仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
ビカリアのドリルによって大きく抉られるアナザーバルカンの脇腹。本来ならば胴体中央を貫いていたが、咄嗟に身を捩ったことでダメージをある程度抑える。
狙いを外されたことが分かったデストラクションバルカンは、そのまま右足を横に振って傷口から胴体を削ろうとする。
アナザーバルカンはそんなデストラクションバルカンの考えを予測し、右足を動かされる前に脚を掴む。
「離しやがれ!」
リクエストに応えるかのようにアナザーバルカンは手を離す。ただし、真上に向けて。
「うおおおおっ!?」
急激なGに声を上げてしまうデストラクションバルカン。全身に掛かる重みを体感しながらオビコの両翼を動かして減速させる。
より高度へ上がったデストラクションバルカンを追ってアナザーバルカンも飛翔。
アナザーバルカンの抉られた傷口で動く無数のケーブルやコード。寄生虫が蠢いているのを連想させる様子である。ケーブルやコードが結び付き合い、傷口を埋めていく。
元々、大量のトリロバイトマギア、バトルマギアを素材にして創り上げられた体であり、多少の傷ならばそれを埋める材料は体内に余っている。しかし、直すのにそれなりの時間を要するので、敢えてデストラクションバルカンを高く投げ上げることで修理までの時間を稼いだ。
計算に基づくものであり、デストラクションバルカンに追い付く頃には傷は完全修復される。
拳を握り、腕を大きく振りかざすアナザーバルカン。腕の獣毛が黒く変わり、太さも倍になる。
デストラクションバルカンも一度見たロケットパンチ。だが、今回は腕を飛ばすことはせずにそのまま叩き付けてきた。
咄嗟に殴り返すデストラクションバルカン。しかし、打ち負けたのはデストラクションバルカンの方であった。突き出していた拳が押し込まれ、伸びてきたアナザーバルカンの巨大な拳がデストラクションバルカンの胸部から腹部にかけて叩く。
「ぐおっ!」
踏ん張ることが出来ない空中だが、条件は相手も同じ。最初の拳の打ち合いのときは互角。寧ろ単純なパワーならデストラクションバルカンの方が上でであった。二度目は打ち負けた理由はアナザーバルカンの腕力が上回っていたからである。黒い獣毛に変わると見た目通り腕力が上昇する模様。
息が詰まりそうな衝撃を受けながらデストラクションバルカンは真横へ殴り飛ばされる──かと思いきや、デストラクションバルカンの脇、腰から触手のような形をした白色の光が、飛ばされる前にアナザーバルカンへ伸びていく。
ネオヒの能力によって生えてきたエネルギー体の触手はアナザーバルカンの手足に巻き付いた。これによりアナザーバルカンは咄嗟に触手を切断出来なくなる。
飛ばされるデストラクションバルカンに引っ張られようとしていたアナザーバルカンは、両翼の力で空中で踏ん張る。デストラクションバルカンもまたオニコの翼を全力で羽ばたかせる。二重の力が加わったことでデストラクションバルカンは飛ばされることなく急停止。逆に触手で引き寄せることでアナザーバルカンへ突っ込んでいく。
アナザーバルカンは両腕を盾のように前へ構えて防御。その防御に与えられるのは切りつけられるような感覚。
防御の隙間から覗き見ると、デストラクションバルカンの左手には下から上へ伸びる形をした一対の牙が装着されており、先程の攻撃はその牙によるものだった。
エカルの能力によりエカルの牙を武器として拳へ装備するデストラクションバルカン。だが、武器はそれだけではない。デストラクションバルカンが右手を掲げると手の甲部分から四本の鉤爪が伸びた。
仮面ライダー亡と同じ爪を装備したデストラクションバルカンは、仮面ライダー亡を彷彿させる俊敏な動きでアナザーバルカンの腕を滅多切りにする。
腕部を強化したことで防御力を高めているアナザーバルカンであったが、デストラクションバルカンの両腕が目にも止まらない速度で振るわれることで、その硬い防御にダメージを与えていく。
爪と牙による変則的な二刀流。防刃、防弾、耐衝撃に優れたデストラクションバルカンの獣毛が二刀流により削り取られていく。
下から振り上げた爪が獣毛の薄くなっていた箇所を通すように切り裂く。獣毛部分はその一撃により完全に削がれ、獣毛下の腕にダメージを通した。
両腕の獣毛を全て剥がす勢いで爪と牙を振るおうとしたデストラクションバルカンであったが、前に突っ込むかと思いきやいきなり後方で下がる。そのすぐ後にマンモスの足が先程までデストラクションバルカンのいた場所を通過する。
地上でデストラクションバルカンを踏み潰したマンモスの足を模したエネルギー。移動が間に合わなかったら地面へ叩き落とされていた。
続けて降ってくるマンモスの足。次々と迫りくる実体化したエネルギーを持ち前の反射神経と野生的な勘で回避。つい先程から空を飛び始めたとは思えない見事な飛翔を見せる。
上からの攻撃だけではデストラクションバルカンに当たらないと判断したアナザーバルカンは、両翼に力を集束。仮面ライダー迅と同じく羽根型のエネルギーを翼から飛ばす。
縦と横から逃げ道を徹底的に塞ぐ容赦無い攻撃。
「うおおおおおっ!」
上から来る踏み付けを避けつつマンモスの巨足の隙間へと移動し、次の攻撃が来る前に飛んで来た羽根を両手で弾く。そして、頭上から気配を察すると羽根を弾きながら移動して踏み付けを回避。
一瞬でも気を抜けばどちらかの、最悪二つの攻撃を受けてしまう状態の中でデストラクションバルカンはギリギリの防御と回避を繰り返す。
未だに攻撃が当たることは無かったが、どんどんアナザーバルカンから離れてしまっており、距離が開けば開くほどデストラクションバルカンの反撃は難しくなり、反撃が無いことでアナザーバルカンは手を止めることなく攻撃が続けられる。
「くそっ……!」
中々不利な状況を覆すことが出来ず、デストラクションバルカンに焦りと苛立ち、そして疲れが募っていく。
何度目かになるプレス攻撃を避け、合間に来た羽根を全て打ち落とす──筈だった。
最早、何本目数え切れない羽根を爪で弾くデストラクションバルカン。次の瞬間、空中でバランスを崩す。
弾いたと思っていた羽根が、角度が悪かったせいでデストラクションバルカンの片翼を貫いていた。これにより空中で姿勢を維持することが困難となる。
「しまっ──」
背中に重い一撃を受けてしまい、言葉が途切れる。一瞬でも動きが止まった隙を衝かれ、マンモスの足がデストラクションバルカンを空から踏み落とす。
呼吸が出来ない。体中に酸素が回らず、視野が狭くなり頭の回転も鈍る。それでも意識を手放さず、迫ってくる地面に背を向けて傷の付いた双翼を動かして減速を試みる。
その過程でデストラクションバルカンは見た。傷だらけのアナザーバルカンの双腕が隆起していく様子を。
隆起した部分が鰭のような形になる。すると、鰭が発光し、鰭から鮫の歯を思わせるエネルギーの刃が出現する。現れた刃は一枚ではなく何枚も連なって伸びていき、数メートルの長さに達する。
両腕を振るうアナザーバルカン。ただでさえ長かった刃が更に伸び、鞭のようなしなりを得ながらデストラクションバルカンへと迫る。
「くそっ……!」
デストラクションバルカンは悔しそうに吐き捨て、刃の前に両手を掲げて防御を固める。今のデストラクションバルカンが取れる選択はそれしかなかった。
二つの刃がデストラクションバルカンに打ち付けられ、落下の速度が増す。
デストラクションバルカンは身を固めたまま地面へ叩き付けられる。
轟音と共に地面に深い穴が作られる。土煙が舞い、穴を中心にして蜘蛛の巣状の罅が長く伸びていく。
デストラクションバルカンが原型を留めていなくてもおかしくない勢いで地面に叩き付けられたのを見て、アナザーバルカンは密かにほくそ笑む。
次の瞬間、土煙を突き破って三条の光がアナザーバルカンへと伸びてくる。咄嗟に回避すること出来ず、光が脇腹を貫通。動きが硬直したことで続いて胸、腹が光に貫かれた。
光が通過した余波で土煙が晴れる。そこには罅だらけのショットライザーを構えたデストラクションバルカンが立っていた。
アナザーバルカンは驚きを隠せない。死んでもおかしくない筈であったのに立っているどころか反撃までしてきた。本当に不死身なのかと現実味の無いことを考えてしまう。
実際のところ、本当にデストラクションバルカンが不死身な訳ではない。地面に叩き付けられる寸前、デストラクションバルカンは背部からネオヒの触手を伸ばし、それを先に地面に着けることで落下の勢いを殺し尚且つ落下時のクッションにしていた。
だが、それでも衝撃は完全に殺すことは出来ず、ダメージはある。それこそ生身で数メメートルの高さから落ちたような痛みが今のデストラクションバルカンを蝕んでいる。
しかし、デストラクションバルカンはその痛みに耐えて立ち上がり、攻撃をした。そういう意味ではアナザーバルカンが不死身と思うのも間違いではない。デストラクションバルカンの──不破諫の肉体と精神力は人間の常識には当てはまらない。
ガクン、とアナザーバルカンの体が沈んだかと思えば空中から落下を始める。貫いた三発の光弾は背中まで貫いており、背部から発生させていたフライングファルコンの翼も破壊。それによりアナザーバルカンは飛行能力を失っていた。
再度展開を試みるも、破壊された影響ですぐには出来なかった。為す術も無くアナザーバルカンは落ちていく。
それを迎えるのは地上で見上げているデストラクションバルカン。アナザーバルカンが落ちて来るのを見て、フォースライザーのトリガーを引く。
『DESTRUCTION DYSTOPIA!』
デストラクションバルカンの全身のロストモデルのレリーフが輝く。光はエネルギーとなり、デストラクションバルカンの体外へ放出される。
デストラクションバルカンの背後に具現化する双頭の狼。ジャパニーズウルフゼツメライズキーとシューティングウルフプログライズキーの二つのモデルが合わさったような姿。その実態は十体のロストモデルとライダモデルが合体することで新たに生み出されたライダモデル。
双頭の狼は狩るべき敵に向け咆哮を上げると、その身を分解させ別の形へ再構築する。
再構築されたことで出来た装甲がデストラクションバルカンの両腕に装着された。
元より一回り以上厚みのある装甲を付けた両腕を八の字に開いて構える。構えに合わせて腕部から五本の鉤爪が伸びる。仮面ライダー亡の鉤爪と似ているが、爪の先端部分がより鋭利になっており長さも倍近い。構えているだけで先が地面に着きそうになっている。
左の爪から白い靄が立ち昇る。それは冷気であり切っ先が向いている地面が冷気により薄い氷が張り始めていた。
右の爪からは蒼炎が昇る。デストラクションバルカンの右側では空気の焦げるニオイと陽炎の揺らぎが起こる。
炎と冷気。異なる属性を双爪へと宿したデストラクションバルカンは、落ちて来るアナザーバルカンに向け、まずは左腕を渾身の力で振るった。
「うおらぁぁぁぁ!」
振り抜かれた長爪から放たれる白い五本線。逃れる術を持たないアナザーバルカンであったが、攻撃の正体が冷気だと察した時点で全身から炎を噴射させた。
フレイミングタイガーの炎による冷気への盾。これによりデストラクションバルカンの攻撃を無力化させる──予定だった。
五爪の斬撃がアナザーバルカンの体に触れた瞬間、纏っていた炎が消失する。
アナザーバルカンのセンサーが異常を告げる。機械の体が急速に冷やされている。同時に寒気がアナザーバルカンを襲っていた。ヒューマギアである自分が凍えるなどあり得ないことだと分かっていても、その認識を裏切るかのように寒気が止まらない。まるでアナザーバルカンの根源を凍て付かせるような冷気の斬撃。
左の長爪を受けたアナザーバルカンの体は瞬時に凍結し、体から冷気を放っている。身動きが出来ないところに本命の右の長爪が振り抜かれた。
蒼炎を思わせる五爪の斬撃がアナザーバルカンへ飛ばされる。凍り付いたアナザーバルカンにはそれを防ぐ手段も回避する手段も無く、受けるという選択肢しかなかった。
五爪の斬撃痕がアナザーバルカンの胴体へ刻まれる。深く刻まれた傷痕に残る蒼炎。次の瞬間、蒼炎が煌々とした光を放つと同時に爆発する。
デストラクション ディストピア!
空中で膨らむ青い火の玉。やがて、萎むように火の玉が消えると地面に何かが落ちた。
黒焦げの塊──アナザーバルカンは、受けた屈辱を叩き込むかのように両手で地面を突いて起き上がる。そのとき、アナザーバルカンの体からバラバラと細かなものが零れ落ちた。それはネジやギアなど大小異なる機械の部品であった。
アナザーバルカンは先程の攻撃で胸から腹にかけて深く抉られており、背中の皮一枚だけで繋がっているような状態になっており、人間で言うならば臓物を零しているかのようである。
だが、アナザーバルカンは数十体のヒューマギアを素材とし、変形、圧縮、構築した姿である。多少の損壊などはすぐ補える。
デストラクションバルカンの見ている前でごっそりと抉られた部分を断面から部品を盛り上げることで防いでいく。
「しぶとい奴だっ!」
傷を修復させていると思い、そのタフさに毒吐くデストラクションバルカン。更なる一撃を与えようとフォースライザーに手を伸ばすが──
「あん?」
──アナザーバルカンの様子がおかしいことに気付き、思わず手を止める。
傷を埋める為だけにパーツを盛り上げていると思われていたが、パーツがどんどんと溢れていき、傷を埋めるどころか突き出していく。
突き出していくパーツは変形していき、中心部分に穴が開く。暗い穴がデストラクションバルカンを覗くように向けられた。
形成されたのは砲身。もしかしたら、ショットライザーをモチーフにした銃身かもしれないが、大き過ぎるせいで大砲にしか見えない。その大砲を以ってデストラクションバルカンを粉砕しようと試みる。
アナザーバルカンの体の至る箇所から円筒状になった体の一部が伸びていく。伸びた部分は赤や白、黒などの光を発し始めた。
今までデストラクションバルカンの戦いっぷりに圧倒され、傍観者になってしまっていた刃は、発光するアナザーバルカンから凄まじいエネルギーが溜められていくのを肌で感じていた。
「不破! 逃げろ! 今なら間に合う!」
デストラクションバルカンの身を案じ、逃げるように言う。だが、刃の心配など知った事かと言わんばかりにデストラクションバルカンは一歩踏み込んで前傾姿勢となる。その構えを見ただけで刃はデストラクションバルカンが逃げる気など一切無く、逆に迎え撃とうとしているのを悟った。
直情的で負けん気が強く頑固で無謀な奴であることを刃は散々見てきたが、ここまで極まっていたのかと改めて思い知らされる。
既に刃も腹を括っていた。
「逃げないなら……勝て! 不破!」
ここで共に果てる覚悟を以って刃は檄を飛ばす。気のせいかもしれないが、デストラクションバルカンは一瞬だけ自分の方を見たような気がした。
「心配すんな……絶対ぶっ潰す」
刃の檄に応じるのは何度も言ってきた台詞。不破諫はその台詞を言う度に本当に目の前の壁をぶっ潰してきた。不退、決死、覚悟を胸に宿し、フォースライザーのトリガーを二回引く。
『DESTRUCTION UTOPIA!』
両腕に装着されていた手甲が離れ、宙に浮いた状態で再変換される。新たな形となった装甲は、今度は脚部へと装着された。膝下から足先まで覆う蒼と銀の脚甲にはデストラクションバルカンが取り込んだ各ロストモデルの姿が描かれている。
デストラクションバルカンは前傾姿勢となり走る為の構えに入る。爪先に力が入る。それだけで足元の地面が罅割れ、その罅はどこまでも伸びていく。
「うおおおおおおっ!」
獣染みた咆哮がデストラクションバルカンの喉から鳴らされる。
アオォォォォォォン!
その咆哮を跳ね除けるようにアナザーバルカンもまた咆哮を上げた。
片や最新の機械を纏った人間。片や最新の技術によって作られたヒューマギア。それが原始的な獣の争いのように声を上げて雌雄を決しようとするのは皮肉と言える。
デストラクションバルカンが駆け出すと、アナザーバルカンもまた動く。
発光していた円筒状の器官を撃鉄の如く体内へ打ち込む。砲口から光が溢れ出し、その光が強まっていき最高まで達したとき、砲口から多色に輝く弾が発射された。
発射された砲弾は回転しながら突き進む。突き進んだ後に虹のような光を残して。
デストラクションバルカンは迫る砲弾に恐れることなく真正面から向かっていき、最も加速がついたときに飛び上がる。
正面へと突き出される両足。そこに込められたエネルギーが解放されると巨大な狼の双頭と化す。牙を剝き、全てを嚙み砕く為に突進する双狼の牙。二つの頭は螺旋を描き、回転しながら砲弾へと衝突。
デストラクション
ユートピア!
衝撃波の後に凄まじい爆音が響き渡る。虹のような光が当たりに散らばるように広がっていき、建造物を貫いていく。
アナザーバルカンは爆風に押されないようにその場で踏み止まる。デストラクションバルカンを倒したどうか分からない。許容範囲以上の光によってアナザーバルカンの視覚センサーは不具合を起こしていた。
『ALL DESTRUCTION!』
まだ機能する聴覚センサーがその音を捉えたとき、アナザーバルカンは未知なる衝動と共に頭上を見上げた。
爆風によって舞い上がり、ショットライザーを両手で構えるデストラクションバルカン。砲弾を至近距離で相殺したことで全身の装甲が罅だらけになっていたが、体から放たれる鬼気は一切衰えることはなく寧ろ増大している。
デストラクションバルカンの双眼に睨まれたアナザーバルカンは再び未知なる衝動により体が動かなくなる。アナザーバルカンが知ることはないだろうが、それは人間でいうところの恐怖、畏怖といった感情。決して倒れることなく喉元に喰らい付こうとしてくるデストラクションバルカンにアナザーバルカンは恐れを抱いてしまった。
「──終わりだ」
デストラクションバルカンが引き金を引く。すると、装着していた装甲からロストモデルが召喚される。
ショットライザーから撃ち出される双頭の狼。それを導くように先行する各ロストモデル。
ロストモデルらは弾丸のようにアナザーバルカンを貫く。
アナザーバルカンの喉から迸る絶叫。ロストモデルはアナザーバルカンに一撃を与えると消滅していく。
次々とロストモデルによって体を貫かれていき、アナザーバルカンの体は風穴だらけになっていく。
既に絶滅し、この世に名と痕跡しか残っていない絶滅種たちがアナザーバルカンをあの世へと引きずり込もうとする。
それでも足掻くように体の修復を試みようとするアナザーバルカンであったが、その眼前には大きく口を開いた双頭の狼がいた。
恨み言も遺言も言う暇も与えられず狼の顎がアナザーバルカンの上半身を食い千切る。
開かれていた口が閉じられ、中に納められていたアナザーバルカンが嚙む砕かれる。その際、牙がアナザーバルカンウォッチを貫いた。
デストラクション
オールバレット!
力の根源を失ったアナザーバルカンは、閉ざされた狼の口内で爆発し、数え切れ程の細かな破片と化す。
宿敵であるアナザーバルカンの最期を見届けると、限界まで酷使されたショットライザーの銃身が砕けた。
装着していた装甲が次々と剥がれ落ちていく中で、デストラクションバルカンもまた落下していく。受け身をとる余裕もない。デストラクションバルカン自身もまた限界であった。
デストラクションバルカンの意識が闇の中へと消えていく。
◇
閉ざされた瞼越しに白い光を感じる。
『まさか、ここまでやる奴とはな……素直に褒めてやるよ。というかお前、本当に人間だよな?』
呆れながら褒めてくる声に聞き覚えがある。雷の声であった。
何故、ここに雷がと思ったが、不破は声を出せない。
『感謝する。お前のおかげであいつは……ウィルはこれで解放された』
それは飛電或人の父、其雄の声。
『やっぱり、君を信じて良かったよ』
奇妙な因縁で結ばれ、自分を庇って壊れた筈の亡の声。
『ありがとう。不破諫』
礼を言われる筋合いは無い。自分の為に戦っただけだ、と不破は言いたかったがやはり声を発せない。
そんな不破に亡は苦笑しているように感じられた。
『君を待っている人が居る。さようなら、不破諫。この世界で君との出会いと別れは私にとって得難い経験だった』
待て、待てよ。勝手に言いたいこと残して行くな。待て! 待ちやがれ! 待て──
◇
「亡……」
「不破! 気が付いたか!」
気が付く目の前に刃の顔があった。
「俺は……」
「死んだかと思ったぞ!」
刃が言うに不破は空中で変身が解除されていったが、地面に叩き付けられたときにギリギリ残っていた装甲により落下の衝撃を抑えられ、紙一重で助かったとのこと。
「悪い……お前のショットライザー……壊した」
残骸となっているショットライザーを刃に見せる。
「お前が物を壊すのは、いつものことだ」
「はっ。そうかよ……」
刃の皮肉に不破は小さく笑う。
不破は自分の戦いはここまでだと悟った。この後、どうなるかは彼次第である。
「勝てよ……飛電或人……」
今も戦っている或人に向け、不破は勝利を願う言葉を囁いた。
これにて不破の戦いは終わりとなります。
次からはタイムジャッカーとの戦いに入っていきます