鯖魂〜片方の設定が知らなくても気合いがあればなんとか面白くなる〜   作:名無しのモンスター

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みなさんはじめまして。他作品の銀魂のクロス小説を読んで便乗して作品を投稿してしまった者です。

ほとんど勢いで執筆した見切り発車作品のため、投稿頻度は期待しないでください。

感想よろしくお願いします。ついでに可能なら評価も。


クロスオーバーによる独自設定はどんなものになるか観る前に怖くなる

『侍の国』

 

 江戸がそう呼ばれたのは、今は昔の話。

 

 二十年前、突如江戸に舞い降りた異人『天人(あまんと)』の台頭と廃刀令により、侍は衰退の一途を───

 

「オイ、何『銀魂』の最初らへんでよくやってたあらすじのナレーションを出してんだよ。『銀魂』知らないテイでやらなくていいんだよ。どっかの事典で『銀魂』調べりゃ大抵わかるものだから書こうとすんなよ」

 

 シンボルとなる巨大な塔・ターミナルが見える江戸の街・かぶき町にて、踏み込んではいけない領域に入ったかの様に、一人の男が船の飛び交う青空を見上げながら呟いた。銀髪の天然パーマ、死んだ魚のような目、着物を片側だけ着崩し、柄に『洞爺湖(とうやこ)』と刻まれた木刀を腰に差した男。彼は坂田銀時。かつて天人との戦争で『白夜叉』と恐れられた、『万事屋(よろずや)銀ちゃん』を営んでいる侍だ。

 

「その通りネ。大体平凡な作者のもそうアルが、初投稿者の小説なんか暇なオタクしか見ないネ。書くだけ無駄アル無駄無駄」

 

「ワン!」

 

 日傘を差し、透けるように白い肌にオレンジの髪を頭の両サイドで三つ編みにしてぼんぼりで纏めて団子状にした少女も、この話題は日常だと言うように愚痴を零す。神楽。万事屋の従業員にして、宇宙最強の戦闘民族『夜兎族』の一人だ。

 

 そんな彼女が乗っているのは、白い犬・定春。普通の犬ならば彼女が乗れば倒れ伏せるはずのだが、定春はビッグサイズのため問題なかった。何はともあれビッグサイズ。ヒグマ並の巨体を持つ、真っ白な毛並みの超巨大犬だ。

 

「無駄とか言わないでよ。一応読書だって『あ、面白そうな小説じゃん。読んでみよ』という感じに読みに来てくれて、そのまま他の人にもおすすめしてくれるだろうから」

 

「……まるで作者の気持ちが一致してるようだな」

 

「メタ発言ですよ銀さん。後、僕はただ台本通りに言ってるだけです」

 

「台本って、お前もメタ発言言ってるじゃねーか。つーかそんなクソ小説になりそうな台本、捨てちまえ」

 

 神楽や銀時の言葉に指摘してるのは、銀魂のツッコミ役で準主人公。男性の割には少々高く特徴的な声。丸い頭にサラサラとした柔らかく真っ黒な髪の毛。「えっ? アレ……?」これと言った特徴はないものの、度合いは完璧に等しくシンプルで歪の無い形の丸眼鏡。「あの……ちょっと待ってください?」そのガラスの奥でくりくりとよく動く、大きな黒目。川のせせらぎを表す青い縁に色褪せない白い生地の袴姿。「待って? だから待って? ねえ……」脱げば鍛錬によって生まれた細くも引き締まった筋肉が見えることを想像させられるその手は……

 

「待てって言ってるだろォオオオオオオッ!!!」

 

 長々とした自身の紹介に痺れを切らしたのか、単に羞恥心が募ったのか、新八のいつも通りの強烈なツッコミがナレーションに向けて放たれた。天を仰ぐ様に、高らかと。

 

「何⁉︎ なんで⁉︎ なんで僕の紹介がこんなに長いの⁉︎ なんで二人よりも細かいの⁉︎ 他の銀魂小説なんかただの眼鏡だとかツッコミ役だとでしか紹介される印象ないのに‼︎ 悲しい程に僕の紹介の扱いが良くないのに‼︎ 良かったら良かったでこれは逆に違和感マシマシで後味悪いわ‼︎」

 

 様々な二次小説どころか、本家ですらも優遇な回が少なかった(シリアス回は別)新八の、本当は喜ばしくも納得のいっていない指摘だった。当然だ。自分よりも強いチート優遇を持った主人公やヒロインより目立つだなんてことは、返って自分のファン以外の野次馬の敵に回し、インターネットなどを通じた裏で叩かれる可能性が出る様なものだから。

 

 しかし。自分達が新八の紹介よりも少ないため嫉妬やら怒りやらを持っているはずの銀時と神楽は、そういった感情を出さずに『何を今更』的な冷徹な視線を向けていた。ジト目だ。

 

「仕方ねーだろぱっつあんよォ。ここの小説の作者はな、新八を原作以上のアンチをするのが嫌いな性分なんだよ。昔そういう小説を読んだことがあってな? 『最初不遇な目に遭って、やっとそれを挽回出来そうな回が出たと思ったら元通りになるってどういうことだオラ。いい加減新八にも優遇効かせろや』って修羅顔で呟いてたんだよそれはもう。感想荒らしでもしようかと考えてたらしいよマジで。おかげで俺らの優遇措置が新八よりも弱くなる可能性高くなったよ。どうしてくれんの作者。ただでさえお前文才よくねーのに」

 

「嬉しくねーよ僕がアンチされてる小説を荒らしてもらっても‼︎ 返って色んな人敵に回すわ‼︎ 社会的に殺されるわ‼︎ 実行してもらわなかっただけよかったわ‼︎ つーかしれっと作者に対しての愚痴零してるだろォ‼︎」

 

「おまけに二年後篇では最初に新主人公っぽい雰囲気を出す、実写版では菅田将暉が演じている、といった感じに原作でもたくさん優遇が効かされてるヨ。よかったアルなー新八。童貞で眼鏡の癖にオメーは少しばかり優遇がさらに効かされるネ。そしてそれを見た私達はその苛つきを新八にぶつける為に、眼鏡かち割ったり頻度の嫌がらせしたり眼鏡かち割ったり闘いの時に新八を盾や囮にして逃げたり眼鏡かち割ったりガチでリンチしに行ったりする、優遇と不遇のバランスの取れた扱いになったヨ。そう考えれば私達は不満ないアル」

 

「不満マシマシじゃねーかァァァ‼︎ 眼鏡かち割ったりって何回言うんだよ⁉︎ 後ガチで殺すとか言いやがったし、不遇の割合を高くする気というか抹殺する気満々だろ‼︎ 何⁉︎ 僕一回死んだ方が良いの⁉︎」

 

 第一話開始早々に嫉妬と怒りを買われた新八。作者の気持ちを代弁しながらその作者にも矛先を向ける銀時に、新八への原作以上の不遇を効かせろと文句を言っているかの様に毒舌を吐く神楽。いつもとは違う二人の態度と悪意のある発言に次々とツッコミを入れるしかなかった。

 

 そして一通りツッコミを入れ終わった新八。長々と息継ぎなくツッコミを終えた息を整え、溜息一つついてから語り出す。しかも目つきを鋭く、真剣な表情で。

 

「ハァ……言っておきますけど、僕は一人だけ多大な優遇を受けるなんてことは嫌なんですよ」

 

「は? お前弄られるの好きなの? ドMなの? そういうのはさっちゃんと『このすば』のダグネスだけでいいよ。ドMハーレム作ってこい」

 

「そうじゃねーよ‼︎ 後なんだよドMハーレムって‼︎」

 

「じゃあなんで一人で優遇を受けるのが嫌ネ? 折角の輝けるチャンスを自分から逃がす気アルか?」

 

 銀時のおふざけかつ他作品のキャラをも馬鹿にしてるような発言(当の本人は寧ろご褒美らしいが)にツッコミを入れたせいで、真剣な表情が崩れた新八。が、神楽の問いかけによりすぐ表情を戻した。

 

「……いいですか? この原作『銀魂』はあくまで銀さんが主役です。これまでの長篇とかでも主人公補正で様々な修羅場を乗り越えてきたんですよ。そこにドンッと、いきなり銀さん同等かそれ以上の優遇を持ったキャラが出てきたらどうなりますか? 銀さんはそのキャラに出番を取られたり主人公の座を変えられたりして、銀さんの人気どころか存在そのものまで危うくなりますよ。逆にその優遇さを持ったキャラが銀さんよりも人気になったりして目立つようになったら、特に銀さんのファンからネットで叩かれるなどの不人気が出て、様々な方面でそのキャラも潰される。さらには『銀魂』の人気にも影響を大きく及ぼして、最悪打ち切りになる可能性があるってわけです。一応原作は終わったからいいですけど、二次小説も例外ではありません。黒く濁り切った負の連鎖なんて、銀さんも神楽ちゃんも見たくないでしょ?」

 

「「ウグッ……」」

 

 長い。長すぎる。十行ぐらいはいってる。だがごもっともだ。

 

 主人公は坂田銀時でなければならない。坂田銀時(しゅじんこう)は誰よりも一番に輝かなければならない。他のキャラも輝かせる必要もあるが、主人公を除け者にするかの如く輝かせては作品自体に支障を片す。

 

 それを新八が許さなかった。例え坂田銀時(しゅじんこう)より輝いている者が自分自身であっても、だ。

 

「畜生……新八の癖に言うじゃねーか……テメーを調子乗らせて天狗にしてそこから調子乗るなとか言って弄ろうと思ったのによ……」

 

「これでホントに白けたアル。正論言われてテンションダダ下がりネ。このイライラの矛先をどこに向ければいいアルか? ねぇどこに? ねぇねぇ」

 

「やっぱり後で僕に嫌がらせする気だったんかい‼︎ なんかいつもの嫌味が薄いなと思ったわけだよ‼︎」

 

 疑心感と不吉な予想が当たり、後々自分を弄ろうとする考えが分かりやすい銀時と神楽の発言にツッコミを入れる新八。他の小説でもそうだが、一話ごとに何回ツッコミを入れさせられるんだろうね。ホントお疲れ様です。

 

「とにかく! 優遇がどうこうの話はこれで終わり! 僕に対する原作以上の優遇もここまで! そろそろ話らしきことしないと読者を呆れさせてしまいますよ! 早々に人気が出なくなるのはごめんですからね!」

 

「ヘイヘイ、わぁーたよ。本編に戻れば良いんだろ戻れば」

 

「第一話からこんなグダグダは良くないアルな。読者に『帰れ』と言ってるようなものネ」

 

「ま、とにかくだ。今日の依頼料からバーさんの家賃払って、余った金で焼き肉すんぞー」

 

 新八によって優遇不遇の話はこの会話を機に区切りがついた。文才のこともあるため無理矢理ではあるが。ここからが本番。この銀魂の小説ではどの様な物語となっているのか、期待に胸が膨らむ……といいな。

 

「なんかナレーションが弱気になってる様な……「きゃっ⁉︎」うわっ⁉︎」

 

 (ナレーション)に対する指摘をしているせいか、新八はたまたま通りかかってきた一人の少女と肩がぶつかり、お互い尻餅をついてしまった。なんかすいません。

 

「オイ新八。テメー何やってんだこのヤロー。上の空で歩いてっから通り人転ばせちまったんだろ」

 

「まともな紹介された後も結局は新八アルなー。あーだこーだ言っときながら絶対内心では優遇もらって舞い上がってんだロ」

 

「隙あらば人を煽ろうとするのやめていただけます?」

 

 二人の煽りに冷たく対応しながら立ち上がった新八は、向かい側で尻餅をついていた少女の腕を優しく引っ張り、立ち上がらせた。ちなみにこれはいい人アピールとかじゃないからね? 新八が何も考えずに良心でやっているだけだから。

 

「あの、大丈夫ですか? すみません、余所見してたもので……」

 

「あ、い、いえ……私の方こそ失礼しました。この町に来るのは初めて……で………え?」

 

「え……?」

 

 突然の沈黙。新八が少女の顔を見て何を思ったのか、その場で目を見開きながら立ち止まったのだ。対する少女も驚きを見せる表情で新八を見つめたまま、その場で微動だにしなかった。

 

 よく確認すれば、その少女の姿は可憐だった。髪は紫色で、朝顔が一同に咲いているかの如く彩られ、艶がある。長さは先端が肩に付くか付かないか程度ぐらいか。そして左側の頭に巻いている赤いリボンが、まるで優しく花束を作っているかのよう。瞳は髪と同じく紫色。だが髪とは違い、宝玉の様に綺麗な形で、透き通っているかの様に輝いていた。濃い紫色の蝶が数匹あしらわれた薄紅色の着物は、十分に豊潤とされた胸元以外の無駄を削ぎ落とされた華奢な体格でさらに美麗さを引き立たせていた。

 

 それだけ確認すれば、新八は彼女の容姿に惚れ思わず硬直して見つめたままになった、と理解できるはず。だが見つめたままになっているのは少女も同じ。そうなると、彼女も新八の姿に何か思い入れがあるのだろうかと考えられるが……

 

「……なァ。何これ? なんで新八とこの女の子はずっと見つめ合ったままなの? え、何? お互い惚れ合ったの? 女の子の方はともかく、眼鏡とツッコミしか取り柄のない新八のどこに惚れたっていうの? ねェ」

 

「やばいアル、新八と見知らぬ女の光景で砂糖吐きそうになってきたネ……絶対BGMで目と目が逢う瞬間好きだと気づいたって流れてるヨ。銀魂らしからぬイベント発生中ネ」

 

 完全に蚊帳の外になりながらもその光景を眺めていた銀時は顔を引きつらせながら神楽にしか聞こえないくらいの小声で呟き、青い顔した神楽が同じく小声で吐き気を訴える。

 

 様々な疑問が過ぎる中、二人が仕方なく『とりあえず今の新八は気持ち悪い』という理不尽な解釈をしようとしたところで、少女の口から言葉が出てきた。

 

 

 

「……先輩」

 

 

 

「「へっ?」」

 

 幻覚か。否、少女の口の動きと呂律に合わせるように、そこからきちんと二人の耳に響いていた。『先輩』と。それも新八に向かって言うように。

 

「新八先輩……ですか……?」

 

 というか名前が出た。

 

「は、はい……そういう貴方は……桜さん、ですよね……?」

 

「……‼︎ はい……‼︎」

 

 しかも新八も少女の名前らしき言葉を出してた。自分の名前を呼んでもらえたからなのか、その言葉を聞いた少女──桜の瞳に涙が溜まり出した。そして……

 

「先輩‼︎」

 

「うわっ⁉︎」

 

 

 

 突然飛び込むように抱きついてきた。

 

 桜が、新八に。

 

 

 

「「ファッ⁉︎」」

 

 銀時と神楽は何処ぞの野獣先輩よろしくな仰天の声を上げた。しかも永井ゆうじ先生の漫画みたいに飛び出そうな程に目を見開いて(例えが分かりづらいわ)。

 

「さ、桜さん⁉︎ あ、あの、どうしたんですか⁉︎ 急に飛びついて……」

 

「新八先輩……‼︎ 私、ずっと先輩に久しぶりに会いたいって思ってました……‼︎ 土佐に引っ越してから、ずっと……‼︎ だから、貴方が新八先輩だと知って……嬉しくって……‼︎」

 

 新八の両肩に水滴が付く。桜の瞳から流れた歓喜の涙が、彼の肩を温かく濡らしていた。引っ越しという言葉からして、二人は離れ離れになった幼馴染みなのだろうか。というか新八にこんな可憐な幼馴染みがいたのだろうか。彼の幼馴染みと言えば金髪モヒカンで出っ歯のタカチンぐらいのはずだが……

 

「桜さん……あの、嬉しいのは僕も同じなんですけど……その、ウチの上司達が見てます……」

 

「え、先輩も嬉しいと……? よかった……私だけこの感情に浸っていたらどうなっていたかと………え? 上司? ………………あっ⁉︎」

 

 気づいたのか。今気づいたのか。さっきまで銀時と神楽を蚊帳の外にしていたというか、二人がいること自体気づいてなかったのか。別の意味でやばいと思っている表情を浮かべていた銀時と神楽が隣にいることに気づいた桜は、思わず顔をブワッと紅潮させた。

 

 そして悟った。見られた、と。すぐさま新八から離れ、申し訳ないという一心で二人に頭を下げた。

 

「た、大変お恥ずかしいところをお見せしました‼︎ まさか先輩の仕事仲間である皆様方がいることを知らずに……」

 

「えっ? あーうん、大丈夫だよ? 俺達はあまり気にしてないというか……何というか……」

 

 素直に謝罪する彼女に、何故かあたふたするように二度目の顔を引き攣らせた表情で戸惑う銀時。まともな雰囲気の女性と面を向かって話すことがあまりないからだろうか、彼がこのような場面を見せるのは珍しい。

 

「い、いやー。かまととぶって空気読まず新八(メガネ)に抱きついてたのならぶっ飛ばそうと思ってたけど、お前謝る時はちゃんと謝るタイプなんアルなー。ムカつく女じゃないから許すネー、うんう「コラ」イテッ」

 

「かまとととかムカつくとか言うんじゃねーよ。こういう真面目そうな子はその言葉で傷つくんだからな。ここテストに出るから」

 

 困ったように笑いながら、棒読みも入れながらどさくさ紛れに毒舌を吐く神楽。が、それに対して銀時は彼女の頭部にゲンコツを入れながら指摘した。いつもなら彼女に便乗するか便乗させるように何やら失礼な発言をするのだが、慣れないタイプの女性と話している影響かどうにも便乗する気にはなれないらしい。

 

「つーか……新八に思いっきり抱きついてたけど、何? お二人は幼馴染みか何か? ってか新八、お前にこんな可愛い幼馴染みがいるって設定あったっけ?」

 

「えっ。……ええっと、ですね……その……これ、どう言えばいいのかな……」

 

 新八は銀時の突然の問いに対し、いつも本心をはっきりと言う彼にしては歯切れが悪く、それでいて少し照れたように右頬を右手の人差し指でポリポリと掻きながら、自分と桜との関係を言うべきかどうか迷う様子を見せた。これを見た銀時と神楽はジト目をしながらこう思った。うわ、うぜー……と。

 

「先輩、ここは私の口から直接言わせてください。そちらの方がお二人も信じてもらえると思いますので」

 

「えっ……じゃあ、はい。お願いします……」

 

 言い淀む新八を庇うように、桜が彼の前に立って代わりに説明させてほしいと申し出る。新八は少々浮かない気ではあったが、彼女の気迫を感じる強い眼差しに押され了承した。その後すぐ、何故か頬を赤らめたが。そんな彼を気にせず、桜は一つ深呼吸してから銀時と神楽に向かって語り出す。彼女も途中で頬を赤らめ出したが。

 

「スゥ……は、はじめまして。志村新八先輩の幼馴染みで、元恒道館道場門下生の間桐桜です。そして……その……実は私……

 

 

 

 先輩の許嫁、なんです」

 

 

 

 その瞬間、ピシっと空気が凍ってすぐヒビが割れたような音が鳴った気がした。いや、近くで喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいる客のグラスの中の氷が割れた音が実際にピシっとしたが。

 

 ふと銀時と神楽の視線の先に見えたのは、桜が左手の薬指に嵌めている、光沢を放つ輪のようなものが。そこから連想されるものはアレしかない。指輪だ。

 

「あっ。これはその……小さい頃先輩が射的で手に入れたただのおもちゃ、なんですが……何れ先輩と結婚するので……その、雰囲気だけでも、ってなだけですので……」

 

 そう言って桜は指輪のおもちゃを片手で隠す。だが言ってしまっている。否、言ったのだと言い換えるのが正しい。『何れ先輩(しんぱち)と結婚する』。そうはっきりと、されども恋する乙女の顔で照れながら。

 

 銀時と神楽は俯き、そして顔に影を落としてゆっくりと顔を見合わせる。ギシギシと軋む音を鳴らすかのように、機械の如く。

 

「(………えっ? ちょっと待って? ねェ、今なんて言った? いい菜漬け? 何? 漬け物を作る係か何かなの? ねェ?)」

 

「(ゴメン銀ちゃん、私さすがにこれはボケに持ってこれないネ……だっていい菜漬けとは音程が違うもん。『いい』と『なづけ』が同じ音程で聞こえちゃってるもん。ちゃんと聞き取ってしまって『あ、これはボケに持っていったら地獄に堕ちるな』って悟ってしまったもん……)」

 

 これで銀時が顔を引き攣らせるのは三度目。桜の言葉をきっと聞き間違えたのだろうと思いながら無理矢理ボケに回そうとするが、ガクガクと肩を震わせて顔を真っ青にしている神楽によってその逃走経路を塞がれてしまう。

 

「「………………………………」」

 

「あ、あの……どうかなさいました? もしかして私、言ってはいけないことを言ってしまいましたか?」

 

「いや、その……多分僕が桜さんと婚約しているのが信じられないみたいです。僕、一応万事屋の中で浮かれてたので……」

 

「あ、そうなんですか……?」

 

 しばらく起きた、銀時と神楽の間での沈黙。それも新八と桜の会話そっちのけで。そして、銀時の微笑が微かに聞こえる。

 

「(………………今思ってること言っていい?)」

 

「(奇遇アルな。私もネ)」

 

「「(まだ確定してるわけじゃないのに……

 

 

 

 マジで新八に恋愛の優遇が効かされてる可能性が高くなっちゃったんですけどォオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎)」」

 

 

 

 江戸中に響きそうなくらいの叫び声を心の中に叫ぶ銀時と神楽。その勢いかつその場で頭を地面に叩きつけた。その部分に頭がめり込む程のヒビが割れ、二人の頭から大量の出血が起きる。

 

「ちょ、ちょっと何しているんですかお二人とも⁉︎ 何故出血する勢いで地面に頭を叩きつけたのですか⁉︎ いくらシリアス回でない限り出血がなかったことになる銀魂とはいえ、出血したらかなりの大事になりますよ⁉︎」

 

「……いや、この二人なら大丈夫ですよ。シリアス回でも出血してもガッツでなんとか乗り切る人達ですから……ハハハ……」

 

 メタ発言をしながら慌てて二人の安否を確認する桜に対し、新八は顔を引き攣らせながらこう思ったそうな。

 

「(やっぱり予想通りの反応をしたな、この三人は……)」

 

 

 

 新八と桜の関係と、許嫁である真相は次回にて。

 

「(逃げたな作者)」




次回、桜が新八に惚れた理由が発覚します。平穏を望む二人の若者がカップルになるのって、結構尊い……尊くない?
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