ボオスの相談からランバーの特訓。今回はボオス視点→ランバー視点→ちょっとだけアルム視点です。
「昨日からランバーの様子がおかしいんだが…何か心当たりはないか?」
「ランバーの様子…?」
俺は今、アルムの所にランバーの事について相談に来ている。…昨日から、アイツの様子が少しおかしい。明らかにいつもより目を擦るわ、欠伸をするわ、脚が少しふら付くわ…どう考えても寝不足の人間のそれだ。大丈夫かと聞いても、少し焦った様子で心配いらないと言うだけ。夜中に睡眠時間を削って何かをしてましたと言わんばかりだ。
例えばこう…今目の前にいるコイツの進展してるんだかしてないんだかよく解らん人間関係みたいなプライベートな事情なら構わない。一言言えとは思うが。だが…人に言えないようなことをしているんだとしたら…かなり心配だ。
「…いや、解らない。お前とは兎も角、アイツとはあまり仲が良くない…というか、碌に関りが無いからな。俺がお前と話している時も、近くにいないか黙ってるかのどっちかだろう?」
「…そうか」
アルムに聞いても収穫なしか…だからと言ってランバーにもう一度聞いてもはぐらかされるだろう。人に言えることなら、そもそも隠れてやる必要が無いからな。
「そもそも本当に何かしているのかも分からないんだろう?それなら、ただ単に夢見が悪くて寝不足になっている可能性もある」
「そうかもしれないが…そういうことなら、アイツは別に隠したりはしないぞ」
「そうか…」
それならそれで、何かしら悩みを抱えていることになりそうだが。
「それなら…行動じゃなく動機から考えてみるか?」
「…動機か」
成程、それが解ればアイツがしそうな行動も自ずと絞れるな。
「まず考えられるのは…竜退治か?最初にお前と一緒に吹き飛ばされて終わりだっただろう」
「確かに、最初に戦線離脱してそれ以降は参加できなかったが…それは俺もほとんど同じだ」
「だが最後には戻ってきて、決定的な一撃を奴に与えた。…アイツにはそれが出来なかった。その事を気にするくらいはおかしくないだろう」
自分だけ何もできなかったことを悔いて、か?確かにあり得なくはないだろうが、そこからどう夜更かしに繋がる?
「…実はアイツ、人目につかないところでこっそり剣の特訓しているんだよ」
「そうなのか?」
「ああ。去年偶然見かけてな。その時は昼頃だったが…もしかしたら、夜にも始めたのかもしれない」
成程、確かにそれならおかしくは無いな。だが…
「それで睡眠時間を削って、日常生活に支障をきたすのは拙いだろうが…」
「まだ想像の域を出ないが…もしこれが正解なら、とりあえずアガーテさんに説教でもしてもらうか」
「ああ。アガーテの説教なら、アイツには覿面に聞く」
「ついでにリラさんも呼んでみっちり扱いてもらうか。あの人の訓練、最初は俺とレントが碌に動けなくなる位キツいからな」
「…流石にそれは勘弁してやってくれ」
お前らでそうなる訓練を、ランバーに施していいわけがないだろうが。色々折れるぞ、絶対に。
「さて、多分これが一番太い線だろうが…他に候補はありそうか?」
「…惚れた女に既に男が出来ていた?」
「おい、何でそれを俺の目を見て言った。嫌な想像をしてしまうだろうが…!」
「すまん、お前の顔を見たら思いついた。まあお前に関してはその心配は微塵も無いから安心しろ」
そもそも、あれだけあからさまな態度で、お前が薄々でも気づいて無いとは思えないがな。まあ、根っこは真面目なアルムの事だ、告白は身の回りの事が一段落ついてからにする気なんだろう。恐らく、あの錬金術士の目的絡みで何かあるんだろうしな。
…その辺りをほとんど話してくれないことには、思うところがあるが。話せない何かがあるんだろうか。
「とりあえず、今日から夜のランバーの動きを探ってみる。何時アイツが動くかは解らないから、すぐに解決できるかは怪しいが…」
「今のところはアガーテさんにも気づかれてないくらいだ。動くとしたら、まず誰も起きてないくらいの時間だろうな」
「だろうな。…まず、そんな時間に俺が起きていられるかどうかだが」
「…ライザに頼んで、とんでもなく苦いグラスビーンズでも作ってもらうか?」
「…口直しの何かも一緒に頼む」
…後でライザから手渡されたグラスビーンズは、途轍もなく苦かった。確かに眠気は吹き飛ぶが、一緒に渡されたラーゼンプティングが口直しとして機能しないくらいに。
「はっ…はっ…ふう。なんだ、俺も結構やれるじゃんか」
外での特訓を始めて3日目。俺は元々魔石の採掘場だったらしい洞窟で魔物を倒してた。ゴーレムみたいな剣が通りにくい魔物もいたから、そういうのは流石に避けたけど。刃こぼれでバレかねないし…
魔物の格としては、多分古城のよりは弱い。じゃなきゃここまで倒せてないしな。
「…まだ、行けるよな」
今でも十分特訓にはなってる。けど、やっぱり少しでも早く上を目指したい。だから、洞窟の奥に進んでいった。時間的にはまだ大丈夫だろうし、無理そうなら直ぐに引き返せばいいしな。
「よし、やるぞ…もっとやれるんだ、俺だって…!」
気合を入れなおして、俺は足を前に進めた。
「ここは…?」
洞窟を奥に進んで抜けた先には、不思議な雰囲気の入り江があった。そして、少し奥に進むと…
「これ、遺跡か?」
どう見ても遺跡、この辺にあるから多分クリント王国絡みの奴も見つけた。こんなにデカい遺跡が、古城以外にもあったなんて…タオとかアルムが知ったら喜びそうだな、あいつ等、こういうの好きらしいし。
…って、そんなこと考えてる場合じゃない。
「…少しだけ、少しだけだ」
どういう遺跡なのか、気になるけど…流石に魔物と戦いながら調べるのはキツいから、こっそり近づいてちょっと見て帰ろう。まだ暗いけど、あんまり長居すると時間ギリギリになりそうだし…。
「…こういう時に、堂々と正面突破できるくらい強ければなぁ」
あいつ等ならやれるんだろうな…やっぱり羨ましいな、あいつ等の強さが。
「…すげえ」
隠れながら近づいて、奥にある遺跡が良く見えるところまで来た。…こんなデカい遺跡が、湖の上に建ってる。こういうのって確か、建てる為に基礎っていう土台を作らなきゃいけないって聞いたことあるけど、どうやったんだ?
…あのアンペルっていう人なら知ってるかもしれない。けど、そこからいろんな人に勝手に島の外でこんなことしてるのバレそうだよなぁ…
「…どうしようか」
「まず島に戻るのが一番に決まっているだろう」
「そうですよね…え?」
…誰の声よりも聴きなれた声が聞こえてきて、思わず返事をして、そして驚いた。
「ボ、ボオスさん…!?な、何で…」
「ここ2日、お前の様子がおかしかったからな。…まさか、島の外に出ているとは思わなかったぞ。一発で突き止められたのは嬉しい誤算だったな」
や、やっぱり怪しまれてた…!いやでも、だからって1人でここまで…いや、それよりも…!
「あの、ボオスさん、俺…!」
「竜退治の時、何もできなかったから…か?」
「え…」
「こんなことをしている理由だ。…その顔からするに当たりの様だな。全く、俺もまだまだだな…側近の悩みに自分で気づけないなんてな」
「い、いや、ボオスさんが悪い事なんて、何も…」
全部俺が一人で悩んで、勝手にやったことなのに…
「まあ、詳しい話は戻ってからだ。ここだと何時魔物が来るか解らないからな。…ついでに、アルム達にこの遺跡の事も伝えるか」
「あ、えっと…」
「心配しなくても、黙っておいてもらうように頼んでおく。…というか、深夜に無断で外に出ているのは俺も同じだからな。バレてアガーテからの説教を食らうのは御免だ」
「すいませんでした、本当に…」
「そう思うなら、次からはちゃんと相談してくれ。一人で悩むより、そっちの方が解決しやすいだろう」
「解りました…」
…帰ったら、姉さんに相談してみよう。
「さて、帰るぞ…っ!?」
「え、何が…」
島に戻ろうと来た道を振り返ったら…よく解らない、デカいネズミのような魔物がたくさん出てきていた。俺がさっき見た時はあんなにいなかったのに、一体どこから…!?
「くっ…!」
「ボオスさん!っと、うわっ!」
驚いている俺達にお構いなしに、一斉に襲い掛かってくる謎の魔物。一体一体はそこまで強くないけど、数が多い!
そうして次々と襲ってくる魔物のせいで、俺達は離れ離れになってしまった。俺は洞窟側に行ってるけど、ボオスさんが遺跡の方に追い詰められてる…!
「ボオスさん!今すぐ――」
「来るな!それよりも、早く助けを呼びに行け!」
「え!?」
無茶だ!いくらボオスさんでも、この状況を1人でなんて!
「その方が確実だ!最悪この魔物の情報だけでも伝えないとマズい!」
「だけど!」
「俺の事を気遣うなら、尚更早く助けを呼びに行ってくれ!頼む!」
「…っ!」
悔しさをどうにかして抑え込み、俺は急いで島に引き返した。…畜生、俺が弱かったから、こんなことに…!
「…何だかな」
いつもよりやけに早く起きてしまった俺は、外に出て湖を眺めていた。…何故だか解らないが、どうにも嫌な予感がする。
「気のせいであってほしいが…ん、アレは?」
湖の上で何かが動いている…いや、こちらに近づいているのが見えた。まさか、また魔物じゃないだろうな?
そう思って目を凝らすと…もっと予想外のものが見えた。勢いよく漕がれている小舟、そこに乗っていたのは…
「…ランバー!?」
アイツ、島の外に出ていたのか!?いや、だとすると、まさか…!
「…ボオス…!」
この嫌な予感は、外れていてくれ…!
恐らく、作中一番アルムが焦るシーン。
Q,ランバーはどうやって対岸に渡ったの?
A,原作でライザが使ってた小舟で。今作ではもうちょっと大きくていい舟を貸してもらえてるので、使われず横にずっと置いてありました。因みにボオスは港にあった小舟で渡ってます。
Q,実際、アルムは気づいてるの?
A,「…あの時の膝枕あたりから、薄々とは。軽々しくあんなことする奴では無いだろうしな」
ここまで読んでいただき、有難うございました。