今回はアルム視点→ライザ視点→「彼」の視点です
「――来るぞ!」
咆哮した竜は、まず息を大きく吸った。今まで他の魔物で何度も見てきた、ブレス攻撃の予兆。だが、コイツのそれは恐らく他とは桁違いだ。タイミングを見計らって避けなければ、最悪この一発で終わる…!
――ガァァッ!
竜の口から、丁度俺達を中心を打ち抜くように火球が放たれた。俺達はそれを各々横に跳んで回避、丁度4対4で分かれた。こっちにいるのは…タオ、ボオス、ランバーか。
「さて、どっちを狙って…!」
考えている途中で、竜が翼を振り上げながらこっちに向かって来た。俺を爪で引き裂こうというのだろう。
「ハッ!」
俺は、振り下ろされた翼に対し蹴りを合わせた。っ、重いな…!だが、ほんの少しだけ隙が出来た!
「セイクリッドコード…!」
「闇夜の帳!」
「コーリングスターっ!」
3人の魔法攻撃が竜に直撃する。それでもほとんど堪えてないようだが…
「アクセルダイブッ!」
「はああっ!」
「おおおッ!」
「お。おりゃあああ!」
レント達の剣が竜の体に傷を付ける。傷がつくなら無敵じゃあない、つまり倒せる相手だということだ!
「無理はするなよ!一撃入れたら即退避、次に備えろ!」
「解ってるぜ姉さん!アイツがこっちに来たら、受けるのは俺がやるぜ!」
「頼りにしてるわよ、レント!」
「でも、無理はしないでね!」
レントがああ言った以上、向こうは心配しなくていいな。
「アルム、脚は大丈夫?」
「ああ。…とはいえ、あまり何回も続いてほしくは無いな。向こうの限界とどちらが先か…」
「そもそも、こっちに付き合わずにブレスだけしてくる可能性もあるな…」
「そ、そうなったらこっちが不利過ぎるんじゃ…!?」
俺ならいざとなったら飛びつく手段があるが…その隙にボオス達が狙われたら拙いな。やるなら、奴の狙いがレント達に向いたときか。さて、次の奴の行動は…?
――ゴォォ…
…?風の流れが…?ッ、竜巻か!?
――ガァッ!
俺達の中心に竜巻が発生した。こんなこともできるのか…!再び横に跳んで躱したが…
「…あっ!?」
「ちっ、ボオス!ランバー!」
回避行動を取った瞬間に、竜がボオスとランバーに突撃した。くそ、間に合うか!?
「…うっ、あ…!」
「…!」
「止まれぇ!レヘルンっ!」
「レヘルン!」
ライザとクラウディアのレヘルンが直撃するが、それでも竜は止まらない。ボオスは迎え撃とうとしているみたいだが、いくら何でも無茶…!ここから、届くか!?
「ノルデンブランドッ!」
竜目掛けて、数多の氷の短剣が飛んでいく。が…
――グオオッ!
「うわあああっ!」
「ぐあっ!」
ほんの少し間に合わず、ボオスとランバーは尻尾の一撃で吹き飛ばされた。幸い、下に落ちずに済んだみたいだが…!
「てめえッ!ブラッドスラスト!」
レントが怒りのままの一撃を振るうが、大きく振られた尻尾に弾かれ、まともに入らなかった。ノルデンブランドは刺さったから、翼膜へのダメージは入ったが…
「2人とも、無事か!」
「ぐ…何とかな…」
「ボ、ボオスさん、俺を庇って…」
「2人は少し離れたところで休むんだ!道中の魔物は一掃してある、襲われる心配はない!」
「…っ、解った…」
「ボオスさん、俺の肩を…」
そういってここから離れていくボオスとランバー。…さっきの動き、明らかに狙っていたな。コイツ、俺達を少しづつ切り取って確実に数を減らそうとしてきているのか?だとすると、かなり頭が回る奴だな…
「少し強引にでも、攻めた方が良いかもしれない」
「…方法があるのか?」
「一応は。…ただ、かなり危険ですが」
「なら、余程の状況にならない限りは駄目だ。こちらは6人いる、お前1人が無理をする必要はまだない筈だ」
「…解りました」
…ボオス達がやられて、少し焦ってしまっていたか。確かに、戦況は未だこちらが有利。確実に詰めていく方が良いな。
「さあ…来い!」
少しずつ、お前の力を削いで行く…!
「大分、効いてきてるんじゃねえか…?」
「うん。明らかにスピードも落ちてきてる」
ボオス達が竜に吹き飛ばされてから、竜は何度も同じパターンで攻撃してきた。火球や竜巻で分断して、爪や尻尾で追撃。それに対してあたし達は、こっちに来たらレントが受けて、向こうに行ったらアルムが迎撃。そこにみんなで一斉攻撃を仕掛ける。この繰り返しだ。竜の翼膜は良くそれで飛べるなって言うくらいボロボロだ。
このままこれで勝てればいいけど…この竜は頭が良いみたいだし、流石にそろそろパターン変えてきそうかな。とりあえず、レントは回復しとこう。
「レント、プニゼリーよ」
「私も回復するね」
「サンキュー。さあ、まだまだ受け止めてやるぜ!」
これでこっちは万全。アルムもタオからプニゼリーを貰って回復したみたい。さあ、竜は何をしてくるのかしら?
――ゴォォォォォォォォォ…!
…何か、今までより呼吸音が大きいような。しかも、なんか長くない?凄く嫌な予感が…
「――ッ!拙い、早く奴を止めるぞ!」
そう姉さんが叫ぶと同時に、あたし達は前に出た。多分、このまま放って置いたらとんでもない何かが起こる。どうにかして止めないと!
「ノルデンブランドっ!」
「レヘルン!」
「ソリッドブレイクッ!」
「槌術・岩穿ち!」
「砕けろォッ!」
「はぁぁぁぁっ!」
あたし達の全力の一斉攻撃。…だけど、止まらない…!?
「ならもう1回、ノルデンブランドッ!」
アルムもノルデンブランドを使ったけど…間に合わなかった。竜が、何かを吐き出した…!
「…!チッ!」
「ッ!?レント!?」
それを見た瞬間、レントがあたし達の前に立った。まさか、アレを受けるの!?
「レ…!」
無茶よ!…そういう間もなく、竜が吐き出した「何か」が炸裂した。
「…情けないな」
竜の一撃で吹き飛ばされた俺達は、安全なところで結果を待つしか無くなっていた。…役立たずにはならないと言っておきながら、この様か。
「…大丈夫なんですかね、アイツら」
「そうそうやられはしないとは思うが…クソッ」
何もできないことが、本当に歯痒い。あいつ等に、全部任せることになるなんてな…
「…もし、やられちまってたら…」
「…どうにかして引っ張っていくしかないな。アガーテは親父の、他の奴らは俺の無茶に付き合わされてるだけなんだからな」
「そんな、それこそ無茶ですよ!」
「それでもやるんだ!もし死なれでもしたら…」
そこまで言って…突如、途轍もない轟音が鳴り響き、熱風が吹き荒れた。
「…っ!今のは…!?」
さっきの火球や竜巻とは明らかに違う。これがあいつらの攻撃の余波ならいいが、もし竜の方だったら…!
「ちっ!」
「ボオスさん!?」
最悪な予感に、未だ痛む体が突き動かされる。あいつらは無事なんだろうな!?無事であってくれ!
「…これは…!」
そして、戦場に戻って来た俺が見たものは、何かによって大きく抉れた地面と、しゃがみ込むライザ、アガーテ、タオの3人。そして…
「…無事だな、レント!?」
「ああ、何とかな…助かったぜ、アルム」
レントの背中に手を当てているアルムと、ボロボロながらも剣を盾のようにして構え立って居るレントの姿だった。
「ぼ、僕達、生きてる?」
「あ、ああ。…レント、アルム、お前たちは大丈夫か!?」
「そうだよ!あんなのを正面から…!」
「いや、大丈夫だぜ。アルムの魔法のお陰でな」
「レントに炎と風を纏わせて防御したんです。ギリギリ間に合いました」
「そっか…ありがと、2人とも。って、竜は!?」
6人が無事だったことに安堵していたが、そうだ。竜は今どうなっている!?
――グゥゥゥゥッ…!
…俺達が離脱したときとは比べ物にならないくらい、羽ばたきが弱弱しくなっている。そして、どこか焦っているようにも、苛立っているようにも見える。さっきの轟音は恐らく、竜が何かしら奥の手と呼べる攻撃を使ったことによるものなんだろう。しかし、それを防がれた。今あの竜は恐らく考えている、どうすればこいつらを排除できるのかと。
「…パターンをいきなり崩してきて、こっちの不意を打つなんてな。だが、それも凌ぎ切った。そして、そろそろ奴も限界に近い筈」
「じゃあ、ここからはこっちから仕掛ける番ね!」
「うん、ここからなら押し込めそうだって、僕でも思うよ…!」
「レント君は大丈夫?苦しいならもう休んでても…」
「いや、やるぜ。もし俺が休んだせいで手が足りなくなったら笑えねえからな」
「…本当なら、止めなければいけないんだろうけどな。仕方がない、この戦いが終わったらしばらく大人しくしろよ」
しかし、ここからはアイツらの攻勢だ。竜に反撃の隙を与えずに一気に倒しきるつもりなんだろう。
「少し溜めがいるからなかなか切れなかったが、ようやく使えるな。…全力で、行くぞ!」
「ラストスパートだ、気合い入れなおすぜ!――おおおおおおおおッ!」
アルムが脚に炎を纏わせた。その形が、徐々に翼を思わせる形に変わっていく。レントが気合の雄たけびを上げる。竜のそれにも劣らないと思えるほどのものだ。
竜はその危険性を察知したのか、上に距離をとろうとする。しかし…
「逃がさない!縛術・影縫い!」
「ブラストノヴァ!」
「フラジオレット…!」
3人の魔法攻撃がそれを許さない。竜は退避できず、大きな隙を晒した。
「これで、終わらせる!」
「ドゥームインパルスッ!」
「沈…めぇッ!」
レントとアガーテの斬撃が竜の顔面を切り裂き、その上からあり得ない高さと速さで突っ込んできたアルムの蹴りが突き刺さる。
「まだだ!ノルデンブランド!」
そして、どこからともなく出現した氷の刃のような物が竜の体に傷を付けていく。翼膜もボロボロで、もうまともに飛べないだろう。
「そして…止めだ」
さらに、脚に纏わせていた炎をさらに燃え上がらせていく。これなら確かに止めを…
――ゴォォォォォォォォォ…!
「ッ!コイツ、まだ…!」
あの竜、何かを溜めている!?まさかあれが奴の奥の手か!?もしあのままアレが撃たれたらアルムが直撃を食らう。だが恐らくアルムはまだ溜めが終わってない…!
「…!止めなきゃ!チューニング!」
「クソ…!ソリッドブレイク!」
「操術・絡繰り!これで…!」
「ノルデンブランド!と、エクリプスジャベリンっ!」
「これで、止まれっ!」
5人の一斉攻撃が突き刺さるが、それでもまだ竜は止まらない。このままじゃ間に合わない、なら!
「おおおおおおおッ!」
「ボオス!?」
竜に向かって駆け、剣を抜いて、その勢いのまま投げた。狙うは、奴の口の中!間に合えッ!
――グァァァァァァァァッ!
竜の口内に剣が突き刺さり、中で炎が暴発した。よし、上手く行った!後は…!
「アルム、決めろッ!」
「…ああ、感謝するぞ、ボオス!」
その言葉と共に、アルムの溜めが終わった。普段赤い筈のアイツの炎が、青くなっていた。
「…行くぞ!」
その一言と共に…竜を全力で蹴り飛ばした。抵抗する力も残ってない竜は、成すすべなく吹き飛ばされる。そして、アルムはとんでもないスピードで上に「飛んだ」。そしてそこから、2回、3回と上に加速して高度を上げている。そして、今度は方向を変え、吹き飛ばした竜がいるところに向けて加速した。
「これで…!」
アルムは体を回し、右足を振り上げる。そして…
「堕ちろぉぉぉぉぉぉッ!」
竜の頭を全力で、踏みつけるように蹴った。それと同時に、脚から渦を巻いた青い炎が吹き上がり、竜の頭を文字通りに吹き飛ばした。頭を失った竜の体は、勢いよく古城の門の辺りまで墜落していった。
「やった…!」
これで、竜は討伐された。後は…
「アルムは竜の所に降りたみたい。急いで追いかけるよ!」
ああ、早く労ってやらなきゃな。
古城の門の近く、アルムは竜の死体の近くで腰を下ろしていた。手に持って居る球のようなものを眺めているようだが…
「来たか。…どうにか、やれたぞ」
「うん、見てた。凄かったよ」
「ああ。本当に、よくやってくれた」
「どういたしまして。…ところで、1つ頼みがある」
「何だ?」
「…肩を貸してくれ、右脚が限界だ」
「ああ、解った」
「レントだけじゃなく、お前もしばらく大人しくすることだな」
「ふふ、エルちゃんに怒られちゃうかもね。無茶し過ぎって」
「無茶しなきゃ勝てない相手だったけどね…」
「…」
兎に角、これで竜は討伐した。俺が貢献できたのは最後の最後位だが…少しは、胸を張って親父に報告できそうだ。
「そうだボオス、これを」
「なんだ、これは?」
「竜の眼」
「…眼!?」
「何よりの討伐の証拠だろう。ああ、モリッツさんに見せた後は返してくれ、錬金術に使えそうだしな」
「…いや、それはそうだが。そんなものをいきなりポイと渡すな」
3人目はボオス視点。ほぼ丸々一話戦闘。まあ拙いとは思いますが勘弁して下さい。
とりあえず前話で「竜は結構賢い」設定を出しましたが、そのお陰でそれなりに戦闘っぽくはなったと思います。ただ突っ込んでくるだけだとあっさり嵌められるので逆に描写に困りますし…
今回出たアルムの技
朱嵐の衣(レントに使った、竜の一撃を防ぐ補助をした技)対象に赤い竜巻を纏わせ、身を護る
初期習得 ノーマルオーダー達成時に使用 味方1人の被ダメージ減少、炎耐性と風耐性上昇
炎鳳の大翼(竜に反撃を開始したときに使った、脚に炎を纏わせる技)脚に翼を象った炎を纏わせる
レベル40で習得 AP消費10 一定時間アクティブスキルのWT減少、威力、クリティカル率、クリティカルダメージ上昇(全て別枠) TLv3で強化量上昇 TLv5で効果時間延長
青の流星(竜に止めを刺した技)炎と風の出力を最大にし、敵を全力で蹴り飛ばし、相手の上まで飛んでから急降下。全力で相手を蹴り落とすと同時に圧縮した炎と風が噴出し、攻撃した部位を文字通り吹き飛ばし、地面に叩き付ける
フェイタルドライブ 単体攻撃 無属性物理ダメージと炎属性と風属性の魔法ダメージを与える 良性変化を多く受けているほどダメージが上昇
因みにフェイタルドライブ発動直前、サイレントでプ二ゼリーをセルフで使ってます。この状況で「プ二ゼリー!」とか言うのもちょっとこう、緊張感がね?
Q,ところで、動力炉は?
A,頭からすっぽ抜けてました…後で拾いに行かせます。
ここまで読んでいただき、有難うございます。