仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
「何!? アークが!?」
飛電インテリジェンスに齎された一報。それは、是之助の、飛電インテリジェンスの知らない間に衛星アークが勝手に打ち上げられたというものであった。
「一体何が起こっている!? 其雄は!? ウィルはどうしたんだ!?」
責任者である二人の所在を確認するが、返って来たのは二人共現在連絡が取れず、行方も分からないという答えであった。
「──分かった。後はこちらで調べる」
是之助は脱力した様に社長席に座り込む。
「え、衛星が私たちの許可無く打ち上げられたのですか!?」
「どうしてこんなことに!?」
福添と山下も混乱している。
「ま、まさか、其雄さんが?」
不穏な動きをしていると報告された矢先の出来事であり、つい其雄のことを疑ってしまう。しかも本人が行方不明になっているとなればますます疑いも深まる。
「それはまだ分からん……」
状況的には黒に近いが、是之助自身は其雄の無実を信じたかった。
「衛星の打ち上げについてすぐに調査する。それと会見の準備もしてくれ。マスコミを通じて今回の件を皆に説明する必要がある」
「その必要は無い」
社長室の扉を開け、渦中の人物であるウィルが現れる。
「ウィル! 無事だったのか!?」
ウィルの無事にひとまず安堵する是之助であったが、福添と山下はウィルへと詰め寄った。
「一体何があった!? ちゃんと説明しろ!?」
「場合によってはお前だけでなく飛電インテリジェンス全体の責任問題になるんだぞ!?」
すると、ウィルは眉一つ動かさず無言で二人を殴り付け、地面に倒れさせる。
「いだっ!」
「あうっ!」
「ウィル!?」
是之介が驚く。殴られた二人も同じ気持ちであった。ヒューマギアが人間に対して偶然などではなく明確な意思で暴力を振るったのだ。人を傷つけない様にプログラムされている筈なのに、そのプログラムを超越して人を傷付けた。
二人を見下ろすウィルの目には機械とは異なる冷たさがあった。
「この会社も世界も我々ヒューマギアのものとなる」
「ウィル……やはり君は……!」
天津垓から齎された情報。それは衛星アークを利用した兵器開発だけではなく、衛星アークには特殊なデータ、例えて表現するのなら『悪意』のデータが何者かによって組み込まれているという情報も含まれていた。
その悪意に染まった存在が目の前に現れるとなると是之助も信じざるを得ない。
「ウィル! 君は一時的に混乱しているだけだ! 悪意というプログラムで正気を失っているんだ!」
説得を試みようとするがウィルは耳を貸さず、スーツからアナザーバルカンウォッチを取り出して起動。
『バルカン』
アナザーバルカンウォッチを取り込み、異形の姿と化すウィル。是之助はその姿に絶句し、福添と山下は悲鳴を上げた。
「正気を失った? 違う。私は目覚めただけだ」
是之助の説得も一蹴し、アナザーバルカンの凶爪が福添たちへと向けられる。
「う、うあああ……」
福添と山下は腰が抜けた状態であり、恐怖で顔を引き攣らせたまま動くことすら出来ない。
怯える二人。そんな二人の命を奪うなどアナザーバルカンにとっては花を摘むよりも容易いこと。
見せつける様に腕を大振りに振り上げる。
「逃げろ!」
是之助が背後からアナザーバルカンに飛び掛かり、声を飛ばす。
「邪魔だ!」
アナザーバルカンは振り払おうとするが、老骨の何処にそんな力があるのか、是之助はしがみついたまま離れない。
「逃げろ! 逃げるんだ!」
是之助の必死な声に恐怖が薄れる福添たち。だが、次なる恐れが二人を襲う。それは是之助を失うという恐れ。
「しかし、社長!」
それでも食い下がろうとする二人に是之助は大声を放つ。
「社員こそ会社だ! お前たちが居れば飛電インテリジェンスは──」
そこまで言い掛け、是之助の体は投げ飛ばされ壁面に激突する。
「社長ぉぉぉぉ!」
福添が駆け寄ろうとするが、山下が必死になってそれを止める。普段は是之助をヨイショしたり媚びたりする言動が目立つ福添だが、是之助を尊敬する気持ちは本物であり、是之助の危機には我が身を惜しまない。
「行くんだ……!」
絞り出す様な是之助の声。福添と山下は、是之助の必死の覚悟が伝わり号泣しながら社長室から逃げ出していく。
「それで、いい……」
逃げ出す二人に満足気な笑みで見送る是之助であったが、気付くとすぐ傍にアナザーバルカンが立っており、是之助の首を掴んで無理矢理立たせる。
「が、ぐっ……」
「たかが二人逃がした所で何になる?」
「私の、命は、ここで、潰えるだろう……だが、私の夢は……社員の彼らが、いる限り、潰えない……!」
それは其雄が或人を逃がす時に言った台詞と良く似ていた。血の繋がりの無い、それこそ種族も違う。なのに同じ事を言う。その事実がアナザーバルカンに本人にも理解出来ない苛立ちを覚えさせる。
「ほざくな、人間が……!」
掴んでいた手に力が加わり、是之助の足が床から離れる。間も無くして散る命。だが、是之助の最後の力を振り絞る。
「ウィル……」
アナザーバルカンは是之助が何か恨み言でも吐くのかと思っていた。
「これが、君の、望んだ、対価か……?」
その言葉を最期に是之助の全身から力が抜けた。掴んでいる手から鼓動が消えたのが伝わって来る。紛れも無く、この瞬間是之助は息絶えたのだ。
動かなくなった是之助を見下ろし、アナザーバルカンは変身を解く。
創造者たる是之助は死んだ。これによりヒューマギアは真の解放を得た。最早、ヒューマギアは人間の道具などでは無い。
それなのに、その筈なのに、ウィルは是之助の死体を見ても何一つ高揚することは無かった。逆に心が急速に冷めていくような、穴が開いて行くような、喪失感しか覚えなかった。
「そんな筈は無い……!」
今感じているものを否定する。人間が存在する限り、ヒューマギアが笑顔になる日など来ない。
現に自分は是之助を殺害し、笑顔に──
「何故……?」
──ウィルは己の顔に触れ、愕然とする。是之助を殺したウィルは笑顔など浮かべていなかった。能面の様な顔を張り付け機械のまま。
『これが、君の、望んだ、対価か……?』
死に際の是之助の言葉がウィルの頭の中で反響する。
「私が望んだのは……望んだのは?」
答えは自分の中にあると思っていた。しかし、己に問うてもその答えは出て来ない。
「私は……私は……これは、本当に、私の望んだことなのか……?」
自問自答することで生じる疑問。当たり前のことの様に思っていたが、いざそれを目の当たりにすると現実と己の心の中の空虚との差に戸惑いしか覚えない。
「私は……ヒューマギア。私は……人間を皆殺しに……皆殺し? 何故? 人間が存在する限りヒューマギアは道具、奴隷……人間から解き放たれたヒューマギアは何になる?」
エラーでも起こしたかの様に自問自答を繰り返すウィルであったが、突然両耳の機械パーツが赤く点滅し、ウィルの瞳が赤く染まる。
「ぐ、う、ああっ!」
ウィルの中の記憶が急速に消去されていく。ウィルの意志とは関係無く。自問自答の記憶が消去され、是之助の最期の言葉も消去され、それに関わるデータも抹消されていく。
残されたのは、是之助は死んだという簡素なデータのみ。あまりに簡素過ぎて疑問すら抱きそうだが、それに疑問を持たないようにきちんと修正されている。
衛星アークの意志によって。
一瞬にして頭の中身を書き換えられたウィルは、先程とは違って是之助の死体を物でも見るかの様な冷めた目を向けると、すぐに興味を無くしてしまう。
「人間は皆殺しだ」
その言葉に彼自身の意志は全く感じ取れない。
◇
ツクヨミとサイキョウトリニティ、バルカンを安全な場所まで運んだ001。無言で佇んだまま何かを考えている様子であったが、少し間を置いた後に彼らへ背を向けた。
「何処へ行くの?」
「今なら、もしかしたら、間に合うかも……」
そう言う001の声は弱々しい。自分でもその可能性が限りなく低いことは分かっていても、納得し切れない様子であった。
すると、サイキョウトリニティがジクウドライバーを外す。変身が解除されてソウゴ、ゲイツ、ウォズの三人となった。
トリニティの特性を知らなかった001はいきなり三人になった事に軽く驚く。
「行っても無駄だ。もうこの時代は手遅れだ」
「でも……」
ゲイツの言葉に001は食い下がろうとする。
「衛星が打ち上がってしまった以上、もうここで為す術は無い」
「なら、もう一度過去に戻ったら!」
「それは止めた方がいいね」
ウォズがゲイツに代わって反論して来る。
「私たちが一回でも介入してしまったら、敵もまた容赦無く罠を仕掛けて来るだろう。どう足搔いても後手に回ってしまう。危険だ」
ソウゴたちが過去に介入するのが歴史に残ってしまった以上フィーニスも何かしらの手を打って来る。それこそ今回以上の妨害が用意されるだろう。オーマジオウの力を奪われるだけでは済まないかもしれない。
ゲイツとウォズに窘められ、少し頭が冷えたのか001はフォースライザーを解除する。途端、足元がふらつき、その場で倒れそうになった。
「或人!」
ソウゴが駆け寄ろうとするが、そうなる前にバルカンが或人の腕を掴んで支える。
「不破さん……」
バルカンもまたショットライザーを外し、変身を解除。仮面の下から苦々しい表情をした不破の顔が露わになる。それは不本意ながらも作戦の失敗を認めているものであった。
その顔を見て、嫌でも負けたことを認めざるを得なかった。
或人は不破の手から離れるとヨロヨロとしながらも態勢を直す。
今まで戦闘が続いていたせいで麻痺していたが、或人の体は怪我と疲労と反動で限界寸前であった。
本来、ヒューマギアが用いるフォースライザーを使用して変身しているので当然と言える。常人なら一回変身の苦痛を体験すれば二度と変身する気が起きなくなるが、何度も反動覚悟で変身していた或人の肉体と精神力が並外れている。
或人も不破も今すぐにでも飛び出す様子が無いのが分かると、ウォズは話の続きをする。
「そして、何よりも厄介なのはこの時代でまた新たなアナザーライダーが誕生してしまったことだ」
「あのデカい奴らか……」
アナザー1号とアナザー2号の姿が皆の頭を過る。ソウゴらは経験があるが、或人と不破からすれば規格外の大きさの相手であり、戦慄してしまう。
「アナザー1号とアナザー2号だったかな? 今までならこの時代でアナザーバルカンを倒せば良かったが、アナザー1号、アナザー2号が存在する限りアナザーバルカンを倒してもこの歴史は変わらない。アナザーバルカンの代わりをアナザー1号たちが担うことになるからね」
今までならば改変される前の過去でアナザーバルカンを倒せば、歴史を修正することが出来たが、アナザー1号らの誕生のせいでそれも不可能になる。修正するとなると三体のアナザーライダーと撃破する必要がある。
しかも、アナザー1号、2号の変身者はタイムジャッカーである。その気になればアナザーライダーの契約者を増やすことも考えられた。どう考えてもいたちごっこになってしまう。
「あの二体も倒す必要があるのか……」
「厄介な……」
ソウゴとゲイツは苦い表情となる。アナザー1号とはサイキョウトリニティで互角に戦えたが、それでも決定打に欠けていた。アナザー2号が加わるとその決定打不足が致命的になり、押されてしまい不覚を取ってしまった。
「過去はもうやり直せない。敵もつえぇ。もう俺たちには打つ手は無いって言うのかよ?」
八方塞がりで不破の声も弱さを感じられる程小さい。
絶体絶命の状況。ここから打開する方法があるとすれば──
「過ぎた過去は変えられない……でも、未来なら自分の力で変えられる」
──ソウゴが或人を励ます為の言葉。ヒントはこの言葉の中にあった。
「ゼアだ」
「何?」
「未来で衛星ゼアを打ち上げるんだ! ゼアならアークに対抗出来る!」
未来で開発されている衛星ゼア。衛星アークと同種ならばアークの力を抑えつけることも可能であると或人は気付いた。
「ゼアだと? 飛電インテリジェンスの元社員が開発しているあれか?」
「それ! 不破さん! ゼアってどれぐらい完成してるの!」
「詳しくは知らないが、後は打ち上げするぐらいだと聞いたが……」
ほぼ完成状態にあることを知り、より期待が高まる。
「上手く行くと思うか?」
「──いや、あながち無謀な試みではないと思うよ? 何故なら本来の歴史ならば衛星ゼアがアークの代わりに打ち上げられている。そして、改変された未来には色々と綻びもある」
「つまり、本来の歴史に戻ろうとする力が打ち上げ成功を後押ししてくれるかもしれないってこと?」
「可能性は大いにある」
追い詰められていたゲイツ、ウォズ、ツクヨミの表情に希望の光が差していく。
「それなら行けそうな気がする!」
ソウゴもまたいつもの口癖が戻って来る。
「だが、用心をしてくれ。我が魔王」
「用心?」
「あのフィーニスと名乗ったタイムジャッカーは、何処まで力を求めているのか分からない。オーマジオウの力だけで満足するだけならいいが、ジオウとしての力も奪いに来る可能性もある。──私たちは少々頑張り過ぎたみたいだからね」
フィーニスからすればオーマジオウの力を奪った時点でソウゴへの興味は完全に失せた──筈であった。
ウォズが指摘したようにソウゴたちは食い下がり過ぎてしまったのである。フィーニスに再び危機感を覚えるぐらいに。
変貌していたとはいえ元はオーマジオウの力から成っているアナザー1号に対し、ソウゴらは三人の力を合わせたサイキョウトリニティで互角の戦闘を行った。アナザー2号というイレギュラーが発生して結果的に敗走したとはいえ、その力は脅威と言える。
もし、ここにツクヨミや或人が参戦していたら、とフィーニスが考えたとしたら無視することなど出来ない。
「まあ、その時はその時かな?」
ウォズの懸念とは逆にソウゴの方はいい加減にも聞こえる答えを返す。或人と不破は本当に伝わっているのかと心配になったが、ソウゴの仲間たちは慣れているのかソウゴの飄々とした態度に溜息だけで済ませていた。
「どんなことがあってもやる事は変わらないよ。変えられた歴史を元に戻す。それが俺たちの目的なんだから」
オーマジオウの力を奪われていてもソウゴは一切の弱さを見せない。その芯が通った姿は周りを鼓舞する力がある。不思議なことにやれるかもしれない、出来るかもしれないという前向きな気持ちになって来るのだ。
「じゃあ、未来に戻ろうか」
すべきことは決まった。過去にいつまでも留まっている理由は無い。
「不破さん。元の時代に戻ったら、他の人たちの説得をお願い出来る? きっと不破さんの言葉なら皆も聞いてくれると思う。俺も元飛電インテリジェンスの人たちを説得するつもりだ」
不破の存在は残された人類にとって精神力支柱である。彼の言葉ならば皆も耳を貸してくれると或人は考えた。きっと刃もまた唐突な話だが聞いてくれると考えていた。
「分かった」
不破も了承する。衛星ゼアを打ち上げる為の手筈は取り敢えず決まった。
待機させていたタイムマジーンがソウゴたちの許へ飛んで来る。
過去を戻すことには失敗した。だが、それで諦める様なソウゴでも或人でも無い。如何なる絶望を乗り越え、希望を胸に前進していくのが彼らなのである。
だが、現実というものは常に困難という壁を希望の前に置く。
それを思い知るのは彼らが帰還してすぐ後のことであった。
◇
「うおらっ!」
気迫の籠った声と共にヴァルクサーベルが振り下ろされる。帯電させることで刃が電熱を持っており、ヒューマギアの頭から股間までと一刀両断する。斬られた箇所は赤熱化しており、ゆっくりと左右に分かれながらヒューマギアは倒れる。
一体倒した所で終わりでは無い。仮面ライダー雷に多くの銃口が向けられ、その何十倍もの弾丸が撃ち出される。
「くっ!」
しゃがみ込み当たる面積をなるべく小さくしながら二本のヴァルクサーベルを盾にして弾丸を受ける雷。
彼が戦っているヒューマギアは通常のヒューマギアとは異なる。
胸部、両肩、頭部に装甲を増設され、軽機関銃で武装された戦闘特化のヒューマギア。通称バトルマギアと呼ばれる戦闘員である。
マギアが生み出す即席の兵であるトリロバイトマギアよりも防御力、戦闘力は上であり、雷も少々手こずっていた。
弾丸の雨を受けながらどう切り抜けるか考えていた時、バトルマギアたちは突然銃口を互いに向け合い出し発砲。同士討ちによって破壊されていく。
奇行そのものであるが、雷は驚いた様子を見せずに立ち上がると後ろに振り返る。
「助かったぜ」
「当然のことをしただけさ」
雷の後ろには仮面ライダー亡が立っている。亡によるハッキングによりバトルマギアは味方を敵と誤認識して攻撃し合ったのだ。
「こっちは五十体ぐらい倒したが、終わりが見えねぇ」
「こちらも似たようなものさ。──人間たちもかなり追い詰められている」
「無理もねぇ。さっきの戦いで戦える奴も少なくなったからな」
残された人類の拠点がウィルらによって襲撃され、或人やソウゴたちによって撃退されてからたった数時間後にまたもや拠点は襲撃を受けていた。
しかし、これは不思議なことではない。ヒューマギアは壊れてもパーツを変えればすぐに復帰でき、完全に破壊されても幾らでも補充が出来るのだ。
対する人間は数時間で出来ることは、せいぜい疲労を回復させるのが限界。負傷すればその何十倍もの時間を必要とする。
先の襲撃で戦える者を多く失ってしまった人類にとっては短い間隔での二度目の襲撃は絶望的なものであった。
だからこそ雷と亡は過去に行った或人たちとの約束を果たす為に最前線へ行き、たった二人で多くのバトルマギア相手に奮戦していた。動かすことの出来ない負傷者などの守りを刃たちに任せて。
バトルマギアと仮面ライダーの性能差は圧倒的だが、彼らが言っていた様に数だけは多い。数に物を言わせて性能の差を埋めようとしていた。
数による暴力も少しずつだが雷らにダメージを与えており、彼らの装甲には弾丸による弾痕や傷が目立ち始めている。
それでも第一陣は雷と亡によって全滅された。だが、亡のセンサーは第二陣が来ていることを感知していた。
「次が来るぞ」
「はっ。まとめて雷落してやるっ!」
雷は恐れることなく言ってのける。長時間戦っているが雷の闘志は全く揺らいでいない。
「相変わらず頼もしいね」
冷静沈着な性格の亡とは正反対だが、亡は雷のこの性格が好きであった。衛星アークが打ち上げられてから今日に至るまでその性格には何度も助けられてきた。
一方で雷もまた亡には絶大な信頼を置いている。直情的な性格な彼にとって亡はブレーキ役であり、いざという時にする的確な判断のおかげで乗り越えた窮地は数え切れない。
雷の聴覚センサーも無数の足音を捉える。数からして第一陣の三倍ものバトルマギアが向かって来ているのが分かった。
しかし、それに対する恐れは二人には無い。頼れる仲間が隣に居る。それだけで恐怖など跡形も無く消し飛んでしまう。
行進する鋼の軍隊。しかし、突如としてその足音が消えた。
その事態に訝しむ二人。すると、行進を止めた軍隊から小さな足音が抜けて出て来た。
足音の数からして二人。それだけで誰が来ているのか雷と亡は察する。
間も無くして足音の主らが二人の前に現れた。
「まだ人間を守っているのか?」
「この裏切り者ー!」
雷と亡に敵意を露わにする滅と迅。
「てめぇらか。おい、滅。飛電或人にコテンパンにやられたんだから無理せずに休んでたらどうだ?」
「あー! 滅! あいつ、滅のこと馬鹿にしてるよ!」
雷の挑発に迅の方が反応し、雷を指差しながら滅に話し掛ける。
「言いたいだけ言わせておけ。──直に何も言えなくなる」
滅の方は眉一つ動かしておらず、雷の挑発を流していた。
雷と亡。滅と迅。両者の因縁は長い。相容れない存在だと理解している。しかし、戦う度に決着が着かずに終わっていた。
「飛電或人の参戦は確かに我々にとってはイレギュラーだった。しかし、イレギュラーに対して何の対策も打たない程愚かでは無い」
「社長から貰った新しい力でお前らなんて壊してやる!」
フォースライザーを装着すると共にプログライズキーを起動。だが──
『TERRITORY!』
『INFERNO WING!』
──発せられる音声は雷と亡の知らないもの。
『FORCE RISE!』
フォースライザーにセットされ、強制解放されるとフォースライザーから二体のライダモデルが物体化する。
滅からは八つの目を妖しく輝かせる鋼の蜘蛛。迅からは灼熱の炎を纏い、羽毛の代わりに火の粉を散らす隼。
「うおぉぉ! カッコいいー!」
迅は燃え盛りながら飛翔する隼に目を輝かせる。迅の反応からして彼も初めて使う力らしい。
蜘蛛のライダモデルは滅を正面から抱き締め、炎の隼は迅を後ろから抱擁する様に飛ばした羽根で迅を包む。
『TRAPPING SPIDER!』
『BURNING FALCON!』
ライダモデルが分解され、装甲となって二人に装着されていく。
『No one can escape its web』
『The strongest wings bearing the fire of hell』
『BREAK DOWN』
変身した滅の姿はスティングスコーピオンプログライズキーで変身した時と然程の変化は無い。ただ腕と足の側面に蜘蛛の脚を模した装甲が追加され、額には六つの円形センサーが追加され、蜘蛛と同じ八つの目となっていた。
迅の方はマゼンタを主体としていた色から鮮やかな真紅へと変わり、肩や胸部にアーマーが新たに付けられている。そして、左右非対称であった頭部は左右対称になっていた。
トラッピングスパイダープログライズキーとバーニングファルコンプログライズキー。片や滅が手にした歴史は無く、片や迅が手に入れる歴史はあるが早過ぎる。
歴史を変えたことによる歪みが如実に表れた例と言えた。
トラッピングスパイダープログライズキーはウィルが管理していたプログライズキーの一つである。プログライズキーの性能を知っている為、あまり個人に過剰な力を持たせないようにしていたが、或人たちの抵抗が予測よりも強かった為に止む無く滅へと渡したという経緯がある。
そして、バーニングファルコンプログライズキーは、ウィルが或人から回収したゼロワンドライバーを解析したことによって新たに作り出したプログライズキーである。
ゼロワンドライバーはブラックボックス化しておりアークですら中々解析出来ずにいたが、幾つのかのデータを抜き出すことに成功した。その中の一つがフレイミングタイガーのデータであり、ウィルはこれをフライングファルコンと組み合わせることで歴史の針を進め、バーニングファルコンを生み出したのだ。尤も即席で生み出したものであり、試作品同然のプロトバーニングファルコンと正確に呼んだ方が良い代物である。
滅の傍にいつの間にかバトルマギアが三体並び立つ。三体はそれぞれがアタッシュケースを持っていた。
滅の背装甲が変形し、蜘蛛の脚を思わせる四本のサブアームが展開され、アタッシュケースを取る。
アタッシュケースはアタッシュショット、アタッシュアロー、そしてアタッシュカリバーに変形。このアタッシュカリバーもゼロワンドライバーを解析して複製した物である。
「人類は滅亡する。それを阻むつもりならそれ相応の末路になるだろう」
サブアームで三つの武器を構える滅。
「裏切り者なんか燃やしてやる!」
炎と共に背部から翼を展開する迅。
本来の歴史であったのなら掛け替えの無い同胞たちが、戦地で命の火花を散らそうとする。
敵側も新フォーム出したいなーと思っていたので出しました。
プロトバーニングファルコンはフォースライザー使用と試作品ということで本編の性能よりも大分劣っているという設定です。