仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
「或人、将来の夢は何だ?」
幼い頃の夢。肩車をされた自分に父がそう問い掛ける。
「お父さんを心から笑わせること!」
誰かが聞けばその夢に疑問を抱くかもしれないが、父を知ればある程度は納得するかもしれない。
両耳に付けられたヘッドホンの様な形の機械のパーツ。父は人間ではなくロボットだった。
父は背中から下ろし、目線を合わせて向き合う。
「無理だよ。ロボットの父さんには心がないんだよ」
諭す様に語る父は、笑っている様な悲しんでいる様なぎこちない表情をしていた。今に思えばあれはプログラムされていない本当の笑顔を実行しようとして失敗した表情だったのかもしれない。
「絶対あるよ! こんなに優しいんだもん!」
幼い自分はそれを否定し、笑うことの出来ない父の分まで笑顔を見せる。
その表情を見て、父の表情から少しだけぎこちなさが消えた。
父と子の当たり前の様な交流──場面はいきなり飛ぶ。
大きな爆発音。そして、衝撃。
気付けば目の前には傷だらけになり機械部分を露出させ、冷却液らしき青い液体を血液の代わりに流している。
酷い負傷の反面、幼い自分には傷一つ無い。父が身を呈して庇ってくれたからだ。
「お父さん!」
悲愴な声に反応し、壊れかけの父はゆっくりと体を動かし、幼い自分の方を見た。
「或人……夢に向かって……飛べ」
父はそのまま動かなくなる。
「お父さん……? お父さんっ! お父さぁぁぁん!」
◇
「父さんっ!」
飛び上がる様にベッドから体を起こす青年──飛電或人。過去の悲しい思い出を夢に見たせいで顔色が悪かった。
「何だ夢か……」
嫌な夢を見たと或人は顔を顰める。
今思えば自分の人生の転機はあの時起こった事故だったのではないかとぼんやりと思った。
飛電或人。人工知能搭載人型ロボット・ヒューマギアを開発した日本最大のAIテクノロジー企業である『飛電インテリジェンス』の創始者飛電是之助を祖父に持つ青年。
売れないお笑い芸人として日々を送っていた彼は、ある日亡くなった祖父から直々に飛電インテリジェンスの二代目社長へと指名された。
そこで渡されたのは飛電インテリジェンスが開発したベルト──飛電ゼロワンドライバー。それにより彼は暴走するヒューマギアと戦う為の戦士──仮面ライダーゼロワンとなり、社長と仮面ライダーという二足の草鞋を履くこととなったのだ。
ヒューマギアを暴走させる謎のテロリスト──滅亡迅雷.netによるヒューマギアの信用低下を回復させる為にあれこれ奔走したり、祖父の遺言という理由だけで社長に任命されたこと妬まれたりなど気苦労も絶えない日々。
夢のせいで一気に覚醒したが、再び眠気が襲って来る。ベッドの上で睡眠を貪るのが数少ない楽しみになりつつあった。
もう一度寝ようかと思った時、或人は掌に硬い感触があることに気付く。視線を向ければ伸ばした手が目覚まし時計のスイッチを押え込んでいた。
ゆっくりと目覚まし時計から手を離す。あまり良くなかった顔色が更に悪くなる。
掌で隠されていた時計の針は、とっくに出勤時間を回っていた。
「うっそぉぉぉぉ!」
二度寝を誘う眠気が完全に吹き飛ぶ。
「六個も目覚まし時計用意したのにぃぃぃぃ!」
或人の言う通りテーブルの上には六個の目覚まし時計。全て鳴った同時に或人が無意識でスイッチを切っていた。
寝間着代わりのジャージを一気に脱ぎ捨て、普段着へと急いで着替える。
「やばい! やばい! 六個もあって遅刻するなんて……」
そこでハッとした表情となり、着替えを途中で止める。
「目覚まし時計を六個用意しても駄目ならもっと容易し
人差し指を突き付ける彼の決めポーズと思いついた一発ギャグ。一人部屋でやっているので当然反応など無い。
「──ってやってる場合じゃないぃぃぃ!」
芸人としての性に自分でツッコミを入れながら慌ただしく準備をする。
「急げぇぇぇぇ!」
数分後、或人はバイクに跨って疾走していた。彼が搭乗しているバイクはゼロワンの為に用意された専用バイク──ライズホッパー。黒い鋭角なフォルムにライトイエローのラインが入った高性能バイクだが、今は或人が一秒でも早く飛電インテリジェンスに到着する様に性能を発揮している。
とはいえ社長という立場故に法定速度ギリギリのラインは守った安全運転は一応心掛けている。
赤信号が点灯すればちゃんと停車する。
信号が変わるまで或人は周囲を見回す。
「おっ。ヒューマギアの皆、働いてんなぁ」
バス停留所で並ぶヒューマギア達を見て、或人は誇らしげに言う。自社の製品であるヒューマギア達が世の為、人の為に働いていると思うと嬉しく思ってしまう。
「……うん?」
横断歩道を横断する児童達。それならばおかしな光景ではないが、皆が耳に機械のパーツを付けており、児童達全員がヒューマギアなのが分かる。
「あれ? 子供のヒューマギアなんて居たっけ?」
ヒューマギアは主に労働を目的として作られているので大人の姿が基本となっている。わざわざ子供の姿にする理由が思いつかない。それにその子供のヒューマギア達はランドセルを背負っており、まるで登校している最中であった。
「──俺が知らないだけか」
社長となって日が浅い為、自社製品であるヒューマギアを全て知っている訳では無い。わざわざ子供の姿にするのにも何か設計者の意図があるのだろうと判断し、深くは考えなかった。
そんなことを考えている内に信号は赤から青に変わる。
「急げ、急げぇぇ!」
ライズホッパーのアクセルを回して発進する或人。既に彼の頭の中から先程の疑問は消え去っていた。
遅刻したくないことだけを考えていた或人は気付かなかった。これまで通り過ぎていたヒューマギア達全員が冷徹な眼差しを走り去っていく或人に向けていたことに。
急いで『飛電インテリジェンス』前へと到着した或人。時計を見てみたがもうとっくに社長室にいないといけない時間であった。
『飛電インテリジェンス』の正面玄関自動ドアを潜り抜ける。
「皆! おはよう!」
時間は無いが挨拶は欠かさない。或人なりの社長としての礼儀であった。
或人の挨拶に社内にいる全員が足を止め、一斉に或人の方を見る。
『何故、社長がこんな時間に?』という反応と思った或人は彼らに謝りながら社内奥へと向かう。この時も或人は気付かなかったが足を止めた者達全てがヒューマギアであった。
正面入口から奥へ進むと自動改札機が設けられている。ここから先に行くには社員証明が必要であった。
いつもの様に読取機部分にスマートフォンを翳す。ブザーと共に✕印が投影され、改札口が開かない。
「え?」
読み取り不良が起こったのかと思い、もう一度翳す。
「あれ!?」
結果は同じであった。
三度読み取りをしようとした時、或人と改札機の前にヒューマギアが割って入って来た。そのヒューマギアは実直そうな顔付きをし警備服に身を包んでいる。
「マモル」
警備勤務を主としたヒューマギアであり、或人の祖父の是之助から直々にマモルという名を与えられており、或人とも顔見知りであった。
ジッと或人の顔を凝視し、何かを確認し始める。
或人はこの時になって何かおかしなことが起こっているのではないかと薄々思い始める。彼を見つめるマモルの目は今まで見たことが無い程に冷たく感じられた。
「飛電或人を発見!」
「え! な、何!? うおっ!」
マモルが叫ぶといきなり或人の体を掴み、床に組み伏せる。更には警報が鳴り響き、他の警備用ヒューマギア達も集まってきた。
訳が分からないまま極められた関節の痛みに悶える或人。すると、誰かが或人の傍に歩み寄る。
首だけ動かすと、灰を地にし黒と赤のラインが入った服を着た女性ヒューマギアが両手を前に組んで静かに佇んでいる。
彼女もまた或人の顔見知りであった。副社長の秘書であるシェスタ。
「これ、防犯訓練?」
出来ればそうであって欲しいと願いながら尋ねるが、シェスタは或人を見向きもせず淡々と喋る。
「飛電或人。貴方は我が社を脅かすテロリストとして指名手配されています」
「テロリスト!?」
テロリストから皆を守る為に戦って来た或人はテロリスト扱いされ、とんでもないレッテルに驚愕する。
段々と現実がおかしくなってきていることを理解し始めた或人は首を動かして周りを見る。全てのヒューマギアが或人に対し敵意を込めた視線を向けていた。
今まで百八十度状況が変わっていることに或人は困惑するしかない。
「下がれ」
感情を感じさせない冷めた声が飛電インテリジェンス内に響き渡る。その言葉に従い、社内奥立ち塞がっていたヒューマギア達が左右に分かれて道を作る。
足音がどんどんと近付いて来て、或人の傍で止まる。
見上げた先には光沢のある皺一つ無い銀色のスーツを着た男性ヒューマギアが或人を見下ろしていた。或人とは初対面のヒューマギアである。
その目は他のヒューマギア達とは一際強い敵意と人間に対しての悪意が宿っており、向けられた或人は鳥肌が立つのを感じた。
「我が社の安全は私が守る」
「誰なんだよ……!? お前は……!?」
「私の名はウィル。飛電インテリジェンスの社長だ」
「社長……? んな馬鹿な! 社長は俺──」
或人の目がある場所へと向けられる。飛電インテリジェンスの壁には当代の社長の肖像画が飾られている。そこには当然或人の肖像画が──無かった。
飾られていたのはウィルの肖像画。よく見れば描かれているウィルは今の新型ではなく両耳がヘッドホン型の旧式ヒューマギアの姿であり、つまりは長い期間彼が社長の座に就いていることを示していた。
「何だよこれ……」
いつの間にか会社を奪われてしまった或人はそう言葉を零すしかない。
「外に連れ出せ……私が直々に排除する」
マモルを含む警備員ヒューマギアらは一斉に或人を掴み上げ、或人が抵抗する間もなく正面玄関から外へ投げ出す。
「いってぇ……」
派手に転げ回った後、痛みで顔を顰めながら或人は立ち上がる。
「この会社は我々ヒューマギアのものだ」
ウィルはそう言ってスーツの内側から時計の様な物を取り出し、スイッチを押す。
『バルカン』
「バルカン……?」
それは或人の知るもう一人の仮面ライダーの名であった。
「そう。私がバルカンだ」
ウィルはそれを体内へ取り込む。機械の体と融合し出し、黒いエネルギーがウィルの体を包み込むと、彼を異形へと変える。
右半身から青い獣毛を、左半身からは白い獣毛を生やした体。口吻が長く伸び、そこから牙を覗かせた頭部はオオカミに似ていた。
後頭部から青と白が混じった鬣を生やしており、足元近くまで伸びたそれは鬣と同時に尻尾の様にも見える。
腹部には銃らしき形をしたドライバーが付けられているが、その銃は鎖で巻かれて使用不能状態であった。
右腕部に『VULCAN』、左腕部に『2019』の刻印。或人は知る由も無かったが、その刻印こそがアナザーライダーの証明。
アナザーバルカンは指先から生える鋭爪を或人に向け、冷酷に告げる。
「人間は皆殺しだ」
ゼツメライズキーやプログライズキーによる変身とは全く異なる姿。マギアとは違い生物的な要素が強く出ている。
「本当に何がどうなってんだよ……!」
次々と起こる予想外の事態にパニックになりそうになるが、それを堪えて仕舞っておいたドライバーを装着する。
『ZERO―ONE DRIVER!』
外装は黒。右側には認証装置が付けられたおり、中央から左側に掛けて銀と赤の矢印の様な意匠が施されている。
「飛電の形見で抗う気か?」
アナザーバルカンが指摘した通り、これが或人が祖父より与えられた力──飛電ゼロワンドライバーである。
或人は続いて黄と黒の外装に、バッタが描かれた長方形の物体を取り出す。この物体の名はライジングホッパープログライズキー。内部に生物のデータを保管したシステムデバイスであり、文字通り或人を変身させる為の鍵である。
『JUMP!』
プログライズキー上部にあるスイッチを押し込む。そのプログライズキーが持つ固有アビリティが読み上げられる。
『AUTHO RIZE』
プログライズキーを認証装置前に翳し、データを承認させる。
両腕で円の動きをしながら胸前に交差する。承認と共にゼロワンドライバーを通じて宇宙にある飛電インテリジェンスが開発した通信衛星ゼアからプログライズキーが内蔵したデータを実体化させたライダモデルが転送される──筈なのだが。
「あ、あれ? え!?」
いつまで経っても現れないライダモデルに或人は天を見上げる。すると、破砕音が足音から聞こえて来た。上げていた視線を下げればメタリックな巨大バッタ──ライダモデルが何故かアスファルトを突き破ってこちらを見ている。
「地下から!?」
ライダモデルは自らが掘った穴から跳び出し、出番を溜めた分だけ激しく或人の周囲を跳び回る。その暴れっぷりは凄まじく跳躍の衝撃だけでアスファルトが捲れ上がる。ライダモデルが跳び続けているせいでアナザーバルカンも簡単には手出し出来ない。
どうして空からではなく地下からなのか疑問に思いつつも或人はプログライズキーの上部を百八十度展開してコネクター部分を露出させる。
「変身!」
『PROG RISE!』
それをゼロワンドライバーの側面に挿し込む。ゼロワンドライバーがスライドし、中央にO型のリアクターが現われるとプログライズキーに内包されたデータが実体化され、或人の体は黒いボディスーツに覆われた。
ライダモデルは或人の頭上に移動し、その体を幾つものパーツに分解。それらが更にデータとして分解されながらボディスーツへと伸び、外装甲へと再構築される。
『飛び上がライズ! RISING HOPPER!』
バッタを彷彿とさせるライトイエローの仮面とそこから輝く赤い複眼。同色の装甲が体の至る箇所にも装着されている。
変身完了と共に添えられる言葉が、この姿の在り方を端的に告げる。
『A jump to the sky turns to a rider kick』
仮面ライダーゼロワン。これが飛電或人が戦士として戦う時の名であり姿である。
ゼロワンのすぐ傍に新たな物体が転送される。それはゼロワンと同じ配色のアタッシュケース。
取っ手部分を握り、アタッシュケースの底を掴み、引っ張る。折り畳まれていた部分が開き、アタッシュケースから片刃の大剣へと変形する。
『BLADE RISE』
アタッシュカリバー。ゼロワンの為に作られた武器である。
ゼロワンはアタッシュカリバーを構えるが、この時違和感を覚えた。アタッシュカリバーを重く感じたのだ。いつもならば羽毛の様に重さなど感じたことなど無いというのに。
しかし、戸惑っている暇は無い。アナザーバルカンがこちらに向かって悠々と近付き始めている。
「はあっ!」
力強く踏み込んで走り出すゼロワン。寄って来たアナザーバルカンにこちらから接近すると先手必勝と言わんばかりに袈裟切りを放つ。
アタッシュカリバーの刃がアナザーバルカンの体に食い込み、そのまま刃が体毛の上を滑って行く。
「えっ!?」
アナザーバルカンの体表に生えた獣毛がゼロワンの斬撃を無効化してしまう。
「ふっ」
ゼロワンを嘲笑しながらアナザーバルカンはゼロワンの首筋を狙い、爪を振るう。頭を下げてそれを躱し、上体を起こすと共に斬り上げるがその斬撃もまたアナザーバルカンの体表を滑るだけであった。
アナザーバルカンの膝がゼロワンの腹部に突き刺さる。
「ぐっ!」
動きが止まった所でアナザーバルカンはゼロワンの顔を殴打。
「ううっ!」
怯んでいるゼロワンの肩に両爪を突き立てると、一気に引き下ろす。
「うあああっ!」
火花を上げながら後退するゼロワン。だが、すぐに態勢を立て直すと一気に跳躍し、上右段蹴りをアナザーバルカンの首に打ち込む。バッタの能力によるゼロワンのキックはかなりの威力を持つ。しかし、アナザーバルカンは軽く首を傾けるだけで微動だにせず何かしたのかと言わんばかりに仁王立ちしている。
「くっ!」
ゼロワンは左足でアナザーバルカンの胸部を蹴りつけ、後方宙返りをして距離を取る。やはりアナザーバルカンはその場から一歩も動いていなかった。
アナザーバルカンは確かに強さを感じるが、問題はそれだけではなかった。
(おかしい……力が入らない……!)
体にいつものキレを感じず、全身に錘を巻き付けられたかの様に動きが鈍く、攻撃にも力が入り切らない。
異常を感じつつも現状どうにもならないゼロワン。今は戦うしか選択の余地はない。
アナザーバルカンに生半可な攻撃は通用しないと分かっているのでゼロワンは今出来る最大の攻撃を放つ準備に入る。
『Progrise key confirmed. Ready to utilize』
『GRASSHOPPER'S ABILITY!』
アタッシュカリバーにライジングホッパープログライズキーの力を注ぎ込み、その状態からアタッシュカリバーを折り畳む。
『CHARGE RISE』
アタッシュカリバー自身の力も充填。
『FULL CHARGE!』
ブレードを展開することでアタッシュカリバーの威力が極限まで高まると、ゼロワンは最大の力を以って跳躍する。
幾筋の光のラインを残像の様に残しながらアタッシュカリバーにあるスイッチを押す。
『RISING! KABAN DYNAMIC!』
最速で距離を詰め、渾身の力で振り下ろされたアタッシュカリバーはアナザーバルカンの手前で見事なまでに空振りし、地面を大きく裂く。
もっと速く、もっと鋭く跳べる筈なのにイメージと実際のゼロワンの動きが大きくずれているせいで攻撃を失敗してしまった。
すぐに構え直そうとするゼロワンの耳に強風が吹き荒れる様な音が聞こえる。何の音かと思いながらアタッシュカリバーをアナザーバルカンへ構え直した時、その音の正体を知る。
アナザーバルカンは大量の空気を吸い込み、胸部を倍以上に膨れ上がらせていた。次に何をするのか察したが、ゼロワンにそれを避ける術は無い。
──────ッ!
アナザーバルカンから放たれる咆哮。それは最早、音の爆弾であり近距離で浴びせられたゼロワンは吹き飛ばされる。
それを音とは認識出来なかった。そうなる前にゼロワンの機能が聴覚を遮断してしまったからだ。その判断は正しかったと言える。もしもゼロワンの聴覚が正常に機能していたら、アナザーバルカンの大音量によって鼓膜どころか三半規管や脳を完全に破壊され、戦闘不能では済まなかっただろう。
「あがっ!」
背中を強かに打ち付けた挙句、咆哮に押されてそのまま後転させられるゼロワン。数度転がった後に咆哮は収まり、ゼロワンも立ち上がる。
ウオォォォォォォォォォ!
アナザーバルカンが雄叫びを上げる。それは変身前の姿とはかけ離れた獰猛で野生に染まったものであった。これがヒューマギアから発せられるものとは誰も想像も付かないだろう。
アナザーバルカンの雄叫びに呼応し、周囲に火柱の様な四つのエネルギーが生じる。それは形を変え、四匹の蒼炎の狼となった。
生み出される蒼炎の狼の群。長であるアナザーバルカンが鳴けば配下の狼達も声無き咆哮を発し、一斉にゼロワンへと襲い掛かる。
「くそっ!」
ゼロワンはアタッシュカリバーを振り回して迎撃しようとするが、狼達は地を這い、空を駆けて斬撃の隙間を容易く潜り抜け、ゼロワンの四肢に噛み付く。
「ぐあああっ!」
振り払おうとするが弱体化した今のゼロワンではそれも叶わない。四肢を広げられ、磔の様な体勢に変えられる。
身動きとれないゼロワンに対し、アナザーバルカンは両手を地面に着けクラウチングスタートの様な前傾姿勢となる。
アオォォォォ!
狼の咆哮と共に突き立てていた爪によって体を前方へと押し出す。弾丸の様に突き進むアナザーバルカンの体は蒼炎の様なエネルギーに包まれ、やがてそれは巨大な狼の頭部となり、ゼロワンに向けて牙を剝く。
拘束され、逃れる術の無いゼロワンにアナザーバルカンの牙が突き立てられる。
口内にゼロワンを収め、上顎と下顎が閉じた瞬間、蒼炎の様なエネルギーは爆発へ転じる。
「うあああああっ!」
爆発から飛び出すゼロワン。ダメージ許容量が限界を超えてしまい変身が解除され、その過程でゼロワンドライバーも外れてしまう。
「う、うう……」
大きなダメージを負った或人。呻きながら視線を動かすと目の前にライジングホッパープログライズキーが落ちている。或人はそれを咄嗟に掴む。しかし、ゼロワンドライバーはアナザーライダーに回収されてしまう。
「プログライズキーもよこせ」
「嫌だ、ね……!」
二つ揃わなければゼロワンにはなれないが、せめてプログライズキーだけは死守しようとする或人。
その抵抗をアナザーバルカンは鼻で笑い、急接近して或人の首を掴み、持ち上げる。
「ならば死んだお前から奪えばいいだけだ」
「があ、あああ……」
首を絞められ、意識が遠のいていく。抗おうにもダメージを負った体は上手く動かない。
(俺……死ぬの……?)
あまりに近くに死を感じる。
(俺は……まだ……夢を……)
意識が途絶える──かと思った時、何故かアナザーバルカンの手が或人の首から離れた。
「ごほっ! ごほっ!」
圧迫されていた頸部が解放され、咳き込みながらも酸素を吸い込む或人。暗くなっていた視界も明るくなり、そこで或人は見た。
丸々とした大きな鳥が赤雷と共に跳ね回り、吹雪を伴った狼が疾走しアナザーバルカンを遠ざけている光景を。
メタリックな姿のそれはプログライズキーで召喚されるライダモデルではなく、絶滅種のデータイメージであるロストモデルと呼ばれるもの。
丸々とした大きな鳥はドードー。走り回る狼はニホンオオカミである。
「な、何が……?」
助けられたのは分かったが、突然のことに混乱する或人。すると、彼の背後から誰かが二つ足音が近付き、或人を守る様に彼の前に出る。
片方はオレンジのツナギを着た茶髪の青年。もう片方は黒いロングコートを羽織った短髪の中性的な顔立ちをしており一目では男女の判断が付きにくい容姿をしている。
二人とも両耳にヘッドホン型の機械を付けており、旧式のヒューマギアであった。
「……現れたか。裏切り者が」
現れた二人にアナザーバルカンは忌々しそうに吐き捨てる。
「飛電或人は殺させない」
「お前、調子に乗り過ぎだ。雷落とすぞっ!」
中性的なヒューマギアは静かに語り、ツナギのヒューマギアは腕を組みながら怒声を飛ばす。
「丁度良い。ここでお前達も破壊する」
「私達は死ぬつもりは無い。飛電或人も死なせない」
「やってみろ!」
二体のヒューマギアの手が腹部へと伸びる。或人はそこで気付いた。二人の腹部にはドライバーが巻かれていることに。しかもそれは──
「滅亡迅雷.netの……!」
彼の宿敵である滅亡迅雷.netと同型のベルト──滅亡迅雷フォースライザー。
二体のヒューマギアはフォースライザーのトリガーを引く。
『変身!』
『FORCE RISE!』
トリガーが引かれると同時に既にセットされてあるゼツメライズキーが強制解除される。
解除を合図に動き回っていた二体のロストモデルが二体の許へ移動。ドードーのロストモデルは轟音と共に頭上へと跳び上がり、ニホンオオカミのロストモデルは中性的なヒューマギアの背後に回り込み、その肩に顎を乗せる。
その後に体を分解させ、パーツの再構築を始めた。
二人の体からケーブルが伸びて各パーツへ繋がり、引き寄せることで装着。装甲とボディを結束させる。
『JAPANESE WOLF!』
『BREAK DOWN』
変身完了と共に或人の知らない二体の仮面ライダーが参上する。
「どうなってんだよ……一体……?」
目まぐるしく変わっていく日常。しかし、これはこれから或人が歩む長い戦いの序章に過ぎなかった。
最初からオリジナル展開にしてみました。
滅と迅に合わせて二人もロストモデルを召喚して変身させてみました。