ガールズバンドの恋する日常   作:敷き布団

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日菜祭りの日(3/3)と紗夜の日(3/4)に間に合いませんでしたぁっ!!(血涙)
ひな祭り? 書き始めたのは良いけどネタが思いつかなさすぎて没になりました。





姉妹喧嘩 epi.2【紗夜&日菜】

都心では段々と春の訪れの予感がするほどに、寒くない日々が続いた今日この頃。空は晴れた薄青の色をしている。

 

「そこで私は、『そういう問題じゃないわよ』と言ったんです」

 

「うーん」

 

三月。寒い冬を忘れ始めたから、桃の節句も瞬く間に過ぎ去ったようなそんな季節。だが、俺はそんな時節との戯れをするでもなく、この長期休み特有の自らの欲求を貪欲に満たしていた。

 

「日菜は何を言ってもどこ吹く風……。まるで私の話を聞き入れようとしません」

 

「うーん」

 

長期休み特有の自らの欲求? それは旅行でもなく、遊びでもなく、恋愛でもなく、況してや競馬やパチスロなんかのギャンブルでもない。

その名は、惰眠。大学生たる俺は自らの疲労に屈した体を労ろうと、鬱憤の溜まる日常生活を忘れるべくこうして睡眠に耽っているのである。

 

「日菜が『知ーらない』なんてそっぽを向くものだから、思わずカッとなってしまった私は大人気なく、『もういいわよ!』なんて吐き捨てて飛び出してきてしまったんです」

 

「うーん」

 

多少寒さがましになってきたとはいえ、この時期のお布団というのは人心を掌握するに長けた魔性の寝

 

「無視しないでください雄緋さん!」

 

「……うるさい。……いまなんじ?」

 

「5時です」

 

「ゆうがた?」

 

「朝です」

 

おやすみ。

 

 

 

ぐぅ……。

 

「じゃないです起きてください!」

 

「ぐへぇあぼっ?!」

 

あ、あ。お、お腹……お腹が今グギラボって、めり込んだ……あふ……。

 

「どうして私の話を聞いてくれないんですか?!」

 

「ごめん……なさい……」

 

「分かればいいんです、分かれば」

 

「あの……今何時?」

 

「5時で「おやすみ」待ちなさい!!」

 

ぐはぁ……。お腹やばい……。もう無理だ……。もう生命の危機レベルだから眠気がどうとかの問題じゃないもん。雪山とかで遭難したらよく『寝たら死ぬぞー!』なんて言うけど、今俺が無理矢理にでも寝ようとしたら俺は死ぬんじゃなくて間違いなく紗夜さんにやられる。間違い無いね。まぁなんだかお布団めっちゃあったかくて寒さゼロだから雪山の寒さとかよく分かんないけど。

というかもう眠気吹き飛んだ。

 

「……おはようございます」

 

「えぇ。おはようございます。というかどうしてこんな時間まで寝ているんですか? 春休みだからといってこの時間まで寝ていれば生活習慣が狂ってしまいますよ?」

 

「逆に聞きたいんですけど、どうしてこんな時間に俺の家にいるんですか? 長期休みとか関係なしにこの時間に起きてるのというかまずなんで俺の家にいるんですか?」

 

「だから、日菜と喧嘩したので」

 

「俺の家に来る理由になってねぇ……」

 

お腹痛いよぉ……。めり込んでるぅ……。

 

「日菜と喧嘩したので、その愚痴を聞いてもらおうかと」

 

「……はぁ。で、なんで俺今こんな馬乗りにされて、お腹ボコボコなの……?」

 

「……? 私はたまに日菜にこんな感じのことをされていますが」

 

「……仲が良いなぁ」

 

え、というか紗夜さん、こんな感じで朝にはお腹がぐわんぐわんになってんの? ご愁傷様ですけど俺にそれをかますのはどうかやめてくださいお腹が耐えられません。

※北条雄緋は専門家の指導のもと特別な訓練を受けています。絶対に真似しないでください。

 

「で、なんだって?」

 

「だから、日菜と喧嘩したんですって」

 

「その内容だよ。なんで喧嘩したんだ?」

 

「それは……」

 

 

 

 

 

『日菜。ちょっとそこに、座りなさい』

 

『え? なになにおねーちゃん。どーしたの?』

 

『……最近の貴方の雄緋さんへの態度は目に余るものがあるわ。もう少し自重しなさい』

 

『えー? あたしそんなに酷いことはしてないけどなー』

 

『十分すぎるぐらいしてるわよ?! どういうことなのよいきなり目隠しして、拉致して、家庭科準備室に放置するって?!』

 

『え? だって雄緋くんにバレンタインのチョコ渡したかったし、それならその場で作って食べてもらえたほうがすっごくるんっ♪ ってするかなーって!』

 

『『るんっ♪ ってするかなー』で済ませられるレベルじゃ無いでしょう?! そんなの私だって渡したかっ……いえ、私ならそこまでのことしなくても普通に渡すわ!』

 

『えー? でもおねーちゃんだってこの間取調べだとかなんとかで、雄緋くんのこと拉致監禁してたよね?』

 

『うぐっ……』

 

『というか雄緋くんって花女の生徒会の顧問になったんでしょ? それすっごくるらるんっ♪ ってするからあたしも羽女の生徒会に雄緋くん入れたい!』

 

『は、はぁっ?! ダメに決まっているでしょう?! あれは私が花女の先生方をおど……交渉して漸く認めて貰えたのよ?!』

 

『えー。でも本当の先生じゃ無いなら兼任ぐらいしても大丈夫だよー』

 

『……だ、ダメよ! 私が認めないわ!!』

 

『ぶーぶー! おねーちゃんの意地悪! 本当はおねーちゃんが雄緋くんのこと独占したいだけなくせに!』

 

『な?! そ、そんなことは……! とにかく、ダメよ絶対!』

 

『別におねーちゃんの許可なんて貰おうとしてないもーん! 雄緋くんにお願いするもん! 雄緋くんのことだからお願いしたらなんだかんだ聞いてくれるし!』

 

『そ、そういう問題じゃないわよ!!』

 

『つーん、おねーちゃんのことなんか知ーらない!』

 

『はぁ……もういいわ!』

 

 

 

 

 

「で、来たんです」

 

「えぇ……」

 

喧嘩の原因また俺かよ……。一頻り話終えた紗夜は俺の入る布団の膨らみにもたれかかりながら、大きなため息をついた。

 

「というか顧問になった覚えねぇぞ。教員免許なんか持ってねぇし」

 

「私立高校だから、多分大丈夫です」

 

「大丈夫じゃねぇよ」

 

「とにかく……そういうわけです」

 

「いや、話聞いてもよく分かんなかったけどね?」

 

「そう言うわけなので、もしも日菜がお願いしにきたとしても、断ってください」

 

「だから顧問なんてやるつもりないからな……」

 

……ん? というかそのお願いのためだけに紗夜はここに来たのか?

 

「というか、用件それだけ?」

 

「はい、そうですが?」

 

「なんでこの時間?」

 

「これぐらい早くしないと日菜が来てしまうので」

 

「つまり俺寝ていいの?」

 

「ダメです」

 

……ふむ。……ん?

 

「ダメですけど……」

 

「けど?」

 

「わ、私と同衾するという条件なら……許します」

 

「ど、同衾って……一緒に寝るってこと?」

 

「寝……?! そ、そんな卑猥な意味ではなく……」

 

「卑猥な意味で寝るって使ってないんですけど……」

 

「その添い寝というか……」

 

「いやいや……ダメでしょ」

 

だって同衾とか、添い寝とか、風紀一瞬で壊れ去ったよ? 音を立てて風紀の文字が風化していったよ? 風紀だけに、なーんちゃっ

 

「と、とにかく眠いんですよね?! 一緒に寝ましょう!」

 

「わ、ちょ、布団めくる「あ」な……?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「おはよー! おねーちゃん! 雄緋くん!」

 

「……ん?」

 

「……え?」

 

「どーしたの?」

 

 

今お布団の中の膨らみからすぽんって。日菜が……え?

 

「出たあああぁぁぁっっっ?!」

 

「いやぁぁぁ日菜ああぁぁぁぁっ?!?!」

 

「え、2人ともどーしたの?」

 

 

 

 

「日菜、正座」

 

「……はい」

 

「雄緋さんも、早く」

 

「え、なんで「いいから」はい」

 

お腹も喉も脚も痛い。

何が起きたか分からなかった人のためにちゃんと説明するぞ? 耳の穴かっぽじってよく聞けよ。

 

何が起きたかと言うとな。

 

つまりだな?

 

その……要は。

 

 

すまん俺もよくわからなかった。

 

「……どうして布団の中に日菜がいたのよ?」

 

紗夜さん曰く、紗夜さんが俺の入ってた布団を捲った瞬間、謎の膨らんでた部分から日菜が勢いよく飛び出してきたみたいです。分からん。よく分からん。最初お化けかなんかだと思った。

 

「え、だっておねーちゃんがこんな朝早くから家を出てったから何かあるのかなー? って後ろついていったら雄緋くんの家に来たから、あたしも入ろーって」

 

「……はぁ。で、雄緋さんの言い分は?」

 

「言い分?! いやいや、俺寝てただけだから知らないって」

 

「寝てた?! 日菜と?!」

 

「え?! いや違っ、そういう意味じゃ「雄緋くん昨日の夜激しかったなー。あたしがもうダメって言っても何回も……」……」

 

「……雄緋さん?」

 

「違うから! 日菜も悪ノリやめろ?! さっき自分で朝来たって言っただろうが!」

 

「ちぇーバレたかー」

 

こいつ……。俺が紗夜に叱責の目線を向けられるのをこの上なく楽しんでやがる……。口を少しとんがらせて、横を向く日菜に悪びれる様子はない。

 

「……それで、いつのまに入ってたの?」

 

「え? おねーちゃんが眠ってる雄緋くんの顔見ながら頭撫で「なぁぁぁっっ?!」時?」

 

「え待ってなんて? 聞こえなかった」

 

「もういい! もういいから日菜!!」

 

「もごもごご……」

 

紗夜が無理矢理日菜の口を閉じさせようと実力行使に出ている。俺はその隙を逃さずに、そそくさと布団へと戻る。

 

「全く……、って雄緋さんはどうして布団に戻っているんですか!!」

 

「だって俺が怒られる謂れはないじゃん……」

 

「日菜と同じ布団に入ったという時点で重罪です!!」

 

「日菜から入ったのに?」

 

「ぐ……」

 

「あー、雄緋くんの体あったかかったなー。ものすごーくるるるるんっ♪ ってきたよ!」

 

「ちょ……」

 

え、この子今煽った? なんで煽った? 日菜はものすごい形相で煽り立てている。どういうメンタルしてたらこの怒られてた状況で怒ってる人をここまで煽れるというの? 俺には分からない……。

 

「布団の中もー、すっごく良い匂いがしてー、もうこれから毎日でも通って一緒に寝たいなー? なんて」

 

やばい。紗夜さんがものすっごいぷるぷるしてる。絶対怒ってるじゃん触らぬ神に祟りなし桑原桑原怒らないでごめんなさい。

 

「……雄緋さん」

 

「……はい?」

 

「眠いですか?」

 

「……いや?」

 

「眠いですよね?」

 

「いやあの……起こさ「眠いですよね」はい、今すぐにでも寝たいです」

 

嘘ですもう眠くないです。主にお前らのせいで。

 

「選んでください」

 

「おっ?」

 

「は?」

 

「日菜か私。どっちと寝たいか、選んでください!」

 

「ちょっと何言ってるか分かんない」

 

本当に訳がわからない。算数の問題で池の周りを一定の速度で周り続ける兄弟の目的ぐらいよく分からん。どうして選ぶ流れになった。

 

「え、あたしだよね?」

 

「日菜はさっき寝たでしょう、選んでください、早く」

 

なんだろう、今、ものすっごくフラグが立っている気がするんだ。今まだ朝の5時とかなんだよね? もうやだ全部忘れて泥のように眠りたい……。

 

「1人で「私ですか? ありがとうございます」答えを聞く前に入るなぁ?!」

 

「ずるいおねーちゃん!!」

 

「いいじゃないこれぐらい! 私だって一緒に寝たいわ!」

 

「キャラ崩すな?! 風紀委員どこいった?!」

 

「風紀なんてクソ喰らえです! あんなもの学校以外じゃ役に立ちませんから!!」

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

貴女がそれを言い始めたらもうどうしようもないんだよ……。僅かに残った良心の要素が助走をつけて羽ばたいていった。

 

「日菜には負けたくないんです!」

 

「そんなところで対抗心燃やすなぁ!」

 

「もう川の字で寝ればいいんじゃない?」

 

「「……確かに」」

 

って、俺が呟いた瞬間、揉み合いになっていた紗夜が流れ込むように俺の右側に、日菜が空いている左側に滑り込む。せっま。そりゃこのベッドシングルだもん、3人は定員オーバーだよ。……でもまぁなんだか色々アウトな気がするけどもういいよね……。朝から俺頑張ったし……。

 

「……良い匂い」

 

「でしょでしょ? こうやったら……」

 

「ちょ、くすぐったいから動くなっ」

 

「暴れないでください、落ちます。日菜、もっとそっちに寄りなさい」

 

「えー? 雄緋くんに寄ればいい?」

 

「真ん中に寄っても意味がないでしょう?」

 

「おねーちゃんもこうすればいいんだよ?」

 

「……はぁ、はぁ」

 

「息荒くない?」

 

「……ぐぅ……」

 

「寝るの早くね? って……2人とも寝かけじゃん」

 

まじかよ、この状況で2人とも寝られるのか。というかガチで紗夜の方落ちそうになってるし、日菜にはもう少し壁側に寄ってもらおう。

 

「ん……? んっ……雄緋くんのえっち……」

 

「……風紀が……乱れてます」

 

現在進行形で乱れてます。

 

「俺のせいじゃないからな。あと俺そんなやばいところは触れてないからな」

 

「……いいよ?」

 

「ダメ」

 

「……いじわる」

 

「雄緋さん、私も落ちそうなので」

 

「うん、だから今寄ってんだわ」

 

「抱きしめてください。どこでも触って良いので」

 

「どこでもは触りません」

 

時刻はまだ朝の5時半過ぎ。怒涛の勢いで過ぎ去ってゆく朝の……というか早朝の姉妹喧嘩はなんとか終戦に持ち込むことが出来たのである。なんだかんだ氷川姉妹は仲良いから……良かった……良かった……。

 

 

 

 

 

「……くしゅん! さっむ……ってあれ?」

 

朝7時。どういうわけかフローリングの上に寝転がっていた俺が見たのは、俺の布団の中で互いを抱き合う紗夜と日菜の姿だった。……真ん中のはずの俺、なんでベッドから落ちた?

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