仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション   作:K/K

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アナザーバルカン2019 その11

 フィーニスを追い掛けている内にソウゴはとあるビルの屋上へと辿り着いていた。

 視線を左右に動かすがフィーニスの姿は無い。今度は視線を上げる。貯水槽の傍でフィーニスが悠然と立っていた。

 

「俺とゲイツとウォズのライダーの力を返して貰う。この変えられた世界の歴史と一緒に」

 

 フィーニスはソウゴを見下ろす。同時にまるで幼稚だと言わんばかりに見下してもいた。

 

「ジオウ。君はライダーの力ってのが分かってない」

 

 不躾な断言にソウゴは眉を顰める。

 

「ライダーの力ってのは悪の力だろっ!」

『1号ォォ』

 

 フィーニスの中の確固たる答えと共にフィーニスは自身をアナザー1号へ変身させる。

 自重で屋上は半壊し、アナザー1号の体は建物内部に沈み込み、丁度ソウゴと目線を合わせる高さとなる。

 

「これこそが……! 本来あるべきライダーの姿だ!」

 

 何も知らない無知なる者へ天啓を授けるようにその言葉を発する。

 しかし、その言葉を聞かされたソウゴは怒ることも哀しむこともせず至って冷静に見える。アナザー1号の苛烈な言葉に感情的にならず、そよ風の如く受け流していた。

 

「何もわかってないね。俺のことも。仮面ライダーのことも」

 

 多くの戦いを経て、ソウゴの中には何人にも侵すことの出来ない絶対的な信念が作り上げられていたようであった。

 

「ライダーが悪の力? まあ、それでも良いよ。でも、俺はその悪の力で世界を善くする王様になる」

 

 アナザー1号の一側面しか見ていない言葉で今更動じるソウゴではない。

 

「最高最善の魔王に」

『ジオウⅡ!』

 

 ソウゴはジオウライドウォッチⅡを起動させ、ウォッチを二つに分ける。既に装着しているジクウドライバーの左右のスロットに金と銀のジオウライドウォッチがセットされた。

 

『ジオウ!』

 

 ジクウドライバーのロックが外され、ソウゴの背後に時計盤を模したエネルギーが二つ発生。

 両足を開き、右手を腰横に添えながら左腕を縦にして右斜めに構える。

 

「変身!」

 

 ソウゴの左手がジクウドライバーを一回転させる。時計盤から放出されたエネルギーがソウゴを覆うと共に『ライダー』も文字が浮かび上がり、具現化する。

 

『ライダーターイム!』

 

 二つの時計盤が一つに重なる。

 

『仮面ライダー!』

『ライダー!』

『ジオウ!』

『ジオウ!』

 

 重みのある声とそれを追い掛ける爽快感のある声。

 

『Ⅱゥゥ!』

 

 時計盤と同じように声が重なり、ジオウⅡの仮面に『ライダー』の文字が装着されようとする。

 

『ハアッ!』

 

 変身完了寸前、アナザー1号は歯牙が並ぶ口を開け、口内から赤黒いエネルギーの光線を発射し、最も無防備な状態のジオウⅡを光線で呑み込む。

 一切の躊躇も情も挟まない完全な不意打ち。だが、それを卑怯と誹る者は最早居ない。他に居たとしてもすぐに黙らせることが出来た。

 

『フハハハハハッ! 悠長だったな! ジオウ!』

 

 光線を吐き終えるとそこにジオウは居ない。跡形も無く消し飛んだのを見て、アナザー1号は哄笑する。

 

「何がそんなに面白いの?」

 

 嗤うアナザー1号に掛けられた声。冷水でも浴びせられたようにアナザー1号の嗤いは止む。

 

「やっぱ、自分で悪って言うぐらいだからこれぐらいするよね」

 

 アナザー1号の放った光線の射線から数歩ずれた位置に、変身済みのジオウⅡが立っている。

 

「でも、その未来は既に視た」

 

 未来予測と時間遡行によりアナザー1号の攻撃を回避してのけたジオウⅡ。アナザー1号が消し飛ばしたと思ったのは、時間を遡る前のジオウⅡの残像に過ぎない。

 

『忌々しい……! オーマジオウの力を奪っても厄介な奴だ!』

 

 アナザー1号に悟られることなく未来予測と時間遡行の二つを為したジオウⅡ。脅威度が増すのは当然だが、時間の関することでタイムジャッカーの自分の上を行かれるのが癇とプライドに障る。

 

『潰してくれる!』

 

 アナザー1号が手を振り翳す。ジオウⅡは右手にサイキョーギレードを握ると共に振り抜く。

 

『ジオウサイキョー! 覇王斬り!』

 

 伸ばされたアナザー1号の掌に七色に輝く時計盤型の斬撃が放たれる。

 

『ぬぅっ!』

 

 握り潰せそうなサイズが差があるが、その差に反して覇王斬りの圧はアナザー1号の手が振り下ろされるのを阻む。掌と斬撃の接触により火花が飛沫のように周りに散る。

 

『覇王斬り! 覇王斬り! 覇王斬り! 覇王斬り! 覇王斬り!』

 

 ジオウⅡの攻撃は一度で済まず、サイキョーギレードを振った数だけ斬撃が放たれた。それらは全てアナザー1号の掌に集中。無数の覇王斬りが重なり、虹のような眩しい輝きを発しながらアナザー1号の掌を上回る斬撃と化す。

 

『ぬおっ!?』

 

 多重覇王斬りによりアナザー1号の手が弾かれる。ジオウⅡは片手でサイキョーギレードを振っている間に次なる一手を進めていた。

 

『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

 

 軽快な音声を響かせるのはディケイドライドウォッチ。起動されたことにより虚空から一本の剣が召喚される。

 

『ライドヘイセイバー!』

 

 十九の仮面ライダーの力を宿した剣──ライドヘイセイバー。ジオウⅡはアナザー1号が体勢を立て直す前にサイキョーギレードの柄でライドヘイセイバーの鍔部分にある時計の長針を回す。

 

『ヘイ! クウガ!』

 

 選ばれた力はクウガ。突きの構えするジオウⅡ。ライドヘイセイバーの切っ先にクウガのレリーフが浮かび上がる。

 

『デュアルタイムブレーク!』

 

 ジオウⅡは走り、加速を付けるとアナザー1号目掛けて飛び掛かる。アナザー1号は体が巨大なせいで懐に入り込まれてジオウⅡの攻撃を防ぐことが出来ない。

 

「てぇやっ!」

 

 ライドヘイセイバーの突きがアナザー1号の胸部に命中。

 

『ぐおっ!?』

 

 ライドヘイセイバーはアナザー1号を貫くことが出来なかったが、その代わりにクウガの紋章をアナザー1号の胸に刻む。

 燃え上がるように輝くクウガの紋章。特効ではないがそれなりの効果を発揮したらしくアナザー1号は突きの衝撃と紋章の力により仰向けに倒れていく。

 ジオウⅡはすかさずそれを追い、建物の屋上から跳んだ。

 

『フィニッシュタァァイム!』

 

 ライドヘイセイバーにディケイドライドウォッチが填められる。

 

『ヘイ! 仮面ライダーズ! ヘイ! セイ ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘヘヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ!』

 

 騒々しいまでに自らがどのような存在かを主張するライドヘイセイバー。だが、ジオウⅡの攻撃はそれだけではない。

 

『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』

 

 ジカンギレードとサイキョーギレードが組み合わさり、サイキョージカンギレードへ合体するが、本来なら片手が塞がっている状況では不可能な合体であった。

 ジオウⅡのドライバーから飛び出したジカンギレード。すると、手を触れることなくサイキョーギレードと独りでに合体する。自分を使えと言わんばかりに。

 

『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

 

 カード型のエネルギーがアナザー1号へ連なって伸びて行く。

 

『平成ライダーズ! アルティメット・タイムブレーク!』

『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 連なったカード型エネルギーに導かれるように突き出される多色に輝く剣身と『ジオウサイキョウ』と描かれた光刃。

 全ての平成ライダーの力を一つに合わせた必殺の一撃がアナザー1号を貫く。

 

『うぐぉぉぉぉぉぉぉっ!』

 

 特効では無いが内包するエネルギーの量は桁違い。アナザー1号は膨大なエネルギーによって身を焼かれ、絶叫を上げる。

 

「いっけぇぇぇぇ!」

 

 アナザー1号を貫いたまま地面へと落下。込められていたエネルギーが大爆発を引き起こし、半壊状態であったビルがその爆発により完全倒壊する。

 ジオウⅡは爆風に煽られて爆心地から離れた場所に着地した。アナザー1号が落ちた場所は今も黒い煙が昇っている。

 すると、何か察知したのかジオウⅡの額にある針が回る。未来予測が始まった動作であり、ジオウⅡの脳裏にこれから起こる未来の光景を映し出す。

 

『ヘイ! ブレイド!』

 

 ライドヘイセイバーの針が回され、ブレイドの名が叫ばれる。

 ジオウⅡはライドヘイセイバーを掲げた。その直後に爆炎を突き破って無数の光弾がジオウⅡへ飛来する。

 

『デュアルタイムブレーク!』

 

 掲げたライドヘイセイバーの剣身が爆ぜるような音を鳴らすと、剣身が稲妻を放ち、それらが枝分かれして伸びて光弾を貫き、相殺する。

 だが、すぐに後を詰めるようにして大量の次弾が撃ち出されていた。

 

『ヘイ! フォーゼ!』

 

 ライドヘイセイバーを振り抜く。

 

『デュアルタイムブレーク!』

 

 振り抜かれたライドヘイセイバーからロケットモジュールに似たエネルギーのミサイルが発射され、光弾を撃ち落としていった。だが、光弾の数は多く、迎撃し切れない。

 

『ヘイ! ウィザード!』

 

 全ての迎撃は不可能と判断したジオウⅡは、三度ライドヘイセイバーの針を回してウィザードの力を呼び起こす。

 

「はあっ!」

 

 ライドヘイセイバーを地面に突き立てるジオウⅡ。すぐ目の前まで光弾は迫ってきており、このまま着弾する──

 

『デュアルタイムブレーク!』

 

 ──かに思えたとき、炎で描かれたウィザードの紋章が盾となってジオウⅡを光弾から守る。

 ライドヘイセイバーの能力を攻撃ではなく防御に回したことでウィザードの防御壁を創り出す魔法を再現する。

 炎の防御壁は何発か耐えていたが、やがて突き破られる。だが、そのすぐ後に水で出来たカーテンのような防御壁が光弾を阻む。それも破られると今度は旋風がジオウⅡを囲い、風の流れによって光弾を次々と逸らしていく。

 しかし、風の防御壁も光弾の数に負けて掻き消されてしまう。遂にジオウⅡに当たるかと思いきや、地面から生えた土の壁が光弾を防御。破壊されても尽きることなく土の壁は生え続けジオウⅡを守り抜く。

 やがて、四重四属性の防御壁の前に光弾が撃ち止めとなる。

 光弾を全て防ぎ切ったと思ったジオウⅡ。次の瞬間、巨大な掌が眼前にまで迫る。

 

「くっ!」

 

 咄嗟にサイキョージカンギレードを地面に突き刺し、掌をそれで受け止める。だが、相手は構うことなくサイキョージカンギレードごとジオウⅡを押し込んできた。

 突き刺したサイキョージカンギレードが地面を裂きながらジオウⅡごと押されていく。サイキョージカンギレードの切れ味が優れているせいで突き立てたコンクリートの地面が豆腐のように裂けていきアナザー1号の掌打を止められない。

 このままでは壁に叩き付けられ、そのまま圧されるか握り潰されてしまう。未来予測しなくとも見える。

 そうなる前にジオウⅡは二つのジオウライドウォッチのスイッチを、ライドヘイセイバーの柄頭で素早く押す。

 

『ライダーフィニッシュタァァイム!』

 

 ジオウライドウォッチⅡから供給されるエネルギーがジオウⅡの手足に伝わっていき、手を通してサイキョージカンギレードへエネルギーが注がれる。

 

『トゥワイスタイムブレーク!』

 

 サイキョージカンギレードの剣身が再び光に包まれ光刃と成る。地面深くに伸びたことで僅かながらアナザー1号の押し込む速度が緩まる。

 その瞬間、ジオウⅡは七色の光を放つ右足でサイキョージカンギレードの光刃を力の限り蹴る。

 下手をすれば自身の足が真っ二つになっていてもおかしくはない。だが、ジオウⅡは自分の力であるサイキョージカンギレードとジオウⅡの力を信じ、宙返りをしてしまうぐらいの勢いで後ろに倒れ込みながら蹴り上げた。

 地面に深く刺さっていた光刃は、蹴り上げられたこと、ジオウⅡが仰向けになって倒れていくことで埋もれていた光刃が跳ね上がるようにして地面から現われ、押し当てられていたアナザー1号の掌から腕に掛けて二つに裂く。

 

『ぐおおおおおおおおおおっ!』

 

 今までにない絶叫がアナザー1号の口から迸る。呻く程度の声を上げていたが、腕を二つに裂けられれば、このような声を出すのも仕方ない。

 

『ぐおおおおおっ! ──おのれぇぇぇ!』

 

 しかし、アナザー1号も叫んでいるだけではない。ジオウⅡは決死の反撃をした結果、仰向きになって倒れている体勢になっている。アナザー1号はそれを見逃さなかった。

 アナザー1号の左手が地面を削り取りながらジオウⅡへと迫る。

 咄嗟に回避することが出来ないジオウⅡは、サイキョージカンギレードとライドヘイセイバーを交差させて防御姿勢をとった。

 

「うぐっ!?」

 

 防御ごとジオウⅡへ叩き付けられる掌打。アナザー1号は下半身のバイクのマフラーから炎を吹かせながらその場で急ターン。ターンによる加速を得た掌打は振り抜かれ、ジオウⅡは宙を舞う。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

 凄まじいGを感じたと思ったら、次の時には浮遊感と共に空中に居た。そう認識した瞬間、ジオウⅡは建物の壁面へ衝突する。

 

「──っあ!」

 

 口から内臓が飛び出してしまいそうな衝撃。衝突の威力を物語るようにジオウⅡがぶつかった壁は陥没し、亀裂が壁一面に伸びている。

 砕けた破片と共に壁からずり落ちたジオウⅡ。膝を突きながらも着地をする。

 

「う、ぐ……」

 

 強烈な一撃を受けてしまったせいで体が上手く動かない。しかし、そこを狙ってのアナザー1号の攻撃は無かった。

 アナザー1号もまたジオウⅡから受けた傷によって苦しんでいる。だが、両者の傷の具合には大きな差があった。

 アナザー1号の先程貫いた胸の傷が治り始めている。裂いた腕も同様に巻き戻しのように傷口が閉じ始めている。

 大ダメージを与えたと思ったが、アナザー1号の回復速度を見る限りそうではなかった様子。

 

『この程度で、やられると思ったのか……?』

 

 嘲るように言っているが、声が若干震えている。傷がどんなに速く治ろうとも痛みは残っているらしい。完全に傷が治るまでアナザー1号は動く気配がない。

 だが、アナザー1号と違ってジオウⅡにはそんな便利な能力は無い。痛みが徐々に収まろうとも芯深くにはダメージが残っている。

 しかし、それでもジオウⅡは立ち上がる。痛くとも苦しくとも蹲ることはなく、逃げ出すこともしない。

 目の前の強敵に対し、恐れなど抱いていないと示すかのようにサイキョージカンギレードとライドヘイセイバーの二刀流を構える。

 それを無謀と蔑む者など居ないだろう。心折れた者ですら奮い立たせてしまいそうな威風堂々とした姿。

 それは、ジオウⅡが言っていた彼の目指す王を体現とした姿であった。

 

『気に入らない……』

 

 屈することなく、恐れることなく、臆することなく挑もうとするジオウⅡ。他の者の心を奮わす姿も、自らを悪と公言している者にとっては逆に苛立ちと焦燥を覚えさせる。

 ジオウⅡの威光は、アナザー1号にとって心をざわつかせる忌々しい光に過ぎない。

 

『それが仮面ライダーの在り方とでも言うのか? 馬鹿馬鹿しい!』

 

 アナザー1号は吐き捨てる。アナザー1号にとって仮面ライダーの力は悪の力であることに変わりない。ジオウⅡの威光など勘違いでしかなく悪の上っ面に善を貼っただけのメッキ。

 メッキなどすぐに剥がれてしまう。

 

『──遊びは終わりだ』

『2号ォォ』

 

 パキリ、と音が鳴りアナザー1号の背中が割れる。その中からアナザー2号が這い出て来る。

 

「来た……!」

 

 遂に姿を見せたアナザー2号。二体のアナザーライダーの連携により苦しめられた記憶が蘇る。

 アナザー1号の背から飛び出したアナザー2号は、バイクの前輪後輪という異形な手から着地。そして、ジオウⅡを威嚇するようにタイヤを回す。地面との摩擦で焦げたニオイが漂い出す。

 アナザー1号に勝るとも劣らないアナザー2号の巨体。悪意と敵意しか宿していない二体の複眼がジオウⅡを見下ろす。

 だが、圧倒的な威圧感を以てしてもジオウⅡの心を折るには足りない。彼にはそれを跳ね返す不屈の闘志が在る。

 

「来い!」

 

 ジオウⅡは燃え尽きることのない闘志のまま叫んだ。

 

 

 ◇

 

 

 十人のアナザーバルカンに果敢に戦いを挑むゼロバルカン。

 一歩踏み込むと同時に能力によって自分を撃ち出し、相手との距離を一気に詰めると直線上に立っていた量産アナザーバルカンの顔面を膝で蹴り抜く。

 加速とゼロバルカン自身の重みを足した膝蹴りの威力はかなりのものであり、まともに受けた量産アナザーバルカンは、顔面がひしゃげると共に首が真後ろに折れ曲がる。

 が、次の瞬間その量産アナザーバルカンはゼロバルカンの脚を両手で掴んだ。

 

「なっ!?」

 

 倒れ込む量産アナザーバルカンに巻き込まれてゼロバルカンも前のめりに倒れる。

 急いで起き上がろうとするが、まだ量産アナザーバルカンが足を掴んでいるせいで立ち上がれない。

 

「離せ!」

 

 マウントポジションの体勢から打ち下ろされるゼロバルカンの右拳。既に凹んでいる量産アナザーバルカンの顔が更に陥没し、最初の膝蹴りで首関節部分が破壊されているのか、顔面を左右に揺らしながら火花が飛び出し始める。

 しかし、そこまで損傷を与えてもゼロバルカンの脚は掴まれたまま。もう一撃加えようとしたとき、横から伸びてきた足がゼロバルカンの脇腹を強打する。

 

「がっ!?」

 

 衝撃が装甲を貫いて骨が軋むのを感じた。痛みに苦しむ暇も無く今度は背中に強烈な打撃が叩き込まれる。

 背骨が折れるかと思ったが、続けて頭部を殴り付けられたせい思考が途切れ掛ける。

 ゼロバルカンが動けない内に四方を量産アナザーバルカンに囲まれ、殴る蹴るというリンチが始まる。

 反撃が許されないぐらいに途切れることなく続けられる暴力。ゼロバルカンは不屈の精神力を持っているが、それでも中身は人間である。一撃、二撃ならば歯を食い縛って耐えられるかもしれないが、それが立て続けにやられればどうしても動きが止まってしまう。

 量産アナザーバルカンたちもそれが分かっているのか絶妙なタイミングでゼロバルカンに痛みを与えていく。

 

「ぐっ! がっ! がはっ!」

 

 文字通り手数が違うせいで防御が間に合わない。一方を防いでも防御の緩んだ箇所を攻撃されてしまう。

 隙が生まれるような大技の使用を控え、隙を潰した小技で徹底的に攻めてくる量産アナザーバルカン。派手さなど無い堅実過ぎる戦い方だが、確実にダメージを与え、相手への反撃も許さない。受ける方からすれば抜け出すのは不可能に近い。

 

(不味い……)

 

 意識が段々と遠のいていくのを感じる。このままでは意識が耐えてしまうだろう。そうなったとしても量産アナザーバルカンは死体になるまで殴り続けるだろうが。

 耐えることしか出来ないゼロバルカン。そのとき、一発の銃声が鳴り響く。

 量産アナザーバルカンの背中から火花が散り、一瞬動きが止まる。続けて起る発砲音。その数だけ他の量産アナザーバルカンの体に弾丸が命中した。

 この攻撃によりゼロバルカンを苦しめていた攻撃が止む。

 

(今だ!)

 

 脚を掴んでいる量産アナザーバルカンの胴体をもう一方の足で踏み付ける。そして、発動するゼロバルカンの能力。凄まじい加速を生み出す為の反動が量産アナザーバルカンに襲い掛かり、量産アナザーバルカンの胸が背部と一体化する程圧し潰される。

 真上に跳躍したゼロバルカンは足元を見る。そこではメタリックオレンジの影が量産アナザーバルカンの間を縫うようにして駆け抜けていた。

 

(刃か!)

 

 刃が変身したバルキリーがゼロバルカンの危機に駆け付けてくれた。

 量産アナザーバルカンの一体がバルキリーを捕まえようと手を伸ばすが、バルキリーは限界まで体を低くするとスライディングで手と地面の間を滑り抜け、通り抜ける間際にショットライザーで反撃する。

 バルキリーは、スライディングの姿勢から滑らかな動作さで立ち上がり、能力である『DASH』の性能を活かして高速で駆けながらショットライザーによる発砲を繰り返し、量産アナザーバルカンの体勢を崩していく。

 そのまま駆け抜けるかと思いきや、最後に立ちはだかるのはオリジナルとなったアナザーバルカン。

 口を開き、咆哮の衝撃波を放つが射線状からバルキリーの姿が消える。

 バルキリーを探すアナザーバルカンに差す影。頭上を見上げると、バルキリーがアナザーバルカンの頭上を飛び越えている最中であった。

 バルキリーはアナザーバルカンの真上から銃撃。アナザーバルカンは腕を一振りして全ての弾丸を弾く。

 空中で体を捻りながらアナザーバルカンたちから離れた場所へ着地するバルキリー。即座にショットライザーを構えて相手を牽制する。すると、丁度その横へゼロバルカンも降り立った。

 

「不破──でいいんだな?」

 

 バルカンとは所々異なるゼロバルカン。念の為に確認をする。

 

「ああ。悪い、助かった」

 

 危うい所を救われたことに礼を言っておく。

 

「どうしてそんな姿になったのかは後回しだ。……アレはどういうことだ?」

 

 アレとは複数人に増えているアナザーバルカン。今まで一体しか確認出来ていない筈が急に増えれば質問しても仕方ない。

 

「まさか、あの力の量産に成功していたのか?」

 

 聡明故にすぐに答えを導き出すが、そうなると次なる疑問が生じる。

 

「オリジナルのウィルはどいつだ?」

 

 バルキリーは、彼女の知るウィルが他の量産アナザーバルカンを指示していると推測し、まずは頭から潰そうと考える。

 

「オリジナルなんていねぇよ」

 

 その問いにゼロバルカンは吐き捨てるように答える。

 

「どいつもこいつも使い捨ての道具だ……!」

 

 ゼロバルカンの声には彼自身にも上手く言葉に表せない苛立ちと怒りがあった。何故こんなにも不快感を覚えているのかゼロバルカンも把握出来ない。

 

「無意味な抵抗だ」

 

 アナザーバルカンが機械音声と聞き間違えそうな程の平坦な声で喋る。

 

「お前たち人間は滅びる。既にこれは確定したことだ」

 

 違和感があった。アナザーバルカンの中のウィルが喋っているのではなくウィルを通して別の誰かが言葉を発しているように聞こえた。

 

「そうなる前にお前たちをぶっ潰すんだよ!」

「それが無意味だと言っている。──今、この場に居る我々を滅ぼしたとしてもお前たちの滅亡は免れない」

「……どういう意味だ?」

 

 アナザーバルカンの台詞に言い様の無い不安が沸き立つ。

 

「お前たちがイズと亡の奪還にほぼ全ての戦力を投入しているのは分かっている。ならば、お前たちの拠点の防衛は手薄になっている」

「お前……!」

「人間は守るものが無くなったとき、無力になることは学習済みだ」

 

 女、子供、老人。そして最後の希望であるゼアが残された拠点を狙うことを堂々と宣言するアナザーバルカン。

 

「そんなことをさせるか!」

「一刻も早くお前たちを倒して──」

「お前たちは勘違いをしている……この戦いが始まる前に既に我々の兵は送られている」

 

 ゼロバルカン、バルキリーは言葉を失った。この戦いに至るまで全て読まれていたことに。

 

「これで人間は……」

 

 何故かそこでアナザーバルカンの言葉が止まる。停止しているが、その動きに動揺らしきものが感じられた。

 

「……どういうことだ?」

 

 アナザーバルカン──もとい衛星アークですら把握出来なかったイレギュラーが生じていた。

 

 

 ◇

 

 

 量産されたウィルらが率いるのは、バトルマギアとトリロバイトマギアの大軍。圧倒的数の差で兵力など残されていない人間たちの最後の拠点を蹂躙する為に行進する。

 その時、あるものが目に入る。

 道の真ん中を堂々と歩く一人の青年の後ろ姿。スキャンするとヒューマギアではなく人間であることが分かった。

 青年は背後に大軍が迫っていることに気付いていないのか、振り返ることなく先へ進んでいく。

 人間風情がそのような振る舞いをすることが許せなかったのか、数体いるウィルの内の一体がバトルマギアに指示を出して青年に銃撃を行おうとする。

 手を挙げる。そして、振り下ろす──間際、そのウィルの姿が忽然と消えた。

 急なことに他のウィルたちは消えたウィルを探す。数秒後、地面に消えたウィルが頭から落下。全身がひしゃげて機能停止してしまう。

 青年は我関せずといった態度で歩みを止めない。

 青年に異様なものを感じ取り、本格的に攻撃をしようとウィルが号令を掛けようとする。

 その時、オレンジ色の残像が大軍の中を疾走する。残像が駆け抜けた後、機関銃を構えていたバトルマギアの首が一斉に刎ね飛ばされた。

 

「何が──」

 

 そこから先の台詞を喋ることは叶わなかった。量産ウィルの額に突き刺さる人差し指。鉤爪のような形状をしており、手首から先は節がある長い尾のようなワイヤーと一体になっている。

 人差し指が引き抜かれてワイヤーが巻かれていくのを目で追う。青年の隣にはいつの間にか異形の怪人が立っていた。

 黄色の複眼が額にもあり、全身が紫色の骨のような外骨格で覆われている。ワイヤーは左肩部分から伸びており、巻かれたワイヤーが左腕を形成する。

 右腕には『HOROBI』、巻き終えた左腕に『2019』の刻印があった。

 青年はやっと足を止め、振り返る。

 

「何だお前らは?」

 

 全く興味が無い。そんな感情を瞳に宿した青年──加古川飛流が不機嫌そうに言う。

 すると、彼の傍に新たに二体の異形が姿を現す。

 上空から降りて来たのは、大きなマゼンタ色の翼を羽ばたかせる隼。だが鳥の形状をしているのは胸元から上であり、それより下は人とほぼ変わらない。だが、両腕は胴体に拘束するようにベルトで何重にも巻かれており、自由に動かせない状態になっている。

 右翼には『JIN』、左翼には『2019』と刻まれている。

 もう一体は地面を削る程の急停止と共に姿を見せた。

 女性を彷彿とさせる艶やか肢体。チーターの毛皮を頭から被っており、顔の下半分は人の顔を覗かせ、赤く艶のある唇の隙間から牙が見える。

 両手は人間のものと変わらないが長い爪を生やしており、両脚はネコ科の獣と同じ獣脚であった。

 その両脚の大腿部には『VALKYRIE』『2019』の文字がある。

 

「今、急いでいるんだ。邪魔をするな」

 

 大軍を前にしてもそう吐き捨てるだけで恐れもしない飛流。ウィルたちは即座に飛流を脅威として認識し、排除を試みようとする。

 

「……言ったよな? 邪魔をするなって」

 

 元々ソウゴの件で苛立っていた飛流。ウィルたちが警告を無視して自分の邪魔をしようとしてくるので、苛立ちはピークに達し怒りの矛先がそちらへ向かう。

 

「お前ら全員スクラップだ」

『ゲイツマジェスティ……』

 

 この世界に裏のライダーの救世主が降臨する。

 




飛流のモチベーション次第ではアナザーゲイツマジェスティはオーマフォームに匹敵する程の力を発揮するという設定です。
現在の飛流はソウゴに滅茶苦茶腹が立っているのでグランドジオウ級の強さとなっております。
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