変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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気まぐれ更新(間が開くとは限らない)
二次創作2話目にしていきなり戦闘描写。短いけど。

ザムエル氏に対する扱い及びに、作中のキャラが実際にそうなるわけではないですがエグイ表現が出るので、念のためアンチ・ヘイトとRー15と残酷な表現のタグを足しておきます。後、描写してたらアルムこれ強いわってなったので主人公強キャラのタグも入れておきます。斬り方は調べました。
時系列は「アルムとライザ」よりは後で、でもそんなに経ってないくらい。

それと、直接飲酒はしないけど未成年がアルコールに酔ってる描写があるのでそこも注意です。


アルムとレント

「…」

「…」

 

砂浜の上で、俺は一人の男と対峙している。レント・マルスリンク。オレンジ色の短髪と精悍な顔立ちを持つ、がっしりとした体つきの少年。俺の親友の一人だ。

レントは両手剣を正眼に構えている。俺は防刃仕様のブーツを履いた脚を開き、前に出している左脚に力を込める。決闘…とかではなく、俺が気が向いたときにやってる実戦形式の手合わせだ。普段はレントが素振りだけやっている。

…立会人はエルだ。物語の決闘の場面が好きとかで、どのポジションでもいいから真似事をしたくなったらしい。

 

「それでは…始め!」

 

エルのその言葉と同時に、俺とレントは前に駆け出した。まずはレントが体の捻りと梃子を利用したコンパクトな一文字斬りを放ち、俺がそれをしゃがんで回避。レントはすかさず左袈裟斬りを繰り出すも、それを跳んで躱しながら額に右膝を叩き込もうとする。しかし咄嗟の反応か読まれていたのか、頭を右に傾けるだけで躱された。そこから俺の脚を掴もうと腕を伸ばしてきたので、肩を足場にし蹴り気味に跳躍。レントの間合いのギリギリ1歩外に着地し、すかさず飛び蹴りで距離を詰めつつ攻撃。レントはギリギリで振り向くのが間に合い、腕でガードしながら剣を構え、真っ向斬りを放つ。

 

「もらったぁ!」

「ッ!」

 

俺はすぐさま着地し、右側に軽く跳んで回避。そしてその勢いのままに…

 

「シャラアッ!」

「がっ…!」

 

右足を軸にした回し蹴りを、背中に叩き込んだ。完璧と言っていいほどのクリーンヒットだった。そのまま体制を崩し、膝をつくレント。そして、そのまま、お手上げと言わんばかりに両手をあげ…

 

「…参った」

「勝者、アルム兄!」

 

降参を宣言した。最後のは少しヒヤッとしたが…上手くいったな。

 

 

「なんていうか…2人ともよくわかんない動きしてた」

「お互い手の内が大体解ってるからな。初見の相手にあんなことはできないよ」

「しっかし、お前どうやったらあんなに砂の上で動けるんだよ。特別な訓練でも受けてるとか言わねーよな?」

「小さいころから探検も兼ねて砂浜を結構走り回ったりしてたからな。慣れてる」

「いやでも最後の回し蹴りとかなんだよあれ。普通転ぶか威力出ないかのどっちかだろ。正直吐くかと思ったぞ?」

「流石にあれはちょっとした賭けだったな。失敗したら負けだったよ。威力に関してはすまん、手加減できなかった」

 

手合わせが終わってお互いに感想を言い合う俺とレント。ただぶつかり合うだけじゃなく、その後にこうやってお互いの意見を出し合う方が上達も早くなるからだ。

 

「こっちとしては、あの時突きが飛んできてたら崩されて、そのまま押し切られてたかもな。多分賭けに出ることすらできなかった」

「…あー、言われてみりゃそっちの方が速く撃てたな。くっそ、いざって時どうしても力技に頼っちまうな。これじゃ魔力有りのお前と戦うなんてまだまだ遠いぜ」

「…正直、そっちは手合わせではやりたくないんだがな」

「何でだ?」

「例えば最後の回し蹴り。あれに俺が魔力を込めてた場合…多分背骨が折れて脊髄が焼ける」

「いや怖えな!?その辺セーブするとかできねえのかよ!?」

「蹴りの威力は兎も角、魔力はまだちょっとな。少なくとも人間相手には駄目だ」

 

俺が扱えるのは炎と風の魔法。10歳の頃に炎を出してから全属性試してみたら風も出たが、体に纏わせることはできたが飛ばすのは何を試しても無理だった。なので、この2属性を脚に纏い動きを加速させつつ強化した蹴りと炎を同時に叩き込むのが俺の本気の戦い方だ。とはいっても、威力に関してはまだその辺に鎮座してた岩にしか試したことは無い。一撃で砕け散ったが。

因みに風が出せるようになったことをライザに教えたときは凄く目をキラキラさせてた。こっちとしては飛ばせるお前やタオの方が羨ましいんだがな…

 

「ところで気になったんだけどさアルム兄」

「何だ?」

「掛け声、ちょっと乱暴な感じだったね。しゃらーって」

「…あー。なんか、テンション上がってしまってな」

「お前、普段が普段だからギャップすげえんだよな。前はタオに立ち会い頼んだんだが、メチャクチャビックリしてたぞ」

「うん、わたしもびっくりした。アルム兄にこういうとこあるんだって」

 

普段は落ち着いてるとかよく言われる俺だが、こうしてレントとの立ち合いをすると急に気が昂って、ちょっと乱暴というか好戦的になってしまう。俺をよく知ってる人たちがこれを見た時はみんな驚いてたな。…ライザは考えるような仕草をして何か呟いてたが。何を言ってたんだろうか。

 

「ま、とりあえず改善点も色々見つかったし、ちょっと休んでから特訓の続きだな。付き合ってくれてありがとよ、二人とも」

「ああ。次も勝たせてもらうぞ」

「それとザムエルさんをやっつけられるように頑張れー!」

「おう!あの糞親父もいつかノしてやる!」

 

そんな感じで今日の特訓は終わり。まだ家に帰るには早いし、手合わせの振り返りを改めてしつつ、雑貨屋で面白そうな本が無いか見てみるか。

…しかし、エルにすらそういう人だって見られてるのか、ザムエルさん。否定できる要素が無いが。

 

 

 

 

「さて、と…」

 

近くの岩場に腰を下ろしながら、まずはさっきの手合わせの反省を改めてすることにした。っつっても、やっぱりあいつが言ってた通り最後の一撃くらいしか…いや、そもそもあいつも熱くなって真っ向勝負仕掛けに来たからああなっただけで、あそこで跳び蹴りで脚狙われてたらこっちが崩されて反撃もできず負けてたんじゃねえの俺?

そう考えるとあいつも意外と隙があったりするんだよな。逆に言えば、純粋な力ではまだ差が大きいってことなんだろうが。

 

「まだ遠いな。あいつも、親父も」

 

冒険者としてあの山の彼方の塔を攻略して、島の連中に目にもの見せるっていうのが俺の目標だ。その為には、アルムにも親父にも勝てるくらいの力を付けないといけねえ。特に親父は、昔は傭兵として旅してたらしいが今じゃ飲んだくれの家庭内暴力ヤロウだ。…最近なんか、ちょっと焦り出してるような感じがするが。まあ知ったことじゃねえな。

アルムの奴は、あいつも普段何かしら鍛えてるんだろうし、近いうちに間違いなく落ちぶれて鍛え直してもねえ親父より高い壁になる。あいつに勝てるようになるには…まあ、結局のところいつも以上に特訓するしかねえか。

 

「っし、やるか」

 

まだちょっと背中が痛むが…これはこれで、体に無理をさせない動きの特訓になる。力は大事だが、それだけであの塔に行けるとは思ってねえ。技も鍛えなきゃな。

 

 

で、日が暮れてきたからそろそろ切り上げて家に帰ろうとしてたら…その途中でライザとボオスに会った。その先には人だかりがある。…まさか、また親父か?

 

「ライザ、ボオス。なんだこれ?」

「あ、レント!」

「レントか。大体予想はついてるだろう?ザムエルだ」

「やっぱりか…また何かやらかしたのか?」

「あー、えっと」

「いや。今回は自業自得ではあるが、やられている方だ。…アルムに」

 

アルム?あいつが自分から騒ぎを?考えにくいな…

 

「アルムって、臭いだけで酔っちゃうくらいお酒に弱いよね?」

「おう」

「で、酔っぱらっちゃうと…いつもの落ち着いた感じが無くなって、ちょっと口調が乱暴になるよね?」

「…おう」

「…すっごい家族大好きで、ザムエルさんに良くない感情持ってるのは知ってるよね?」

「…」

 

なんだ、この物凄い嫌な予感は。あいつ今何してるんだ…?

 

「…いつも見たいにお酒売れって怒鳴ってたザムエルさんに、「昼間っからダラダラ酒飲んでんじゃねえよ。子供が見てんだろうがオイコラ」みたいなこといって、その…そのまま説教してる」

「説教!?」

 

うっかりノしちまったとかじゃなくてか!?予想外にもほどがあるだろ!っていうか酔ったアイツやっぱ口悪いな!

 

「ザムエルさんも最初は、怒鳴り返してたんだけど…」

「その生活態度のせいで妻に逃げられたことを指摘されたあたりから完全に冷静さを無くし、アルムが主導権を握り出したな。更に「レントがアンタのところから巣立った後、ここに戻ると考える可能性は低い。そうなったら本当に1人ぼっちだぞ」と追撃したら狼狽して後ずさった」

「…やっぱ気にしてたんじゃねえか」

 

ったく、だったら母ちゃんにはちょっとくらい優しくしときゃ良かったんだ。そしたら出て行かれることも無かっただろうによ。

まあ、今更それを知ったところで俺も目的を変える気はねえけどな。せめて、巣立つ俺の背中を見届けるくらいはしてくれよ?

 

「まあ、近くには護り手達もいるし、暴れ出しても大事には至らないだろうが…この事態を速く収める為に手を―」

「っレント!おい、お前のダチだろうがこいつは!なんとかしろ!」

 

貸してくれ。そう言おうとしたであろうタイミングで親父が俺に気づいた。だが、俺の返答は一つだ。

 

「できるわけねえだろ!酔っぱらったそいつマジで性質悪いんだよ!俺が口で勝てるわけねえだろうが!」

「っていうかそもそもレントはアンタみたいにとやかく言われるほど問題ある奴じゃねえし、むしろ母親に会えないわ、日頃酒臭さと暴力に見舞われてるわで完全に被害者なんだよ。アンタのせいでな。解ってんのか?」

「ぐっ…!」

 

アルムがそう言って親父が怯んだところに、エルが近づいて行った。…エルが!?いや危ねえから離れろ!アルムも流石に酔いが吹っ飛んだのか、慌ててエルを止めるようとするが…エルは左手を腰に当ててザムエルさんをビシッと指差した。

 

「いつもレントさんをいじめてるのに、自分がピンチになったら辛いことを押し付けようとするの…」

「な、何を…」

「みっともない!!」

「!!!」

 

その一言に…親父はもう、何も言えなくなっていた。流石に、あんな小さな子供に怒られるのは堪えたみたいだな。

 

「…ある意味最強かもね、エルちゃん」

「アルムの影響か、妙に利口で度胸があるからな。…どうする、レント」

「…俺じゃどうしようもねえよ、なんて言えばいいのか解らねえし」

「…あ、父さんと母さん」

 

カールさんとミオさん?2人も来てたのか。

 

「やあ、レント。いきなりだけど、ザムエルは私たちに任せてくれないか?」

「ようやくゆっくり話ができそうな状態になったからね。…あの子には感謝しかないよ」

「…わかりました、お願いします」

 

2人に親父を任せて、俺達はアルムとエルのところに向かった。

 

「ようアルム、さっきぶりだな」

「レントか。ライザとボオスも…変なとこ見せちまったな」

「あ、レントさん。ライザお姉ちゃん。ボオスさん」

 

口調からすると、まだアルムは酔いが抜けきってないみたいだな。少し顔も赤いし。

 

「すまんボオス。騒ぎになっちまった」

「お前が酒に極端に弱いのは知っている、気にするな。むしろよく暴力沙汰にせず収められたと思うくらいだ」

「そうか。それと…悪いな、レント」

「何がだ?こっちとしてはようやく親父が大人しくなりそうな切っ掛けを作ってくれたんだ。むしろ感謝してるよ」

「そうじゃなくてな…ザムエルさん」

「?」

「お前がやる前に、エルがやっつけちまった」

「すまん、わたしがやった。むん」

 

アルムの物言いと、胸を張ってどや顔をするエルに、その場にいた全員が噴出した。俺やライザは勿論、ボオスすらだ。反則だろそれは!?

 

「っはははははは!そうだな、言われてみりゃそうだ!親父はエルに負けたんだよな!はははははは!」

「正確には止めだけだが…くっ。エルにしか、刺せなかっただろう、止め、だな、くくっ」

「あははははは!もう、ホントにエルちゃん最強だよ!」

「むんっ」

「あははははは!それダメ!可愛くて面白くてダメ!あははははは!」

「今後エルの持ちネタになるな、これ」

「流石にそれは親父が不憫になるからやめてやれ!ははははは!」

 

つーか持ちネタってなんだ何を目指してんだ!気になってもっと笑えてくるんだが!?ライザとかもうツボに入ってるぞ!?

 

「さて、と。後はカールさん達が上手くやってくれれば万事収まるか」

「おじさんたちなら大丈夫だと思うよ?ザムエルさんの事一番気にしてたもん」

「そうだな。あの人たちなら心配いらないか…で、いつまで笑ってんだみんな?特にライザ」

 

マイペースだなお前ら!?この大惨事も収めてけよ!

 

「いや、だって、なんか、ツボに、入って、ちょっと、腹筋が」

「アルム兄」

「何だ?」

「なんかライザお姉ちゃんが辛そうだからぎゅってしてあげて?」

「えっ」

 

唐突にエルから飛び出す爆弾発言。いや、別の意味で収まんなくなるぞこれ?

 

「…人前でんなことできるか」

「むーん、そっかあ…いい方法だと思ったんだけどなー」

「え、えーっとエルちゃん?なんでいきなりそんなこと?」

「ひみつ」

 

そりゃバレてるからだろ、お前がアルムに惚れてんの。…つーかライザの知り合いはアルム以外、親父すら気づいてるし、なんならアルムも薄々感づいてんじゃねえの?

 

「だ、大丈夫だから!もう落ち着いたから!ね!?」

「そっかー」

「うん、そうなの!」

「…」

「えっと…」

「む」

「はいストップ」

 

アレ絶対また笑わそうとしてたよな…色々末恐ろしいぜホント。まだ11だろ?

 

「あー、なんだ。笑い疲れただろうし、今日はもう家で休んだらどうだ?」

「そ、そうだね!じゃあねみんなまた明日!」

「またねー!」

 

そうして逃げるように帰っていったライザを見送る俺達。…とりあえず、この別の意味で変な空気をどうにかしようとアルムに話しかけようとしたら…

 

「…人前じゃなきゃ、できるんだがな」

 

…物凄い小さな声だったが、なんかすげえ発言を聞いちまった気がする。え、お前も惚れてたの?言っちゃ悪いが、あいつ恋愛に関しては割とヘタレで、お前にアプローチらしいアプローチかけれてなかったよな?何が切っ掛けだ?

 

「…何でか知ってるか、ボオス?」

「…屈託のない笑顔にやられた、らしい」

「何で知ってんだ…」

「俺はお前たち程あいつとの距離が近くないから、かえって相談しやすかったそうだ」

「…そういうもんか」

 

…とりあえずこのことはまだ俺たちの胸の内にしまっておくか。バレバレのライザは兎も角、まだ表に出せないそれをバラすのは趣味悪いしな。

そしてこの場は、ボオスと当事者であるアルムが号令をかけて一件落着となった。

 

 

その夜、もう寝るかって時間に親父が家に帰ってきた。…あんな消沈した親父、初めて見るぜ。

 

「…レント」

「…何だよ」

「…」

 

…何も言わず部屋に入っちまった。何か言いたかったのかもしれねえけど…まあ、気にするだけ無駄か。殴られるよりはよっぽどいいぜ。

 

「…さーて」

 

明日からも特訓頑張るか。俺の夢の為に、そしてアルムに勝つために。

 




Q,これ戦闘時間どれくらい?
A,10秒無いくらいです。

Q,この手合わせ、アガーテさんは何も言わないの?
A,普段はまともなアルムは勿論、原作より3人の悪ガキ成分が薄れた結果、レントに関してもそこそこ信頼されてます。やりすぎないだろう、ということで。

Q,ライザは何を呟いてたの?
A,「これはこれでアリかも…」

Q,この幼女強くない?
A,非戦闘面では最強かもですね。

Q,ライザ→アルムと比べて、アルム→ライザがあっさりじゃない?
A,はっきり描写するとしたらアルム視点で素面の時になります。今回はレント視点で、しかも酔ってたので。

Q,ザムエルは何を言おうとしたの?
A,…原作のライザみたいに、自分が悪いと思っていても言いにくい事ってありますよね。そういうことです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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