ガールズバンドの恋する日常   作:敷き布団

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予め言っておくと、今回は深夜テンションがどうとかじゃないレベルでバグっています。
クロスワードパズルを自力で解きたい方は、読み進めずに話の途中で解くことをお勧めします。多分解けるようにはなってる、はずです。多分。







意味深クロスワードパズル【燐子&有咲&美咲&モカ】

「うーーーん……」

 

「ん?」

 

お昼頃からぶっ通しだったバイトも休憩時間に入ったため、俺が息抜きでもと考えてCiRCLEのラウンジへとやってきた。いつもなら人の入りもそこそこで、休憩に使う人が多いのだが、今日は閑散としていた。ところが、ど真ん中に据えられたソファに腰掛けながら、頭を抱えて唸りを上げている方が1名。

 

「えっと、どうしたんだ燐子?」

 

「あっ……雄緋さん……」

 

「悩み事か? って……それって」

 

燐子が顔を上げたところで、テーブルの上に開かれた冊子に目がいく。そのページは白黒印刷がされていて、マス目が大量に並んでいる。

 

「クロスワードパズルで……。実は懸賞の応募が近いので……」

 

燐子が持ち込んでいたのはどうやらパズルを埋めて懸賞に応募するタイプのクロスワードの問題集らしい。ところが、その冊子のページのマス目は見事に真っ新だった。

 

「今から始めるのか?」

 

「いえ、少し前からしてたんですけど……。難しくて……」

 

「へぇ……。しかも漢字じゃん……」

 

見たところ普通のクロスワードパズルなどではなく、漢字オンリーのクロスワードらしく、それが難易度を引き上げているらしい。

 

「その……よければ手伝っていただけたり……」

 

「おっ、暇だから勿論いいぞ」

 

「本当ですか……! どうぞ、隣座ってください」

 

「はいはい、失礼します、と。……近くない?」

 

「……こうすると、頑張れるので」

 

「う、うん?」

 

やたらと距離感の近い燐子はさておき、俺とて休憩時間には限りがあるので早速とばかりに問題を見る。

 

「どれどれ……と」

 

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漢字群
大、内、反、生、尻、外、白、写

血、色、抗、学、画、春、朕、帳

密、雲、道、開、静、濁、題、鎮

 

「……むずくね?」

 

「そう、ですよね」

 

この手のクロスワードパズルって、二字熟語の語群から、とかそういうのじゃないの? 漢字自体が群として与えられてるって難しすぎない?

 

「わたし1人じゃ……」

 

「うーん、そうだ。紗夜とか居ないの? 勉強とか出来そうだし」

 

「氷川さんは……日菜さんが連れて行ってしまって」

 

「あっ……」

 

なるほど、そんなわけで燐子が孤軍奮闘しているというわけか。

 

「よし、頑張ろう! ……といっても、どっから手をつけたらいいんだ?」

 

「定石が通用しないんですよね……」

 

「……うーん。二字と四字は候補が多くなりそうだから、三字をどうにかしようか」

 

「どれか行けそうなのは……」

 

「この『○○期』、とかどうだ?」

 

「新学期……、『学』はあっても『新』がないですね」

 

「学期か、『春学期』とか?」

 

「両方ありますね……!」

 

「他は、『○○展』とかどうだ?」

 

「芸術に関するもの……、写画とかなら作れそう……」

 

「でも『写画展』にすると右上の『写風』はおかしいからな」

 

「○画ですか……」

 

「うーん、『○○期』が『春学期』じゃなきゃ『春画展』なら『春風』で辻褄が合いそうだな」

 

「なるほど……! 春画……? って、なんですか?」

 

「え? あ……」

 

しゅん が【春画】(名) 江戸時代に流行した男女の性愛を描いた絵。

 

やっべぇこんなの事細かに説明できねぇ。……どうするべきか。

 

「あの……?」

 

「芸術の一形態だ」

 

「は、はぁ? えっと……とにかく、『○○期』がおかしいんですかね?」

 

「そうなるな、何か……」

 

「……あ! 『反抗期』って作れそうです……!」

 

「でかした燐子! なら、……『抗○清』は『抗血清』だな」

 

こう けっせい【抗血清】(名) 抗原を動物に摂取して得られた抗体を含んだ血清の一種。

 

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「なるほど……。あっ、『○止画』って、『()()()』ですかね?」

 

「えっ?」

 

文字が埋まった喜びで半分ぐらいしか聞き取れなかったんだけど、今とんでもない単語が燐子の口から発せられなかった? え、俺の聞き間違いじゃなかったら今間違いな

 

「ここ、『静止画』かなって」

 

俺の心が穢れまみれなだけでした。本当にごめんなさい。

 

「うん、そうだと思う。……なら、その『○静化』は『鎮静化』とかかな?」

 

「な、なるほど……! ……でもこんな『○湖○鎮』なんて四字熟語見たことない……」

 

「……文字数減ってきたから、一旦二字熟語行くか?」

 

「そうですね……!」

 

漢字群
大、内、生、尻、外、白、写

色、学、朕、帳

密、雲、道、開、濁、題

 

そんな折、夢中でクロスワードと格闘していたラウンジに足音が聞こえてきた。

 

「あれ、燐子先輩と雄緋さん?」

 

「お、元引き篭り優等生と着ぐるみ優等生」

 

「変な呼び方やめてください……。で、何してるんです?」

 

「クロスワードです……。難しくて……」

 

「……奥沢さん」

 

「……わかってます」

 

お、どうやら2人ともかなり乗り気らしい。3人寄らば文殊の知恵とも言うし、有咲は学業優秀と聞いたことがある。美咲も常識が吹き飛んだあのグループの作詞作曲を取り纏めているのならば地頭も良いだろう。それに何より、俄然燃えている3人ならすぐに終わりそう。

 

「……負けません!」

 

「あの、俺はそろそろ……」

 

「「「ダメです!!」」」

 

「はい」

 

逃げられませんでした。そろそろ休憩時間ギリギリかなぁとか思ってたけどどうやら逃げることは叶わない、というか物理的に距離を詰められすぎて逃げ出せそうになかった。諦めて、俺もこの問題を解き終わるのに集中しよう。

 

「それで、二字熟語……ですよね」

 

「『展○』とかいけそうじゃないですか?」

 

「この語群なら……『展開』じゃ?」

 

「あー、言われてみれば」

 

俺が居なくてもちゃんと進んでるのに逃げ出せないというジレンマ。

 

「なら『開○』は、『開学』『開道』……のどっちかですかね?』

 

「あっ、『開帳』もいけそう。ご開帳〜、って言うときの」

 

「ぶっ?!」

 

「わっきたな! じゃなかった……なんですかいきなり!」

 

「な、なんでも」

 

ダメだ。俺の脳みそは煩悩塗れらしい。さっきから春画とか静止画とか、連想であらぬことを考えてしまった影響を受けてる自分が憎い。クロスワードなのに連想ゲームとはこれいかに。

 

「でも『帳』って他に使い道が……。わたしは『開帳』かなと……」

 

「会長が『開帳』……」

 

「寒いんでやめてください」

 

「ごめんなさい」

 

完全に俺の頭はオーバーヒートしてしまったのだ。許して欲しい。

 

「あはは……。ほ、他は?」

 

「『湖○』は残りの語群だと『湖尻』ぐらいしかないと思われます」

 

「急に敬語になりましたね……」

 

こ じり【湖尻】(名) 湖の水が流れ出るところ。決して卑猥な意味ではない。

 

「二字は他埋められそうですか……?」

 

「左下の『好○』とか?」

 

「好きかぁ……」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

びっくりした。俺がボヤいた瞬間に隣に座っている美咲が急にこちらに振り向いたから。

 

「……ドキッとさせないでください」

 

「……何の話?」

 

「もういいです! 早く考えてください!」

 

「怒られた……」

 

「あの……『好色』なんて、どうでしょうか?」

 

「あーありますよね。意味はっきりと分かんないですけど……。どういう意味なんですか? 雄緋さん」

 

「え? そりゃ色事が好きな」

 

「色事……?」

 

「あっ……。古典とかで勉強してください」

 

「え、はい」

 

こう しょく【好色】(名・形動) 色事、特に男女の情愛を好む様。

 

「とすると、『○色』は、『白色』ですかね?」

 

「そうなると……『白○』は、『白濁』ですかね?」

 

「ぶふぉっ?!」

 

「わぁぁだから汚いですって!!」

 

ごめんなさい……汚いのは俺の心なんだ……。そうだよな……、石灰水に息を吹き込んだら二酸化炭素と反応して、石灰水が白濁するって……。知ってる……知ってるけど……、煩悩に浸された俺の頭はもう完全にアウトな方向じゃないと考えられないんだ……。

 

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漢字群
大、内、生、外、写

学、朕、

密、雲、道、題

 

「……結構埋まってきましたけど。四字熟語がよく分かんないですね……」

 

「おやおやー。モカちゃんの出番かな?」

 

「あ、モカちゃん」

 

「モカちゃんも参戦しよ〜」

 

「青葉さんって、Afterglowでも結構勉強とか出来たんだっけ?」

 

「もちろん〜。ひーちゃんにカロリーを送る分、学力を吸い取ってるからね〜」

 

「そうだったのか……。で、4人もいるなら俺は……」

 

「モカちゃんホールド、逃がさないよ〜」

 

「……はい」

 

衝撃の真実を明かしながらホールドされたのでやっぱり逃げられなかった。だが、半分ぐらい埋まっているから、きっとあと少しなはずだ。終わらせる……終わらせるんだ……!

 

「四字熟語がなぁ」

 

「『○清○濁』って、静も濁も反対の意味だよね」

 

「なるほど〜。これは『内清外濁』かな〜」

 

「なんなのそれ?」

 

「心は清らかに、けれど外面は汚れたようにした生き方のことだよ〜」

 

「心は清らかで外面は汚れた?」

 

「うーん、今の雄緋くんの丁度反対みたいなところ〜」

 

「え、俺今内面汚れてる?」

 

「うーん、心が煩悩で汚れてそうだねぇ」

 

「ぐはっ」

 

致命傷。

 

ないせい がいだく【内清外濁】 心の中は清らかでいながら、外面を汚く見せて、生きてゆく処世術のこと。

 

「……しょっ、と。それで右下の方が全然埋まってないんですよね……」

 

「『○○○会』か。奥沢さん、どう?」

 

「えー……。あ、『大』を使って、『○○大会』とか?」

 

「それなら……、『写生大会』が、作れますね……!」

 

「ブフォァッ?!」

 

「わぁぁ?! またですか?!」

 

「……やっぱり雄緋くんの心は汚れてそうだねぇ〜」

 

仰る通りで……。仕方ないじゃん……。春画に始まり、静止画に、開帳に、白濁とか、最後に写生大会とか狙ってるとしか思わないだろ! 俺は悪くないんだ……。作問者の陰謀なんだ……。

 

「となると、『○○先生』ですか……。流石に担任の先生とかじゃないからなぁ……」

 

「青葉さん、何か思いつかない?」

 

「……おっ。『道学先生』が作れそうだよ〜」

 

「道学先生?」

 

「倫理とか道徳を説いてばっかりで、世の中に疎い人のことだよ。ここには道徳をかなぐり捨ててる大学生もいるけどねぇ〜」

 

「ぐはぁっ……」

 

何も言い返せねぇ……。こんな純真無垢な子達の前で俺だけ変な連想……もとい妄想を繰り広げてる俺の倫理観は確実に欠如してるよ……。

 

「なるほど……。あ、『外○学問』は、『外題学問』ですね……!」

 

げだい がくもん【外題学問】 見た目だけが立派で、中身を伴っていない学問のこと。

 

「『学』も消えたから、『○会』は『密会』で確定しそう」

 

「となると……残りは『朕』と『雲』だけで、こうですね」

 

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「うーん。『○湖○鎮』なんて、モカちゃんも、こんな並びの四字熟語見たことないです〜」

 

「見たことない字面ですよね……」

 

「……もうネットで検索したら?」

 

「言い出しっぺの法則ですよ。お願いします雄緋さん」

 

「……はいはい。『湖』と『鎮』と『雲』と、『朕』で、検索……と」

 

俺のスマートフォンに検索結果が表示され。

 

「お、あるんだ。えっと、『雲……』はっ?!」

 

「え、どうしました?」

 

俺は自分の目を何度も擦る。だが画面には……。

 

雲☆湖☆朕☆鎮( う ん こ ち ん ち ん )

 

 

……ぱぁ。

 

ダメだ。

 

 

ダメだ。

紛うことなき下ネタ。俺はどう乗り切るべきか? そうだ、四字熟語。漢字の羅列なんだ。

 

「……前が『雲』、後ろが『朕』だ」

 

「へぇ。これは『うん「読むなぁっ!!」ひぃっ?! 耳が……」

 

「……ごめん。けど、読むな、いいな?」

 

「は、はい。なるほど……。こんな四字熟語が……」

 

「覚えなくていいからな? 絶対に覚えなくていいから!」

 

「フリかな〜?」

 

「フリじゃないから!」

 

そっか……。この冊子の問題。やけに出題の範囲が酷いと思ったら、そう言うことだったのか……。真面目にこれを考えていた燐子には可哀想だが、まともじゃないと言わざるを得ない。

 

ピーーーー(自主規制)【雲湖朕鎮】 怒りの感情に囚われている時こそ、冷静な判断が出来ないから、周囲に目を配れるような心を持つべきであるという教え。秦の始皇帝の古事に由来……、するわけないだろ。

※実在しない、ネットで創作された四字熟語です。

 

「とにかく……これで完成、ですね!」

 

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「みなさん、手伝いってくださって……ありがとうございました!」

 

「燐子先輩のためですから」

 

「そうですよ。いつでも頼ってくださいね」

 

「モカちゃんもいつでも手伝いますよ〜」

 

「……良かったよかっ「何が良かったのかな?」……あ」

 

背後から聞こえたのは、まりなさんの声。そういえばここはCiRCLEで。俺は休憩時間中にラウンジに立ち寄って……。

 

「ずっーーーとサボって、女の子たちとイチャイチャしながら解くクロスワードパズルは楽しかったかなぁ?」

 

「あ、違……違うんです……」

 

「私ずっーーーーーーーっと今日1人で掃除も片付けも受付もぜーーんぶ捌いてたんだけど?! 早く持ち場に戻りなさーーーい!!」

 

「申し訳ございませんでしたぁぁぁっっ!!」

 

元々こんなに居座り続ける予定じゃなかったのに……、なんて泣き言を言ってももう手遅れらしい。結果的にサボってしまったのは事実だけれど。

この後キッチリ怒られました。

 

はぁ……。

 

……雲ピーーーー(自主規制)

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