今回はアルム視点→クラウディア視点です。
「クラウディア―!遊びに来たよー!」
「…声が大きい。それともう少し遠慮しろ」
俺達は今日、クラウディアの家の前に来ていた。以前ライザがした遊びに行く約束を果たすためだ。
ただ、クラウディア個人とは友人になったが、バレンツ商会の人達はクーケン島にとっては客人である。なので、あまり無礼なことをしてはいけない。慎重かつ丁寧に事情を説明してお邪魔させてもらおうと思っていたのだが…ライザがいきなり気安さしかない発言をした。しかも中々の大声で。…正直、少し頭を抱えた。
「まあ、ライザにマナーとかは期待してなかったけど…」
「予想はしてたが、マジでやるとはなー」
「ひどいわよアンタら!?」
「流石にこれは甘んじて受け入れてくれ」
「うー、アルムまで…」
その辺りはたとえお前相手でも甘くはしないぞ。ルベルトさんは俺達を娘の友人と見てくれているみたいだから、その辺り甘めに対応してもらえるかもしれないが…そういう人達ばかりではないからな。
「あ、みんな!来てくれたんだね!…ライザはなんで落ち込んでるの?」
「ああ、少し説教をな」
「お説教?…もしかしてさっきのこと?」
「ああ。幾ら友達相手とはいえ、流石に初めて訪ねる家にあれは少しな…」
「それは…そうだね」
「クラウディアまでぇ…」
流石に商人の娘だからか、その辺りの意識はしっかりしている。…そのせいでライザがさらに落ち込んだが。
「それじゃあ、こんなところで立ち話もなんだからみんな上がって?」
「「「お邪魔します」」」「お邪魔します…」
…流石に落ち込み過ぎじゃないか?
「えっと、それじゃあ…ライザ、何か持ってきてくれたみたいだけど、それは?」
「…え?ああ、これ?」
クラウディアに話を振られ、ライザが持ってきていた包みを解いた。中に入っていたのはぷにを象ったクッションのような物が2つ。ぷにまくらだ。
「錬金術で作ったの。ぷにぷにしてひんやりしてるから今の時期枕としていいんじゃないかなって思って。寝心地は保証するわよ!」
「おう、マジですげえぞそれ。もう他の枕使えなくなるレベルだ」
「そうなんだ…ありがとう。見た目も凄く可愛いね」
「2つ目の方はルベルトさんに渡してくれ。立場上気苦労とか多いだろうから、こういうもので少しでもストレスを軽減できればと思ってな」
「ルベルトさんみたいな人がこれ使ってるところ、ちょっと想像しづらいけどね」
「ふふっ、そうだね。でも、喜んでくれると思うよ」
「うんうん、それならあたしも作った甲斐があるってものよ」
とりあえずライザの機嫌は戻ったな、良し。
「ねえ、錬金術で他にどんなものを作ったの?」
「えーっと、塗り薬とか丸薬とか、あと爆弾とか?あの時アンペルさんが使ってたやつね」
「採取用の斧や鎌もだな」
「うにを爆発させて針を飛ばす奴も作ってたよな」
「ここまでいろいろ作れると、錬金術に作れないものなんてあるのかなって思うよ」
正直、生き物でなければ大抵のものは作れると思う。当然、錬金術士の腕次第だろうが。
「そうなんだ…えっと、錬金術の素材集めって、冒険しながら採ってるの?」
「え、聞きたい!?聞きたいの!?」
「うわ、ライザのテンションがいきなり上がった…」
「勢いあまって話盛ったりしねえだろうな…」
「…そうなったら俺が訂正する」
そもそもまだ始めたばかりだし、冒険とまで言えるほど遠出もしてないしな…
「――って感じで、あたしたちは順調に冒険を進めてるのよ!」
「ふふっ、そうなんだ」
特に変に話を盛ることもなく、始まったばかりの冒険譚を嬉しそうに話すライザ。それを聞いているクラウディアは嬉しそうなライザにつられて笑っている。
「…いいなぁ」
聞こえてるぞ、クラウディア。…やはり羨ましかったみたいだな。
「…あ、そろそろいい時間だね」
「え?…ホントだ。じゃあ、今日はここまでかな」
「うん。クラウディア、次はあたしのアトリエに来てみない?」
「いいの?じゃあ…明日早速お邪魔しよっかな」
「午前と午後のどっちだ?ついでだし俺の妹も呼びたいんだが」
「えっと、じゃあお昼食べてから行くね」
エルもクラウディアに会いたがっていたしな、いい機会だ。
「ふっふっふ、クラウディア君。我がアトリエにようこそ」
「ようこそ!」
「ご自慢のアトリエにお招きいただきありがとうございます。錬金術士ライザリン・シュタウト様」
お昼を食べてから、フルートのケースを持って早速約束通りライザのアトリエに向かった。といっても、ライザが改造した屋根裏部屋に錬金術のための釜を置いただけのものみたいだけど…いい反応を期待してくれてるみたいだし、応えなくっちゃね?
それと、隣で一緒にポーズしてるのがアルム君の妹?すっごく可愛い。
「そうそう、こういう反応が欲しかったのよあたしは!それに比べてレントとタオは…」
「逆に聞きてえんだけどよ、俺らのあんなかしこまった態度見たいかよ?」
「…違和感すっごいわ」
「っていうか、クラウディアも結構ノリ良いんだね」
「だって、楽しそうだったから」
「アルム兄も「楽しいのは良い事だ」ってよく言ってるよね」
「楽しさっていうのは要するにやり甲斐だからな。真面目なことにしろ、こういうノリにしろな」
楽しさはやり甲斐…うん、凄くわかる。私もフルートを吹いてるときは凄く楽しいから。…最近は、ちょっとだけ寂しさとかも混ざっちゃってるけど。
「…っと、エル。自己紹介だ」
「おっと。初めましてクラウディアさん、エルマリア・レーゼンです!エルって呼んでください!」
「うん、宜しくねエルちゃん」
すっごく元気でいい子。私もこんな妹欲しかったなあ。
「えっと、それでクラウディアさん、その箱は?」
「これ?ちょっと待ってね…」
そういって私はフルートを取り出す。…うぅ、知らないうちに演奏を聞かれてた時の恥ずかしさがよみがえってきたよ…
「笛!」
「うん、フルートっていうの」
「おー…」
…すっごく目をキラキラさせて見てる。これ絶対に聞かせてってお願いされるよね…
「一回聞いたことあるけど、すっごく綺麗だったわよー」
「ホント!?」
ライザ!?そういうこと言わないでよ、何かエルちゃんの目のキラキラがこっちに飛んできてるような感じがするし、聞いてみたいですオーラが溢れてるよ!?
…うう、こんな目で見られたら断れないよ…
「え、えっと…じゃあ、一曲…」
「おー!」
「お、またあれが聞けんのか」
「違う曲かもよ?どっちでも聞いてみたいけどさ」
「じゃあ皆早速椅子に座って聞こう!エルちゃんはあたしの膝の上ね?」
「…あー、なんかエルがすまん」
「だ、大丈夫。…すぅー…」
すっごく緊張するけど…うん、期待してくれてるみたいだし、頑張って演奏しよう。折角だし、前とは違う曲。――ちょっと人を寄せ付け難いところがあるけど、優しくて頼りになる「騎士」をイメージしたこの曲で。
「…では」
「…前のとは全然違う曲だった。こんなのも吹けるんだねクラウディア…凄い」
「なんつうのか、力強いっつうか…やる気が出てくる感じの曲だったな」
「うん。胸の内が熱くなるっていうか」
「キレイなのにカッコよかった!」
「その内、楽器の1つでも覚えてみたくなったな」
なんとか奏で切れた…上手く行って良かった。みんなからの絶賛も、前よりは素直に受け止められそう。…なんか、アルム君だけちょっと方向性が違うような気がするけど。
「もう一曲聞かせてもらってもいいですか!?」
「エル。…あー、すまんな」
アルム君がエルちゃんを止めようとするけど…なんだろう、みんなの前で2回も演奏したからかな。恥ずかしさより、演奏したい、期待に応えたいって気持ちの方が強くなってる。吹っ切れたっていうのが一番近いのかな。
「大丈夫だよ。…この前してくれたアンコールにも応えなくちゃだしね?」
「…あれは忘れてほしかったんだが」
「無理だよあんなの。それに、最初から聞いてたわけじゃないでしょ?」
「言われてみりゃ、あの時は途中からだったな」
「吹いてる人を探しながらだったから、最後の方以外はちゃんと聞けてないしね」
「うん。だから今度は最初から。聞いていってね?」
「うん、聞かせて!」
「聞かせて下さい!」
「ありがとう。では…」
友達の期待に応えるのが、友達に褒めてもらえるのが、こんなに嬉しい事なんて知らなかった。友達といる時間って、凄く楽しい。
この素敵な友達と、もっと一緒の時間が欲しい。だから…
「…すっげえ」
「なんか、ちょっと感動しちゃったよ」
「…言葉が出ないな」
「妖精さんみたいだった…」
「…もう、綺麗としか言えないよ、あたし」
「ありがとう。…ねえ、さっきの代わりってわけじゃないんだけど、ちょっとお願いしたいことがあるんだ」
「なに?」
「私も、冒険に連れて行ってほしいな」
一歩、踏み出そう。お父さんには、もっと心配をさせてしまうけど…みんなと一緒に行きたいって、そう思ったから。
Q,ライザ落ち込み過ぎじゃね?
A,好きな男の子と優しい系の友達に自分の行動を「それはちょっと…」なんて言われたらそりゃ落ち込みます。ちなみにクラウディアはこの時苦笑いしてました。
Q,ルベルトさん、ぷにまくら喜んだの?
A,最初は戸惑うけど、2日3日でぷにぷにの魔力に取りつかれます。もうこれ以外で寝れなくなりました。
Q,クラウディアが最初に演奏した曲って何?
A,「騎士様は無双」なんて呼ばれてるあの曲です。
Q,クラウディア、早期加入フラグ?
A,ノリと勢いに任せて書いた結果がこれだよ!
ここまで読んでいただき、有難うございます。