ガールズバンドの恋する日常   作:敷き布団

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正月の溜まり場【Roselia編】

ふぅ。

 

あ、いや何もしてないよ? まだ正月だけどもう少しで年末年始の休み期間終わるからもうゴロゴロ出来ないなぁ、って考えたらため息が出ただけだから。でもそういや初詣もまだ行けてないし、今日こそ行こうかな。

え、元日? んなもん消えたわ馬鹿野郎。そりゃ少しぐらいだらけて過ごそうとはしてたけども。気がついたら家の中をどこぞのアイドルバンドに占領されてたんだよ。

いやでもちょっといい匂いするんだよなぁ。昨日パスパレのみんながいたからだろうか、炬燵に入って暖まっていると、どこからか女の子の匂いというか、どことなく甘くてうっとりするような香りが漂ってくるような。

 

 

 

うーん、よい。

じゃなかった、俺は今日こそ初詣に行くんだ。いや、けど炬燵から出たらちょっと寒いなぁ……。部屋のデジタル温度計みたら8℃だって、どうなってんの。地球温暖化ってあれ夏だけ異様に暑くなってるんじゃないかって思うよ。俺が生きてるのなんかせいぜい20年弱だから昔の暑さとか知らないけどさ。

 

ピンポーン。

 

俺の寒さに打ち震える悲しみの声以外には何の音もしなくて静かだった俺の部屋に突如として、玄関先のインターホンが鳴り響く。今日届くような荷物を頼んだ覚えはない。うーん、デジャヴ?

 

ピンポーン。

 

催促のピンポンにしてはちょっとタイミングが早いと思うんだ。宅配便でももう少し待ってくれるし。いやまぁ返事してない俺も俺かもしれないけどさ。なんか嫌な予感がす

 

ピンポーンピンポーンピンポーン。

 

「うっせぇな!! 朝から!!」

 

思わず怒涛の連打に叫んじゃった。これじゃ居留守で取り繕うの無理だなぁ。てかうるさくて近所迷惑なの俺かな?

 

「……出よ」

 

止まない呼出の連打。俺は観念して寒い外気が流入してくる廊下をトボトボと力なく、玄関の方まで辿り着く。もうどうせ知り合いの誰かってことは分かってるから、俺は覗き窓とか見ることなくガチャリと玄関の戸を開ける。

 

「あら、やっぱりいるじゃない」

 

「……大所帯ですね」

 

「やっほー☆ あけおめー」

 

俺は面倒くさくなってスッとドアを閉じようとした。けど、瞬間ドアと壁の隙間に靴が突っ込まれた。靴が噛まされてドアがバフンと跳ね返る。

 

「呼び出しのベルを押している来訪者が目の前にいるのに、無視してドアを閉めようとはどういう了見をしているんですか?」

 

「正月の朝方から大人数で押しかける非常識だというのに、呼び出しのベルを連打するとはどういう了見をしているんです?」

 

戦いの火花がバチバチと、互いの目の間を飛び交っている。いやというか、その眼光怖いんだよ。風紀委員長の威圧というか、他を律しようとして恫喝すら辞さないと言わんばかりのギラつく瞳。

 

「失礼ですね。そこまで私の眼は怖いものじゃありません」

 

「当の本人に自覚がねぇんだもんなぁ……」

 

いやーそりゃこんなんで睨まれたら、非行も直そうとは思うかもしれないけど、生憎俺は花咲川の生徒じゃない、というかあそこ女子校。

 

「んで、誇り高き青薔薇さんはなんでこんなところに来たんでしょう」

 

「あら、言わないと分からないの?」

 

「逆にどうして分かると思ったの?」

 

エスパーじゃあるまいし。メンタリストでもないよ。てかメンタリストでもそれは分からんだろうよ。

 

「あこたちと遊ぼ!!」

 

「お断りです、それじゃ」

 

「待ちなさい」

 

「おわぁっっ?!」

 

俺はな、ドア閉めようとしたんだよ。いつのまにか脚も退かされてたし。そしたらな、急に体が持ってかれてな? ドアに。ドアが急に外の方にぐわって。

気がついたら俺の家の廊下を歩くRoseliaの4人がいた。あれ、4人?

 

「その……、大丈夫……ですか?」

 

「え……。……燐子さんや、あんただけだよまともに気遣ってくれるの……」

 

思い切り体が外に持ってかれた俺の身を案じてくれるのは燐子だけだった……。あぁ、神や、かの娘の如くを天の使ひたりと葦原中国(あしはらのなかつくに)に産み落とし給ふか。

 

「あの……それじゃあわたしも、……お邪魔します」

 

「えっあっ、はい」

 

天の使ひ? そんなものありません。戯言も大概にしろ。

 

俺は玄関に向かった時以上にトボトボと、リビングに戻った。そして俺の家のリビングには。

 

「……やっぱこうなるんだよね」

 

「あれ、遅かったねー?」

 

もうその収まりの速さは定位置か何かなの? 俺の部屋の炬燵さぁ。下手したら今年になってから俺がその炬燵に入ってた時間より他の人が入ってた時間の方が長いよ。どうなってんの?

 

「雄緋さん。一つ質問があります」

 

「はいなんでしょうか」

 

さっき俺を暴論でボコボコにしてきた紗夜さんからのご質問です。

 

「どうしてこの炬燵から、日菜のニオイがするのでしょう?」

 

「……はいぃ?」

 

「日菜だけじゃありません。誰のニオイかまでは分かりませんが、女性のニオイがするのですが」

 

どういうわけなんですか? そう聞かれたけど、その答え聞くまでもないよね。居たからに決まってんだろ、って言おうかと思ったんだけど、紗夜さんのオーラがなんというか怖い。というか紗夜さんだけじゃねーやこれ。

 

「……このニオイ。……丸山さんや、白鷺さんのニオイもします」

 

「パスパレかしら。どういうことなの雄緋?」

 

冷や汗がダラダラと流れる。というかみんななんで誰のニオイとか分かるの? なんかカメラとかで監視してるってぐらいピンポイントだし。というか紗夜さん、あんだけ妹アンチしてた割にはめちゃくちゃ匂いとか分かるんですね、シスコンじゃねーか!

 

「……まぁ、うん」

 

「隠し事しても分かるよ!!」

 

「昨日ですね、パスパレの方が取材で」

 

「は?」

 

「……プライベートでお越しになりまして」

 

「年頃の女の子を5人も、それもアイドルを男の部屋に迎え入れるとか貴方は頭の回路がとち狂っているのかしら?」

 

「別に迎え入れてないです。強いて言うなら今日の貴女達がしたことと同じことをされました」

 

「……そう。極めて友好的な交渉に基づく合意で滞在なさったのね」

 

「日本語一からやり直せ」

 

というか日本語の問題じゃないのかなぁ。倫理観? 道徳の授業ちゃんと受けた方が良さそうですね。

 

「ま、まぁ、日菜のニオイがした理由は分かりました。そういうわけですので」

 

「……どういうわけで?」

 

俺の発言をガン無視して、部屋はシーンと静まり返る。炬燵でぬくぬくと過ごす彼女達は何一つ喋らない。

 

「……あの。で、何しに来たんです?」

 

さっき玄関口で『あこたちと遊ぼ!!』とか言ってたよね? みんなゴロゴロしてるだけじゃん。しかもさっきそんな発言してたあこ寝かけてるじゃん。こんな煩い中秒で寝るとか国民的アニメのダメダメ主人公ぐらい才能あるよ。あのアニメの主人公はもしかしたらロボットかもしれないけど。

 

「その……正月、……ですから」

 

「はい」

 

「……ゆっくりしようかと」

 

「そうですか」

 

「……はい」

 

会話終わった。何もわかんねぇ。

 

「……なんでわざわざここ来たの?」

 

それならRoseliaの5人の仲間内のどこかでゆっくり過ごす選択肢があったはずだよね。というか少なくとも俺の家に来るという選択肢は普通ないよ。俺が家に居たからまだしも居なかったらどうするつもりだったの? ドア蹴破りそうな勢いだったのに。あっそういや俺初詣行こうとしてたのに……。この流れ今日も無理じゃん。泣いた。

 

「うーん、ゆーひの家来たら、楽しそうだなぁって」

 

「発案者は?」

 

「友希那さん!」

 

「……はぁ。誇り高き青薔薇が泣いてますよ」

 

「失礼ね」

 

まぁさっきの喰い気味の態度で察しはついたんだけどね。まぁいいや、うん。

 

「あ、あこテレビ見たい!」

 

「点けていいよ」

 

さっきまで真っ暗だったテレビ画面はいきなり音と光を放ち始める。その画面に映されていたのは所謂お正月特番。丁度、何の因果か、パスパレが出ている。生放送って出てるし、どうやら本当に昨日の正月オフはたまたま暇ができただけということらしい。最近はやはり仕事で忙しいのだろうか。

 

「……そういえばさー、雄緋は昨日彩たちと何してたの?」

 

「えっ、何って。……何してたんだろうな」

 

「自分でも……、分かってないんですね……」

 

燐子に呆れられた。めっちゃ分かりやすく。でも本当に何してたか正直分かんないし。ゴロゴロして。……ゴロゴロして。あっ、蜜柑食べたわ。……それ以外何したっけ? ……あっ。

 

「いや……何も特には、してないかなぁ?」

 

「……何かしたんだよね?」

 

「……えっいや」

 

「したんだよね?」

 

えっ、ちょっとこのリサ姉こわい。いや、全然年下だけども。威厳というか母性というか、癒しを感じるから親しみを込めてリサ姉と呼んでるんだけど、今のリサ姉からは癒しとかそういうのゼロなんだよ。怖い。

 

「……特に何も」

 

「……ほんとうに?」

 

「……その、いやまぁ、色々あって」

 

「色々って何? 全部言おっか? だーいじょうぶ、怒ってないから、ね? ほら、早く言いなよ、まさか人には言えないようなことしたわけないもんね? 言えるでしょ?」

 

 

 

怖えよ!!

 

いやだって、怖くない? 問い詰め方というか、捲し立てる怒涛の質問とか。声が淡々としてて、あと目に光がないの一番やばい。まじで虚ろな目で射抜かれるってこういうことなんだなって。

 

「……ちょっとだけ……彩とハグしたり、千聖とラッキースケベ的な……」

 

「へぇ?」

 

「ちょ、ちょっとだけだから……」

 

「へぇ?」

 

「……めちゃくちゃ少しだけ」

 

「へぇ?」

 

「すみませんでした」

 

何で謝ってるんだろうなぁ、俺。というか情けないなぁ。プライドとかそんなのドブに捨てたけどさ、もう。

 

「まっ、終わっちゃったこと、ネチネチ言っても仕方ないから、言わないけどさ?」

 

「……お許しを賜ること、幸甚の至りにございます」

 

「許すなんて言ってないけど?」

 

「あっ、はい」

 

怖い。怖いよ!!

だってだぜ? 俺だけじゃないんだよ。この空間にいる他の4人みんなビビり倒すレベルで俺詰られてるんだけど。助けてくれ、誰か。友希那とか幼馴染なんでしょ? 止めてくれよ(涙目)

 

「い、今井さん、それぐらいで……」

 

「そそそ、そうよリサ。脅しても仕方がないわ」

 

よく言ってくれた友希那様ぁ!!

 

「え、何か言った?」

 

「脅しても、仕方がないって」

 

「え、何か言った?」

 

「いえ……何も……ないわ」

 

友希那様屈したぁ……。くっそ、あこと燐子は……。

 

「リ、リサ姉から溢れる、禍々しい風格は正に魔界からの、ブラックマターがバーンとして……?」

 

「な、な、ななに言ってるのか分かんないよあこちゃん……」

 

ダメだ使いものにならねぇ。

 

「ねぇ、どうしてアタシから目を逸らしたの? 今アタシ怒ってるよね?」

 

「すいませんすいませんすいません」

 

「謝ってるだけじゃ何を悪いと思ってるのか分かんないじゃん?」

 

この質問の答え正解ある? 不正解の場合俺死んじゃうかもしれないけど。でも正解が分からないんだよね。あるのかすら分からないし。数学で言うところのコラッツ予想とか、ああいうの未解決問題って言うらしいよ。まさに今俺が直面してる。なお解答をミスると、死にます。

あぁ、天は我々を見捨て給ふたか!! 然ならずと宣はば我に一縷の希望を与え給へ!! とか言ってる場合じゃない。助けてくれ。

 

 

閃 い た !

 

 

いやなんか、合ってる気はしないけど。でもこれ以上最適解出せる自信ない。少なくともこの地獄の深淵から覗く亡者のような、畏怖を抱かせるこの瞳に吸い込まれる寸前なのに、そんな難しいこと考えてられるわけがない。それに嘘じゃないし。

 

よし行こう。

 

「ねぇ、アタシさ、聞いてるんだけど? どうしてアタシと目を合わせてくれないのって?」

 

「リ、リサが可愛すぎて、照れるから!!」

 

「……へ? は? へ、えっ、えっ、ええっ?!」

 

流れが……変わった?!

部屋が凍りついた。いや、さっきから寒すぎて凍ってたけど。別の意味で凍りついた。

 

「は、ちょ、いきなり可愛いなんて、ちょ、え、え」

 

今こそ畳み掛ける時だ。

 

「リサに……惚れそうになるから、直視できない!!」

 

「か、か、可愛いってぇ……」

 

リサ姉の顔は一気に沸騰したかのように赤く羞恥に染まる。大勝利。なんか他の人の空気が怖いけど。さっきのリサ姉のそれに比べたら一気に緩和された。

というかリサ姉急に態度変わりすぎじゃない? こんなオロオロして、なんだこの可愛い生き物。

 

「だから、ごめん!!」

 

「い、いいよ別に……」

 

対戦ありがとうございました。

 

「……ね、ねぇ雄緋?」

 

「はいなんでしょう、って、え」

 

「んっ……。……ぷはっ。……これで、今日は許してあげるから!」

 

「……は、はい」

 

「さっさとアタシに惚れてよバカ!」

 

リサ様はキッチンへと消えていきました。

この後もう一回修羅場が来ました。

 

明日こそ……明日こそ初詣に行くんだ……。

 

 

 

 









なんか改めて読み返すと破茶滅茶ですね。深夜テンションの勢いだけで書き上げたものなので許してください。
まるで正月ゴロゴロするみたいな話をさも7バンド分書くみたいなタイトルしてますが、そういうわけじゃないです。初詣にいつまでも行けないというフリではないです。需要があったら書こうとは思いますけど、多分需要がないですね。
何はともあれ読んでいただきありがとうございました。
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