仮面ライダージオウ✕仮面ライダーゼロワンーIF令和ザ・ファースト・ジェネレーション 作:K/K
タイムマジーンによって2007年へと移動してきた或人達。
「おお……何か見覚えがある」
周囲に並ぶ建物や人々を見て或人は感慨深げに言う。それらを見ていると幼い頃に覚えていた記憶が蘇ってくる。
一方で不破は目を見開いた状態で周りを凝視し、その場から一歩も動かず固まっていた。
「不破さん、どうしたんだろ?」
「何か凄いショックを受けてるみたい」
微動だにしない不破の態度が気になり、或人はソウゴと小声で話す。或人もソウゴも人とのコミュニケーションに臆する性格ではないので、出会って数十分も経っていないが気軽に会話をしていた。
「──まあ、さっきまで自分がいた世界とこの世界との差に脳が追い付いていないんだろう」
「彼からすれば十二年ぶりに見た平和な世界だから」
「色々と思う所があっても仕方のないことだ」
不破の態度にピンと来ていない或人とソウゴだが、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズは不破が何を思っているのか理解していた。
ゲイツ達もまた荒廃した未来で生き抜いてきた経験を持つ。今の不破と共感する思いがあるのかもしれない。
「とはいえいつまでも浸っている場合じゃない。彼には早めに着替えてもらわないとね。いくらなんでもあの格好はこの世界では浮いている」
不破の現在の格好はレジスタンスとして戦って来た薄汚れて擦り切れた迷彩柄の服である。ファッションとして押し通すには無理がある姿である。因みに小銃まで持ち込んでいたが、過去の世界でトラブルになるかもしれないという理由で不破にタイムマジーンの中に置いて来させた。
「不破さん。不破さーん!」
「うおっ。な、何だ?」
或人に名を呼ばれ、不破はようやく我に返る。
「話は聞いていたかい?」
「何の事だ?」
全く聞いていなかった不破にウォズは溜息を吐き、もう一度説明する。
「その格好はこの時代だとおかしい。変に目立たない様に着替えてもらうよ?」
「お前こそ人のことをとやかく言える格好か?」
おかしな姿だと言われ、ウォズは頬を引き攣らせる。ソウゴ達のことを警戒しているせいか不破の言葉には棘があった。
若干不穏な空気が流れ始めたので、ツクヨミとゲイツが二人の間に割って入る。
「とにかく、さっさと着替えましょう。店ならきっとその辺りにあると思うし」
「言っておくが俺は金なんて持っていないぞ」
ヒューマギアが支配する未来では人間の貨幣など無価値になっており、紙幣や硬貨はほぼ完全に消え去っていた。不破はここ数年間、貨幣に触れた記憶も見た記憶も無い。
「なら、俺が──」
或人は財布を開き、中身を確認してそっと閉じる。
「何か方法ある?」
そして、すぐにソウゴへ助け舟を求めた。
「ツクヨミ。あの時みたいに出せる?」
「大丈夫よ」
ツクヨミは楕円形のタブレットを取り出し、画面をタッチして操作する。
「手を出して」
「……こうか?」
言われるがまま不破はタブレットの前に両掌を差し出す。そして、ツクヨミが画面を押すとタブレットから本物の万札が何枚も飛び出し、不破の掌で重なった。
「──便利なもんだな。俺達の歴史が歪められていなければ、こんな技術も生まれていたってことか……」
不破が関心した様子を見せるが──
「うわっ! すっご! 何あれ!」
──或人もタブレットから札が出ていることに驚いている。
「お前も知らないのか!?」
「いや、こんなの初めて見る。どうなってんの?」
「そりゃあ、未来の技術だからね。ゲイツ達は2068年から来たし」
『はあっ!?』
全く知らなかった情報を出されて或人と不破は声を揃えて驚く。
「もっと未来じゃん!? どういうこと!?」
「一体どうなってやがる!? ちゃんと説明しろ!?」
意味が分からずに軽く混乱する二人。
「──我が魔王。あまり喋り過ぎると余計な混乱を齎す」
「ごめんごめん」
謝るソウゴだが、特に反省した様子は無く笑っていた。
仕方なくゲイツとツクヨミが不破を引っ張って服を買いに行き、ソウゴとウォズは或人と一緒に待機する。その間にソウゴは自分達のことを軽く説明しておいた。ゲイツ達も移動の間に説明するとのこと。
三十分後。戻って来た不破の格好を見て或人は少し驚いた。
白シャツの上に着た黒の上下スーツ。多少着崩しているが、或人の歴史でのA.I.M.Sの時の不破と全く同じ姿になっていたからだ。
歴史が変えられても変な所で修正が入ることに妙な感心を抱いてしまう。
不破はスーツに慣れないのか鬱陶しそうにネクタイを緩めている。
「おつかれー」
ソウゴがツクヨミとゲイツを労う。二人は少し疲れた表情をしている。
「何かあった?」
「ちょっとトラブルがあって……」
ツクヨミが言うに三人が服屋に入った時、対応した店員がヒューマギアであった為、それを見た瞬間にショットライザーを抜こうとしたとのこと。不破の殺気を感じ取ったゲイツがすかさず不破の腕を抑え、ツクヨミが何とか誤魔化したので白昼堂々から発砲事件が起きることを回避出来た。
不破本人は反省した様子は無い。だが、その気持ちがこの場に居る全員が分からない訳では無かった。
今まで命を奪うか奪われるかを十年以上も繰り返してきた相手である。不破の体には敵を前にしての反応が染み付いていた。
「不破さん。俺たちには目的があるんだ。なるべくトラブルは避けよう」
「──分かったよ」
顔を顰めながらも一応は了承する。彼自身も悪目立ちすることは得策ではないと理解しているのだ。それでも行動に移ってしまうのは前述した様にほぼ反射に等しく染み付いた反応のせいである。
「準備も出来たし、行こうか?」
ソウゴに促され、或人達は都市の中心部を目指そうとする。
「ああ。不破さんの衣服が
景気づけの一発ギャグを披露する或人。場が一瞬沈黙する。
「──ねえ、ウォズ。こういう時ってちゃんと反応すればいいのかな?」
「止めておこう、我が魔王。同情は時に人を傷付ける」
「いや! そこ! ひそひそしないでっ!」
或人が周りに居ないタイプだったのでソウゴはついウォズに相談してしまうが、その行為自体が或人のお笑い芸人としてのプライドをズタズタにする。
「こふっ! こんな時……く、ぷっ……下らん……ことを……! ぐふっ!」
頬を膨らませ、目を見開きながら或人のギャグに耐える不破。
「嘘でしょ……ウケてるの……!?」
「あんなギャグでか……!? 本気かこいつっ!?」
不破のずれた感受性にゲイツとツクヨミは戦慄する。
張り詰めていた空気が妙に緩んだものとなったが、一行は移動を開始する。
歩くにつれて段々と人の姿が多くなってくる。それに伴ってヒューマギアの姿も多く見られる様になっていった。その度に或人は懐かしむ表情となるが、一方で不破の方はどんどんと表情が険しくなっていく。左右に挟む様にして歩くゲイツとツクヨミがいなければ今にでもショットライザーを抜きかねない程に苛立ちと怒りを宿した顔付きである。
やがて、都市の中心部に到着する。そこに広がる光景はある意味で夢の様な光景であった。
無邪気に遊ぶ子供達を追い掛ける保母の格好をしたヒューマギアや、目を輝かせて見ている子供達の前でジャグリングを披露するピエロのヒューマギア。
足腰が弱まっている老人を介護しているヒューマギアに軽食を提供するワゴンショップで接客をするヒューマギア。
人々とヒューマギアが当たり前の様に共存している。
ソウゴ達からすれば過去でありながら未来が形になった光景である。ソウゴ達の時代ではまだロボット技術はここまで発展していない。タイムジャッカーが二つの歴史を混ぜ合わせたことで見ることが出来た。
「懐かしいなぁー!」
或人が記憶にある光景に感激する。
「悪夢みたいな光景だな」
それとは逆に不破の方は誰にも聞こえない声で小さく吐き捨てる。仲睦まじく共存する過去に人類を滅蹂躙し滅亡させようとする未来。不破の視点からすれば過去と未来の激しい差に吐き気を覚えていた。
「ここが昔、あんたが住んでいた場所?」
ソウゴの問いに或人は大きく頷く。
「うん。──実は俺、ヒューマギアの父さんに育てられたんだ」
普通とは異なる生い立ちを初めて明かす或人に全員が驚きの表情をする。
「どうしてロボットがお父さんなの?」
当然の疑問をツクヨミは口に出す。
「本当の父さんは、俺が物心付く前に事故で亡くなって……」
ツクヨミは、しまったという表情をする。少し考えれば思い付くことであり、不用意な質問をしてしまったと後悔する。
ソウゴの方は或人の境遇に対してシンパシーを覚えていた。ソウゴもまた幼い頃に事故で両親を失っている。理不尽に親を失う痛みを知っていた。
「代わりのヒューマギアの父さんを爺ちゃんが造ってくれたんだ」
語る或人の脳裏には父との思い出が一気に駆け抜けていく。
「──もし」
思い出に浸る或人の意識を不破の言葉が引っ張り上げる。
「お前の父親が暴走して人を襲ったら、お前は戦えるのか?」
「それは──」
或人を身を呈して守ってくれた父がそんなことをする筈が無いと或人は信じている。しかし、どうしてか否定し切れなかった。
避難所での戦い。そこで或人にフォースライザーを渡した人物。ローブを纏っていたがその声を忘れる筈が無い。あれは間違いなく父の其雄である。
書き換えられた歴史の中で壊れることなく生き抜いた父。きっと味方に違いないと思っているが、果たして自分の知る父と大きく変わっていないか不安を覚えてしまう。もしかしたら、自分の知らない父の一面をこの過去で知ってしまうかもしれないという恐れを抱いていた。
すぐには答えを出せない或人。だが、不破はその態度に苛立つことはせず真剣な表情で或人を見ていた。
「それで?」
重苦しくなる空気を裂く無関心な声。
「ヒューマギアの反乱が始まったのは?」
ウォズの質問は空気が読めていないと言えるが、過去の世界に来たのは或人をノスタルジーに浸らせる為でもヒューマギアに対して強い縁を持っている二人の問答を聞く為でも無い。
話が進まなくなるのをウォズが強引に止めたのだ。
或人と不破も自分達の目的を思い出したらしく、ウォズの質問に食い下がることはしなかった。
「この先のヒューマギア開発工場だ」
或人の記憶に従い、ヒューマギア開発工場へと向かう。
工場が見えて来る中で一行は異変に気付く。作業員達が何人も我先に工場から逃げ出しているのだ。
「まさか!」
「不破さん!?」
或人が呼び止める間も無く不破は駆け出していた。
「早く止めた方が良い。このままだと彼は歴史にどんな影響を及ぼすか」
「世話の焼ける奴め!」
不破の後を追い、或人達も工場へと入って行く。
工場内部では既にヒューマギア達が反乱を起こし、作業員らを襲っていた。
「ニンゲンハミナゴロシダ」
「ニンゲンハミナゴロシダ」
「ニンゲンハミナゴロシダ」
「ニンゲンハミナゴロシダ」
人間の外観が剥がれて素体となったヒューマギア達が機械音声でひたすら同じ言葉を繰り返しながら人々を殴りつけ、叩き付け、傷付け続ける。その目は赤く爛々と光っていた。
「もう始まってるぞ!」
「皆を助けないと! ってか不破さん何処!?」
「……見当たらないね」
先行した不破を探すが見つけることが出来なかった。どうやら別方向へ行ってしまった様子。
「ここまでは正しい歴史の筈。下手に介入すればもっとややこしいことになる。だからこそ早く彼を見つけないと……」
「そんなこと言ってらんないでしょ!」
歴史の混乱よりも目の前の人々を助けることを優先するソウゴ。或人も同じ考えであり既にフォースライザーを装着している。
「ううっ……!」
突き抜けていく衝撃に苦鳴を洩らしながらプログライズキーを起動。
『JUMP!』
ソウゴ、ゲイツ、ウォズもまたそれぞれドライバーを装着し、ライドウォッチを起動させる。
「こうなったらやるしかないぞ?」
「──やれやれ」
ソウゴは既にやる気であり、ゲイツも追従する。ウォズは後先考えないソウゴ、或人、不破に呆れながらも変身への手順を進めていた。
『ジオウ!』
『ゲイツ!』
『ウォズ!』
プログライズキーがフォースライザーに装填され、ライドウォッチがジクウドライバー、ビヨンドライバーにセットされる。
『変身!』
変身への号令を上げる四人。
『FORCE RISE!』
『ライダーターイム!』
『フューチャータイム!』
フォースライザーからライダモデルが出現し、ソウゴの背後に文字盤が現れ、『ライダー』の文字が飛び出す。
「うおっ!? バッタ出た!?」
「うわっ!? 何か飛び出した!?」
それぞれの変身過程に驚きつつ次なる段階に進む。
『RISING HOPPER! BREAK DOWN』
『仮面ライダージオウ!』
『仮面ライダーゲイツ!』
『仮面ライダーウォズ! ウォズ!』
001とジオウへと変身した二人が先を行く。そして、ゲイツとウォズも変身して後に続く。
001は作業員に馬乗りになっているヒューマギアを横から蹴り飛ばし、倒れている作業員を助け起こす。
「大丈夫ですか!?」
そこに別のヒューマギアが襲い掛かってくるが突き出されたジオウの拳がヒューマギアの顔面を打ち抜いて阻む。
「早く逃げて!」
作業員達に逃げるよう指示を出すジオウ。作業員は礼を言う時間を惜しんで逃げ出す。
周りにはまだ暴走するヒューマギア達が大量に居る。
ゲイツとウォズも作業員を助けながら暴走するヒューマギアを打ち倒していく。
「ツクヨミ! ここは俺達に任せて不破さんを探して!」
「分かった!」
ジオウに言われ、ツクヨミは一人不破を探しに行く。
001はヒューマギアを羽交い締めにしながらジオウへ声を飛ばす。
「あの娘一人で行かせて大丈夫なの!?」
「大丈夫! ツクヨミはすっごく強いから!」
「マジで!?」
「それより早く皆を助けるよ!」
「──ああ!」
暴走するヒューマギアを鎮圧する為にジオウと001は先頭を突き進む。
◇
「どうなってやがる……!」
開発工場突入して早々にバルカンへと変身した不破は、目の前の惨状に怒声を上げる。
ヒューマギア達が暴走し、作業員達を殺害しようとしている。少なくともバルカンの記憶では、この時点でこの様な事故が起こったという記憶は無い。
「飛電インテリジェンスが隠蔽でもしてたのか!?」
近寄って来たヒューマギアの脳天をショットライザーで撃ち抜く。
「……ごちゃごちゃ考えるのは後だ!」
バルカンは吼え、連続して引き金を引き、的確にヒューマギア達の急所を撃つ。
「全部纏めてぶっ潰す!」
自らの行為が歴史に大きな影響を与えるかのしれないと頭の片隅で思うが、人々が襲われている光景を見れば、そんな考えは跡形も無く消し飛ぶ。
いっその事派手に暴れて元凶を引きずり出そうとすら思っていた。
真正面掴み掛かって来るヒューマギア。その腕を掴み、足を払って前のめりに転倒させる。腕を掴んだまま側面へ移動していたバルカンはヒューマギアが立ち上がる前に後頭部を徹甲弾で貫く。
前後から挟む様に二体のヒューマギアが寄って来る。バルカンは片手でショットライザーを構え、前方のヒューマギアを銃撃。弾丸は見事に額へ命中する。
そして、片腕で撃ったことによる反動を利用し、百八十度ターン。後方から迫っていたヒューマギアの側頭部にショットライザーのグリップ底を叩き付け、頭部を破壊する。
「おい! ヒューマギア共!」
窓ガラスがビリビリと揺れる程の声量でバルカンは叫ぶ。
「掛かって来い! 纏めて相手してやる!」
作業員を襲っていたヒューマギア達の手が止まり、一斉にバルカンの方を見た。バルカンを脅威として認識したらしい。
「今のうちに逃げろっ!」
自分が注目を集めている間に作業員達に逃げるよう大声を飛ばす。その声に押されて作業員達は急いでこの場から逃げ出す。
ヒューマギア達がバルカンへ一斉に押し寄せて来る。
「おおおおおっ!」
バルカンもショットライザーを撃ち続けながらヒューマギアの集団目掛けて走り出す。
最初の数発で三体のヒューマギアを沈黙させ、接近と同時に先頭を走っていたヒューマギアの顔面を殴り付ける。
殴られたヒューマギアは後方のヒューマギア達に背を預ける形となり、集団の動きが一瞬止まる。
そこに浴びせられる数多の銃弾。バルカンの内に宿る怒りを吐き出すかの様に弾丸と銃声は絶えることは無かった。
暫くしてバルカンの前に転がるはヒューマギアであった残骸。バルカンは肩で息をしながらそれを見下ろしていた。
その時、ガシャンという音と共に部屋から誰かが出て来る。両耳には赤く点滅する機械装置。紛れもなくヒューマギアである。他の暴走しているヒューマギアとは違いまだ外観は人間であった。暴走する一歩手前の状況である。
「まだ居たのか……!」
バルカンはショットライザーを構え、銃口をそのヒューマギアに向ける。引き金を引く寸前、俯いていたヒューマギアが顔を上げる。
引き金を引く指から力が抜けた。
「亡……!」
苦しそうにバルカンを見上げるのは彼にとって浅からぬ因縁のあるヒューマギアの亡。
「誰だ……? それよりも彼を……彼を呼んでくれ……。仲間が……暴走を……ううっ!」
過去の出来事故に当然ながら亡にとってバルカンは面識のない存在であった。だが、そんなことよりも仲間の助けを求めて来る。そして、自身も今にも暴走してしまいそうなのか機械装置を押さえて体を丸めている。
このまま放っておけば亡は暴走するかもしれない。そうすればバルカンだけでなく他の人々も襲うことだろう。
ここで亡を撃てばバルカンの、不破諫の未来も大きく変わるかもしれない。しかし、バルカンは己の保身を考える様な男では無かった。
「暴走するぐらいなら、ここで俺が──」
そこまで言い掛けた時、横から何者かに体当たりを受ける。
「逃げろ……!」
亡を逃がそうとする人物。彼もまたヒューマギアであったが、オレンジのツナギを着たヒューマギアを見てバルカンはまたしても驚いた。
「雷……!?」
亡に続いて雷までも現れたことにバルカンは動揺を隠せない。彼らがヒューマギア開発工場に居たことを初めて知ったので無理も無い。
「っ! 離れろ!」
「させるかぁ……! 仲間に手を出す奴は……雷落としてやるっ!」
バルカンへ必死にしがみつく雷。両耳の機械パーツは点滅しているが、この期に及んで暴走に耐え同じヒューマギアを守ろうとしている。
仮面ライダーの力を以ってすればただのヒューマギアの腕力などものともせずに振り解ける。しかし、バルカンは雷の腕を振り解くことが出来ずにいる。
誰かを守ろうとする姿が、未来で戦う自分や仲間達の姿と重なってしまった。
棒立ちとなって無防備になるバルカン。それは、彼にとって絶好の隙であった。
バルカンへと届く風が吹き抜けていく音。その直後にバルカンは壁面へ叩き付けられていた。
「ぐあっ!?」
何が起こったのか分からず衝撃よりも驚きを先に覚える。
気付くとさっきまでそこにいた亡と雷の姿が消えていた。
「何処へ──」
消えた二人を探すバルカン。間も無くして二人を発見する。見知らぬ乱入者と共に。
「もう大丈夫だ」
乱入者は雷の機械パーツに両手を当てる。すると赤い点滅が消え、正常な青のランプが点灯する。横たわる亡にも既に同じ処置が施され、機械パーツが青い光を発していた。
「お前は……!?」
バルカンは乱入者の姿に驚愕する。
仮面、胸部、腕部、脚部を守る深藍色の装甲。その装甲はケーブルによって固定されており、両肩の銀色のアーマーもまた同様の形になっていた。
腹部にはフォースライザーに酷似した赤と銀の配色のドライバーを装着している。
001と良く似た姿。亡と雷を助けたのは紛れもなく仮面ライダーであった。
バルカンは過去の世界に既に仮面ライダーが存在していたこと驚く。
「仲間に手を出すな」
謎の仮面ライダーがピンク色の複眼をバルカンへ向け、警告する。
「仲間? お前もヒューマギアか? 何で仮面ライダーに変身している!?」
「そのドライバーを何処で手に入れた? プログライズキーもだ」
バルカンの質問には答えず、逆に謎の仮面ライダーの方が問う。
「答えろ! お前もヒューマギアなのか!?」
「──だとしたら何だ? お前に関係あるのか?」
「あるな! 俺は俺達の世界を滅茶苦茶にした元凶を探している! お前がそれか!?」
「質問の意味が分からないな。何を言っている?」
謎の仮面ライダーが何かに気付き、バルカンから視線をずらす。視線の先には破壊されたヒューマギアが何体も転がっていた。
「──お前がやったのか?」
「ああっ?」
謎の仮面ライダーが目を向けているものに気付く。
「そうだ。俺はヒューマギアを全てぶっ潰す!」
「──お前を危険人物と判断する」
謎の仮面ライダーが跳躍。一瞬にしてバルカンの目の前まで跳び、頭部目掛けて蹴りを繰り出す。
バルカンはショットライザーを盾にして咄嗟に受け止めた。
「命までは奪わない。だが、無力化させてもらう」
「やってみろ!」
足を押し返し、素早くショットライザーを向けるが謎の仮面ライダーは射線の下に潜り込み、バルカンの腹に拳を打ち込む。
「ぐっ!」
痛みに耐えながらバルカンは拳を振り下ろすが、謎の仮面ライダーは素早く背後に回り込みバルカンの背中を蹴り付けた。
「がはっ!」
前のめりに倒れそうになるのを踏み留まり、後ろへ振り返ると同時に発砲。謎の仮面ライダーは弾丸の軌道を読み取り左右に動くことで回避。
間合いを詰めると脚、脇腹、頭部に連続して蹴りを叩き込む。
「ぐおっ!」
怯むバルカンの胸に拳がめり込み、突き飛ばす。
殴り飛ばされながらもショットライザーを向け、銃弾を放つバルカン。
謎の仮面ライダーは自分のドライバーのトリガーに指を掛ける。
『ROCKING SPARK!』
瞬間、謎の仮面ライダー以外の時間が全てスローモーションになる。
その中で通常通りに動く謎の仮面ライダー。首周りを守る装甲から赤い光を放ち、移動すると赤い光がマフラーの様な残像を残す。
発射された四発の弾丸が向って来ているが、亀の様にゆったりとした速度で飛んでおり、謎の仮面ライダーは容易く回避する。
四発中三発は避けた。残りの一発は避けるのではなく、バルカンへ蹴り返す。
謎の仮面ライダーの時間が正常に流れると同時にバルカンは体から火花を散らして仰け反った。
「があっ!?」
何が起こったのか分からないバルカン。一つ言えることはヒューマギアが変身した仮面ライダーは途方も無い力を秘めているということ。
(この力、危険だ……!)
この仮面ライダーの力がヒューマギアに行き渡れば人間は容易く滅びるだろう。
「そんな未来にはさせねぇ……!」
「未来……? どういう意味だ?」
「俺はお前達ヒューマギアが人類の敵になった未来から来たんだよ!?」
「何……?」
傍から聞けば突拍子も無い台詞であったが、謎の仮面ライダーは動揺した様に動きが止まる。
その隙を見逃さず、バルカンは銃撃を行う。
発射された弾丸を全て回避する謎の仮面ライダー。回避している間にバルカンは接近しており、殴り掛かってきた。
『ROCKING SPARK!』
バルカンの拳は赤い残像を通過する。
「ごはっ!」
次の瞬間、バルカンの装甲に幾つもの拳の跡が刻み込まれた。
これには耐えることが出来ず、バルカンは膝を突く。そんな彼を謎の仮面ライダーは無機質な目で見下ろす。
「色々と話してもらうぞ」
ヒューマギアが暴走して不破も暴走する話となりました。
001以外は一対一では1型には勝てないという基準で書いています。