仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
数え切れない弾、弾、弾。並び立つバトルマギアは数と銃火器の暴力によって相手を制圧しようとしていたが、それらの暴力はたった一人に向けられていた。
弾を撃ち出した時には既に姿は無く。銃口を向けるとそこには残像。誰もが追い付けていない。その脚が生み出す速さに。
多くのバトルマギアが占める戦場でバルキリーの俊足が遺憾なく発揮される。
どんなに重装甲、重武装となっても遅ければ意味が無い。彼女の視点からすればバトルマギアの動きは鈍重であった。
素早くバトルマギアへ接近すると、首と胴体の隙間にショットライザーの銃口を捻じ込む。分厚い装甲でも隙間は必ず存在する。
バルキリーが引き金を引けば、首から入った徹甲弾が頭部内まで侵入し、演算装置をズタズタにして機能停止にさせる。付け入る隙さえあればたった一発の銃弾でも十分戦えた。
一体撃破すると次なるターゲットに素早く近付く。さっきと同じように隙間に弾丸を撃ち込もうとしたが、この時バルキリーの足が止まってしまったせいで他のバトルマギアたちがバルキリーに銃火器を向ける猶予を与えてしまう。
だが、歴戦の戦士であるバルキリーは慌てることなく背中に目でも付いているかのように銃口を向けられた途端、倒そうとしていたバトルマギアの背後に隠れる。直後、大量の銃弾をバルキリーの代わりにそのバトルマギアが浴びることとなった。
同胞を敵ごと撃つ。そこに本来なら生じる迷い、葛藤、躊躇などが入り込む余地がないぐらいに迅速な対応であった。人間もそれが出来ない訳ではないが、そこに至るまでには多くの特訓と経験を必要とする。だが、バトルマギアは生まれながらにしてそれが可能であった。
この判断力がバトルマギアにとっての強み。しかし、同時に弱みでもある。
バルキリーは無数の弾丸でバトルマギアが穿たれ、削られていくのを見ながらタイミングを計っていた。
銃撃の圧によって盾にされているバトルマギアは身動きがとれず、やがて蓄積したダメージが許容量を超え、体内から青い液体と火花を零し出す。
バルキリーはそのタイミングで跳躍し、バトルマギアの背中に両足を着けると脚を一気に伸ばして蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたバトルマギアは、銃撃を行っているバトルマギアの集団へ一直線に飛んで行き、覆い被さるようにして数体のバトルマギアを巻き添えにして転倒。そこで臨界点を迎え、仲間を巻き込んだ状態で爆発を起こす。
バルキリーの戦いの経験が生み出した即席の爆弾でバトルマギアの何体かを戦闘不能状態にする。バトルマギアの割り切りの良さは脅威であるが、臨機応変な対応では人間に遠く及ばない。
バトルマギアの数も大分減った。バルキリーは一気に畳み掛けることを決め、ショットライザーをベルト中央部にセット。
『DASH!』
その状態でプログライズキーのスイッチを押す。
バルキリーの不審な動きを感知したバトルマギアらが彼女へ一斉に銃火器を向ける。
バルキリーは体が地面に着きそうな程低い体勢となる。左脚は胴体と平行になるように真っ直ぐ伸ばされ、逆に右脚は折り畳まれ、膝が胸に着いている。両手は地面に触れているが、掌を当てるのではなく指先を立てる形であった。
陸上競技で見るクラウチングスタートの構えであるとが、チーターを連想させるバルキリーの格好から獲物に飛び掛かろうとする肉食獣の姿にも見えた。
プログライズキーの力が伝わり、右脚を覆う橙色のアーマーが発光。
バトルマギアたちが一斉射撃を行う。その瞬間、バトルマギアたちは対象を見失った。
バトルマギアのセンサーは一秒前までバルキリーの姿を捕捉していた。なのに弾丸の先にバルキリーは居ない。
突然、バトルマギア一体の頭部が粉砕される。バトルマギアのセンサーに映るのは弧を描く橙の残像。それは橙の光の軌跡は頭部を失ったバトルマギアの首の上を通過していた。
続いて別のバトルマギアの頭が真上に飛んで行く。下から上向かって伸びる橙の残像がここにもあった。
人がおよそ瞬きをしている時間。次々と現れる残像と、それによって破壊されるバトルマギア。気付けば残り一体しかいない。
最後のバトルマギアの頭上に出現する橙の残像。それは円を描きながら落下。
バトルマギアが感知し、頭上を見上げた時には視界に映るのは橙に輝く踵のみ。
ダッシュ
ラッシング
ブラストフィーバー!
高速前方宙返りによって最大まで威力を高めたバルキリーの踵落としは、バトルマギアの頭部を胴体まで押し込むだけでなく、バルキリーの足も胴体半ばまでめり込ませる。
頭部と胴が一体となって凹の字のように変形したバトルマギアを蹴り付けて後方へ宙返りをし、そのまま結果を見るまでもないと言わんばかりに背を向ける。
バルキリーの判断が正しかったことを告げるように爆発が連続して起こり、バルキリーは爆風を背に浴びながら去って行く。
「刃さん!」
バトルマギアを一掃したバルキリーに仲間たちが駆け寄る。
「そっちはどうだ?」
「はい! 問題ありません! 幸いこっちまで侵入しているヒューマギア共は少数だったので何とか対処出来ました!」
「そうか。引き続き警戒しろ」
『はい!』
バルキリーは短い言葉で指示を出し、残されたバトルマギアが居ないか周囲を確認しに行こうとする。
「あ、あの!」
その前に仲間の一人に呼び止められた。
「どうした?」
「刃さんは、あのヒューマギアのことはどう思いますか? 俺たちは……本当に彼奴らのことを信じていいんですか?」
不安そうに尋ねて来る。見ると他のメンバーも足を止めて聞き耳を立てていた。皆が内心で思っていたと思われる。
確かに不安を覚えるのは分かる。突然、やって来て建物の周囲を勝手に守り始めたのだ。ヒューマギアに大勢の同胞を奪われた者たちからすれば不信感は拭えない。
「……」
バルキリーは言葉を選ぶ。多数のバトルマギアが襲撃しに来ているという報せを受けたが、実際に攻め入って来ているのはバルキリーたちでも対処出来るぐらいの少数。大半雷と亡によって撃破、もしくは足止めをされていると思われる。
バルキリーは、二人がこの拠点を守ってくれると約束をしたことを知っている。それ以前にもウィルたちと敵対関係にあるヒューマギアたちが居ることを知っていた。実際に不破が亡に助けられたことも聞かされている。様々な情報から彼らは人類にとっては味方側だと考えられる。
「──油断はするな。相手はヒューマギアだ。尤も、こちらにとって有用ならば暫く様子を見ればいい」
しかし、それを知っていても尚バルキリーは二人の経緯を話さず、心を許していないような冷徹な態度を貫く。
ここで詳細を話したとしても人間側が信じる保障は無い。人類の為に何年も尽してきているイズですら未だに疑心暗鬼の目を向けられているのが現状。真実を話しても無駄に混乱するだけであった。
「──そうですよね!」
バルキリーにそう言われ、寧ろ安堵したような表情になる。彼もまた戦場を生き抜いてきた兵士、迷えば自分だけでなく味方の死にも繋がることを良く知っている。だからこそ、人類の守護者として信頼している仮面ライダーの言葉に背を押して貰いたかったと思われた。
「話はもういいか? なら気を引き締めてここを守るぞ!」
『おう!』
バルキリーの言葉に仲間たちは雄々しく応える。
警戒の為に皆が離れていった後、バルキリーは空を見上げた。
「早く戻って来い、不破」
◇
「──理解に苦しむ」
複数のゼツメライズキーを同時使用し、過負荷で体が悲鳴を上げている雷を見て、滅は吐き捨てた。
「何故そこまでして人間の為に戦うのか分からない。滅び行く種族にどうしてそこまで肩入れをする?」
「別に、今の、俺は、人間の為に、戦っちゃいねぇよ……!」
ゼツメライズキーの反動に苦しみながらも雷は言葉を吐く。
「なら、何の為に戦っている?」
滅の問いに対し、雷は鼻を鳴らす。
「俺は、ジャケット、一着分の、仕事を、してるだけだ……!」
雷はそう言い、見えないジャケットを捲るようなジェスチャーをする。
「──ふざけたことを」
或人と雷のやりとりを知らない滅からすれば、真面目に話していたのに会話をはぐらかされたと思い、不快感が一気に高まる。
「もういい。壊れろ」
話を一方的に切り上げるとサブアームからアタッシュアローを受け取りながら雷との距離を詰め、アタッシュアローの刃を煌めかせながら振るう。
アタッシュアローの両刃を縦にしたヴァルクサーベルで止めた雷。何度も行われている滅にとって最も効果的な攻め方。雷と滅の身体能力はほぼ互角であり刃から逃れることは出来ず、間合いから離れようとすれば即座に遠距離攻撃が来る。滅の思惑通りに動かされていると分かっていても接近戦を挑まざるを得ないのだ。
そして、滅の斬撃を完全に防ぐには片手では足りずどうしても両手が必要なる。そうなれば両手が塞がってしまい、雷は今のようにサブアームが振り下ろそうとしているアタッシュカリバーを防ぐ手立てを失ってしまう。
この一撃で決着がつくとは滅も思っていない。しかし、雷の次なる行動の選択肢を大幅に奪い取ることが出来る──そう考えていた。
雷の右肩の装甲の一部が光ると、光った部分から薄緑の半透明の鎌が生え、アタッシュカリバーに鎌を叩き付ける。
「何!?」
雷から第三の腕が生えて来たことに驚きを隠せない滅。しかも、出現した鎌は紛れも無くベローサゼツメライズキーのロストモデル。
生えたのは鎌だけではない。今度は左腕部の装甲の一部が変換され、そこから長い鼻──マンモスの鼻が伸びて来る。
マンモスゼツメライズキーのロストモデルの一部が実体化されると、マンモスの鼻は大きく反って反動をつけ、鞭のように滅の脇腹に打ち込まれる。
「ぐおっ!」
強烈な一打によって横っ飛びする滅。だが、空中で静止される。マンモスの鼻が凄まじい勢いで吸引を開始し、滅を吸い寄せている。
滅もされるがままではなく各アタッシュウェポンを用いて反撃しようとする。だが、途中でマンモスの鼻が再構築をされ、白い触手となって枝分かれすると滅の手足やサブアームに巻き付き、動きを拘束してしまう。
マンモスの鼻からネオヒゼツメライズキーのロストモデルによる触手によって引き寄せられる滅。
タイミングを合わせて雷は右足を持ち上げる。右足がドリルに似た半透明の巻貝のロストモデルに覆われた。
顕現したビカリアゼツメライズキーの力は見た目通り回転を始め、先端が僅かに地面に触れただけでその部分は粉砕を超えて塵となった。
凶悪な回転力を持つロストモデルを携え、滅を掘削する為に待ち構える。
「ぶち抜いてやらぁぁ!」
範囲内に入ると雷は右足を前に突き出す。直撃すれば破壊は免れない。
「舐めるな……!」
サブアームから飛び出した糸がネオビの触手に絡み付き、電撃を流す。それにより触手の力が弱まり、滅は拘束から抜け出す。しかし、雷のドリルはすぐそこまで迫っていた。
滅は咄嗟にサブアームからアタッシュカリバーを奪い取る。そして、元々持っていたアタッシュアローと一緒にアタッシュモードへ戻す。
滅はそれを重ねて二重の盾にした
右蹴りが盾となったアタッシュウェポンに命中。凄まじい火花が生じ、振動が滅を襲うがアタッシュウェポンを構えている両手を決して離さない。
「こいつ!?」
滅の冷静な対応に内心舌を巻きながら、雷は前方に体重を掛ける。
重みが加わったドリルに耐え切れなくなったのか滅は弾かれるように後方へ飛ばされる。
すぐに追撃を掛けようとし、雷もまた前に出る。
「があっ!?」
雷は体を仰け反らせ、痙攣し始める。その体には青白い電流が走っていた。
「な、に、が……!」
痙攣する体を無理矢理動かし足元を見ると、地面に雷の足を中心にして青白く輝く蜘蛛の巣が浮き上がっている。
蜘蛛の糸は相手を拘束するだけではない。相手が来るのを待ち構え、獲物を罠に掛ける。体の各部から射出出来る糸は、切り離して罠として仕掛けることができ、しかも電流を流すまで目視で確認することは不可能。
まんまと誘いに乗った獲物を罠で捕縛する。トラッピングスパイダーの名は伊達ではない。
「こ、の、野郎っ!」
雷はビカリアのドリルを地面に突き立て、回転させる。その回転によって地面を粉砕しながら張り巡らせていた滅の糸が巻き取られ、無数に生えた突起によって引き千切られる。
並の獲物ならば捕食されるのを待つ身となっていただろうが、雷は名の通りに電気に対して耐性を持つ。外部からの電撃ならば暫くすれば動けるようになるのだ。
「ふぅ……」
トラッピングスパイダーの電磁ワイヤーから逃れた雷は、滅を睨み付けた後その場から一歩前に踏み出し、そこで何故か歩くのを止めてしまう。
(くそっ……! 取り込んだ反動か……!)
今の雷は許容量以上のデータを取り込んでおり、そのせいで処理落ちのような不具合が生じてしまっている。歩くのを止めてしまったのも彼の意志に反して体の方がついていけなかったのだ。おまけに体が熱を持ってしまっており、触れれば火傷では済まない温度まで上がっている。
本当ならば今すぐにでも滅に近付き、その顔面に一発入れてしまいたかったが、これ以上激しく動くとなると殴る前に動けなくなってしまう。雷は仕方なくなるべく相手に悟られないようにゼツメライズキーの最適化を行いながら熱くなった体を冷ます。
滅にとっては絶好の機会であったが、滅の方も雷の思わぬ戦闘力に慎重になっており、自分から仕掛けるのを避けていた。そして、もう一つ要因がある。
「──チッ」
滅は不愉快そうに舌打ちをする。彼が見ているのは両手にある二つのアタッシュケース。隙間部分から白煙が上がっており、バチバチという音が内部から聞こえている。
先程の雷の一撃によってアタッシュカリバーとアタッシュアローが破損してしまった。使えなくなった二つを放り棄てる。残るはアタッシュショットガン一丁。自身の戦闘力の低下も彼が慎重になる理由であった。
(装甲を再構築することでロストモデルを部分的に召喚して武器として扱うか。元々は我々の所有していたゼツメライズキーだからこそ能力は分かっているが、状況に応じて変化させるのは厄介だな)
滅が変身する際に纏う装甲などはプログライズキーによって呼び出されるライダモデルが変化したものであり、雷が行っていたのはその逆である。
ロストモデルを部分的に出すのは恐らく負担軽減によるものだと滅は推測していた。滅自身も複数のロストモデルを取り込んで自由自在に操るのは無理だと分かっているからである。
(そうなると奴は短期決戦を挑んで来るだろう。持久戦に持ち込めば勝手に自滅する)
(──ってな事を考えているんだろうなぁ、あいつは。どっちにしろ攻めるしか勝てる見込みはねぇ! 攻めて攻めて攻め続けてやる!)
滅の考えを雷は見抜いていた。その上で思惑を打ち破る程の苛烈な攻撃をすることを決める。
(持久戦に持ち込む暇すら与えねぇ!)
「安心しろ。持久戦を挑むつもりは無い」
雷の考えを読んだ発言と同時にアタッシュショットガンが火を噴く。
散弾が地面を粉砕するが、雷の姿は無い。撃たれると分かった雷は跳躍して散弾を避けていた。
だが、闇雲に跳んだのは雷の失策と言える。空中では自由に動くことは出来ない。滅もそれが分かっており、アタッシュショットの銃口を少し上げるだけで容易く狙いがつけられる。
再び響く銃声。しかし、散弾がターゲットを撃ち抜く音はしなかった。
雷の背部から蝙蝠のような黒い翼が展開されており、雷はそれによって空中を飛翔して散弾を回避したのだ。
オニコゼツメライズキーの能力により空を飛ぶ力を得た雷。続いて胸部の装甲を変化させ、胸からも赤い翼を生やす。
クエネオゼツメライズキーの力で生やしたそれを引き抜くと滅目掛けて投げ放つ。
「ふん!」
滅はアタッシュショットで片方を銃撃。弾かれた翼は弧を描きながら打ち上がり、地面に突き立つ。だが、その間にもう一方が滅の側面から迫っていた。
クエネオの翼が滅へと届くかと思われた時、突然翼が空中で静止する。
「無駄だ」
よく見ると分かる微かな光の反射。それがクエネオの翼の周囲に幾筋も見える。
滅は事前に周囲へ糸を張り巡らせており、その糸によって翼を絡め取っていた。滅の糸は細くとも本数さえあれば切断力のある翼でも止めきれる。
攻撃を止められた。だが、雷に焦りは無い。こうなることは想定済みだからだ。だからこそ、先程の攻撃にもう一つ仕掛けを施してある。
糸で縛られている翼が光を放ちながら形を変える。翼は長い牙を持つ哺乳類の頭部となった。エカルゼツメライズキーに記憶されたロストモデルの頭部だけが再現される。
「何っ!?」
切り離された部位すらも再構成することが出来ると思わなかった滅は、急いでエカルの頭部を叩き落そうとする。しかし、その手が届く前にエカルの牙が滅の顔へ伸びて行く。
刺し貫こうとする牙を、首を倒して紙一重で避けた滅。奇襲は失敗したかと思いきや、外れた牙はサブアームに当たり、サブアームからアタッシュショットを弾き飛ばす。
これにより全てのアタッシュウェポンを失ってしまった滅は、八つ当たりでもするかのようにエカルの頭部を殴り付けた。
だが、部分的とはいえロストモデルは頑丈であり滅の拳でも破壊されるどころか変形もしていない。
また攻撃される前に糸で何重にも縛り上げて無力化させようとしたとき、滅は思い出す。
雷の投げたクエネオの翼は一対。片方は現在エカルの頭部に変化している。もう片方は近付いて来る前にアタッシュショットで撃ち落とした。
その撃ち落とした方は今はどうなっているのか。
滅が視線を向ける。ギョロリとした目と目が合った。
クエネオの翼は大きなカエルの頭部──ガエルマギアのロストモデルと置き換わっている。
ガエルが口を開く。口の中には小さなガエルの頭。一回り以上小さなガエルを滅へと吐き出す。飛び出したガエルは一匹ではなく立て続けに何匹も発射された。
小さなガエルが滅の周囲に巡らせてある糸に接触。その瞬間、爆発を起こす。爆弾である小型ガエルは爆炎の中に次々と飛び込んでいき、爆発の威力を上げる燃料となる。
数十の小型ガエルが一点に集中することで大爆発にまで昇華し、廃墟全体を揺らした。
雷は空中でそれを見下ろしていたが、やがて視線を上へ上げる。
「用意の良い奴だ」
吐き捨てる雷の視線の先には、天井に逆さ状態で立っている滅がいた。
滅はいざという時の為に自身と天井を糸で繋いでいた。爆発に呑まれる直前、その糸を高速で一気に引き寄せること爆発から脱出したのだ。
「お前も思っていたよりも抜け目がない」
滅の方は複数のゼツメライズキーを操る雷を賞賛する。声色には若干の怒りが含まれていたが。
「最初に計算していた以上のしぶとさだ。だが──」
雷の肩の装甲が前触れもなく弾け飛ぶ。滅の攻撃によるものではない。装甲の下では放電が起こっており、それによって装甲が外れたのだ。制御し切れない力の暴走による自壊が始まっていた。
「それも限界みたいだな」
「それがどうした……!」
雷は指摘されなくとも限界を迎えようとしているのを理解していた。
「済まし顔でいちいち分かり切ったこと言ってんじゃねぇよ……! 腹が立つ!」
放電現象は収まるどころか雷の怒りに反応して体の至る箇所で生じ、その度に装甲が弾け飛んで行く。
「やるんだったら派手にぶっ壊れようぜっ! お互いになぁ!」
「壊れるなら一人で壊れていろ。この粗悪品が」
敵意をぶつけ、相手のネジ一本まで残さないことを決めながら衝突する両者。
間も無く決着はつくだろう。しかし、別の場所では一足早く決着が着こうとしていた。
◇
「はぁ……はぁ……」
鉤爪を構える亡。その姿は無惨なものであった。肩や胸部、脚などの装甲は溶けて変形しており、装甲としての機能を有していない。そして、亡唯一の武器である片腕の鉤爪は四本ある内に二本が欠損していた。
「お前じゃ僕に勝てないよ」
炎の羽根を散らしながら迅が降り立ち、淡々と事実を述べる。
何とか喰らい付こうとしていた亡だったが、迅との性能差を埋めることが出来ず、ジリジリと追い詰められていき、遂には崖っぷちにまで追いやられてる。
(悔しいが、性能の差は正直だ)
亡は己の弱さを自嘲するが、ここまで抵抗出来たのは亡の経験の積み重ねによるもの。性能面だけで考えればとっくに負けていてもおかしくはない。
「ふぅ……」
亡は力無く片膝を突く。限界が来て立っていられないようであった。
「……ふん」
迅はそれを不機嫌そうに見ながらフォースライザーに手を伸ばす。これ以上見ていられないといった態度で。
フォースライザーのトリガーに迅の指が掛けられようとした時、亡が息を吹き返したかのように地面を蹴り、一足で迅の前まで跳躍する。
「え?」
そんな力が残されていたことに驚く迅。
亡は限界を迎えたのではない。最後の一撃を与える為に力を集中させていたのだ。
「これが私の足掻きだ!」
フォースライザーのトリガーが連続して引かれる。
亡の周囲に吹雪のようなエネルギーが生じるとそれが亡を覆い、狼の頭部を形成する。
牙を剝く狼の口部には右足に全エネルギーを集束した亡。
「はあああああっ!」
ゼツメツ
ユートピア!
狼の顎が迅を嚙み砕く──かと思われた。
「言ったでしょ?」
平然とした迅の声。
「僕には勝てないって」
亡の蹴りを阻むのは灼熱の隼。迅が召喚したプロトバーニングファルコンのライダモデルが盾となって亡の攻撃を閉ざした翼で防ぐ。
迅はライダモデルの背を踏み台にして跳躍。赤翼を広げてフォースライザーのトリガーを二回引く。
『BURNING UTOPIA!』
「終わりだよ」
炎上する猛禽が獲物目掛けて右足から急降下する。
バーニング
ユートピア!
命中と共に爆炎が広がり、周囲の物に引火して一体燃え上がり、地獄のような光景を創り出す。
爆炎の中から現れる迅。その手は変身解除された亡を引き摺っていた。
適当な場所で亡を投げ捨てる。地面を転がっていき、仰向けになる亡。意識は無く、最早抵抗出来ない状態であった。
迅は手刀を構える。炎によって赤熱化し、鋼鉄すら焼き切る得物と化す。
「……さよなら」
迅の手刀が動かない亡へと振り下ろされた。
次回ぐらいから人類の反撃回に入っていくつもりです。