突如商店街に現れた謎の巨大構造物……。
まさに超弩級という表現が相応しいアスレチックの如く聳え立ち、挑戦者たちを待ち受ける試練はさながらバベルの塔。
人類では決して届きそうもない鋼鉄の魔城を制覇し、この世の全ての富と名声を手にするのは一体誰なのか。
今宵、この恐るべき試練に立ち向かう挑戦者たちは、こいつらだっ!!
「さて、今回で実に5回目を迎えます、SHINOBI。実況はアタシ、宇田川巴! そして解説に北条雄緋さんをお迎えしてお送りいたします! 北条さん、よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします……」
「商店街に現れた謎の魔城を攻略するものは、完全制覇を達成するものは現れるのでしょうか!!」
「待って」
「どうしましたかっ」
「なにこれ」
「SHINOBIですよ?」
「いや知らない知らない」
いきなり解説のオファーが来たんですって言われて、馴染みの商店街に来ました。まぁまぁ、呼ばれたぐらいは良いんだよ。家に居座られるより500倍ぐらいまっしだし。呼び出された理由が何度聞いても理解できなかったけど。何? 『解説のオファー』って。でまぁ、ね。それでさ、商店街に来たんだよね。
そこにあったのは謎の櫓組みの構造物。本当になんて言えば良いのか分からないけど、そこら中に池が張り巡らされていて、その上になんかアスレチックみたいなのが出来ています。本当に訳がわかりません。この間のミッシェルといい、この商店街なにがあったの?
「では改めてルール説明をいたします! 挑戦者は制限時間内にアスレチックの各ステージを次々とクリアして、あの最終ステージ、鋼鉄の魔城の頂上を制覇する。ただそれだけ! しかし時間切れになったり、着水したりするとその時点で失格となります!!」
「な、なるほど」
「解説の北条さん、今大会の注目選手は如何でしょうか?!」
「出場者知らないです」
「なるほど、やはり身体能力の高い北沢選手が注目株ということですね……!」
「なんで聞いたの?」
「それでは早速、First Challenger, Come on!!」
放送席からは目を凝らさないと見えないが、どうやら最初に台に現れた最初の挑戦者は。
「あれは……沙綾?」
「山吹選手ですね! ポテンシャルを秘めたそのbodyとheartに熱いビートは宿っているのか?!」
「なんで中途半端に英語出てんの? というか解説置いていかないで?」
あ、謎の電子音みたいなの聞こえたからそろそろ始まりそう。
『わ、私さっきまでお店の手伝いしてたよね?!』
「おっと、チャレンジャー、どうやらルールを理解していないようです。始まっているのに、まるで動こうとしません!」
「え? 明らかに反応を見るに拉致されてきたよね? 返してあげて?」
「山吹選手動きがありませんが、こうしている間にも制限時間は刻一刻と迫っております!」
「せめてルールぐらい説明してやれよ」
『え、ちょしかもエプロンつけた状態でこれやらされるの?!』
「どうやらユニフォームに問題があったようですが……、まぁいいでしょう!!」
「あの格好でアスレチックをするのは無理があるのでは?」
『大丈夫!! 宣伝にもなるから!』
どうやらこっちの音声を向こうに送ることもできるらしい。って、気がつけば右手のあたりに1stステージの制限時間の時計みたいなの置いてあったわ。
『やまぶきベーカリーの名にかけてぇっ!!』
「凄まじい雄叫びと気迫を見せています山吹選手! それはいわゆるよく吠えるというやつでしょうか!?」
「それはバカにしてない?」
「1stステージ、1番最初、エプロン姿の連続ジャンプで島を飛び移ることが出来るのか?!」
「絶対無理では?」
『やまぶきベーカリー……みんな来てねぇっ!!』
「助走をつけて、飛んだ——、あ、あっーーっとぉっっ、1つ目の島に飛び移れず着水!! 脱落ーー!!」
「知ってた」
「これが鋼鉄の魔城の恐ろしさです!」
「え、てか、救助は? 水落ちたよね? 助けなくて大丈夫?」
「さて続いてのチャレンジャー、Come on!!」
「無視しやがった」
そして壇上に現れたのは、銀髪の少女。あっ……。
「狂い咲く青薔薇ァ!! その歌姫が、このSHINOBIの門を叩いたぁ!!」
「人選ミスだろ……」
絶対無理じゃんと思った? 俺もそう思う。
『本当に最後まで行ったらネコカフェ1日貸切なのね? 言ったわよ』
どうやらこの銀髪の少女。自分が好きだということを必死に隠している(つもりになっている)、ネコに釣られて参加したらしい。というか最後までいく自信あるのかよ。俺でもこんなの行ける気がしないのに。
「おっと湊選手、まるでネコのような軽々しい身のこなしで、最初の関門を突破ぁっ!!」
「え、まじで?」
本当だ、見てない間に、数個の島をパッパッパッと難なく飛び移り、次の仕掛けへと対峙している。
「さて、次に聳えるのは、ターザンロープです! 大きなトランポリンで飛び跳ねて、ロープを掴み、対岸へと渡らなければいけない序盤の難所です!」
『くっ……。そこそこ距離があるわね』
「だが1stステージは時間との戦い! 悩んでいる時間はないぞ、どうする、湊選手!!」
「そこまで解説してくれるなら、俺要らなくない?」
『……けど、私たちRoseliaが目指すのは頂点! ネコ!』
「地に落ちた青薔薇のプライドを取り戻すため、……飛んだぁぁっ!!」
『絶対に……』
『にゃー』
『はっ、にゃーんちゃん?!』
「あーーっと湊友希那ぁ、背後から聞こえてきた猫の鳴き声に気を取られロープを掴めずに脱落ぅ!!」
「これはひどい……」
「やはり欲望に負けた結果ということなんですかね、解説の北条さん」
「そうなんじゃない? 多分」
まず出場動機が不純じゃない? 不純というか、欲望に塗れているというか。そしてこの湊友希那。着水してからもずぶ濡れの状態で先程声が聞こえてきたであろう路地裏の方へと必死にもがいている。ありゃあ相当ネコが好きなんだろうなぁ……。
「それでは、おっと、ここで今大会最有力候補の登場だぁ!!」
「おっ」
『よーし! 頑張るぞー!!』
「北沢印は元気印ぃ! ソフトボールチームのエースでキャプテン! 主人公とは私のことだぁ! 北沢ーーーはぐみぃ!!」
『あっ、トモちんだ! おーい!』
「さっきよりは期待が持てそうですね」
「おっ、解説の北条さんも段々ノってきましたね!」
「え? あっ、はい」
せっかく目の前でものすごいエンターテイメントが繰り広げられているんだからな。楽しまなきゃ損だろう。……と、思うしかないだろう。
『ゆーひくんもいる! 見ててね!!』
「さぁ熱烈なラブコールを受けた北条さん! コメントをどうぞ!!」
「コロッケ美味しいです」
「ありがとうございます!! さぁ、頑張れ北沢選手! 希望の星!! まずは川を、飛び越えたぁ! 凄まじい跳躍力ぅ!」
「素晴らしいですねぇ」
「続いて現れたのは先程湊選手が失敗したターザンロープです!」
『……よーし、せーーーのっ!!』
「飛んだぁっ! その跳躍力、プライスレスぅ!!」
「素晴らしいですねぇ」
「そして次なる難関、重量のある錘にタックルをして進みます!」
「これは体躯の小ささからも厳しいのではないでしょうか」
「ですが、北沢印は元気印ですから! いけ! 行ってくれ北沢ぁ!!」
『うーー!! はぁっ、はぁっ……、おーーー!!』
「頑張っている、頑張っている!!」
「素晴らしいですねぇ」
「だがしかし、……タイムアップだぁっ!! 無情にもけたたましく鳴り響くベルの音ォッ!!」
「惜しかったですねぇ」
『うっ……うぅっ……』
「あ、あ、ああっとぉ! ショックに泣き出してしまったぁ!」
『はぐみには……、SHINOBIしかないんだよ……!』
「このSHINOBIを愛してやまない、悲痛なベテランの叫び……。涙を禁じ得ないですね……北条さん……」
「え? あ、うん」
「さて、いよいよ、次が最後の挑戦者だ、Come on!!」
「切り替え早いね」
涙を禁じ得ないって言ってたのどこいった。さっきのお前の涙はどこへ行ったんだ。
「生徒会でも頑張ります! 我らがAfterglowの頑張り屋! その名も、羽沢……つぐみぃぃっ!!」
『待っててね巴ちゃん……、今助けるから!』
「なんとつぐには最深部でアタシが囚われの身になっていると伝えてあります! きっとその力を遺憾なく発揮してくれるでしょう!」
「鬼だなお前……」
信じちゃうつぐみもつぐみだけど。いやまぁ、突然家の前にこんな馬鹿でかい何かが出来てたら信じちゃうかもしれない。俺も夢見てるのかなって最初思ったもん。
『巴ちゃんのためにっ!』
「おおっ、連続ジャンプで華麗に渡っていくぅ!」
『絶対、あ……』
「おっと勢いそのままに行くかと思われたが、ここで止まってしまったぁ! 最後の飛び渡りは距離が他よりも長く、勢いがないととてもじゃないが渡れないぞっ!!」
『ごめんね……巴ちゃん……』
『諦めちゃダメ! つぐ!!』
『……? ひまりちゃんっ?!』
「ああっと、対岸に姿を現したのはひまりぃっ! ひまりが手を差し伸べて……、ギリギリ届いて、引き上げたぁ!! 着水していません!! 美しい友情コンボ!!」
「不正では?」
「さぁ、続いて向かったのはターザンロープ! 縦の跳躍力が要求されるがどうだぁっ?!」
『こ、怖いよ……けど、巴ちゃんが……』
「つぐ、なんと怖がっています!! だけど、この魔城の最奥ではアタシが捕らえられている、進まざるを得ない!!」
「畜生なの?」
『ど、どうしよう』
『つぐみ!』
『ら、蘭ちゃん?!』
「ああっと、対岸で待ち構えているのは蘭だぁっ! 蘭が心配ないよと、微笑みかけているぅ!!」
「美しい友情ですね」
「そして、蘭を信じて飛んだぁっ! と、届くか?!」
『つぐみっ!』
『わ、蘭ちゃん……』
「すんでのところで引き上げたぁっ! しかし蘭は勢い余って着水ぃっ!!」
『蘭ちゃん……、蘭ちゃんの犠牲、無駄にしないからね!!』
「不正では?」
「そしてやってきました、先程北沢選手が脱落した、力比べぇっ!」
『こんなの1人じゃ……』
『モカちゃんに任せなさーい』
「あーーーっと、ここで救いの手を差し伸べたのは青葉モカァ!」
『2人なら、行けるよね! よーーし!』
『それー』
「1人では厳しい力比べも、2人なら力は無限倍だぁぁっっ!!」
「不正では?」
「さぁそして、最後に立ちはだかった難関。このSHINOBIの代名詞、'反り立つ壁'だぁぁぁっっ!」
『みんなの応援があるから、助けがあったから……ここまで来れたんだよね。巴ちゃん、待っててね!!』
「アタシなんかのために……頑張ってくれるつぐのことがアタシも大好きだぁぁっ!!」
『……そりゃっ!!』
「だが届かない……、届かない! まだ、もう一度チャレンジできる時間はある!」
『ラストチャンス……! それっ!』
「あーーーっと、しかし現実は非情だったぁ!! ここでタイムアップぅぅ!! 誰よりも攻略に1番近づいたが、それでもダメだったぁ! この壁には魔物が棲んでいるとでも言うのでしょうかぁっ!?」
「不正だったのでは?」
「やはり、今回もこのSHINOBI、完全制覇者は誰も出ないのかっ」
そういやこの謎企画。今回で5回目とか言ってたね。そりゃあ完全制覇って。これまだ第1ステージでしょ? まだまだ先がありそうなんだから、そりゃこんだけ挑戦してボロボロなら無理なんじゃないかな、そう解説として口を挟もうとした瞬間だった。
「おや、壇上に上がった、あれは誰だ?」
「……ん?」
『ブシドーを極めるためには……忍者の心得、ニンジュツも学ばなければいけません!!』
「北欧から参上せしサムライ!! 否! 今日はサムライではない、彼女は天下人のSHINOBIだっ!! 若宮ーーーイヴっっ!!」
『任せてください! 私が絶対に最後まで攻略してみせます! そしてシノビを極めます!』
「まさに挑戦者!! このSHINOBIに相応しい北欧の忍者が降臨したぞぉ!!」
「挑戦者というか乱入者なのでは?」
「さぁ、今スタートを切っ、速いっ!? 切り返しの速さで他を寄せ付けないぞ!!」
「なんか慣れてる体の動きしてますね」
「あっという間に島を渡り切ると、ターザンロープ、止まらずに行ったぁっ! これも軽々飛び越えたぞっ?!」
「SHINOBIたる者の才能のようですね」
『勿論です! こんなところで挫けるわけにはいきません!!』
「このサムライかっこいいぞ! 惚れてしまいそうだぁ!! そして訪れたのは数々の挑戦者を困らせてきた力比べだ!!」
「力勝負はどうなんでしょうかね」
『……力技は私は得意じゃありません。だから……こうです!!』
「あ、あ、ああっとぉっ?! なんと本来押して階段を作らなければいけないところをその恐るべき跳躍力で飛び越えたぞっ?!」
「不正では?」
「さっきのつぐのがあるんで大丈夫です!」
「認めやがった……」
「さぁ迎えたのは最後のボス、反り立つ壁ぇ!!」
『……これに勝つために、来る日も来る日も、私は体を鍛えていたのです!』
「い、イヴの体から溢れ出るオーラが凄まじいです!」
「すごいですねぇ」
『絶対に、この壁を上り切って、みせます!!』
「ああっとなんとなんと、櫓の骨組みを利用して挑戦者を阻む脅威の壁を乗り越えたぁぁぁゴーーールぅぅっっ!!」
「せこくね?」
『ふふふ、私こそがジャパニーズ、SHINOBIです!!』
「北欧からやって来たプリティーSHINOBIが誕生したところで、'SHINOBI'、また次回お会いしましょう!! さようならぁ!!」
この番組は、
の提供で、お送りしました。