変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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ライザとタオとレントの漫才を書くのが楽しい。こういう時、アルムは大体意図せず話を振る役になります。

アトリエ完成回。そして遂に「奴ら」が出現。因みに基本皆クラウディアには甘い。
今回はライザ視点→アルム視点です。


完成したアトリエ、出現した悪魔

「ふう、運び終わったな」

「お疲れ様!さーて、ちょっと休憩したら始めるわよ!」

 

小屋の修理用の素材を調合して、広場まで運び終わった。…アルムとレントが腰を結構気にしてた。床に気を使って落とさないようにゆっくり運んでたら痛くなってきたらしい。アルムの「親父は日頃こんな痛みと戦ってるんだな…」なんてつぶやきが印象的だった。…ごめんね?

それで、改めて今から建て直す小屋を確認。…うん、思った通り、これだけ素材があれば完璧に修理しきれそう。

 

「しかし、まさか家の建て直しなんて経験するとは思わなかったぜ」

「ホントだよね…肉体労働とか、僕には向いてないのに」

「あれだけ採集を手伝っておいて、それは今更だと思うがな」

「大丈夫だよタオ君、いざとなったら私も手伝うから!」

「…クラウディアにそんなこと言われたら頑張るしかないじゃん、はあ…」

 

…絶対あたしが同じこと言ってもそんな反応しないわよね。まああたしもクラウディアにそんなこと言われたら同じ反応すると思うけど。

 

「それで、ライザは全体の指示出しをするんだったか」

「そうよ。だって完成図はあたしの頭の中にしかないから、全体を見て指示を出せるのはあたしだけだもん」

「そうだな。…しかし、どうにも新鮮だな」

「何が?」

「お前の指示で動くことが。いつもは大体俺から言い出すか、偶に偶然足並みが揃うかだったしな」

「…そうね、アルムに指示出しとか、初めてするかも」

 

まあでも、レントとタオより素直に聞いてくれそうだから、大丈夫だと思うけど。

 

「俺達には大体指示出しまくりだけどな」

「振り回されまくりともいうよね」

「アンタ達はあたしにツッコミ入れなきゃ気が済まないの!?」

「「済まない」」

「ふふふっ」

 

あーもう、クラウディアに笑われちゃったじゃん!

 

「よし!もう休憩終わり!早く始めるわよ!」

「ああ」「へいへい」「う、藪蛇だったかな…」

「皆、お昼の用意はしておくね!」

 

さあ、アトリエ建築、始まりだ!

 

 

「さーて、まずは土台を補強するわよ」

「これを怠って作業中に崩れましたは笑えないからな」

「ある意味そこから始まったもんね、この計画」

「おー怖え…じゃあ、しっかり固めるとするか」

 

 

「壁に建材を貼り付けて固定して、海草土を塗るのか」

「コイツで丈夫な壁が出来上がるなんて、想像つかねえな」

「あ、塗るのは僕がやるよ。力とかあんまりいらなさそうだし」

「じゃあアルム、次はこっちの壁お願いね!」

 

 

「みんなー、お昼できたよー!」

「よし、休憩だ!」

「どれどれ…お、紅茶とサンドイッチか。いただきます」

「美味いな。…ん、バターが塗ってあるのか」

「な、なんか凝ってる感じがする…あたしももっと勉強しないと…」

 

 

「次は中か…こっちは結構綺麗に残ってるのが幸いだな」

「流石に一部張り替えた方が良いところはあるけどね」

「錬金釜はあそこに置くから、あの辺りは特に強くするわよ!」

「火も焚くしな。この周りは石材だけで作る方が良さそうか」

「火事になっちゃうといけないもんね」

 

 

「後は…屋根ね。アルム、お願い」

「ああ。…よっ、と。レント、材料をくれ」

「…ひとっ跳びで上に乗れるんだ」

「体は大きいのに身軽だね、アルム君…」

「こっからはアルム任せだな…」

 

 

「っと。これで終わり、か?」

 

屋根の作業を終わらせて降りてきたアルムがそう聞いてきた。…うん、これで完成!

 

「できたーっ!」

「ははっ、マジか!家一軒直しちまったぜ俺達!」

「なんていうか…想像と現実って、意外と近かったんだなって思ったよ。…本当に、できちゃったんだ…!」

「ああ。…本当に、錬金術は凄いな」

「うん。こんなことまで出来ちゃうんだね…!」

 

みんな、完成したアトリエを見て感動してる。目に見えてハッキリわかる、あたしたちの成果だもんね。

 

「あ、そうだ。名前ってあたしが決めていい?」

「いいぜ。お前の錬金術で直したようなもんだからな」

「それで、どんな名前にするんだ?…いや、もう解り切ってるか」

 

アルムはもう解ってるみたいだけど…勿論、言うのはあたしの口から!

 

 

「ここは…「ライザのアトリエ」だよ!」

 

 

 

 

 

「さて、折角アトリエを建てたから、それを記念して1つ誓いを立てたいと思います!」

 

完成したアトリエの中に入って、ライザがそんな事を言い出した。

 

「どんな内容だ?」

「勿論、錬金術士としてもっと上達することよ!誰にも負けないくらい凄い錬金術士になる!」

「…成程」

 

すごく「らしい」誓いだ。

 

「なら、俺も改めて…俺はあの塔を制覇して、冒険者として名を上げてやる!」

「僕は、家の書庫の本を全て読破したい。その知識に触れて、更に先へ行きたい!」

「私は、いつかお父さんの前でも、フルートを演奏する…!」

 

ライザが誓いを立てたのを皮切りに、他のみんなも各々の誓いを口にする。…次は俺か。そうだな、これくらいは明かしてもいいだろう。

 

「俺は…そうだな。方向性としてはタオと似ていると思う」

「タオと?」

「ああ。…クーケン島には、みんなが知らない大きな秘密がある」

「秘密?」

「俺がそれを知ったのは最近だし、切っ掛けも偶然みたいなものだ。…そして、その秘密は、俺が島の外に出ようと思った動機なんだ。まあ、いきなりアンペルさんに出会えたから、当初の目的はほぼ達成したようなものだが」

 

本当、あの人とここまで早く会えたのは幸運もいいところだと思う。

 

「ただ、それでも秘密が解明されたわけではないし、タオの本にその全てが載っているとも限らない。だから、この冒険の間になにか核心に迫れる情報を見つけたいと思っている」

「つまり、アルムの誓いは…」

「「クーケン島の秘密の全てを知る」ことだな。…そうだな、まず目指したいのはあの【流星の古城】だな。あれも確かクリント王国の遺跡だからな、何かしらの繋がりが見つかるかもしれない」

 

アンペルさんとタオとで共有している情報も、あくまで推測の域を出ないからな。ああいった大きな遺跡なら、何かしらの痕跡はありそうだ。

 

「それに…」

「それに?」

「単純に冒険とか、そういうのが好きなんだよ。自分が知らないものをこの目で、この脚で見つけられることがな」

 

この冒険が終わって、クーケン島の事も一段落ついて、その上でエルが大きくなったら…世界を色々見て回るのもいいかもな。できるなら、ライザも一緒に。

 

 

さて、アトリエも完成して、もう日も落ち始めた。そろそろ島に戻るべきだな。

 

「しかし…完成はしたが、まだ足りないものは色々あるな」

「ま、そういうのは思いついたら色々持ってくればいいでしょ」

「小物とかも色々持ってきて飾ってみるね」

「俺も何か持ち込んでみるか…ん?」

「どうしたのさ、レント?」

 

…何だ、この感じは?

 

「…アルム」

「ああ。…森の空気がざわついている」

 

今までとは何かが明らかに違う。…何か、不味い事が起こっているような…

 

「…どうする?」

「…放っておいたら不味い気がするな。見に行くぞ」

「だ、大丈夫なの?」

「それを確めに行くんだよ」

「…ついて行くわよ。戦力は多い方が良いでしょ」

「わ、私も!」

「駄目…と言っても聞かないだろうな。いざとなったら逃げる準備はしておいてくれ」

 

さて、この嫌な感じは…森の奥か。

 

 

物陰に隠れながら、前を慎重に確認して、ゆっくりと森の奥に進んでいく。…どんどん嫌な気配が濃くなっていくな。

 

「…あたしにも分かるようになってきたわ。なんか、澱んだ感じがする」

「うん…なんか、音が無くなっていく感じ…」

「…もう、すぐ近くにいるな」

「な、何があるんだよー…」

「リラさんとはまた違う、威圧感みてえのがあるな。…正体は何なんだ?」

 

…どこだ、どこにいる?目を凝らして注意深くあたりを見渡すが、まだ何も見えてこない。どこに…

 

「――っ!アレか…!?」

「見つけたのか!?」

 

森の奥、まだ小さいが、確かに見えた。間違いなく見たことのない、白い何か。…だが、遠すぎてよく解らない。どうする…

 

「…近づくぞ」

「…大丈夫か?」

「このままじゃ何を伝えればいいのかすら解らねえだろ。…いざとなりゃフラムかなんかで隙を作って逃げりゃいい」

「…みんな、コアクリスタルの準備をしておいてくれ。近づいてきたら集中砲火を仕掛ける」

 

出来るだけ音を立てず、ゆっくり近づいていく。…少しずつその威容が見えてきた。赤いラインが入った白い胴体に、背中と尾の先から宝石なようなものが生えている。頭部には角のような突起がある。

…間違いなく、強い。見ただけで解る。だが、それ以上に…

 

(…「おかしい」)

 

違和感、いや異物感というべきか。明らかにこの場に、下手したら世界そのものにそぐわないものを持っている「ナニカ」。…これは、魔物というよりは…

 

(【悪魔】…!)

 

そうとしか、思えなかった。

 

「…な…なんだよ、アレ…」

「…ふ、震えが、止まらない…!」

「…は…ぁっ…!」

 

…タオとライザが恐怖に震えている。クラウディアは呼吸すら詰まり出している。…外見的特徴は掴めた。もう退くべきだな。

 

「…動けるか、みんな?早く戻るぞ」

「ああ、アガーテ姉さんとアンペルさん達に早く伝えねえと」

「う、うん」

「ク、クラウディア、動ける?」

「っ…う、ん。なんと、か…」

 

頼むから、こっちに気づいてくれるなよ…?

 

 

「…追いかけてきてねえな?」

「…大丈夫そうだな。あの嫌な感じも薄れた」

「よ、良かった…」

 

正直、まだ手が震えている。もしあそこで気づかれたら…勝てたとして、俺たち全員無事では済まなかっただろう。…最悪、誰かの命が危なかったかもしれない。

 

「クラウディア、ゆっくり息をして。もう大丈夫だから」

「…すー、はー…」

 

ライザがクラウディアを落ち着かせている。…お前も怖かっただろうに。強いな、お前は。

 

「クラウディアが完全に落ち着き次第戻って、アガーテさんとアンペルさん達にアレの事を話そう。特にアンペルさん達は調査とかであそこに立ち入ることもあるだろうしな」

 

折角アトリエが完成した日だって言うのに…全く、それどころでは無くなってしまったな。

 




フィルフサとの戦闘は回避しました。見ただけでヤバいってわかるしね、アレは。

Q,本当にフィルフサには気づかれなかったの?
A,ギリギリ全身が見える距離までしか近づいてませんでした。なので気づかれる前に退避成功しました。

ここまで読んでいただき、有難うございました。
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