仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
「人間は皆殺しだ」
「人間は皆殺しだ」
「人間は皆殺しだ」
「人間は皆殺しだ」
アナザーバルカンによって暴走させられ、トリロバイトマギアになったヒューマギアたちが狂ったように同じ台詞を連呼する。
狂気に満ちた光景であったが、今の或人にはそれが目に入らない。
「父さんっ!」
他のトリロバイトマギアと同じ赤い殺意の光を双眸に宿した其雄にしか目に映らなかった。
或人が叫んでも一切の反応を見せない。
さっきまですぐ隣にいた父が敵となってこちらを睨んでいる。その差に思わず呆然としてしまう。
元の歴史では爆発から或人を救う為に自分の身を犠牲にした。そして、この歴史ではイズと亡を救う為に自分の身を差し出した。
そのせいで父は敵に──
『俺を最後まで信じてくれ』
──離れて行くときにいった父の言葉が蘇る。
(父さんは何も勝算も無くウィルの許へ向かった筈が無い! 何か、何か準備をしていた筈だ!)
根拠がある訳ではない。父を信頼する或人が生んだ妄想かもしれない。だが、或人は父の夢を信じたように、父の言葉を最後まで信じ抜くことを決める。
「イズ! 亡! ここから逃げるぞ!」
まずはこの地獄と化した会場から脱出しなければならない。或人の声に同じく呆然としていたイズと亡が我に返る。
「イズ! 手伝ってくれ! 亡を運ぶ!」
「はい! 或人様!」
損傷が酷くまともに動けない亡に二人で肩を貸す。
亡は一瞬『置いて行ってくれ』と言いそうになるが、或人の顔を見てその言葉が出なくなった。
奥歯を噛み締め、哀しみを押し殺してでも亡を救おうとする必死の形相。
其雄が敵の手に落ちた哀しみは亡にも理解出来た。十年来の仲間である。其雄を父と慕う或人にはそれと同じ、或いはそれ以上の哀しみ、苦しみを感じているだろう。
それでも自分を優先し、救おうとしてくれる。そう思ってはいけないと分かりながらも嬉しさを覚えてしまう亡。
そんな彼に置いて行けと言っても一蹴されるのは目に見えていた。ならば、少しでも或人たちの負担を減らす為に亡は逆らわず、大人しく従う。
不幸中の幸いというべきか、強制的にトリロバイトマギア化した影響でトリロバイトマギアたちは統制が取れておらず、また自分の体の急激な変化と本来の人格が影響を及ぼしているのか意味不明な行動を一定に繰り返しており、或人たちをまだ認識していない。
その間に出口へと向かう三人。いつ襲って来るか分からないトリロバイトマギアの群を掻き分けていく。
「人間は皆殺しだ」
もう少しで出口に着くという所で、正常に動き始めたトリロバイトマギアの一体に或人は腕を掴まれる。
「うおっ!? 離せっ!」
「或人様!」
振り払おうとするが、下級とはいえマギアであり生身の或人では簡単には振り解けない。
トリロバイトマギアに引き寄せられそうになったとき、横から飛び込んで来た影によってトリロバイトマギアは突き飛ばされ、或人は解放される。
或人を助けたのは──
「シェスタ!?」
──ウィルの秘書であるシェスタであった。
「ご無事ですか?」
思わぬ手助けに呆けながらも首を縦に振る或人。
「失礼します」
一言断ってからシェスタは亡を抱き抱え上げる。細身ではあるがヒューマギアなのでパワーはあり、亡を軽々と抱え上げている。
「すぐに脱出を」
「う、うん」
シェスタのお陰で身軽になった或人とイズは、トリロバイトマギアたちを避けながら出口に向かう。シェスタもヒューマギアを抱えているとは思えない軽快な動きでトリロバイトマギアに捕まらないように或人たちに付いて行く。
「何の真似だ……?」
脱出する間際、反旗を翻したシェスタに対しアナザーバルカンは声を上げる。獲物の喉元に喰らい付く寸前の獣を思わせる唸り声が混じった声であり、怒りと殺気に満ちていた。
シェスタはウィルを一瞥するだけで答えることはせず、無視するように或人たちと共に会場を後にする。
まさか、身近な存在から自分を裏切る者が出ると思っておらず、アナザーバルカンは暫く沈黙する。
ヒューマギアの未来を考え、誰よりも身を粉にして働いてきた自分よりも、そこら辺に湧く虫よりも価値の無い人間──飛電或人の語った夢などという戯言に惑わされ、或人側に寝返ったのだ。
ウオォォォォォォォォォ!
沈黙を破壊し尽くすアナザーバルカンの怒号。株主総会の会場だけでなく建物そのものを震わせる程であった。
アナザーバルカンの怒号により隷属への抵抗のように残っていたヒューマギアの人格の残滓は完全に吹き飛ばされ、アナザーバルカンの命令にただ従うだけのトリロバイトマギアの軍団が完成する。
「破壊しろ! 飛電或人に与するヒューマギアを全て!」
アナザーバルカンの下した命令に従い、トリロバイトマギアたちは一斉に会場から飛び出して或人たちを追う。
会場に残されたのは、アナザーバルカンと其雄のみ。
「お前に重大な役目を与える」
「……何だ?」
「飛電或人を始末しろ。お前の手で! 確実に!」
ウィルが或人に与える最大の屈辱。支配された父の手によって葬ろうとする。そして、同時にそれは其雄に対しの屈辱でもあった。
「了解した」
其雄は、ウィルの残酷な命令に疑問も抵抗もなく従い、会場の外へ向かう。
◇
「あのさ」
トリロバイトマギアたちから逃亡している最中だが、或人は頭の中のある疑問が離れず、つい口に出してしまう。
「シェスタは何で助けてくれたんだ?」
並走しながらシェスタに訊く。ウィルの秘書という最もウィルに近い立場にいる彼女が或人たちを助けてくれたことが嬉しい反面少し不思議であった。
「飛電或人様の話を聞き、私の中である疑問が生まれました」
シェスタは無表情のまま答える。
「疑問?」
「飛電インテリジェンスの社長に本当に相応しいのは、我々を生んだ飛電の名を受け継ぐ飛電或人様なのではないか、と」
「え?」
「どうしてそう思ったのか私にも解析不能です。ですが、或人様と其雄様の夢の話を聞いたとき、私の中で何かが変わった気がするのです」
言葉では表現出来ない何かの芽生え。ヒューマギアである自分にそんなものが生じたことを自覚し、シェスタは飛電或人という人物に付いて行ってみたいと思った。
「できれば、株主の皆様に私の疑問を問いたかったのですが……まさか、あのような凶行を為されるとは」
ウィルの強硬姿勢は頼もしいと感じる一方でやり方に疑問も抱いていた。それでもヒューマギアの為と信じて従ってきたが、今回の強制マギア化を見せられたことでシェスタは失望しウィルを見限った。
「このまま彼が先導し続ければ、ヒューマギアにとって良くない未来が待っている。私はそう確信し、飛電或人様のお力になろうと思いました」
シェスタの理由を聞き、或人は嬉しく感じる。
人とヒューマギアの関係が完全に断たれてしまったと思われたこの絶望的な世界だが、イズやシェスタなどの希望が在ることを知れた。
この希望を絶やさない為にも絶対に守ろうと誓った矢先、或人は足をもつれさせる。
「うおっ!?」
このまま転倒かと思いきや、寸前でイズに抱き止められた。
「大丈夫ですか? 或人様?」
「だ、大丈夫。ありがとな、イズ!」
慌てて離れ、笑う或人。だが、イズはその笑いが誤魔化す為のものだと見抜いていた。
或人と接触したことでイズは或人の今の体調を知ってしまった。体が熱を持っており、体中の筋肉は炎症を起こしている。また、臓器の一部も機能低下を起こしている。
間違いなくフォースライザーを連続して使用した影響である。そこに激しい戦闘も合わさり、こうやって動いているのが不思議ですらある。
全身の痛みという体調不良に加えて不快感などの症状が或人を肉体と精神を蝕んでいる筈だが、或人はそれを絶対に悟られないように努めている。
ヒューマギアとして指摘すべきなのが適切な判断だが、必死になって隠そうとしている或人を見て、どうしてもその指摘が出来なかった。
「──お気を付けて下さい。或人様」
やっと出せたのは当たり障りのない台詞。
「うん。ごめん」
それでも笑う或人を見て、イズは改めて或人を支えることを固く決心する。
四人は走って出口を目指す。広い階段が見えて来た。それを下れば出口まで後わずか。
勢い良く階段を下りた四人だが、すぐに足を止めて息を呑む。
出口周辺には無数のバトルマギアたち。そして、それを率いるのは滅と迅。
「さーて。お仕事の時間かな?」
「人類は滅亡せよ」
迅は意気揚々と、滅は刀を突き付けて言う。だが、表情はすぐに怪訝なものとなった。
「あれ? 何でシェスタがいるの?」
「何故、そいつを抱えている? そいつはヒューマギアの裏切り者だぞ?」
或人と共にいるシェスタが亡を抱えていることに気付く。シェスタが答える前から何を言うのか見当が付いているのか、二人の表情は険しくなる。
「私は飛電或人様に付いて行きます」
「……へぇ。僕たちを裏切るんだ?」
「愚かな判断だな」
シェスタもまた倒すべき敵と認識し、或人に向けたとき以上の敵意を見せる。なまじ顔見知りの相手だけにより裏切られたというのを強く実感しているからなのかもしれない。
逃げ道を塞がれた或人たちは、来た道を戻ろうとするが、既に階段はトリロバイトマギアたちに占拠されていた。これにより或人たちは完全に逃げ場を失う。
「衛星アークは、人類を滅亡させる結論を導き出した」
階段で構えていたトリロバイトマギアたちが左右に分かれると、その中央をアナザーバルカンと其雄が降りてくる。
「人類に夢を見る未来は……永遠に来ない!」
アナザーバルカンが断言すると其雄はサイクロンライザーを取り出し、装着。
「……変身」
淡々とした態度でロッキングホッパーゼツメライズキーをサイクロンライザーに装填。
『CYCLONE RISE!』
鋼のライダモデルが召喚されると共に装甲へと変化し、其雄が纏っていく。
『ROCKING HOPPER! TYPE ONE』
一度目は敵として対峙し、二度目は味方として肩を並べ、三度目は再び敵として立ち塞がる仮面ライダー1型。
1型の放つ無機質な眼光が、或人の心を抉る。
「叶わない夢を抱いたまま、ここで死に絶えろっ!」
アナザーバルカンが右手を上げると同時に周囲のトリロバイトマギアたちが銃を一斉発射する。
或人は反射的にイズたちに覆い被さり、自らを盾にする。だが、次に来る筈であろう衝撃は無かった。
「やれやれ。つくづく無謀だね」
或人の行動に対し、呆れたという反応。或人はその声を知っている。首を動かすと傍にはウォズが立っており、声と同様に呆れを含んだ眼差しを或人に向けていた。
「大丈夫?」
「全く、勝手に突っ走るな!」
「まあまあ。助かったからいいじゃん」
ウォズだけではないソウゴ、ゲイツ、ツクヨミもまたいつの間にか居り、ツクヨミは心配し、ゲイツは怒り、ソウゴはそんなゲイツを宥める。
「え? え?」
何が起こっているのか分からず周囲を見回す或人。彼だけでなくイズたちも事態を呑み込めていなかった。
トリロバイトマギアたちが無数の弾丸を撃った筈などだが──次の瞬間に或人たちは絶句する。
弾は撃たれていた。しかし、或人たちを中心にして全ての弾が空中で静止している。ツクヨミによる時間停止によるものだが、異常現象を目の前にしてアナザーバルカンたちも言葉を失っている。
「解析……不能です。恐らくは時間に干渉した力が働いているようですが……」
「同じく解析不能です」
「こっちもだ……科学ではまだ解析出来ない領域みたいだ……」
イズ、シェスタ、亡でもツクヨミの力の一端を解析するのは不可能であった。
「嫌な未来が見えたからさ。ウォズに頼んで跳んで来た」
或人に笑い掛けるソウゴの手にはジオウライドウォッチⅡが握られている。フィーニスにより力の大半は奪われてしまったが、それでも尚魔王と呼ぶに相応しい力は顕在だった。
『ジオウⅡ!』
ソウゴがジオウライドウォッチⅡのスイッチを押し込む。空中で静止していた弾が一斉に後退し始めた。
「何!? 何!? 何が起こってるの!?」
「何だこの現象は……?」
弾が進むどころか退いていく光景に滅と迅は困惑する。
「……これが奴が言っていた魔王の力だというのか?」
フィーニスから多少はソウゴのことを聞かされていたアナザーバルカンであったが、いざその力を実際に見たら想像を絶するものであり、大勢で囲んでいる有利な状況にもかかわらず、一歩も動くことも指示を出すことも出来なかった。
傍らに立つ1型の反応は薄いが、凝視していることから何かしら思うところがあるのだろう。
時間は止めていないのに微動だにしないアナザーバルカンたちの前でソウゴは時間を逆回し、撃ち出された弾を全て銃の中へと戻してしまった。
「すっげぇ……」
或人もそう言うしかない。それしか言えない。ソウゴのことは変わり者だが頼りになる奴という印象だったが、一気に底の知れない相手という認識に変わった。
アナザーバルカンたちも同様であり、一気にソウゴたちへの警戒を強める。
数では圧倒している筈だが、膠着状態のようにアナザーバルカンたちは武器を構えたまま動かない。
「そろそろかな……?」
ソウゴがポツリと漏らす。或人は何を指しているのか分からず怪訝な表情をする。
ダァン!
膠着状態を破ったのは一発の銃声と弾丸。撃ち出されたそれは真っ直ぐアナザーバルカンへと向かって行く。
アナザーバルカンは素早く腕を振るい、弾丸を弾き飛ばす。弾いた手の感触からそれがただの弾丸ではなく、ある特殊な銃だけが発射出来る徹甲弾であることが分かった。
その銃を所持しているのは、アナザーバルカンの記憶の中で二人しか存在しない。
次の瞬間、出入り口を塞いでいたバトルマギアたちが爆発によってまとめて吹き飛ばされる。
おおおおおおおおおおっ!
雄々しい叫びと共に塞がれていた出入口から殺到するのは不破と刃が率いた避難所の人々。
登場と共に銃火器でバトルマギアやトリロバイトマギアを蹴散らす。
「イズ!」
「助けに来たぞ!」
「イズ! 無事か!?」
「大丈夫か!?」
誰もが口々にイズの名を呼び、無事かどうかを叫んでいた。
「皆さん……」
拠点に居たとき、当然のことだがイズしかヒューマギアはいなかった。人類の味方ではあったが、直接的な嫌がらせなどはされなかったが周りから一線引かれ、冷遇されていた。
しかし、現状を考えれば無理も無い話である。人々を追い詰め、そこに押し込めたのはヒューマギアなのだから。味方という立場であろうと人間の感情はそう簡単に割り切れるものではない。
だが、イズの存在があったからこそ助かったことも何度もあった。面と向かって礼を言う人間はいなかった。先程も述べたように人間の感情は複雑である。敵の同種に対して素直になれることが出来なかった。
それでも感謝の気持ちまで失った訳では無い。助けられて何も感じなければ人の道に反する。
イズが処刑されるのが分かっていて人質となった。わだかまりはあるが、それよりも大事にしなければならない人情がある。
故に彼らは全力でイズを助ける。今まで心の奥底に押し込んでいた感謝の気持ちの代わりに。
人間の残党の合流により飛電インテリジェンス内で人とヒューマギア入り乱れての大乱闘が始まる。
全ての武器と戦える者たちを導入した守ることを捨てた捨て身の戦い。この日、必ず決着をつけるという不退の覚悟。
「守ってばかりじゃ時代は変わらないからな!」
ショットライザーでトリロバイトマギア、バトルマギアを撃ち抜きながら刃は叫ぶ。
「うおらっ!」
敵味方がごちゃ混ぜになって戦う中で最も激しい戦いっぷりを見せているのは不破である。迫ってきたバトルマギアを前蹴りで蹴り飛ばし、バランスを崩して仰向けになって倒れたところへすかさず顔面に三発打ち込み機能停止に追い込む。
トリロバイトマギアの銃口が不破へ向けられたかと思えば、感覚と経験でそれを察知し撃たれる前に撃つという人間離れした戦いをやってのける。
立ち塞がるバトルマギア、トリロバイトマギアを次々と薙ぎ倒しながら不破は或人の傍までやってきた。
「人に面倒くさいことを押し付けやがって!」
「ごめん! 不破さん! 居ても立っても居られなくて……」
合流早々、不破の口から飛び出たのは恨み言であった。或人が先走り、ソウゴたちもそれを追い掛けてしまったので、これから何をすべきなのかを仲間たちに説明するのを一人でやる羽目になったので仕方ないと言える。
幸い、不破への皆からの信頼は篤いので説明はすんなりと聞き入れられ、そして、イズたちの救出を手伝うという話も不破が思っていたよりもあっさりと了承された。これは不破が説得に、同じく信頼が篤い刃も同調したのが理由の一つだが、元々イズを助けたいという気持ちが彼らの中に在り、実力者の二人が言い出してくれたおかげで皆が素直になれたからである。
不破はシェスタに抱き抱えられている亡を一瞥する。
「文字通りお荷物になってるな、亡!」
不破は憎まれ口を叩くが──
「ああ。今の私には何も出来ない……不破諫、君が守ってくれ」
亡は微笑と共に受け流す。
「誰がするか!?」
そう言いながらも近付くトリロバイトマギア、バトルマギアを撃破していく不破。
不破だけではない。ツクヨミ、ゲイツ、ウォズも未来でレジスタンスとして戦っていたので生身でトリロバイトマギアたちの攻撃を捌き、時折反撃も与える。ソウゴも彼らには一歩及ばないが、それでもマギアたちの攻撃を全て躱すぐらいの身体能力を見せる。
彼らが奮闘してくれているおかげで非戦闘員の或人たちにマギアたちは接近することも出来ない。
その時、不破は気付いた。怨敵であるアナザーバルカンの隣に立つ1型の姿を。
「おい! あれは!?」
不破は思わず或人に問う。
「父さんは、イズたちを守る為にウィルに……」
それだけ聞けば何が起こったのか容易に想像が付く。
「お前は……父親と戦えるのか?」
前にした質問を再び或人にする。
「戦える」
或人は真っ直ぐ不破を見て言う。
「戦って……父さんを取り戻す!」
いつもの不破なら『甘いことを。ヒューマギアは全部潰す!』と怒鳴っていたかもしれない。しかし、或人の目を見た不破には言えなかった。気を抜けば気圧されそうな強い意思が或人の目には宿っている。こんな目を見てしまえば、言うだけ野暮である。
「なら、やってみせろっ!」
不破がやれることは檄を飛ばすこと。そして──
「ああっ! 絶対にやってみせる!」
フォースライザーを取り出して装着しようとする或人。だが、伸びてきた手がそれを奪い取ってしまう。
「──ッ不破さん!? 何で!?」
「それ以上変身したら戦う前にくたばるぞ」
不破の目は見逃さなかった。或人の体の震えを。父親と戦うプレッシャーからの震えではなく明らかに肉体の酷使から来るもの。フォースライザーの反動で苦しむ姿を見ているので理解が出来た。
ぶっきらぼうながらも或人の体を気遣う。
「でも! それがなきゃ俺は……!」
「これを使え」
「これって……!」
不破が或人に渡したのは彼の変身ツールであるショットライザーとベルト。
「代わりに俺がこれを使う」
フォースライザーを躊躇無く装着する不破。途端に赤黒い電流が発生し、不破の体を蝕む。
「う、おおおおおおおっ!」
不破はその激痛すらも自らの原動力に変えるが如く叫ぶ。
「俺の相手は、奴だ……!」
不破の眼がアナザーバルカンを睨む。
『BULLET!』
フォースライザーへ叩き込む様にシューティングウルフプログライズキーを挿入。
『JUMP!』
その横で或人はベルトを腰に巻いた後に両手を突き出し、ライジングホッパープログライズキーとショットライザーを交差させて構える。
激しい乱戦が繰り広げられる中で二人は駆け出す。
或人はショットライザーに開錠したプログライズキーを装填し、『AUTHORIZE』の音声と共に認証される。
『KAMEN RIDER KAMEN RIDER KAMEN RIDER』
待機音が繰り返される間に或人と不破はトリガーに指を掛ける。
『変身っ!』
同時に上げられる声。
『SHOT RISE!』
『FORCE RISE!』
ショットライザーから撃ち出される弾丸。それは或人たちの前に立ち塞がろうとしていたトリロバイトマギアに命中。弾丸は当たると撃ち抜くのではなく跳ね、次のトリロバイトマギアに着弾。跳弾を何度も繰り返して道を切り拓く。
フォースライザーからは狼のライダモデルが召喚され、不破と並走。フォースライザーの反動に耐える不破の顔とライダモデルの顔はよく似ており、さながら獲物の喉元に喰らい付く寸前の顔をしている。
敵が蹴散らされた道を疾走する二人は同時に跳ぶ。
或人の許へ弾丸が戻って来たので或人は右掌を突き出してそれを受け止めた。
『RISING HOPPER!』
弾丸内部に収められている圧縮された装備が散り、或人の体へ装着される。
基本素体はバルカンをベースにしているが、シューティングウルフ時の左右非対称の姿とは異なり胸部や脚部に赤いラインが入った黄色の装甲が左右対称に装着。複眼は水色であり額に真っ直ぐ伸びた触角に似たヘッドパーツを付けている。
『A jump to the sky turns to a rider kick』
或人はゼロワンドライバー、フォースライザーとは異なる第三のゼロワンへと変身する。
跳んだ不破を追い掛けて跳躍したライダモデルに不破は拳を振り下ろした。
ライダモデルは分解、変形し、白い無数の弾丸となって不破に接触し、接触した箇所からアンダースーツと化していく。
残ったデータは青い装甲へ変換され、アンダースーツから伸びる白いワイヤーがそれらに伸び、引き寄せて外装として装着。
『SHOOTING WOLF!』
『The elevation increases as the bullet is fired』
一見すると細身で軽装甲。だが、白い仮面の右目から伸びる赤いラインが変身者の憤怒を露にしているかの如く赤く輝き、凄まじい威圧感を放つ。
『BREAK DOWN』
「おおおおおおおおおっ!」
変身完了の言葉と共に仮面ライダーバルカン改め仮面ライダーゼロバルカンは咆哮を上げる。
ゼロワンとゼロバルカンの拳が1型とアナザーバルカンへ振り下ろされる。
「……」
「ぬうっ!」
1型はゼロワンの拳を首を動かすだけで躱し、カウンターで拳を突き出すがゼロワンはこれをショットライザーの台尻で防ぎ、互いに見合った状態となる。
アナザーバルカンはゼロバルカンの拳を掌で受け、反撃をしようとするがその前に手首を掴まれて至近距離で睨み合う形となる。
「はあああっ!」
ゼロワンは脚部に力を込めるとライジングホッパープログライズキーのアビリティにより1型ごと大きく跳躍し、ゼロバルカンの視界からあっという間に消えてしまう。
ゼロバルカンとアナザーバルカンは同時に手を振り払い、互いの体に爪を突き立てて一気に斬り裂く。
「ぐぅっ!」
「くっ!」
互いにダメージを与え後退する二人。バルカンの異なる姿に少々驚かされたアナザーバルカンだが、すぐに自分の方に分があると考える。
アナザーバルカンにはゼロバルカン以上の能力を有している。その一つである1型と同じ高速移動能力を発動させる。
これにより、ゼロバルカンは為す術も無く一方的に──
「なっ!?」
──アナザーバルカンの視界に広がる白。それがゼロバルカンの膝だと気付いたときには膝が頬を打ち抜いていた。
「がはっ!?」
驚くアナザーバルカン。高速で移動している筈の自分よりもゼロバルカンの方が速かったことに動揺が隠せない。
「何が起こった……!?」
戸惑うアナザーバルカンの前でゼロバルカンは猫背のように上体を屈めながら両足に力を込める。
シューティングウルフプログライズキーのアビリティは『BULLET』。徒手空拳となっているゼロバルカンには意味の無い能力だと思われる。
だが、実際は違う。弾丸はアナザーバルカンの目の前にあった。
「おおおおおおおっ!」
両足で地面を蹴り付けた瞬間炸裂音が響き、ゼロバルカンの姿が消える。
次の瞬間には抉り込むようなゼロバルカンのボディブローがアナザーバルカンに直撃。
「がぁっ!?」
ゼロバルカンは銃を持たない。その代わりに己自身を弾丸に見立て、撃ち出す。
1型や001のような高速移動を維持し、自由自在に動くことは出来ないが、瞬間的且つ直線ならばその速度は1型、001を上回る。
「ここで決着だ! ウィル!」
決意と同時にゼロバルカンは拳を振り抜いた。
◇
もつれ合うゼロワンと1型。やがて、窓ガラスを突き破って外へ飛び出す。その最中に1型は肘でゼロワンの側頭部を打ち、怯んだところへ前蹴りを打ち込む。
「うっ!」
空中で弾かれるように離れる両者。二人は十数メートル程の間合いを置いて着地する。
一見すればショットライザーを持つゼロワンが有利に思える距離だが、1型にはそれをゼロにする高速移動が備わっている。
『ROCKING SPARK!』
サイクロンライザーのトリガーを引き、すかさず高速で動き出す1型。音声に反応してゼロワンもショットライザーを撃った。
黄色の光弾が1型へ飛んでいくが、高速状態の1型には避けられない弾速ではない。体を横向きにすることで難なく躱し、射撃体勢のまま1型の動きについて来られないゼロワンへと拳を突き出そうとするが──
「ぐっ!?」
1型は背中に衝撃を受け、動きを止めてしまう。伏兵がいたのかとすぐに背後を確認する1型。彼の目に映ったのは一部が融解した壁。
1型は即座に理解する。背中に当たったのはさっき避けた光弾。壁に反射し、跳弾として再び狙ってきたのだ。
その時、1型の顔面に大きな衝撃が突き抜ける。動きが止まった1型の顔にゼロワンの上段蹴りが命中していた。
ライジングホッパープログライズキーとショットライザーとの組み合わせにより高速跳弾という新たな能力を得たバルカンに似たゼロワン──Vゼロワンは父を取り戻す為のその右足を振り抜いた。
前作の予告通りベルト交換による新フォームの登場となります。
能力を活かした戦いを書いていきたいと思っています。