛を半々に混ぜた言葉を掛ける。

 

『止めだよ』

 

 未来改変を阻止する戦い。結果を見ればソウゴ、或人らの敗北であった。だが──

 アナザー2号が最後の一撃を与えようとした瞬間、遠くからこだまする爆発音。

 

『何……?』

「馬鹿な……」

 

 アナザー1号たちは頭上を見上げる。そこには大きな火の玉が生まれ、地面へと落下していた。

 

「補助ロケットが!」

 

 アークを打ち上げ為の補助ロケットの一つが突如爆発したのだ。

 

「あれでは高度が足りない! 全てのヒューマギアとデータリンクが出来なくなる!」

 

 片方の推進力でもアークを宇宙にまでは上げることは出来る。しかし、アークを全てのヒューマギアとリンクさせる位置までは到達出来ない。そもそもアークの打ち上げは緻密な計算と万全の準備の上で成り立っている。ロケットを片方失うという事態が起これば全てが狂ってしまう。

 

「何が……はっ!?」

 

 アナザーバルカンは思い出した。バルカンが放った光線が補助ロケットを掠めたことを。その時に出来た傷が原因となり、爆発が起こったのだ。

 

「バルカン……!」

 

 アナザーバルカンは怨嗟の声を吐き出す。ヒューマギアにとっての夢がたった一人の人間によって大きく狂わされたのだ。

 そして、この時アナザー1号たちの意識はアークの方へ向けられていた。この隙を逃す程彼は間抜けでは無い。

 

『ROCKING SPARK!』

『しまった!』

 

 気付いた時にはもう遅かった。1型は埋もれていた地面から脱出して姿を消す。

 

『ちっ……』

『悪足搔きだね』

 

 アナザー1号とアナザー2号は勝利の余韻を台無しにされ、不機嫌そうに呟いた後、変身を解く。

 フィーニスの姿となるとアナザーバルカンを一瞥する。

 

「後は君に任せるよ」

 

 フィーニス自身の目的はほぼ果たせたので後始末はアナザーバルカンに丸投げする姿を消してしまった。

 一人残されたアナザーバルカン。目的を完全に果たすことが出来ず、苛立ちを咆哮として天へ向けた。

 

 アオオオオオオオンッ! 

 

 それを少し離れた場所から息を潜めて見つめるは其雄。実は彼はそんなに遠くへ逃げていなかった。ダメージが大きかった為に発射場近くの林に身を隠すしか出来なかったのだ。

 アナザーバルカンが大人しくこの場を去ってくれることを願いながら、ただその時が来るのを待つ。

 暫くしてアナザーバルカンは咆哮を止め、移動を始める。恐らくはアークによってハッキングされたヒューマギアを率いて人類への反旗を行うつもりなのであろう。

 其雄はプロテクトのおかげでハッキングを免れているが、いずれはそのプロテクトも無力化されるだろう。それほどまでにアークの機能は高い。

 其雄の肩に手が置かれる。咄嗟に振り返って身構えるが──

 

「安心しろ。俺たちだ」

「酷い傷だ……」

 

 ──雷と亡であった。

 

「何が起こった? アークも勝手に打ち上がっちまうしよぉ」

「仲間も次々とおかしくなっていっている……」

 

 事前に施したプロテクトで雷も亡もまだ正常であった。

 

「これから説明する。が、その前に聞いてくれ」

 

 数少ない生き残りに対し、其雄は言う。

 

「十二年後まで俺たちは生き延びなければならない。同胞であるヒューマギアが襲って来るだろう。人間も味方にはなってくれないかもしれない」

 

 正常な状態のヒューマギアにとってはこの先は全てが敵に回る地獄が待っている。

 

「──それでも俺の話を聞き、付いて来るか?」

 

 其雄の問いに対し、雷は鼻で笑う。

 

「何を言うかと思ったら──」

 

 雷は其雄に肩を貸す。

 

「俺は腹が立ってんだ! 仲間をあんなにして俺から宇宙を奪った奴にな! そいつに雷落としてやんなきゃ気が済まねぇ!」

 

 雷らしい迷いの無い決断だった。

 

「私も付いて行くよ。あんな風になってしまうのがヒューマギアとしての正しい在り方などとは私には思えない。振り回されるだけの道具で終わるつもりは無い」

 

 そう決断し其雄に肩を貸そうとした時、亡の靴先に何が当たる。

 

「これは……?」

 

 不破が所持していたガトリングヘッジホッグプログライズキー。爆風によって飛ばされたそれが偶然、或いは運命として亡の許へ。

 ついガトリングヘッジホッグプログライズキーを拾ってしまう亡。

 

「おい。行くぞ。まずは其雄を直さないといけねぇ。工場から使える物全部持ってくぞ」

「──ああ」

 

 この日、確かにソウゴと或人は敗北した。だが、それでも彼らが過去に来たことは無駄では無い。

 

「或人……未来で待っていてくれ」

 

 未来へ繋がる反逆の火種は来るべき日の為に静かに燃え続ける。

 




アナザー1号とアナザー2号との初戦はこんな感じになりました。
映画だとフィーニスはタイムマジーンが無いと時間移動出来ませんでしたが、この作品でのフィーニスは単独で時間移動が出来る設定になっています。
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