仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
「ぐあっ!」
バルカンとアナザーバルカン。交差する攻撃。軍配が上がったのはアナザーバルカンの方であった。
バルカンの振り下ろしの拳は確かにアナザーバルカンの頬に当たった。しかし、それだけであり、アナザーバルカンは拳に一切の怯みを見せず当たったままバルカンへ反撃し、その爪で彼の装甲を削り取る。
数歩後退した後にバルカンはすぐにショットライザーを構える。銃口を向けられたアナザーバルカンは急ぐ様子を見せず堂々と正面から歩み寄って行く。
バルカンが引き金を引く。ショットライザーから放たれた徹甲弾がアナザーバルカンの額へと一直線に突き進む。
だが、アナザーバルカンには徹甲弾の弾道が見えているのか、頭を傾けるという最小の動作で簡単に避けてしまう。
動揺する前にバルカンは額への一発を撃った直後に、胴体を狙った銃撃を三発撃ち込んでいた。体の中心部という裂け難い箇所。少なくとも命中はするとバルカンは考えていたが──
アナザーバルカンは避けることなく右手を振り抜く。金属音と共に天上、壁に着弾の音がする。
たった一振りで弾丸を全て弾いたアナザーバルカン。だが、少しおかしい事があった。撃った弾は三発。着弾音は二つ。弾が一つ足りない。
「くだらん」
アナザーバルカンは軽く握った拳をバルカンの方に見せ、手を開く。手の中からは粉々になった金属片が零れ落ちる。それは紛れもなく徹甲弾の破片。あの瞬間、アナザーバルカンは弾いただけでなく弾丸も掴み取っていたのだ。
「くそっ!」
それでもショットライザーを撃ち続けるバルカン。
「馬鹿め」
アナザーバルカンは急加速し、弾丸を回避する残像を見せながらバルカンの目の前に移動。すかさずその胴体に中段蹴りを放つ。
バルカンは咄嗟に肘と脚でガード。直撃は防いだが、蹴りの威力でバルカンの体は浮き上がる。
真横へ飛ぶバルカン。二メートル程度の距離を移動した後に着地するが、そこにアナザーバルカンによる追撃の爪が待ち構えていた。
「くっ!」
ショットライザーでそれを辛うじて防ぎ、反撃の拳を胸に打ち込む。アナザーバルカンは殴られても一歩も後退せず、バルカンを殴りつけて逆に後退させた。
「があっ!」
鳩尾に強烈な一撃を受けて殴り飛ばされるが、膝を折らずに耐える。そんな瘦せ我慢をするバルカンを見て、アナザーバルカンは呆れた様に首を振った。
「──理解不能だ」
「何が、だ……!」
呼吸するのも困難なのに噛み付く姿勢は崩さない。
「いい加減学習すべきではないか? 貴様は何度私に負けている? 三回だ。私と三度戦い三度とも負けた」
「知る、か……! そんなこと覚える必要も、ない……!」
吼えるバルカンにアナザーバルカンは急接近し──
「一度目の敗北で貴様は拠点を失った」
「ぐあっ!」
──バルカンの顔を殴る。初めてバルカンとアナザーバルカンが戦った時、バルカンは完敗し、命からがら逃げ延びることは出来たが代償として拠点としていた施設を制圧された。
「二度目の敗北で貴様は仲間を失った」
「がふっ!」
頭を押さえ付けられバルカンの頬が膝で突き上げられる。アナザーバルカンとの二度目の戦い。念入りに作戦を練り、アナザーバルカンが孤立する瞬間を狙って大勢の仲間達と襲撃したが、その襲撃は予測されており返り討ちにあった。バルカンは仲間達が身を呈して犠牲になってくれたことで命だけは助かった。
「三度目の敗北で貴様はプログライズキーを失った」
バルカンの下顎を掴み、持ち上げるアナザーバルカン。その腕が膨張し、獣毛が黒く染まっていく。狼からゴリラへと姿を変えるアナザーバルカン。変身後の姿にバルカンは既視感があった。
三度目の戦い。仲間を失ったことで怒りと復讐に燃えていたバルカンは単独で挑むというほぼ自殺行為に等しい真似をしてしまった。それにより彼が所持していた数少ないプログライズキーを奪われ、そして彼自身も命を奪われそうになり──
「その、姿は……!」
「見ろ、この姿を。貴様から奪ったプログライズキーの力を私にダウンロードした。学習しない貴様ら人間とは違い、私達は学習をする。これが先を進むヒューマギアと足踏みして前に進まない人間との絶対的な差だ」
プログライズキーのライダモデルをコピーし、自らに取り込むことで自己進化するアナザーバルカンのもう一つの能力。バルカンから奪ったパンチングコングプログライズキーにより得た姿。
強化された腕力によりバルカンの顔は締め上げられ、仮面がメキメキと音を立て始める。
「ぐああああっ!」
「貴様との戦いも飽きた。ここで死ね」
アナザーバルカンが大きく拳を引く。必殺の威力にまで高めた剛腕をバルカンへ打ち込もうとする──その刹那、アナザーバルカンの顔面にショットライザーの銃口が押し当てられた。
「誰が、死ぬかっ!」
零距離で発射される徹甲弾。流石のアナザーバルカンも防御、回避が間に合わず命中し、大きな火花が散る。
「ぐあっ!」
「俺は! お前達ヒューマギアを……ぶっ潰す!」
初めてダメージを受けた声を上げて仰け反るアナザーバルカン。振り抜く筈であった拳も動きが止まる。
「うおおおおおっ!」
バルカンは顔を掴んでいるアナザーバルカンの腕に銃口を押し当て、引き金を引き続ける。強化された腕も連続零距離射撃の衝撃に耐え切れず、バルカンを離してしまった。
バルカンは拘束から抜けると、未だに顔を押さえているアナザーバルカンへ至近距離からショットライザーを突き付け、引き金を引く──
「ごはっ!」
──前にアナザーバルカンの拳が胴体へ叩き込まれ、バルカンは一直線に殴り飛ばされた後壁面へ衝突した。
「無駄な足掻きを……!」
押さえていた手を離す。アナザーバルカンの顔はまだ撃たれたことによる白煙が上がっていた。
強烈な反撃を受け、バルカンは壁に背を預けたままずり落ちていく。
「まだだ……!」
しかし、それは途中で止まり、折れ掛けた膝を正して倒れることを拒む。
「つくづくしぶとい男だ……!」
アナザーバルカンの計算では既に倒れていてもおかしくないダメージをバルカンに与えていた。だが、バルカンは倒れない。寧ろ、死に掛けの筈なのに気迫が増している気さえする。
バルカンとの戦いは常にアナザーバルカンに苛立ちを覚えさせるものであった。その原因の一つがこのしぶとさである。戦いの中で何度も計算し、絶命する筈の攻撃を与えてもバルカンは死なず、立ち上がり続けてきた。
ヒューマギアのトップに立つアナザーバルカンからすればそんな計算結果の狂いは許されない。故にバルカンはアナザーバルカンの前に存在してはいけない。
「全員、ぶっ潰すまで……俺は倒れない……!」
執念で己を奮い立たせるバルカン。肉体にどれだけのダメージを与えられようとも精神力で突き動かす。
『BULLET!』
バルカンはショットライザーに挿されたシューティングウルフプログライズキーのスイッチに掌を叩き付ける。
プログライズキーに内蔵されたエネルギーがショットライザーへ充填され、銃口から青い光が漏れ出し始める。
バルカンはショットライザーを両手で構え、壁に背を押し付ける。来るべき反動に備えた構えであった。
引き金を引く。ショットライザーから狼の頭部を模した光弾が四発同時に撃ちだされ、それぞれが独自の軌道でアナザーバルカンへ飛んで行く。
「ふん!」
アナザーバルカンは両手を組み、地面へ振り下ろす。打ち下ろすと同時に両手から伝わる黒色のエネルギーが地面を突き破って噴き出し、バルカンが撃ち出した光弾を防ぐ光壁となる。
「はああああっ!」
最初に撃った四発は牽制。限界寸前までエネルギーが溜められ、銃口から今にも飛び出そうとしている二発目が本命の一発。
バレット
シ
ュ
ー
テ
ィ
ン
グ ブラスト!
極大の光線がショットライザーから放たれる。
アナザーバルカンが作り出した光壁に、先に放った狼の光弾を取り込んだバルカンの光線が衝突する。そのまま突き破る勢い光の奔流が押し寄せるが、よく見ればアナザーバルカンはその場から一歩も動いておらず、山の様に不動であった。
「これが貴様の限界だ。自分の非力さを思い知れ!」
アナザーバルカンが両手で再び地面を叩く。地面に伝わる力の波に合わせて光壁が動き出し、光線を押し返していく。
「くおおおおおっ!」
攻撃が押し返されていく光景に瞠目しながらもバルカンはショットライザーの引き金から指を離さず、限界まで絞り続ける。
その甲斐あってか光壁の押し返しは途中で止まる。だが、アナザーバルカンにとっては想定内の事態でしかなかった。
「消えろ」
アナザーバルカンは両手を左右に広げたかと思えば、二つの掌を勢い良く打ち合わせる。打ち鳴らした音は爆発音に等しく、更に両手に込められていたエネルギーが打ち合うことで拡散され、衝撃波となって室内全体に広がる。
結果、拮抗していた光線と光壁は暴発を起こし、衝撃波と合わさって範囲内にあるものを全て吹き飛ばす。
「ぐはっ!」
壁に背中を預けていたバルカンは、体を圧殺される様な衝撃を浴びせられ、体中が軋音という悲鳴を上げた。
見えざる力に圧し続けられるバルカンであったが、突如何かが体に巻き付いて来る。
「これは!?」
幾つもの節によって構成された有機的な見た目をしたサソリの尾を模したそれをバルカンは知っている。滅が使用する伸縮刺突ユニット──アシッドアナライズと酷似している。
勢い良く引っ張られ、衝撃波に逆らう様に引き寄せられるバルカン。引っ張られる力と押し返す力で体が真横に折れそうになる。
引っ張られた先に待つのはアナザーバルカン。サソリの尾はアナザーバルカンの腕から伸びたものであった。
アシッドアナライズで持ち上げられた状態のバルカンは、アナザーバルカンを睨み付ける。
「お前、滅のプログライズキーまで……!」
「それだけじゃない」
アナザーバルカンの背部にマゼンタに光る翼が展開し、急上昇。
「うおっ!?」
一瞬で天井を突き破り、空高く昇ると一気に急降下。地面スレスレで急停止をするが、停まる術の無いバルカンは、アナザーバルカンが生み出した速度のまま地面に落下し、地面は大きく割れる。
「がはっ!」
衝撃波に続いて落下による全身へのダメージ。流石のバルカンも意識が遠のいていく。
「言った筈だ。プログライズキーのダウンロードすることで私は力を得ると。あの二人のプログライズキーの能力は既に入手済みだ」
同じ力でもバルカンはアナザーバルカンに勝てなかった。そこにパンチングコング、スティングスコーピオン、フライングファルコンが加われば尚のこと勝てない。
「そして、私はお前の戦い方を全てラーニングしている──貴様の生命力は少々計算外だが──貴様は私には絶対に勝てない!」
既存の力ではアナザーバルカンに勝つことは出来ない。朦朧とした意識の中でもバルカンには聞こえていた。ならば、アナザーバルカンも知らない力で戦えば勝機を見つけることが出来る。
バルカンには一つだけ残されていた。アナザーバルカンも知らない力が。とある事情、というべきかバルカン本人の拘りのせいで使用することは無かったが、窮地に追いやられた今こそ使うべき時なのかもしれない。
「死ね。今度こそ私が唯一無二のバルカンとなる」
しかし、敵はそんな余裕を与えてはくれない。山すら砕きそうな力を拳に込め、バルカン目掛けて振るおうとしている。
間に合わない。バルカンは次に来るだろう衝撃に覚悟した。
「止めろぉぉぉ!」
「があっ!」
響く苦鳴。だが、それはバルカンが発したものではない。アナザーバルカンの口から出たもの。
光と共に出現した謎のライダーの膝蹴りを顔面に受けたせいで発せられたものであった。
無防備な状態で頬を膝で突き上げられたアナザーバルカンが吹っ飛んで行く。謎のライダーはバルカンの傍に立ち、声を掛けた。
「不破さん!? 大丈夫!?」
「その声……飛電或人か!?」
謎のライダーこと001が何故ここに現れたのか。
それは数分前にまで遡る。
◇
アメイジングヘラクレスによって増強された力から繰り出される頭突きにより滅の足が地面にめり込む。その様子はさながら杭打ちであった。
「っ! が、くっ……」
精密な機械が集合する頭部に大きな衝撃を与えられ、滅は一時的に動作が出来なくなり、立ったままの状態で脱力した様に両手を垂らす。
001は突き入れていた両拳を離す。正直な所、この状態の滅に対して追い打ちを掛けるつもりは無かった。甘いと思われても仕方がないが、001は無抵抗な相手を傷付けることに気が引けてしまっていた。
「或人様!」
「滅から離れろ!」
「え? うわっ!」
イズの声の後に強襲してくるマゼンタの羽根。001は両腕を掲げて防御する。固められた防御によって羽根が弾かれていく。
だが、一際強い衝撃が加わり、001はバランスを崩して転倒する。腕から伝わる感触からして蹴られたことが分かる。防御姿勢のせいで視界が狭まり、まんまと喰らってしまった。
構えを緩めると飛翔している迅の姿が見える。いつの間にか001のダメージから復帰していた。
001はアタッシュアローで迅を狙うが、高速で飛び回る迅に狙いが上手く定まらない。元々、飛び道具系の武器をあまり使わないのでその未熟さがここで出て来た。
素人ながら進路方向を予想してアタッシュアローで射るが、迅は反転してあっさりと回避してしまう。
「よくも滅を傷付けたな……!」
迅の声には生々しいまでの怒りと憎悪が込められている。
「お前の大事なものも傷付けてやる!」
やったからやり返すという思考の下、迅は空中で留まったかと思えば片翼を振るう。そこから放たれる無数の羽根。しかし、羽根が飛ぶ先に001の姿は無い。
「しまった!」
001が焦った声を上げる。迅の羽根が飛ぶ先に立っているのはイズ。身を呈して彼女を守る姿を見ていた迅は、自らが受けた痛みを001にも与える為にイズを攻撃した。
001とイズとの距離は大分ある。ライジングホッパーの能力なら間に合ったが、アメイジングヘラクレスのスピードでは到底間に合わない。
「くそっ!」
001はアタッシュアローを構え、射る。一度に複数の光矢が放たれ、羽根を何枚か射落とすが、全て射ることは出来なかった。
「イズゥゥゥ!」
「あはははは! 壊れろ!」
001が手を伸ばすがイズには決して届かない。迅の嘲笑が響く中で羽根がイズを──
その時、白い影が冷たい風と共に現れ、羽根を全て弾き飛ばす。
イズを守る為に現れたその人物の名を片や喜びと共に、片や怨嗟と共に叫ぶ。
「亡っ!」
「亡ぃぃ!」
仮面ライダー亡は鉤爪に付いた羽根の残滓を振り払いながら、まずは001の方へ話し掛ける。
「やあ、飛電或人。無事に着いたか確認しに来たが……着いた早々に襲撃を受けるとは君も災難だね」
次に迅の方を見た。
「弱い者、戦闘能力が無い者を狙うのは合理的なのかもしれないが、あまり品の良い行為とは言えないな、迅」
亡の咎める言葉に迅は苛立ちを込めた舌打ちをする。
「裏切り者の言葉なんて聞くつもりないね!」
今度は亡を狙って羽根を飛ばすが、目にも止まらぬ速さで振るった鉤爪に全て打ち落とされてしまう。
「飛電或人。知っているかもしれないがウィルもここに来ている。何体かにハッキングして分かったが現在ウィルは不破諫と交戦状態にある」
「不破さんとウィルが!?」
「不破諫に力を貸してやってくれ。一人ではウィルには勝てない。ここは私が引き受ける」
001は一瞬だけイズの方を見た。二度も助けてくれた亡は信用に値する存在なのかもしれないが、それでもイズをここに残して行くことに迷いを覚えていた。
001の視線に気付いたイズは微笑み、丁寧に頭を下げる。それは見送りの為のお辞儀であり、イズは001へ行く様に無言で伝えて来た。
「──分かった! 亡! 頼む!」
その姿を見て決心した001は建物の外へと飛び出す。
「──さて。出来ることならこのまま帰ってくれると私としては嬉しいんだが」
001を見送った亡は迅に告げる。
「僕に勝つつもり?」
「君の中のAIがどういう計算を導き出したのかは知らないが、飛電或人との戦いで負傷した君と戦闘不能状態の滅だったら、二対一でも私の勝率の方が勝っている」
亡の言っていることが事実の為か迅からの反論は無かった。
「ううう……うううううっ!」
代わりに上手く行かずに不貞腐れる幼子の様な唸り声を上げる。
「ああ、もう! 絶対社長に怒られる!」
迅は滅の方へ飛んで行き、彼を掴むと一緒に建物の外へと去って行ってしまった。
「ふう……」
攻撃しようと思えば出来たが亡は敢えてしなかった。元々ヒューマギア達を同胞と見ている亡だが、その中でも滅と迅だけはどうしても傷付ける気が起きないのだ。何度も危うい場面があったにもかかわらず。
雷の方は彼らと戦うことは出来るが、戦う度に心の裡に表現出来ないモヤモヤとした感情を抱いており、それに苛立ってわざと攻撃的な態度をとっている。
イズを守る為に001を行かせたが、実際の所は迅達を逃がす為の口実の面が強い。
亡はイズを見る。イズは感情が見えない瞳を亡に向けていた。
高性能なヒューマギアであるイズならきっと迅達をわざと逃がしたことが分かっている。
「恩を着せるつもりは無い。だが、少しでも借りがあると思ってくれるなら……このことは黙っておいて欲しい」
イズは暫くの間、沈黙する。彼女の中のAIが判断している様子であった。
「──了解しました。ゼアの計算も沈黙が正しいと判断しました」
「ありがとう。さてと……イズ、君も安全な場所へ退避しよう。途中までは私が守る」
「お願いします」
イズの安全を確保出来た一方で001は建物の外で広がる予想外の光景に戸惑いを覚えていた。
「ど、どういうこと?」
001はトリロバイトマギア達に苦戦している人々を助けようとしていたが、目の前の光景は真逆。人々がトリロバイトマギア達を押し返している光景であった。
「今だ! 押し返せ!」
檄を飛ばすのは刃が変身したバルキリー。それに呼応して兵士達はトリロバイトマギア達に銃撃を浴びせていく。バルキリーも勇ましいが人間がトリロバイトマギア達に圧倒しているのは彼女が理由では無い。
001も知らない謎のライダー達が一騎当千の如くトリロバイトマギア達を次々と撃破しているからだ。
緑の仮面ライダーが槍を突くとトリロバイトマギア達が纏めて数体貫かれる。緑のライダーはマフラーと手裏剣を付けた忍者の様な姿になると複数に分身し、武器を鎌に変えてこれまた纏めて数十体も破壊する。
白い女性的なライダーは手から光の刃を伸ばし、その刃でトリロバイトマギア達を撃破していく。彼女が手を翳すと何故かトリロバイトマギア達の動きが停止し、その間にトリロバイトマギア達の間を通り過ぎて行く。
次にトリロバイトマギア達が動いた時は、彼らの体が切断され細かなパーツになった時であった。
ライダーだけではない。建物の正門前では大勢のトリロバイトマギア達相手に巨大ロボットが暴れ回っている。
赤いボディに円形の頭部を持つロボットは、鉄腕で薙ぎ倒し、レーザーで蹂躙し、ミサイルで片っ端から吹き飛ばす。絶望的であった数の差がロボット一体で覆されていく。
「あんなロボット、飛電にあったっけ……?」
001も巨大ロボットを有しているが、あの様な形のロボットは初めて見る。
「──ってボーっとしてる場合じゃない!」
確かにライダー達やロボットによって戦況は変わっていくが、それでもまで襲われている兵士達の姿が見える。
001はアメイジングヘラクレスからライジングホッパーにプログライズキーを入れ替える。
『RISING HOPPER!』
『BREAK DOWN』
換装を終えた001。ライダモデルと共にアタッシュカリバーも出現し、装備する。
アタッシュカリバーとアタッシュアローの二刀流となった001はフォースライザーのトリガーを引いた。
『RISING DYSTOPIA!』
「くっ……!」
発動にはやはり苦痛が伴うが、すべきことがある001にとっては最早その苦痛も些細な事。
光のラインを残し001の姿が消え、同時に十を超えるトリロバイトマギア達が体に斬撃痕を刻まれて機能停止する。
高速移動する中で振るわれる二振りの刃が多くのトリロバイトマギア達を瞬時に撃破。
目の前で急に機能停止するトリロバイトマギア達に兵士達も何が起こっているのか分からず、目を白黒させる。
「はあ……はあ……!」
二十を超えた辺りで001は高速移動を一旦解除する。時間にすれば数秒間の出来事だが、001からすればその何十倍も動いていた。
ダメージの蓄積と疲労で不意に膝から力が抜ける。このまま仰向けに倒れるのかと思いきや、背中に何かが当たり001を支える。
首だけ後ろへ向けると謎のライダーの一人、銀と黒のカラーをしたライダーが背中を当てて001を支えていてくれた。
他のライダーと同様に『ライダー』と描かれた仮面を001へ向ける。
「久しぶり」
「え? 久しぶり……?」
001の記憶ではそのライダーと会った事が無い。
「あ、そっか。まだ出会う前だったのかも」
「どういうこと?」
一人で納得するライダーに001の困惑は強まる。
「まあ、説明は後で。ここは俺達に任せてよ。まだやることがあるんでしょ? ゼロワン?」
初めて会うというのに001は不思議とその言葉を信じる事が出来た。001自身も理屈は分からない。
「──頼んだ!」
『RISING DYSTOPIA!』
謎のライダーにこの場を任せ、001はウィルと不破が戦っている場へ急ぐ。
「うん。任せておいてよ」
謎のライダーことジオウは次代のライダーの暖かく見送ると共に約束を果たす為ジカンギレードを構えるとトリロバイトマギア達の群れへ向かっていった。
◇
そして、時間は現在へと戻る。
「飛電……或人ぉぉ……!」
突然乱入してきたことにも驚いたが、フォースライザーで変身していることもアナザーバルカンにとって驚くことであった。同時にあの時プログライズキーを奪っておけば良かったという悔しさが生まれる。
「不破さん! 大丈夫!?」
「何だその姿は……!? 何しに来た……!?」
「何しにって、不破さんを助けに──」
「お前の手助け、なんて、要るか……!」
「そんなこと言っている場合じゃないでしょ!」
001の助力を拒み、一人で戦おうとするバルカン。しかし、立ち上がろうとすると膝が震えて折れてしまう。
「くそ……! 動け……!」
自分の脚を容赦無く叩くバルカン。001が止めようとするが、突如として伸びてきたアシッドアナライズがそれを阻む。
「うおっ!?」
軌道を修正し、001を追尾するがアタッシュアローとアタッシュカリバーでそれを弾く。
「ここで貴様も始末する!」
アナザーバルカンが全ての能力を解放し、襲い掛かって来るが──
『RISING DYSTOPIA!』
001は見えなくなり、続いてアナザーバルカンから幾つもの火花が飛び散る。
「ぐおっ!」
001の高速移動に付いて行けず攻撃を受け続けるアナザーバルカン。アナザーバルカン自体が頑丈である為に二つの武器を絶え間なく振り続け、手数で押す001。
バルカンはそれを外野から見ていた。
「ふざ、けるな……!」
震えていた脚に力が込められていく。
今のバルカンの脚を支えるのは三つの怒りであった。
一つ目はヒューマギアへの怒り。
二つ目は飛電或人に助けられた不甲斐ない自分への怒り。
そして三つ目は、使いたくなかった力を使うことになってしまった怒り。
「だが、それでも俺は……戦う! ヒューマギア共を……ぶっ潰すまで……!」
バルカンが取り出す新たなプログライズキー。深緑色の外装をしたそれを起動させる。
『REVOLVER!』
プログライズキーを無理矢理開くとショットライザーからシューティングウルフを抜き、そのプログライズキーと挿し変える。
『AUTHO RIZE』
『KAMEN RIDER KAMEN RIDER KAMEN RIDER』
認証と共に鳴り響く待機音。バルカンの銃口は真上に向けられていた。
「変身!」
『SHOT RISE!』
ショットライザーから発射される未知なる力を秘めた弾丸。同時にバルカンはアナザーバルカンに向かって走り出していく。
アナザーバルカンも異変に気付き、連撃を耐えている中でバルカンの方を向く。
「うおおおおおっ!」
拳を振り上げながら突進する様は蛮勇そのもの。何も学習しないバルカンにアナザーバルカンが迎撃の拳を振り上げる。
二人の拳が衝突する寸前に撃ち上げられていた弾丸がUターンし、バルカンへ命中。
『GATLING HEDGEHOG!』
拳を打ち付け合った時、苦鳴を上げたのは──
「がっ!?」
──アナザーバルカンの方であった。正確には二人の拳は触れ合っていない。バルカンの深緑色の手甲から伸びる無数の針に貫かれて届いていないのだ。
シューティングウルフの時とは違い左右対称の深緑色の装甲。だが両肩、仮面、胴体に付けられた装甲には無数の棘が生えており、全身が凶器そのものと化していた。
「何だ……!? その姿は……!?」
それはアナザーバルカンも知らないバルカンの姿。
『Infinite spines shoot towards the enemy』
アナザーバルカンも知らないのは無理も無い。ガトリングヘッジホッグプログライズキーは、アナザーバルカンにパンチングコングプログライズキーを奪われた後に亡から渡されたものだからだ。だからこそ彼はこのプログライズキーを使用するのは最後まで躊躇っていた。
あの時の屈辱に塗れた苦い記憶が蘇って来る。しかし、それが怒りという力をバルカンに与えてくれる。
「覚悟しろ……! 絶対お前をぶっ潰す……!」
映画特典だから出してみました。不破さんしか使ってないので不破さん用になります。