仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
アナザー1号の戦いにアナザー2号が加わったことで戦況は変わった。
「くっ……!」
ジオウⅡが押されているという不利な戦況に。
アナザー2号は左手一本で巨体を支えながら剰え片輪走行をしてジオウⅡへ突進してくる。空いた右手はジオウⅡを叩き潰す為に高々と振り上げられていた。
アナザー1号に匹敵する速さで距離を詰められると、即座に右手が振り下ろされる。巨大な体から下ろされた一撃は、想像を超える速さでありジオウⅡは大きく跳び退るを得なかった。
ジオウⅡを潰す筈であった右の鉄槌が代わりに地面を砕く。ジオウⅡの足元が一瞬ぐらつく程の大きな揺れを生み出し、地面にクレーターのような陥没を作る。
アナザー2号の攻撃は空振りに終わる──ことなどしなかった。叩き付けている右手のタイヤを回転させ、ジオウⅡ目掛けて土砂をかける。
「うわっ!?」
ダメージは皆無でありせいぜい小石が当たるぐらいの嫌がらせのような攻撃だが、問題はそこではない。タイヤによって巻き上げられた大量の土や砂による粉塵がジオウⅡを囲んで視界を遮る。
ジオウⅡは焦ることなく土煙に乗じて来るだろうアナザー1号たちの奇襲を未来予測で探る。
ジオウⅡの脳裏に浮かび上がる未来の光景。だが、不思議なことに絶好の機会の筈が中々相手が攻撃してくる気配が無い。予測出来る未来の範囲の限界が迫ってくる。なのにまだアナザー1号たちは動かない。
持続可能時間限界まで達しようとしたとき、ジオウⅡは視た。背後から土煙を突き破って現れる巨影を。
それと同時に未来予測が強制終了される。普段はしない長時間未来を予測していた影響か、ジオウⅡは脳内に熱が籠っているような感覚に襲われる。
脳を煮られるような不快感に耐えながら、ジオウⅡは予測した時間まで集中力を途切れさせずに待つ。
頭の中で数えていたカウントダウンがゼロになったとき、予測通り土煙を突き破りながら現れる巨影。
背後から迫るそれを一瞥した後に前方へ跳んで避けるジオウⅡ。巨影が通り抜けると突風と変わらない風圧が起き、漂っていた土煙が全て払われる。
巨影はアナザー1号の後輪であり、いつの間にか背後へと回り込んでブレーキターンによる攻撃を仕掛けてきたのだ。
それを予測して回避したジオウⅡであったが、予測していたのはジオウⅡだけではなかった。
ジオウⅡが移動した先に待ち構えるアナザー2号。触れれば上半身が消し飛ぶ横薙ぎのタイヤがジオウⅡを襲う。
「くうっ!」
咄嗟にしゃがみ込んで攻撃を避けたジオウⅡだったが、手に強い衝撃を受け、ライドヘイセイバーを手放してしまう。
タイヤに弾かれて飛んで行ってしまったライドヘイセイバー。紙一重で避けたと思ったが避け切れなかった。手に残る強い痺れがジオウⅡに悔しさを与える。
(勘違いじゃない……段々と正確になってきている……!)
ジオウⅡは未来予測を駆使して今までアナザー1号と互角に渡り合ってきた。アナザー2号が参戦してからも攻撃の手数は減ったが、未来予測により二体の猛攻を掻い潜ってきていた。
だが、徐々にだが回避が難しくなってきている。未来予測をしても発動中に動くことを止め、予測可能時間ギリギリになって動き出すようになっていた。回数を重ねる度に発動中の時間を把握する精度が高まっている。
時間を操るタイムジャッカーが持つ独自の感性がそれを為しているのかもしれない。
過去を変え、未来を歪めるタイムジャッカーが、ジオウⅡの視た未来すらも歪め始めようとしていた。
このまま未来予測を使い続ければ、いずれは未来予測を克服されるかもしれない。だからといって、未来予測無しで戦える程容易な相手では無い。
身体能力の差ならアナザー1号とアナザー2号はジオウⅡを圧倒している。
ジオウⅡは立ち上がりながら首を動かして二体の動きを確認する。アナザー1号は背後でエンジンを吹かせ、アナザー2号はジオウⅡの前で──突然、両腕を左右に開き地面に腹這いになる。
うつ伏せの体勢からジオウⅡを挟むように両腕を左右から振るう。地面を抉りながら迫ってくるタイヤがジオウⅡの足元を狙う。触れれば足が消し飛ぶどころか下半身が無くなる。
ジオウⅡはやむを得ずその場で跳躍してタイヤを回避した──アナザー1号たちの予想通りに。
跳び上がったジオウⅡへかかる影。後ろを見ればアナザー1号がウィリーのように前輪を掲げている。
次に何が来るのか未来予測しなくても分かる。ジオウⅡはサイキョージカンギレードを翳して盾代わりにした。
アナザー1号は巨体を支える後輪をスピンさせ、ジオウⅡへ前輪を叩き付ける。
「ぐあっ!?」
盾にしたサイキョージカンギレードなど関係ないと言わんばかりの強打によりジオウⅡは苦鳴を上げる。だが、その声もすぐに回転するタイヤの摩擦音によって掻き消された。
アナザー1号は前輪をジオウⅡへ叩き付けた状態から振り抜く。ジオウⅡは風を切る音を立てて飛んだ後、建物の壁面を突き破って中へと消える。
アナザー1号とアナザー2号の攻撃はこれで終わらない。彼らは自らを悪と称した。悪は正義と消す為なら徹底的にやる。
アナザー1号の周囲に火球の形をしたエネルギーが無数に発生。
アナザー2号は両手を地面に着けた状態でタイヤを回転。前進も後退もせずにその場で空回りし続けると摩擦によって熱を帯び始め、遂には両手のタイヤが炎に包まれて真っ赤になる。
アナザー1号がエネルギー弾を一斉発射。建物ごとジオウⅡを攻撃する。アナザー2号も片手を突き出し、燃え盛るタイヤから巨大な火球を撃ち出す。
数のアナザー1号と威力のアナザー2号。二体の攻撃により建物は瞬く間に破壊され、ジオウⅡを中に閉じ込めたまま建物は崩れる。
『見たか! これが始まりのライダーの力!』
『君たちが歪めた歴史を正す力だ!』
破壊され尽くした建物を見下ろし、意気揚々と勝利宣言をするアナザー1号たち。
だが、彼らが勝利の余韻に浸れる時間はそう長くはなかった。倒壊された建物の瓦礫を突き破って『ジオウサイキョウ』と描かれた光刃が突き出て来たからだ。
突き出された光刃の威力により積み重なっていた何十tもの瓦礫が粉々になって消し飛ばされる。光刃の下には片膝を突き、祈るような構えでサイキョージカンギレードを掲げたジオウⅡが居た。
建物が崩れたとき、咄嗟の判断でフィニッシュタイムを発動させていた。サイキョージカンギレードのお陰で瓦礫に潰されるのを免れた。
しかし──
「ごほっ! ごほっ!」
ジオウⅡは激しく咳き込む。前に倒れ込んで四つん這いの姿勢になると変身が解除されてしまい、生身のソウゴへと戻ってしまった。
瓦礫に潰されはしなかったが、建物内にいるときの外部からのアナザー1号とアナザー2号の攻撃を何発かまともに体で受けてしまっていた。今まで蓄積していたダメージと合わさって変身が維持出来なくなったのだ。
『どうやらここまでのようだな?』
『所詮、原点から派生したものの力はこの程度だったようだね?』
ソウゴを見下ろし、アナザー1号とアナザー2号は嫌らしく小馬鹿にした発言をする。
『お前はここで果て、ライダーの正しき歴史がここから始まる!』
「正しき歴史……?」
『そうだ! お前にも言ったようにライダーの力は本来は悪の力! それがお前たちのような存在のせいで歪められた!』
『正義の為にライダーの力を使った君たちこそが歴史の改竄者なのさ!』
アナザー1号たちの主張。それはソウゴには暴論にしか聞こえない。
「……ふざけるな」
『何?』
「ふざけるなって言ったんだ……!」
ライドウォッチを通じて全ての仮面ライダーの歴史を見て来たソウゴだからこそ、その発言を決して許すことは出来ない。
そもそも誰もが最初から正義の為に戦ってきた訳ではない。戦う理由は仮面ライダーの数だけ存在する。誰かの笑顔を守る為、皆の居場所を守る為、人々の夢を守る為、皆理由は違う。だが、それに命を懸けて戦ってきた。
長い歴史を見れば、それは瞬間に等しいことかもしれない。でも、全ての仮面ライダーたちはその瞬間を一生懸命生きてきた。
正義の為に戦ってきた訳ではない。戦ってきた仮面ライダーの姿を見て、救われた者たちがその姿に正義を見たのだ。
彼らが歩んできた歴史という名の轍を正義と呼んだのだ。
「仮面ライダーをそんな風にしか見ないお前が、仮面ライダーを語るなっ!」
激しい怒気を以ってソウゴはアナザー1号たちを睨み付ける。
『……戯言を!』
『……無駄話はここまでだよ!』
言葉に僅かな間が置かれる。生身の筈のソウゴに一瞬とはいえ気圧されてしまったからだ。その屈辱を誤魔化すようにアナザー1号はエネルギー弾を展開し、アナザー2号は両手に炎を灯す。
欠片も残さないという強い憎悪と共にソウゴに攻撃を──
『があっ!?』
──する筈であったアナザー1号が突然仰け反ったかと思えば、下半身の車体に側面から何かをされ転倒する。
『何だ!?』
アナザー1号が何をされたのかアナザー2号は見えなかった。そして、攻撃されたアナザー1号自身も何をされたのか分かっていなかった。
赤い線らしきものが僅かに残っており、その足跡を辿ろうとするアナザー2号。だが、追い切る前に下顎が突き上げられ、声を上げてしまう。
『うぐっ!』
巨体が数歩も後退させられてしまう。辛うじて転倒を免れたアナザー2号は見た。ソウゴを守るように立ち塞がる未知なるライダーを。
「大丈夫か?」
「その声──或人!」
新たな姿となった或人ことゼロワンの登場にソウゴの表情は僅かに緩む。
『君はゼロワンか……! ジオウと同じように僕たちの前に立ち塞がるか! 忌々しい!』
アナザー2号は怒気と憎悪を吐き出しながら灼熱に燃える右手のタイヤを振り下ろす。
ゼロワンは避ける動作を見せない。灼熱の塊を睨むように見え上げたと思えば──
「はあっ!」
──気迫の叫びに合わせて右足を高々と蹴り上げた。
振り下ろしの一撃とゼロワンの蹴りが激突。軸足となっているゼロワンの左足が地面に沈み込む。だが、次の瞬間には振り下ろされた筈のアナザー2号の右手が跳ね上がる。
ゼロワンの別次元の脚力によって跳ね返された右手は、驚く暇も無いアナザー2号の顔面へ叩き返された。
自分の拳の重さを自身で味わいながらアナザー2号はバランスを崩して仰向けに倒れる。
二体のアナザーライダーが体勢を立て直すのに時間が掛かるのを見て、ゼロワンはソウゴの傍に移動する。
ソウゴの状態を確認する。疲れているようだが、目立った傷は無い。巨大なアナザー1号とアナザー2号を二体同時に相手をしてこの程度で済んでいるのを見るに、ソウゴの実力の高さが窺える。
ゼロワンは視界の端で何かが光ったのを確認した。転倒しているアナザー1号が口を開き、そこからエネルギー弾を吐こうとしている。
「ちょっとここから離れるぞ」
攻撃される寸前にゼロワンはソウゴを脇に抱えてジャンプ。ソウゴの体に影響が出ない速度まで落として移動。
アナザー1号は狙っていた二人が射線状から消える攻撃を中断し、忌々しそうに舌打ちをした。
「うっ──」
凄まじい風がソウゴの顔を撫でる。視界に映る全てのものがごちゃ混ぜになったような光景が一瞬だけ見えた。速度を加減していても生身のソウゴにはかなりキツイ。
「──おっ!?」
気付けばアナザー1号たちの視界から外れた場所まで移動していた。
「取り敢えず、ここまに居れば少しの間は大丈夫だと思う。何なら今のうちに安全な場所まで──」
「俺は逃げないよ」
ソウゴはキッパリと断った。ゼロワンの気遣いはとても有り難かったが、それでもソウゴはアナザー1号とアナザー2号から逃げることは出来ない。逃げてはいけない相手なのである。
ソウゴの強い意思はゼロワンにも伝わっており、少しだけ困った様子を見せる。
「──分かった。なら、少し休んでおいてくれ。それぐらいの時間を稼ぐことなら出来る」
ゼロワンはソウゴの意思を尊重する。だが、すぐには参戦させない。ゼロワンから見ても今のソウゴはかなり消耗して見える。
「じゃあ、行ってくる」
ゼロワンの姿が一瞬で消えた。ソウゴもすぐに追い掛けたい衝動に駆られたが、走り出そうとした途端に足が縺れそうになり走るのを止めてしまう。呼吸も乱れおり、自分で思っている以上に体力を消耗していることを自覚させられる。
このままゼロワンに合流しても彼の足を引っ張ってしまうかもしれない。
「少しだけ……」
ソウゴは大きく息を吸い込み、吐き出す。深呼吸を繰り返すことで乱れていた呼吸を無理矢理正す。
ゼロワンが体を張って稼いでくれる時間を少しでも無駄にしない為に言われた通り体力の回復に努めるソウゴ。
ゼロワン一人を戦わせることに不安が無いと言えば嘘になるが、同時に容易く負けるようなことはないという確信もあった。
戦いの場に赴いた彼もまたこの時代を担う仮面ライダーなのだから。
◇
ゼロワン一人に無様に転倒させられてしまったアナザー1号とアナザー2号は、既に立ち上がっていた。しかし、立ち上がるのに思いの外手こずってしまい、そのせいでまんまと二人が姿を隠す猶予を与えてしまった。
異形の巨体故に体の構造が人と全く異なっているせいである。尤も、自分たちがあれだけ簡単に転倒させられるなど予想外のことであった。
『何処だ……? 何処へ消えた……!』
『僕たちから逃げられると思っていないよね?』
殺意に満たされてギラギラとした輝きを秘めた複眼がソウゴとゼロワンを探す。複眼故に前方ならば死角なしで見ることが出来る。だが、二体の複眼には二人の姿は映らない。そのことから建物の陰に隠れたと判断する。
それならそれで二体にもやりようがあった。
『燻り出してくれる!』
アナザー1号の周囲にエネルギーの球体が出現する。言葉通り周りの建物を破壊して二人を探すつもりであった。
『いや、そのまま圧し潰してしまおう』
アナザー2号の両手も炎が赤く染まる。手当たり次第に攻撃し、隠れている建物ごと二人を吹っ飛ばして探す手間を省いてしまおうと考える。
準備が整い、無差別攻撃を開始しようとしたとき二体のアナザーライダーの動きが止まった。彼らの視界に探していた敵──ゼロワンが立っている。
『出てきたか』
『君一人かい? ジオウはどうした?』
「そのうち会えるさ。俺に倒されなかったらなぁ!」
その言葉が挑発なのは二体も分かっていた。ソウゴがかなりダメージを受けていたのは与えた二体も手応えから察している。恐らくは、自分に注目を集めて逃がすかダメージを回復させるのが目的。
乗る必要は無い。だが、ゼロワンの行動はアナザー1号たちの癪に障った。自らの危険を顧みずに誰かを救おうとする自己犠牲。ライダーの力を悪として定めている二体にとって、それは正すべき誤りである。
『ならば、お前を滅ぼしてジオウを引き摺り出すだけだ!』
『一人で勝てると思うな!』
無差別攻撃の為に準備していた力が、全てゼロワン一人に放たれようとする。
「お前たちを止められるのは唯一人──俺だっ!」
それは決め台詞であると同時に決して逃げないことを誓う宣言。
『止められるものなら止めてみろっ!』
アナザー1号とアナザー2号は同時に叫び、エネルギー弾と火球をゼロワンへ放つ。
逃げ場を埋め尽くす数の暴力がゼロワンへ浴びせられる。
視界を埋め尽くす弾幕を前にしてもゼロワンは冷静であった。父と自分の力が合わさった今のゼロワンに恐れるものなど何一つ無い。
ゼロワンが前屈みになり、地面を蹴る。音を置き去りにする音速の跳躍で自ら弾幕へと向かっていく。そして、あろうことかアナザー1号のエネルギー弾を踏み付けると、踏み付けた反動によって再び跳躍。跳んだ先にあるエネルギー弾も同じく踏み付けて跳躍。エネルギー弾を足場にして連続で跳躍を行いながらアナザー1号との距離を詰めた。
やっていることは比較的単純なことだが、それを行っているスピードは常識外れしたものであり、アナザー1号とアナザー2号はゼロワンが地を蹴った時点で目で追うことが出来なくなっていた。
二体の視点からすれば放った筈のエネルギー弾が次々と破裂していくという光景。ゼロワンの仕業なのは分かっているが、ゼロワンが何をしているのか、何処にいるのか全く把握出来ていなかった。
『ぬおっ!』
衝撃と共にアナザー1号の上半身が仰け反る。それに合わせて下半身の前輪が持ち上げられた。急ぎ後輪を動かして転倒だけは避ける。間髪入れずアナザー1号の顔面が折れそうな勢いで横に傾いた。
『は、速いっ!?』
アナザー1号が思わず口に出してしまう程にゼロワンとの速さの差に驚愕させられる。そして、体格差をものともしないゼロワンの一撃の重さにも。
実際のところ、ゼロワンの一撃はアナザー1号を吹き飛ばされる程ではない。見えないからこそ勘違いをしているが、先程からゼロワンは何度も攻撃を行っている。
アナザー1号たちには分からないが同じ箇所へ何十発もの攻撃を集中させていた。速過ぎるせいで何十発の攻撃も一発にしか認識されない。
『ぐおぉぉぉぉ!』
追撃によりアナザー1号は苦悶の声を上げる。ゼロワンの攻撃の重さもあるが、それ以上に効き過ぎていることをアナザー1号は理解していた。アナザー2号も同じウォッチを通じてそれが伝わっている。
何故ここまで効くのか。それは、アナザーライダーのルールから答えが分かる。
アナザー1号とアナザー2号は二体で始まりのライダー。始まりのライダーに特効なのは同じく始まりのライダーに属する者。
ゼロワンは、新しい時代の始まりのライダーの力を内包している。
『貴様! 始まりのライダーの力を奪っていたのか!』
「奪ったんじゃない! 父さんから託されたんだ!」
捻くれた発想をするアナザー1号にゼロワンは真っ向から否定。父と子の絆に穢すような言葉に怒りが湧き、その怒りを力へと変える。
技の速度、キレが一段と増し、アナザー1号は反撃することすら許されない。
『こいつ!』
半身の危機にアナザー2号が助けようとするが、見えない相手に対して攻撃する手段など無い。下手をすればアナザー1号を誤射してしまう危険すれある。
(こうなったら!)
なりふり構わず時間停止によりゼロワンの動きを止め、捕捉しようと試みる。
『うあっ!?』
──が、それは脳天へ突き刺さる鋭い衝撃により中断させられてしまった。
『この──うぐっ!』
すかさず顎を蹴り上げられ、思考が途絶える。時間停止にはそれなりの集中を必要とするが、頭部への連続攻撃によりその集中が出来ない。知ってか知らずかは不明だが、ゼロワンの攻撃は的確にアナザー1号たちの時間停止を防いでいた。
(何だこれは……! 奴は本当に一人で戦っているのか!?)
(二人、三人、いや、それ以上……! まるで見えない大軍と戦っているみたいだ……!)
ゼロワンの圧倒的スピードに翻弄され、何もすることが出来ないアナザー1号たち。このまま為す術も無く攻撃され続けるのかと思いきや、突然嵐のような攻撃が止んだ。
急に攻撃が止まったことで安心するよりも戸惑いを先に覚える。ゼロワンが何処へ行ったのか複眼で探す二体。
そして、見つけた。何百メートルも先に立つ小粒となったゼロワンを。
何故、あのような場所へ移動したのか疑問に思うアナザー1号ら。そのとき、気付いた。
ゼロワンの直線状に自分たちが並んでいることに。一つの解はもう一つの解へと導く。
この距離間はゼロワンの助走の為のものだと。
最強の脚が生み出す最速。そこから生み出される全てを破壊する一撃。
ゼロワンの手がドライバーに触れた瞬間、ゼロワンは消えた。
音を遥か彼方へと置き去りにし、電光に等しい速度に達するゼロワン。
アナザー1号の目には一瞬だけ光ったようにしか映らず、その電光を目にしたとき、上半身が千切れ飛びそうな衝撃を味わう。
アナザー1号の上半身に命中するゼロワンのキック。だが、それだけに留まらず蹴り押されたアナザー1号はアナザー2号へと衝突。
二体が重なった刹那、ゼロワンのキックが二体を貫く。
悪であれと自ら定めた異形が全ての者たちの夢を守ろうとする戦士に貫かれたとき、その声を聞いた。
『TYPE-ONE DESTRACTION!』
良い必殺技名が思い浮かばなかったので、そのままで出しました。
バルカンと被ってますね。