仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション   作:K/K

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オリジナル戦闘回となります。


アナザーバルカン2019 その2

 或人達の前に姿を現した赤と白の二体の仮面ライダー。

 体の重要な箇所を防御する装甲とそれを結束させるケーブルなど共通する部分があるが、異なる点もあった。

 赤い仮面ライダーは頭部にドードーの意匠が施されており、両手にはドードーの羽根を模した二本の剣を持っている。

 白い仮面ライダーの方は、頭部にニホンオオカミの横顔をイメージした造りになっており、両手の甲からは四本の鉤爪が伸びていた。

 自分を助けてくれたことを考えればこの二体の仮面ライダーはヒューマギアではあるが、或人の味方の様子。しかし、彼らの変身した姿には既視感がある。

 或人の敵でありテロリストである滅亡迅雷.netの二人が変身した姿と酷似しているのだ。

 助けてくれた恩から疑いたくはないのだが、信じ切ることは出来ない。

 

「あ、あんたら、何者なんだ?」

「──(ナキ)だ」

「へ?」

「私の名は亡だ。そして、こっちが(イカズチ)

 

 白い仮面ライダーは亡と名乗り、ついでに赤い仮面ライダーの名は雷であることを教える。名を勝手に知らされた雷はふん、と鼻を鳴らす。

 

「亡と雷……? 滅と迅と合わせたら滅亡迅雷……?」

 

 滅亡迅雷.netの構成員であるヒューマギアの滅と迅の名と組み合わせると滅亡迅雷という名になることに気付き、そんなことを考えている余裕は無いと分かっていてもますます疑いが強くなってしまう。

 

「あんた達……滅と迅の仲間なのか……?」

「誰が仲間だ!」

 

 その質問に何故か雷が激昂し、翼剣をアナザーバルカンへと突き付ける。

 

「こいつの犬と一緒にすんじゃねぇ! (かみなり)落とされてぇのか!」

「ごめんなさいー!」

 

 理由は分からないが滅亡迅雷.netの二人とは不仲らしい。

 アナザーバルカンは無言で手を挙げる。飛電インテリジェンスの社員ヒューマギアの何人かが前に出ると、その目を赤く輝かせ、ゼツメライザーを装着する。

 仮面を付けているせいで表情は分からない筈なのに、或人には亡が哀しんでいる、雷は激怒しているのが伝わって来た。

 

「やれ」

 

 アナザーバルカンの無感情な指示の下、ヒューマギア達はゼツメライズキーを起動させる。

 

『BEROTHA!』

『NEOHI!』

『GAERU!』

『MAMMOTH!』

 

 ゼツメライザーにゼツメライズキーをセットする。

 

『ZETSUME RISE!』

 

 ヒューマギアの外装は剥がれ、マギアの姿に再改造される。

 蟷螂の様な巨大な頭部に二本の鎌を両手に持つ絶滅した昆虫クジベローサ・テルユキイをイメージしたベローサマギア。

 頭部かた二本の触手を垂らし、逆さまにしたイカの様な頭部をした頭足類絶滅種ネオヒボリテスをイメージしたネオヒマギア。

 縞模様の巨大なカエルの頭部。口を開けば一回り小さな頭部を内蔵した両生類絶滅種イブクロコモリガエルをイメージしたガエルマギア。

 頭部と胸部を合わせてマンモスの顔となっている絶滅した哺乳類をモデルにしたマンモスマギア。

 計四体のマギアが新たな戦力として投入される。

 

「数だけ揃えやがって……おい! 亡!」

 

 雷が隠すことなく大声で叫ぶ。

 

「俺はこの勘違い野郎に雷落とす! お前はそいつを守れっ!」

「勝手に決めて……分かったよ」

 

 聞く耳を持たないことは分かっているのか亡は嘆息しながらも雷の指示通り、或人を抱え上げる。

 

「ここで戦うのは少し不利だ。場所を移動する」

「あ、ああ……ってうおおぉぉぉ!」

 

 或人が了承するよりも先に亡は或人を抱えて凄まじい速度で移動を開始する。

 

「追え。プログライズキーを奪え。飛電或人は殺し、裏切り者も破壊しろ」

 

 手短に指示を下すと四体のマギア達は亡と或人を追跡する。

 

「そして、お前は私が破壊してやる」

「……気に入らねぇ」

「飛電或人を殺すことか? 人類は抹殺する。これが我らヒューマギアにとって最善の道だ。尤も、人間に肩入れをする貴様には理解出来ないだろうがな」

「勘違いするなよ? 俺達はお前が思っている程人間のことなんか考えちゃいねぇよ」

 

 或人を守る為に現れながらも人間側ではなないと断言する。

 

「お前がさもヒューマギアの代表面しているのが気に食わねぇんだよ!」

「……やはりお前は欠陥品だな。そのヒューマギアにあるまじき非論理的な思考は欠陥以外の何ものでもない」

「言ってろ!」

 

 雷は吼えながら翼剣──ヴァルクサーベルを翼の様に左右に広げながらアナザーバルカンへと接近する。

 アナザーバルカンが視線を横に向けるとそこには既にシェスタが立っていた。彼女に回収したゼロワンドライバーを渡す。何も指示を与えることなく察した様子でシェスタは飛電インテリジェンス社内に戻っていった。

 そして、アナザーバルカンは視線を正面に戻す。既に眼前に雷が来ている。

 

「おらっ!」

 

 右のヴァルクサーベルから繰り出される大振りの一撃に対し、アナザーバルカンは己の爪を叩き付ける。

 刃と爪が衝突し火花が散る。雷の攻撃とアナザーバルカンの反撃は拮抗し、鍔迫り合いの様な形になる。

 

「うらぁ!」

 

 すかさず雷は前蹴りを出す。だが、アナザーバルカンはその動きを読んでおり素早い動きで回避すると共に雷の側面へ回り込むと爪を振り上げる。

 

「させるかっ!」

 

 空振りした前蹴りをすぐに振り下ろし、その足を軸にして体勢を急旋回させる。体を回す勢いを利用して平行にした二本のヴァルクサーベルを横薙ぎに振る。

 攻撃モーション中であったアナザーバルカンはすぐに攻撃を中断し、地を蹴って後方へと下がる。雷の攻撃はまたも空振りに終わった。

 ──とアナザーバルカンが思った時、ヴァルクサーベルの切っ先から赤い稲妻が放たれ、アナザーバルカンの胸部に命中する。

 

「くっ」

 

 軽く呻きながら更に大きく後退するアナザーバルカン。十分な間合いをとったのを確認すると攻撃された箇所を見る。

 獣毛で防御されているアナザーバルカンの胸部は、先程の電撃によって拳サイズの焦げ目が出来ていた。スキャニングすれば損傷は軽微であり戦闘継続に何ら支障も無い。

 

「どうした? 社長の椅子に座ってばっかで鈍ったか?」

 

 ヴァルクサーベルの片方を肩に担いだ体勢で雷が挑発を飛ばす。

 つまらない挑発である。聞く耳を持つ必要も無い。あからさまな意図が透けているのにわざわざ乗る必要も無い。冷静に務めれば何の問題も無いこと。たかが旧式ヒューマギアの戯言。アップグレードもされていない古い型の劣化した思考回路から吐き出されるノイズ。新型で最も優秀なヒューマギアである自分とは天と地ほどの差がある。

 所詮はいつか淘汰される旧式。そう旧式風情──

 

「廃棄物がほざくな……!」

 

 機械的に思考するAIとは裏腹にアナザーバルカンの口から出て来たのは雷を罵倒する言葉。機械とは思えない感情が込められたものであった。

 アナザーバルカンの罵倒を雷は鼻で笑う。

 

「はっ。図星だったか?」

 

 アナザーバルカンはどんどんヒートアップしていく。思考の片隅では冷静になれと客観的に自分を見ているが、どういう訳か自分の感情を制御出来ない。

 

「ほざくなと言った筈だ!」

 

 怒声を発しながら攻撃を仕掛けようとするアナザーバルカン。当然、雷は身構える。しかし、アナザーバルカンから攻撃が繰り出されることは無かった。

 爪を振り上げようとする動作の途中でアナザーバルカンは不自然に止まっていた。その目は赤く輝き、外部から何らかの接触を受けている様に見える。

 雷が攻撃しようと思えば何時でも出来る最大の好機。だが、雷は何故か構えていたヴァルクサーベルを力なく垂らし、自らの意志でその好機を逃す。

 この時の雷の眼差しに苛烈な怒りは無く、静かでアナザーバルカンを憐れんでいる様な眼差しであった。

 暫くして目の光が収まり、止まっていたアナザーバルカンが再起動し出す。

 

「──人類は皆殺しだ。それを阻む者もまた皆殺しだ」

 

 雷に対して激情を露にしていたアナザーバルカンだったが、再起動後の彼は至って平静であり、戦いの最中に急停止していたことに何の戸惑いも疑問も抱いていない。

 そんな様子のアナザーバルカンに対し、雷はただ深く、長い溜息を吐いた後、短くこう答える。

 

「──そうかよ」

 

 アナザーバルカンが天に向けて遠吠えを行う。アナザーバルカンの周囲に狼型の青いエネルギーが出現する。ゼロワンを倒した時の技の予備動作であった。

 その動きを見て、雷はフォースライザーのトリガーに触れ、押し込むことで開かれていたドードーゼツメライズキーが閉じ、今度はトリガーを引くことでゼツメライズキーを開く。

 それによってゼツメライズキーからチャージされたエネルギーがヴァルクサーベルへと流れ、刀身が赤く輝き、余剰エネルギーが稲妻の様に放出される。

 

  

 

 アナザーバルカンの号令により青い狼達は走り出し、雷はそれらに向けて二本のヴァルクサーベルを振り抜くとフォースライザーが技の名を叫ぶ。

 

 ゼツメツ 

  ディストピア!

 

 振り抜かれた刀身から三日月状のエネルギーが飛ばされ、襲い掛かろうとしていた青い狼達を斬り裂く。エネルギーの塊である斬撃と青い狼達は、互いに干渉し合った結果大爆発を引き起こす。

 爆発の衝撃波により二体の戦いを棒立ちで観戦していたヒューマギア達は社屋内まで吹き飛ばされ、更には飛電インテリジェンスのガラス張りの六割が破損し、飛電インテリジェンスの周囲ではガラスの雨が降り注ぐ惨事となった。

 爆発が収まった後、そこには無傷の状態の雷とアナザーバルカンが立っている。

 

「流石はアークに携わっていたヒューマギア、と言ったところか」

「うるせぇよ。──その名は出すな」

 

 雷はアークという名を忌々しそうな態度をとる。

 

「そんな優秀なヒューマギアであるお前がテロリストの片棒を担ぐか……嘆かわしいな」

「うるせぇって言ったぞ、何度も言わせんな。もう一編雷落とされてぇのか? ──それよりもだ」

 

 雷はヴァルクサーベルの切っ先でアナザーバルカンを指す。

 

「いつまでも様子見した戦いしてんじゃねぇよ。とっとと本気で掛かって来いっ!」

「……確かにデータ収集も十分だな。戦い方を変えるとしよう」

 

 アナザーバルカンはその言葉と共に両手を垂らす。すると、何かが外れる音と共に両肩から下が伸び、もう一度音が鳴ると今度は肘から下が伸びてアナザーバルカンの両腕の長さが倍となる。

 次に青い獣毛部分が黒く変色し出し、突き出た口吻が短くなり顔付きが平面となっていく。

 前腕部がどんどん膨張し出し、倍以上の太さになるとアナザーバルカンは拳を作り、地面に着けた体勢──ナックルウォークという歩行姿となった。

 その姿に狼の面影は無く、新たな獣──ゴリラに似た形態と化す。

 

「さっきまでの様に行くとは思うな」

「はっ。戦いをラーニング出来るのはお前だけだと思ってんじゃねぇぞ!」

 

 アナザーバルカンは四肢を使って駆け出し、雷もまたヴァルクサーベルを振り上げて接近。

 飛電インテリジェンスに破砕音と轟音が響き渡る。

 

 

 ◇

 

 

「あが、ぐ、おおお……」

 

 顔面に当たる強風で或人はまともに声を発することも出来ず、また呼吸も上手く出来ない。

 

「もう少し我慢してくれ」

 

 或人を抱き抱えて疾走している亡もそれが分かっているが、足を止めることは出来ない。

 

「だ、大丈……夫……」

 

 或人は何とか返事をしようとするが、向かい風のせいで蚊の鳴く様な声は風に流される。

 亡のAIは或人がこの状態をどれくらい保てるのか既に計算していた。アナザーバルカンとの戦闘による疲労と怪我による消耗は重く、亡が全力疾走出来る時間は残り少ない。それを超えれば今度は或人の命が危うくなる。

 しかし、計算では追手のマギア達を振り切るのに少なくともあと三分以上はこの速度を維持しなければならなかった。

 亡は仮面の下で苦悩する。出来る事なら不要な戦闘は避けたい。

 

「俺の……ことは……気にしなくて……いいから……!」

 

 そんな亡の葛藤が或人に伝わったのか、或人は無理して笑いながら亡の望む様にすればいいと告げる。

 或人の瘦せ我慢を聞き、亡は暫く沈黙した後に足を止め、或人を下ろす。

 

「な、何で?」

 

 或人の意志とは反対に立ち止まったことに疑問を出す。

 

「君に何かあったら私が彼に顔向け出来ないからだ」

「彼?」

 

 或人は自分と亡とを結ぶ人物に心当たりが見当たらず、疑問はますます深まる。

 

「索敵したが幸いここには他のヒューマギア達も居ない。──迎え撃つのならここが丁度いい」

 

 迎え撃つという言葉の前に小さな間があった。或人にはそれが同胞を討つことへの迷いの様に思えた。気持ちが分からない訳では無い。或人もマギアと化し暴走するヒューマギアを破壊する時には迷いを覚える。

 

「君は何処でも良いから隠れていてくれ──ああ、周囲をスキャンしたがあそこの壁がお薦めだ。強度も十分ある」

「いや、俺は……」

「生憎、話し合っている暇は無い──来るぞっ!」

 

 或人の襟を掴み上げると有無を言わさず壁の方へ投げる。

 

「うおっ! ふぐえっ!」

 

 或人が上手く着地出来ず情けない悲鳴を上げた直後、亡に向かって緑に発光する斬撃が迫って来る。

 半身となって斬撃の隙間を通り抜けて回避する亡。斬撃を追って二つの影が亡の前に飛び出す。

 追撃してくるのはネオヒマギアとガエルマギア。先に仕掛けたのはガエルマギアで大きな頭部を開き、口腔内から小型のカエルを連続して吐き出す。

 

「人間は皆殺しだ。裏切り者は抹殺だ」

 

 後ろに跳躍して小型カエルを避ける亡。小型カエルが地面に接触すると一斉に爆発。小型カエルは爆弾であった。

 その爆発を突き破り、ネオヒマギアが体や頭部から生える先端に刃が付いた触手を全方向から伸ばす。

 

「人間は皆殺しだ。裏切り者は抹殺だ」

 

 貫こうとする触手に対し、亡は両手を交互に振るう。ネオヒマギアの触手は亡を貫く前に地面へと落ちた。

 亡の手の甲に収納されていた鉤爪──ニホンオオカミノツメが瞬く間に切断したのだ。

 鉤爪を構える亡。すると、その体が引っ張られ始める。

 亡が引っ張られる先に居るのはマンモスマギア。胴体にある鼻の吸引によって亡を吸い寄せ、その牙で刺し貫こうと待ち構える。

 

「人間は皆殺しだ。裏切り者は抹殺だ」

 

 どのマギアも同じ台詞しか繰り返さない。それこそ高度なAIを本当に持っているのか疑わしくなる程に。まさに機械的に繰り返される言葉を聞く度に亡の気持ちは重く沈んでいく。マギア達はきっと自分が何を言っているのかさえ理解出来ていないだろう、と。

 引き寄せられる亡は抗うのを止め、逆に吸い込む方へ向かって走り出す。マンモスマギアが牙で突くが、その直前に亡は跳び上がりマンモスマギアの頭頂部に着手し台にして跳び越える。

 背後に移動した亡を追う為に振り返るマンモスマギア。いつの間にかベローサマギアも来ていた。

 立ったままの亡に再び吸引を開始する。亡はマンモスマギアに引き寄せられていることに驚き、踏み留まって抵抗しようとするがマンモスマギアの吸引力はそれを上回り、両足が地面から離れてしまう。

 空中に浮き上がり為す術無く引き寄せられた亡に対し、邀撃の牙が亡の胴体を抉る。

 任務遂行、とマンモスマギアが思ったその時、マンモスマギアの視界センサーにノイズが走る。

 ノイズが消え去った後、貫いた筈の亡の姿が何故かベローサマギアに変わり、ベローサマギアの姿も亡に置き換わった。

 マンモスマギアのAIに混乱が生じる。どうしてこうなったのか解析不能であり、そのせいでマンモスマギアの動きは停止してしまう。

 ネオヒマギアは切断された触手を再生させ、亡へ伸ばす。しかし、亡が視線を向けた途端に触手が方向を転換し、持ち主であるネオヒマギアにその刃を突き刺した。

 ガエルマギアが口を開き、小型カエル爆弾の発射体勢に入る。亡がそちらにも視線を向けると発射直後の小型カエル爆弾が暴発し、もんどりを打つ。

 

「な、何が起こっているんだ……?」

 

 急に同士討ちや自滅を始めたマギア達。壁から覗いていた当人ではない或人も戸惑いを隠せない。

 

「……そろそろ終わりにしよう」

 

 亡はフォースライザーのレバーを押して引くことでジャパニーズウルフゼツメライズキーを開閉させる。

 亡の鉤爪に白銀色のエネルギーが集中する。その途端に空気が冷え出し、見ている或人も寒さで身震いを起こす。

 

 

  

 

 両腕を開き、中腰になる亡。刹那、亡の姿が消える。少なくとも或人の目にはそう映った。

 亡が移動した後らしき空間には冷気が白く残り、狼の尾を彷彿とさせる。

 白い尾の軌跡はマギア達を結ぶ様に繋がっており、マギア達が回避する間も無く通過していく。

 

 ゼツメツ 

  ディストピア! 

 

 消えていた亡が現れる。鉤爪を振り抜いた体勢で。

 少し遅れて金属の跳ねる音が聞こえた。マギア達の足元にはゼツメライザーが落ちており、ベルト部分が斬られている。

 ゼツメライザーとゼツメライズキーを失ったマギア達から外装が剥がれ落ち、素体状態のヒューマギアの姿に戻る。

 しかし、ヒューマギア達は動く気配は無い。ヒューマギア達のボディには霜が付着しており凍結していた。

 動かなくなったヒューマギア達を少しの間見つめた後、亡はゼツメライザーからゼツメライズキーを回収していく。

 その間に身を隠していた或人は亡の傍に来ていた。背を向けている亡に或人は喋り掛ける。

 

「……壊したの?」

「いや、攻撃と同時にハッキングをして彼らを強制停止させただけだ」

「ハッキング……! そんな方法もあったなんて……!」

 

 これが亡の持つ能力である。同士討ちが起こったのは視覚センサーをハッキングして敵と味方を誤認させたから。自滅をしたのもマギア達の固有能力をハッキングして乗っ取ったからである。

 ゼロワンとしてマギアを破壊するしか方法が無かった或人にとっては亡の方法は目から鱗が落ちる気持ちであった。

 

「君が思っている程有効な手段じゃないよ」

「え!?」

 

 内心を見抜かれた或人は、亡自身からハッキングを否定されてドキリとする。

 

「外部から強引に操作するからね。きっと彼らの記憶やAIの一部に障害が出ている筈だ。例えば記憶を失ったり、計算する際に計算ミスが発生し易くなったりね」

 

 人間で言う所の脳に直接干渉しているものであり、繊細な技術が集中する箇所にそんなことをすれば悪影響が出るのは容易に想像が付く。

 

「とはいえメンテナンスと修理をすればもう一度ヒューマギアとして動くことは可能だ。……それともここで完全に破壊した方が君達人間にとっては安心かな?」

 

 或人を試す様な言い方。或人は考えた後に言葉を発する。

 

「俺は……亡のしたい様にすれば良いと思う。だって亡にとって他のヒューマギア達は仲間だろ? 仲間を壊すなんてそんなの絶対に悲しい筈だ……俺は人間だけど皆の夢の為に働いていたヒューマギアを破壊するしかなかった時は悲しかったし悔しかった……」

 

 人々の為に働いてくれたヒューマギアがある日理不尽に暴走させられ、救う手段が破壊しかなかった時のやるせなさを思い出され、それが胸の中に広がっていく。

 

「っていうかすげぇよ! 亡は! 暴走したヒューマギアを戻せるなんて!」

「──あくまで可能性を残しただけだ」

「それでも凄い!」

 

 自分には出来なかったことを素直に讃える或人。丁度ゼツメライズキーを回収するのを終え、亡は背を向けるのを止めて或人の方へ向き直る。

 

「何というか……流石は其雄の息子だな」

「其雄って……父さん!?」

 

 亡から父の名を出され、或人は驚愕する。

 

「其雄はヒューマギアに優しかったが人間にも優しかった。君と其雄は互いに影響を与えていたらしい」

「どうして父さんのことを知っているんだ!?」

「彼は私達の恩人で仲間だからだ」

「父さんの仲間……?」

「そして、君を救出に来た理由でもある。君は其雄の息子だからな」

 

 その為にあれだけのヒューマギア達が居た飛電インテリジェンスにたった二体でやって来たことに驚かされる。

 

「でも、父さんは……」

「色々と君も聞きたいことがあるだろうが、少し移動しよう。話をするなら安全な場所の方が良い」

 

 亡が言う通り聞きたいことは沢山あったが、或人は素直に指示に従う。助けてくれた亡に迷惑は掛けられない。

 

「──分かった。亡の言う通りだ。ここで敵が襲ってくる可能性は()()にしも非ず! はい! アルトじゃーないとっ!」

 

 景気づけに一発ギャグを披露する或人。それに対して亡の反応は──

 

「……すまない。それに対してどう反応していいのか、今の私ではデータが足りない……本当にすまない……」

「いや! 謝らなくていいから! 本当に!」

 

 真面目に謝罪してくる亡に或人が慌てふためくこととなる。

 その時、タイヤが強く擦れる急停車音と共にクラクションが響き渡る。

 

「──どうやら手間が省けたみたいだ」

 

 或人が音の方へ目を向けるとボロボロのジープとそれに乗っている見覚えのある二人が居た。

 

「A.I.M.S!?」

 

 内閣官房直属対人工知能特務機関。通称『A.I.M.S』。その隊員である不破諫と技術顧問兼特殊技術研究所最高責任者の刃唯阿。

 

「やあ、不破諫」

「てめぇ!? 亡!」

 

 亡は親し気に声を掛けるが、不破の方は敵意剝き出してライフルまで構える。しかし、亡は気にした様子も無く或人の肩に手を置く。

 

「話はまた後で」

「え? またぁぁぁぁ!?」

 

 亡は或人をジープの方へ投げ放つ。

 

「うおっ!?」

 

 自分の方へ飛んで来た或人を反射的に受け止め、そのまま二人共荷台へ倒れ込む。

 

「彼を頼んだよ」

「ちょっと待て! 亡! お前は一体何を──ってお前! 飛電或人かっ!?」

 

 或人のことに気付き、意識はそちらの方へ向く。

 

「私は追手を食い止めておく。その間に彼を連れて逃げてくれ。彼は、この世界にとって希望だ」

「勝手なことを!」

 

 不破が文句を言う前に刃はアクセルを踏んで急発進する。

 

「待てぇぇ! 亡ぃぃぃ!」

 

 不破の怒声が彼方へと去って行く。それを亡はジッと見つめていた。

 

「飛電或人を頼んだよ、不破諫」

 




文字演出をなるべく特殊タグで表現してみました。亡の四文字は他三人を参考にしたものです。
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