とりあえず、シンオウ地方でチャンピオンなることにしました 作:金糸雀^_^
この世界には「ポケットモンスター」、略して「ポケモン」と呼ばれる不思議な生き物がいる。
ポケモンは俺たち人間と共存して生活している。一緒に遊んだり、仕事をしたり、あとはポケモン同士戦わせるポケモン対戦なんかも有名だ。こんな感じで日常の様々な場面でポケモンを見かける。
「おれもそろそろポケモン捕まえようかな~」
そんな世の中だが、俺はポケモンを持っていない。今までポケモンがいなくても困ったことがないし、なんだったら親のポケモンの力を借りたらいいし。俺の言うことは聞かないから親がいるとき以外使えない方法だけど。
「湖に赤いギャラドスがいるという噂を調査するため、捜索隊を派遣しましたが、捜索むなしく赤いギャラドスの姿を見ることはできませんでした」
テレビから流れるアナウンサーの声を聴きつつだらだらしていたが、赤いギャラドスの情報を聞いた瞬間に俺は湖に出掛ける準備を始める。そろそろ来るだろうな。
「カズキ!湖に行くぞ!」
ほらきた。あいつの唐突な行動にも慣れてきたな。
慌ただしく俺の部屋に飛び込んできたこいつは近所に住む友人のジュンだ。普段からせっかちで唐突に何かを提案して引っ張りまわしてくる奴。日々の生活に退屈という概念はないが、ぶっちゃけ疲れる。
「さっきのテレビ見てただろ?早速行くぞ!遅れたら罰金100万円な!」
ジュンはそう言い残して部屋から出て行ってしまった。
「……行くか」
俺は準備を整えて部屋を出た。階段を降りるとリビングには母さんがいてテレビを見ていた。
「気をけてね、草むらに入っちゃだめよ。ポケモンが飛び出してくるから」
「うーす」
いつものように注意していたが、俺は適当に聞き流して家を出た。
家を出てとりあえずジュンの家に向かう。どうせあいつのことだからなんの準備もしないで来たんだろうな。
「おーいジュぐぇ」
「いて!」
いってぇ、まさかこんなに早く出てくるとは、予想できなかった。
「何だってんだよーーーー!ってカズキか、行くぞ!……おっと、忘れ物」
ジュンはそう言って家に戻っていった。
「おじゃましまーす」
「あらカズキ君、いらっしゃい。ごめんねぇ、あの子相変わらずせっかちで」
「大丈夫です。今日はまだマシなほうですから」
「そうなの?ほんと誰に似たのかしら?」
本当にジュンと似てないよなー。
「よっしゃ!準備出来たぜ!カズキ行くぞ!」
「分かったから落ち着け」
「なんだよ、早く行こうぜ。他の奴に取られるかもしれないだろ」
「捜索隊でも見つからなかったポケモンが簡単取られるわけないだろ」
「それもそうか」
「気を付けてね」
「わかってるよ!」
「はい」
俺たちはジュンの家を出て町の近くにあるシンジ湖に向かうことになった。シンジ湖は達俺たちの住むフタバタウンの西側にある有名な湖だ。何やらシンオウ地方に関する伝説があるらしいけど、あまり詳しくは知らない。
「シンジ湖なら絶対赤いギャラドスいるだろ!」
「どうだろう、確かにあの湖だったらたまにギャラドスは見かけるらしいからもしかしたらいるかもしれないな」
「だろ!それに不思議な伝説もあるくらいだからな!」
「それギャラドス関係ないだろ」
「細かいことはいいんだよ。よーし、赤いギャラドス見つけるぜ!」
シンジ湖にそれ到着すると早速赤いギャラドスを探そうとしたが、湖のほとりの草むらに二つの人影を見つけた。
一人は豊かな口髭を蓄えた老年の男性ともう一人は俺たちと同じくらいの年齢であろう少女がいた。
「博士!向こうも変わったことはなにもないですよ!」
「うむう、そうか気のせいかもな。どうも昔とはなにか違うようだが……。まあこの湖が見れただけでよしとしよう」
老年の男性は少しガッカリした様子ではあったが、一応満足はできたらしい。「帰るぞ」と一言隣の少女に告げて俺たちのほうに歩いてくる。
「失礼、通らせてもらうよ」
「は、はい」
俺はとっさに道を開けた。老年の男性は特に何も言うことなく横通り過ぎていく。少し遅れて少女が申し訳なさそうに通り過ぎていく。
「何だったんだ?あの人たちも赤いギャラドスを探しに来ていたのか?」
「どうだろうな」
「まあいいや、早速探そうぜ」
「ちょっとまて、あそこの草むらに何かないか?」
先ほど二人がいた場所に何かが置いてあるのが見えた。
「ほんとだ、なんかあるな。ちょっと見てみるか」
「止めとこうぜ、草むらに入ってポケモン出てきたらどうすんだ?」
「ちょっとなら出てこないだろ、ぱっと行って取ってこようぜ」
「それもそうだな」
二人はずかずかと草むらに入った。草むらにはカバンが置いてあった。
「なんだこれ?」
「さあ?」
「後で届けに行こーぜ」
「そうだな、とりあえず持っていくか」
俺はカバンを持って草むらから出ようとすると背後に気配を感じた。振り返ってみると、後ろには小さな鳥がいた。
「クルー」
あっ、可愛いなんて言うポケモンだろう。……や ば く ね?
「うわわ!ポケモンだ!カズキ逃げるぞ!」
「クルルー!」
向こうにもいるのか。
「ジュン!無理だ!こっちにもいる!」
「どうすんだよーーー!
「どうするって言われても……、いっそ湖に飛び込むか?」
「それは最終手段だ!カバンに何かはいってないか?」
「それ名案!」
俺は躊躇することなく、カバンを開ける。カバンの中には3つのモンスターボールが入ってた。
「モンスターボールだ!」
「これで捕まえるか!……ってこのボールポケモン入ってるぞ!」
「ならこいつに戦ってもらうか!」
「でも主人以外の言うこと聞くのか?」
「土下座したらどうにかなるだろ!」
「クルーー!」
「うわ!きた!俺こいつにする!」
「俺はこいつだ!」
ジュンの後に続いてボールを掴んで投げた。
「お願いだ!助けて!」
「ポチャ!」
ボールの中から青い子供のペンギンのような非常に可愛らしい生物が出てきた。
「よわそー」
「ポチャ?」
なんかめっちゃ睨まれてるんだけど。え?この子見かけによらず気難しい奴?
「頼む!助けてくれ!」
「フン」
いや、なんでだよ。さっき言ったこと気にしてるのか?だったら
「よく見たらめっちゃ強そうだな!お願いします!この弱い僕を助けてください!」
「ポチャ!」
予想どうり下手に出てみると「仕方ないな」みたいな表情をして鳥ポケモンと対峙した。
「クルー」
「ポチャ」
少しの間二匹は睨み合う。すると鳥ポケモンの方が痺れを切らし突進してくる。ペンギンはそれを躱し……切れずにぶつかった。ころころと転がる姿は非常に可愛かったが、そんなこと言っている場合じゃない。
「大丈夫か!?」
「ポチャ!」
心配して近寄ってみたが、めちゃくちゃ怒っている。
「クル!?」
「ポチャ!」
ペンギンのようなポケモンは立ち上がり、素早く相手に肉薄して鳥ポケモンを思い切りはたいた。
「クルーー!」
鳥ポケモンははたかれたダメージで戦意が喪失して逃げて行った。
「フフン」
「おお!すげー」
敵を追い払ったことでペンギンポケモンはどや顔で胸を張っていた。
追い払ったことにより一安心した俺はジュンの方を振り返る。ジュンの方も終わったらしくこっちに歩いてきていた。
「大丈夫だったか?」
「おう!この亀みたいな奴思ったより強くてな!」
「クエー」
こいつが?
「どうする?俺もお前も人のポケモン使っちゃたけど大丈夫だよな……」
「あっ!よかった、カバンあった!」
背後から声が聞こえてきて振り返ってみると、そこには先程ここにいた少女がいた。少女はカバンを見つけたことによりとても嬉しそうに近づいてきたが、カバンの近くにいる俺たちの姿を見て顔を青ざめさせてカバンの中を確認する。
「え!え?もしかして中のポケモン使っちゃった?」
「使った」
「悪い」
「えー、どうしよう。博士なんていうかな?とりあえず、これ持っていくね」
少女はカバンを掴んで走り去ってしまった。
「なんだ、あいつ」
「さあ?」
「とりあえずここから出ようぜ、さっきの戦いでポケモンが傷ついたから、次出てきたらちょっとまずいかも」
「そうだな」
俺たちは急いで草むらから出て、湖から離れた。
湖から少し離れたところでジュンが急に立ち止まった。
「どうした?」
「ポケモン返さないとな」
「そうだな、返さないと」
「お前先に行けよ。返しに行かないといけないのはわかってるけどさ、もう少しこいつと一緒にいたいというかな……」
ジュンの珍しい姿に俺は驚いたが、何も言わず先に歩き出した。
俺たちは自然とゆっくりとした足取りで歩いていた。フタバタウンの前まで到着するとそこには先程の老年の男が見えた。
老年の男性は俺たちに気づくと険しい表情のまま近づいてきた。
「あ、さっきの人だ。なんか俺たちを睨んでないか?」
「今すぐ逃げていいか?」
「ダメに決まってんだろ!」
「…………」
「あ、あの……」
「ヒカリから聞いたがポケモンを使ったそうだな?」
「はい」
「すいません」
「ちょっと見せたまえ」
(やばい)
先ほどの戦いで少なからず傷ついたポケモンを見せたら絶対に怒られると思ったが、見せないわけにもいかないためおとなしくポケモンの入ったボールを渡した。
老年の男性はしばらくポケモンを見ていたが、「そうか、そういうことか」と呟き俺たちにポケモンを返した。
「ヒカリ!!研究所に帰るぞ!」
老年の男性は少女にそう告げて去っていった。
「え?は、はい!待ってください博士!」
少女は慌てて追いかけようとするが、俺たちのほうに振り返り
「あとで研究所に来たほうがいいかな……?じゃ、またねー!」
そう言って走っていった。
「なんだ今の……怒るなら怒ればいいのに……それにポケモン返さなくてよかったのか?」
「さあ?とりあえずいったん家に戻るか」
家に戻って今回の件を母さんに伝えた。
「そんなことがあったんだ。でもあなたもジュンも無事でよかった」
母さんは安心した様子で息を吐いた。
「でもあのおじさんってなんなんだ?研究所とか言ってたけど」
「その博士って人、きっとマサゴタウンのナナカマド博士ね。なんでもポケモンの研究で有名な博士って聞いたわ。あと怖いって噂も」
「まじかよ」
今回怒られなったのは奇跡か?
「カズキ。どうしてポケモンを使ったのかきちんと説明するためにマサゴに行くべきね大丈夫きっとわかってくれるわよ」
「さっきの話を聞いていきたくなくなったわ」
「そんなこと言わないの」
「わかった、とりあえず行ってくるわ」
「気を付けてね」
「おう」
俺はまた博士に会って事情を説明するためにマサゴタウンに向かうことになった。こんな面倒ごとはさっさと終わらせるか。