仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション   作:K/K

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アナザーバルカン2019 その6

 新たなプログライズキーによって変身した姿──バルカン・ガトリングヘッジホッグの能力により、打ち砕く筈であったアナザーバルカンの拳は十数もの針で刺し貫かれている状態となっていた。

 

「おらっ!」

 

 針を出している腕を一気に振り下ろすバルカン。パキン、という音が鳴りバルカンの手甲から生えていた針が一斉に折れる。

 

「ぐっ!」

 

 折れた針はアナザーバルカンの拳に残っており、針を取り除こうとするが貫通した針がアナザーバルカンの手を拳の形に固定してしまい、手が開かない。

 

「うおらぁぁ!」

 

 大きく振り被るバルカン。その間に折れた針が生え変わり、スパイク状の手甲へと戻る。

 バルカンが攻撃モーションに入ったのを見て防御の体勢に入るアナザーバルカンであったが、その時アナザーバルカンは脇腹に強い衝撃を受ける。

 

「があっ!? 飛電或人ぉ……!」

 

 アナザーバルカンが相手にしているのはバルカン一人ではない。今も高速で動き回っている001も居る。

 001はアナザーバルカンの意識外から最も防御の薄い箇所を攻撃した。それによりアナザーバルカンの防御姿勢は崩れ、反射的に意識も001の方へ向けられる。

 防御の隙間を狙ったバルカンの拳がアナザーバルカンに炸裂。打撃の威に加えて衝撃に反応して手甲の針が伸び、命中箇所を刺す。

 アナザーバルカンが打ち込んだ拳を払おうとすると、バルカンは腕を素早く下に振りながら拳を引く。

 

「またか……!」

 

 拳を打ち込んだ箇所に印の様に残る十を超える針。今のバルカンの攻撃は、ダメージ以上のものが残る。しかも折れた針はすぐに再生するのでバルカンには一切の負担が無い。

 

『CHARGE RISE! FULL CHARGE!』

 

 アナザーバルカンの耳に届く音声。その直後に今までよりも強烈な斬撃がアナザーバルカンの胴体に与えられる。

 

『KABAN STRASH!』

 

 アタッシュカリバーの刃にエネルギーを込めた斬撃はアナザーバルカンの体に確かな傷を与える。しかし、001の攻撃はそれで終わらない。

 

『KABAN SLASH!』

 

 今度はアタッシュアローの刃が先に与えられた傷と交差する様に振るわれ、アナザーバルカンの体に×の字が刻み込まれた。

 

「がはっ!」

 

 ダメージに声を上げるアナザーバルカン。だが、その声は口を鷲掴みにされ、途中で止めさせられる。

 

「まだ終わりじゃねぇぞ!」

 

 バルカンは出来たばかりの傷にショットライザーの銃口を押し当てて発砲。発射されたのは光弾ではなく杭の様な太さを持つ針状の弾丸であり、損傷している箇所に深々と突き刺さる。

 

「がっ! ──人間如きがっ!」

 

 重なる攻撃にアナザーバルカンもダメージを負うが、同時に怒りに火を点ける。

 

「おおおおおっ!」

 

 アナザーバルカンは両腕を地面に叩き付けた。アナザーバルカンを中心にして衝撃が波紋状に広がっていく。その波紋に触れた者達は──

 

「うわっ!」

「うおっ!」

 

 下から突き上げる様な衝撃を受け、空中へと打ち上げられた。

 アナザーバルカンの至近距離に居たバルカンは勿論だが、高速移動をしていた001も地面に足が触れている状態であった為、空中へと投げ出され高速移動出来なくなってことで可視化してしまう。

 アナザーバルカンは咆哮を上げる。それは狼のものであり、咆哮を合図にして狼型のエネルギーが出現。

 狼の数が揃うと翼を展開し、その場で一回転する。翼からマゼンタ色のエネルギーで覆われた銀色の羽根が飛ばされ、狼らも一斉に獲物へと飛び掛かる。

 

「くっ!」

 

 001はアタッシュカリバーとアタッシュアローを交互に振るい羽根を弾いていくが、間髪入れずに狼の方も襲い掛かってきた。咄嗟に大口を開いて襲い掛かってきた狼をアタッシュカリバーで両断。狼の上顎から上が斬り飛ばされる。

 だが、その瞬間に狼が内蔵していたエネルギーが爆発し、001は至近距離でその爆発を受けることとなる。

 

「うわああっ!」

 

 全身を殴りつけられる衝撃を感じながら001は壁面に衝突。

 

「ぐっ!」

 

 バルカンもまた爆発の洗礼を浴びせられていた。バルカンは両腕、両肩から前方向に針を伸ばすことで先端に接触させ、001よりも遠い間合いで爆発の衝撃を受けたが、それでも吹っ飛ばされ001と同じ壁に叩き付けられた。

 広範囲を無差別に攻撃した直後のアナザーバルカンは、そのまま二人に止めを刺すと思いきや、その場で膝を折る。

 

「こんな事が……! 想定以上のダメージを負ったというのか!? 私が……!?」

 

 001が合流してから一気にダメージを負ったせいで体に不具合が生じ始めている。もし、変身者のウィルが人間であったのならアナザーウォッチの力で肉体を幾分か回復させることが出来たであろう。アナザーウォッチは死に掛けた人間すら動かす力が有る。

 しかし、ウィルの体は機械の塊である。それも精密な部品等で構築されている。外部からのダメージはアナザーライダーとしての頑丈な体が軽減させてくれるが、それでも限度はある。限度を超えればダメージは内部に蓄積する。

 生身の体を持たないウィルにとってこの内部へのダメージは重い。何故なら彼はアナザーウォッチによる回復という恩恵を受ける事が出来ない。不具合が生じたら回復する見込みが無いのだ。

 関節各部に軋みを感じる。視覚センサーにノイズが生じる。演算機能の一部が作動しない。ヒューマギアらしく自分の体に生じた不具合が一々正確に告げられるが、現状改善する手立てが無いのでアナザーバルカンからすれば己のことだが鬱陶しく感じる。

 

「くっ……!」

 

 アナザーバルカンに異変が起きている中、001は立ち上がろうとしていた。

 小刻みに震える膝に力を入れ体を起こそうとし、崩れ落ちる。アナザーバルカンにダメージが蓄積している様に001もまた今まで溜まっていたダメージが一気に圧し掛かっている。

 アナザーバルカンとの戦闘で始まり、それからさほど時間が経たずに滅と迅との二対一の戦い。そして、アナザーバルカンとの再戦。

 戦闘のダメージとフォースライザーの負荷によって001の体は悲鳴を上げており、すぐに立てないのは体が強制的に休ませようとしているからである。

 

(立たないと……!)

 

 肉体の警告を無視し、001は尚も立とうとする。このまま動かずに意識を失ってしまえば楽なのは分かっている。だが、戦いが終わっていないのに楽になんてなれる筈が無い。

 アナザーバルカンが徐々に再起動し出しているのが見えている。早く動かなければ二度と動けなくなる。

 脚の筋肉に力を込めるのだが、見えない穴から力が抜けていくかの様に真っ直ぐ伸びない。筋肉が痙攣する様に震えるだけで終わる。

 一方でアナザーバルカンは不具合が起こっている体を巧みに動かし、何とか動ける様になっていた。自分の体を熟知してこそ出来る芸当である。

 だが、正常に動作出来る時間は限られている。アナザーバルカンは優先して戦う相手を選択する。

 バルカンを見る。うつ伏せの状態から体を起こそうとしている。

 001を見る。何とか立ち上がろうとしているが、肉体のダメージが大きく上手く行っていない。

 今この場で倒すべきなのは001の方だとアナザーバルカンは合理的に判断する。

 ゼロワンドライバーの所持者であり飛電の名を受け継ぐ者。そして、今も追っているあの男との関連も深い。最も最優先で始末すべき人物である。

 アナザーバルカンは001を始末する為に彼の許へ歩を進めようとするが──

 

「──おい」

 

 それを呼び止めるはバルカン。

 

「何こっちに背を向けてんだ……!」

 

 死に掛けた狼の無駄吠えである。聞く必要も無い。

 

「逃げてんじゃねぇ……!」

 

 優先すべきは飛電或人。先に始末すべきは飛電或人。雑音を拾う意味など無い。

 導き出された答えに従い、合理的に──

 

「そんなに俺が……怖いのかよ……!」

「──誰が誰を恐れている?」

 

 合理性は沸騰する感情の前に一蹴される。

 見下し、軽蔑し、この世界から抹殺しようとしている人間如きが、この星の新たな種となるヒューマギアに対して言ってはならない台詞を吐いた。

 アナザーバルカンの腕からアシッドアナライズが伸び、バルカンの首に巻き付くと引き寄せ、目の前で持ち上げる。

 

「ぐっ……!」

 

 首を締め付けられた状態で宙吊り状態となるバルカン。両手で緩めようとするがアシッドアナライズは逆に強く締め付ける。アシッドアナライズの先端がバルカンの眼球に突き付けられた。

 

「もう一度言ってみろ? 誰が誰を恐れている?」

 

 喉を締められている状態では喋ることなど出来ないと分かっていながら敢えて聞くアナザーバルカン。

 

「言ってみろ!」

 

 一度感情が昂ってしまうとアナザーバルカン自身も制御出来なくなる。如何に優秀なヒューマギアであっても後天的に手に入れた自我を制御するプログラムは持たない。火が点いてしまえば後は燃え盛るのみ。

 頭の片隅ではこんなことをせずにさっさと始末しろと指示する自分が居るが、バルカンも001もほぼ戦闘不能状態であり順番が変わるだけだと自分に言い訳をし、今行っていることを正当化する。

 感情の赴くまま、アシッドアナライズの針でバルカンを貫こうとした時──

 

「不破さんっ!」

 

 001の声と共に後方から何かが迫って来るのを感知する。咄嗟に振り向こうとした時、物体がアナザーバルカンの顔側面を高速で通り過ぎていく。

 そのまま通り過ぎていくかと思いきや、バルカンは首を絞められて朦朧している状態にもかかわらず、その物体を掴み取る。

 持てる力を全て込め、001から投げ渡された物体──アタッシュカリバーを振り上げる。

 空間に描かれる銀の線がアシッドアナライズを通過。線の部分からアシッドアナライズが切断され、バルカンは締め付けから抜け出す。

 呼吸出来なかった分、一気に酸素を吸い込むと気合の雄叫びと共に吐き出し、アタッシュカリバーを叩き付ける様にしてアナザーバルカンを斬る。

 

「なぁっ!?」

 

 全てがあっという間の出来事であり、アナザーバルカンは防御することも間に合わずバルカンの全力の斬撃を浴びせられてしまう。

 予期せぬ一撃によりアナザーバルカンは大きな隙を晒す。この間にもっと強力な一撃を与えようとしバルカンは気付く。

 アタッシュカリバーのスロットに既にプログライズキーが挿し込まれていた。

 これを見たバルカンは、仮面を下で複雑な表情をし、奥歯を嚙み締める。

 

「飛電或人っ!」

 

 名を呼ぶと同時にバルカンはそれを投げ放っていた。

 001は慌てて投げられた物を受け取る。手の中にあるそれは、バルカンにとって魂の一部と言っても過言ではないシューティングウルフプログライズキーであった。

 これ以上の貸しは作らないというバルカンからのメッセージ。001はバルカンが少しだけ自分に気を許してくれたことを喜び、アタッシュアローのスロットに挿す。

 

『WEREWOLF'S ABILITY!』

 

 バルカンと001は同時にアタッシュウェポンを閉じ、刃部分をエネルギーで満たす。

 

『CHARGE RISE FULL CHARGE!』

 

 充填完了の合図に従い、アタッシュカリバーを武器形態へと戻しながらバルカンはアナザーバルカンの胸部にアタッシュカリバーの刃を押し当て、001は地を這う様に身を低くした体勢から両足で地面を蹴り、低空を高速で跳躍。

 二人はほぼ同じタイミングでグリップにあるトリガーを押していた。

 

『AMAZING KABAN DYNAMIC!』

『SHOOTING KABAN FINISH!』

 

 アタッシュカリバーの刃がヘラクレスオオカブトの長さが異なる上下に並んだ角を模した黄緑色のエネルギーに包み込まれる。

 

「がああああっ!」

 

 アナザーバルカンは高密度のエネルギーに焼き斬られながらもエネルギー刃を両手で押し返そうとする。だが、バルカンは傷だらけの体から搾り出した渾身の力を両手に込め、それに拮抗。

 その時、低空から跳び込んで来た001のアタッシュアローの刃がアナザーバルカンの脇腹を斬り付ける。蒼炎の様なエネルギーで覆われたアタッシュアローの刃は、獣毛を容易く斬り裂き、深く斬り込む。

 斬られた衝撃でアナザーバルカンの両手の力が緩む。バルカンはこの機を逃さず、アタッシュカリバーを一気に振り抜いた。

 001の頭上を黄緑色の刃が通り抜けていく。身を低くしていたおかげで巻き添えを回避する。

 交差する刃と刃。その中心でアナザーバルカンは絶叫を上げるが──

 

 アメイジングカバンダイナミック! 

               

                     シューティングカバンフィニッシュ! 

 

 ──その二つの音声によって掻き消されてしまった。

 胸部、脇腹に深い傷を負い、機械部分が剥き出しとなって火花を散らす。しかし──

 

『REVOLVER!』

「おい」

 

 破損し熱を帯びている傷へ突き付けられる冷たい銃口。

 

「まだ終わってねぇぞ……!」

 

 情けも容赦も無い憤怒のダメ押し。

 ショットライザーからアナザーバルカンの体内に直接エネルギーを流し込まれる。

 

「うっ……うう……!」

 

 よろめきながら数歩後退するが、その足が突然止まり前屈みになる。

 

「うう……があああああっ!」

 

 アナザーバルカンの背中を突き破って伸びる黄緑色の針。一本生えたかと思えば、次々と伸びて行き、背中を針が埋め尽くしていく。

 さながらその姿は針鼠の様であった。

 

   リボルバー

 ガトリング

   ブラスト! 

 

 体を突き破るエネルギーの針によって中と外をズタズタにされるアナザーバルカン。

 この一撃でバルカンは限界を迎え、変身が解除されてしまう。

 

「こんな、所で……! 私は……!」

 

 何か言い掛けるアナザーバルカンであったが、突然その瞳が赤く染まる。そして、今までダメージが無かったかの様に直立姿勢となった。

 バルカンは思わずショットライザーを向けるが、アナザーバルカンは意を介さない。

 

「全員撤収しろ」

 

 無感情な声で指示を出すと、001達を無視してあっさりと立ち去ってしまう。

 

「おい……!」

 

 不破が声を荒げ、銃口を向けるが震える手では狙いが定まらず、結局撃つ前にアナザーバルカンは居なくなってしまった。

 狙うべき相手を失い、ショットライザーを持っていた手は重みに耐えかねて下げられる。

 ショットライザーが地面に当たったカツンという音が、不破と変身が解けた或人が残された建物内に響いた。

 

「不破さん……生きてる……?」

 

 土埃で汚れた地面にうつ伏せになった或人が弱々しい声で問う。

 

「当たり前だ……」

 

 仰向けの体勢で答える不破。こちらの声も弱々しい。

 

「何とか皆を守れたかな……?」

「まだ親玉を倒した訳じゃねぇ……」

 

 或人は心成しか不破の声にあった棘が少なくなった気がした。ほんの少しだが、或人のことを認めてくれたのかもしれない。

 

「安心するには早いってことね……安心出来なくて()()()()()()()()

 

 弱っていながらも飛ばすギャグ。すると──

 

「こん、な……! 時に……! そんなこと……ぶっ、くっ、言うん、じゃねぇ……!」

 

 不破は痙攣の発作でも起きたかの様に体を小刻みに震わせ、何かに耐える様に胸部を仰け反らせる。

 

「ご、ごめん。和ませようと……」

 

 不破が怒っていると思い、慌てて謝る或人。

 

「ぷっ、くくっ……うぐっ!」

 

 だが、実際は違った。或人の放ったしょうもないギャグは不破の笑いのツボにこれでもかと深く突き刺さっており、今にも爆笑しそうなのをプライドを守る為に我慢しているのだ。

 歴史が書き換えられても不破が或人のギャグに弱いのは変わらず、傷を負った体で無理矢理笑うのを耐えているせいで痛みにも悶えさせられる。

 そこに足音が近付いて来ていることに気付き或人は謝るのを止め、不破も即座に切り替える。

 痛む体を押して足音の方を向くと、見知らぬ茶髪の青年が立っていた。

 

「大丈夫?」

 

 負傷している二人を気遣う青年。或人には声に聞き覚えがあったが──

 

「誰?」

「誰だ?」

 

 ──不破と同じ言葉を口に出してしまう。

 

「俺は常磐ソウゴ。改めてよろしく、ゼロワン──じゃなく飛電或人」

「やっぱり……あんた、さっきの!」

 

 穏やかな口調で自己紹介するソウゴという人物に二人はただ戸惑うしかなかった。

 

 

 ◇

 

 

「うっ……」

「あっ! 滅! 良かった! 気が付いた!」

 

 肩を貸していた迅は滅が再起動したことに安堵する。

 

「──どうなっている? 何だこの状況は?」

 

 滅達の周りにはトリロバイトマギア達が居り、明らかに人間らの拠点から離れている。

 

「それが、社長が撤退命令出したんだよ」

「何? 社長はどうした?」

「知らない。どっかに居るはずだと思うんだけど……」

「吞気なことを……」

 

 いまいち子供っぽさが抜けていない迅の態度に滅は呆れ、すぐにでもウィルを探そうとする。

 その時、トリロバイトマギア達が一斉に行進するのを止めた。トリロバイトマギア達が見つめる先には今まさに探そうとしていたウィルが立っている。

 しかし、高級なスーツはズタボロになり、体の各部から青い冷却水を流し、額や頬は金属が剥き出しになっている。

 ウィルがこちらに向かって歩いて来ているが、今にも壊れそうなぐらいにギクシャクとした動きであった。

 案の定、二メートルぐらい歩くとウィルは倒れて動かなくなる。

 

「社長!」

「社長……!」

 

 急いでウィルへ駆け寄る滅と迅。抱え起こすがウィルは目を開いたまま完全に機能停止していた。

 

「嘘でしょ……? 社長、壊れちゃった?」

「こんなことが……」

 

 ヒューマギアを先導すべき存在であるウィルが破壊され、呆然とする滅達。だが、すぐに次なる衝撃がやって来る。

 

「──何の問題も無い」

 

 気配を感じ、顔を上げる滅と迅。そこには壊れた筈のウィルが赤い目で二人を見下ろしていた。

 

「え! 社長!?」

「どういうことだ……?」

 

 予想外の展開に驚く二人。そんな彼らを無視してウィルは破壊されたウィルへと手を伸ばし、その体に手を沈み込ませる。少しの間まさぐった後、引き抜いたウィルの手にはアナザーバルカンウォッチが握られていた。

 

「回収した。もう用済みだ」

 

 すると、滅、迅の目も赤く輝くと先程まで大事そうに抱えていたウィルの亡骸をゴミの様に放り棄てた。

 

「一度飛電インテリジェンスへ帰還する」

 

 ウィルが告げると彼らは止めていた足を動かし始める。その際に転がっていたもう一体のウィルを躊躇無く踏み付けて行き、そこに何も無いかの様に機械的な行進を続けていった。

 

 

 ◇

 

 

 襲撃を切り抜けた現在拠点では、人々が慌ただしく動き回っている。

 見張り、武器の確認、負傷した者の手当て。戦える者達はこの拠点に残り次に来るであろうヒューマギアの襲撃の為の準備をする。

 非戦闘員の者達は、既にここが危険であるので秘密の通路を使い、別の拠点へと避難させていた。

 様々な声が行き交う中でそこから隔離された様にとある室内で彼らは顔を合わせていた。

 突然現れ、拠点の人々を助けてくれた謎の仮面ライダーである常磐ソウゴとその仲間であるツクヨミ、ウォズ、ゲイツ。

 イズから手当てされながらキョロキョロと彼らを見る或人。

 拠点代表である仮面ライダーの力を持つ刃は不審な眼差しでソウゴ達を見ており、不破の視線はある人物へと集中していた。

 不破が睨んでいるのは三つのグループから一番離れて傍観している亡である。いつの間にか室内に侵入しており、なし崩し的に話に加わることとなってしまった。

 

「それで? お前達の目的は何なんだ?」

 

 刃の警戒した問いにウォズが代表して答える。

 

「我々はアナザーライダーを追ってここへやって来た」

「アナザーライダー?」

「もしかして、ウィルが変身した姿のこと?」

 

 初めて聞く単語であったが、すぐにアナザーバルカンと結び付けることが出来た。

 

「アナザーライダーが誕生しているということは、タイムジャッカーが関係しているのは間違いないからね」

「タイムジャッカー?」

「過去に遡って歴史を書き換え連中よ」

「おい。あまりふざけたことを言うなよ?」

 

 歴史を書き換える。そんなこと不破からすれば荒唐無稽なことでしかない。

 

「ふざけてなどいない。俺達が言っていることは事実だ」

「だから、それが信じられないって言ってんだよ!」

「一々怒鳴るな。──お前は大人しく話を聞くことも出来ないのか?」

「ああん?」

 

 ゲイツと不破の間に険吞な空気が流れ始める。どちらも短気な面があるので一触即発の気配となる。

 

「落ち着いて、ゲイツ」

「不破。まずは話を聞け」

 

 ツクヨミと刃が二人を窘める。

 

「刃! こんな話、信じるってのか!?」

「……全てを信じる訳では無いが、あながち嘘では無いとも思っている」

 

 刃は彼らが実際に戦っている姿を見たが、仮面ライダーに変身したシステム、強力なロボは技術者である刃の視点からしても未知のテクノロジーであり、それが彼らの言葉に信憑性を与える。

 

「マジかよ……」

 

 刃が本気で言っているのが分かり、不破も閉口せざるを得なかった。

 

「こんな歴史になったのは過去の何処かにタイムジャッカーが介入した筈だ。心当たり無いかな?」

「そんなこと言われても……俺には」

 

 急に言われても或人には思い付かない。

 

「それならあの日しかないだろう」

 

 今まで黙っていた亡が口を開く。

 

「十二年前、衛星アークが打ち上げられ大規模なヒューマギアの反乱が起き、飛電インテリジェンスが乗っ取られたあの日だ」

「俺の知っている歴史と違う……」

 

 十二年前に確かにヒューマギアによる暴走が起こったが、運用実験都市の開発区域が爆発を起こし街一つ廃墟になったことでその事件は終わった。

 イズは目を閉じ、耳部のパーツがキュルキュルと音を立てて光を浮かび上がらせる。暫くするとイズは目を開ける。

 

「ゼアもまた同じ答えを導き出しました」

 

 ゼアの計算が亡の推測を後押しする。

 

「その歴史にタイムジャッカーが介入したのは間違いないみたいだね」

「早く正しい歴史に戻さないと……」

「しかし、誰なんだ? スウォルツ達以外のタイムジャッカーが居るとは……」

 

 目的地となる歴史は発見したが、それでもまだ危惧すべき点も残っている。ゲイツが言った様に謎のタイムジャッカーの存在も気掛かりであった。

 

「でも、正しい歴史になんてどうやって?」

「出来るよ」

 

 或人の疑問にソウゴは当たり前の様に言い切る。

 

「俺達の力とあんたの記憶があれば」

 

 ソウゴは或人へ歩み寄る。

 

「信じてくれ。──他に選択肢は無いんだ」

 

 或人にとってもソウゴにとってもこれしか方法が見つからない。

 真っ直ぐ見つめるソウゴの目から或人は目を逸らすことなく見つめ返し、暫くの沈黙の後

 

「……うん!」

 

 今を救う為にソウゴと手を取り過去へ向かうことを決断した。

 




ジオウ達も正式に合流し、次からは過去編となります。
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