【渦巻く白と輝く青】の確認と、色々やるアルム。
今回はタオ視点→アルム視点です。
「ここだ。ブルネン家で【水生みの離れ】と呼んでいるこの小屋に、昔俺が見た【渦巻く白と輝く青】がある」
「ここか。モリッツ氏が唯一「ここだけはどうしても調査の許可は出せない」と言っていたな」
今朝、ボオスから「ようやく離れの小屋の鍵を開けることができた」って言われたから、ボオスが見たものが本当にオーレン族の故郷から水を奪った古式秘具なのかみんなで確かめに来てる。…あれから3日経ったけど、やっぱりまだちょっと飲み込み切れないなあ。島の水源が、ある意味曰く付きと言っていい代物だなんて。
「水…生み?」
「見れば解る。…あの球だ」
「球?…あっ」
ボオスにそう言われて見てみると…そこには、水が尽きることなく湧き出てる、光る球があった。…これが、【渦巻く白と輝く青】…
「清水を溢れさせる【渦巻く白と輝く青】…クリント王国の古式秘具か…!」
「モリッツ氏がこの小屋の調査の許可を出せなかった理由だな。これが、あの森から奪われた水なんだ」
「これが、俺達が今まで使って来た水源だったってのか?信じらんねえな…」
僕も信じられないけど…でも、これが真実なんだよね。僕たちの生活は、どこまでも錬金術に支えられていたんだ。
「そもそも、こんなものどこから持ってきたんだろうな」
「え、元々この島にあった訳じゃないの?」
「ああ、コイツがこの離れに据え付けられたのはもっと最近だ。それまでに、島の水源は涸れていた」
「確か、水が不足してた頃は水路のあちこちを塞いで溜めた水でなんとか凌いでたんだっけ」
「島のすぐ下が岩盤で、碌に井戸も掘れねえしな。ずっと昔には普通に湧いてたらしいが」
「お父さんも言ってたよ。麦が採れるようになったのはほんの何代か前で、それまでは乾きに強くて地面から水を集めるクーケンフルーツばかり育ててたって」
「俺もそれは親父から聞いたな。…で、元から島にあったならそんな苦労をする必要はない。なら元々はここではないどこかにあったと考える方が自然だ。そして…」
「成程。その場所に何かあるかもしれない、と?」
「ええ。こんなもの、「偶々そこにあっただけ」は無理がありますから」
…確かに、こんな古式秘具をそんな雑な扱いはしないよね、普通は。内容は兎も角、国を挙げての計画の屋台骨みたいな代物だったなら、管理とか保管とかしっかりやってなきゃおかしいし。
「…うん、あたしもそう思う。ボオス、これが何処にあったかとかは知らない?」
「いや、数代前のブルネン家がどこかから持ち帰って来たということだけしか聞いていない。…だが、何か手掛かりが残っているかもしれないな。後で調べておく」
「ありがと。…アルムの言う通り、多分その情報が、いろんなことを解決できるようになる手掛かりになると思う」
「物事の繋がりを感じる、か?」
「うん。上手く説明はできないけど」
「そうか。ボオス、出来るだけ早く頼むぞ」
「ああ。早くキロ達オーレン族に、水を返さなきゃならないからな。…これは彼女たちの大切なものだ。ブルネン家が権勢を得るための道具であり続けていていいわけがない」
何か随分張り切ってるなあ、ボオス。…もしかすると、そういうことなのかなぁ?よく解らないけど…
「急いでくれるのは有り難いが、性急に事を運びすぎるのも悪手だ」
「ああ。1つずつ確実に片づけていくぞ」
「うん。クリント王国の錬金術がやったことだし、同じ錬金術士として放っておけないよね!」
「!!…ああ。そう、だな…」
「…」
今のライザの言葉に、アンペルさんが面食らってて、リラさんが考え込んでる。それだけ予想外な台詞だったのかな?僕達からしたら凄く「らしい」と思う言葉だけどな。
「さて…今の俺達にできることは、どこに行くとしても問題無いように準備しておくことくらいだな」
「うん。ライザが作ってくれた新しい道具も試したいしね」
「じゃあどこでやる?あんまり魔物が弱いところでやっても実感わきにくいし」
「だからって強い魔物がいるところでやるのも危ないよ。あくまで慣らしなんだからさ」
「そろそろ塔の方角に進もうと思ってたんだが…まあ、焦ることもねえか」
塔、かあ。…正直、この辺りの地理からして、何かあるとしたらもうあそこしか残ってないよね。それが無くても、レントの冒険の目標だから行くことにはなるけど。…とんでもない魔物と遭遇しないと良いなあ。でもしそうだなぁ…
「…タオ」
「何?」
今から塔への旅路に不安を募らせてたら、アルムが小声で話しかけてきた。何だろう?
「あの球が置いてあった場所が判明したら、あの本と島の事をみんなに話そうと思う」
「…大丈夫?色々とんでもない内容だから、受け止められるか解らないよ?」
「その辺りはどうにかする。それと…」
「それと?」
「受け止められるかどうかの心配は、お前もしておいた方が良い。まだお前にも明かしてないことがあるからな」
「…あれ以上、まだ何かあるの?」
もうそれだけで受け止め難いよアルム…
「さて、一旦アトリエに戻るか。…しかし、まさかこんなものが見つかるとはな」
タオに借りた本の解読も一段落ついたので、以前旅好きのダニエルさんから貰った宝の手掛かりを頼りに近場を探索していた。そしたら地図の断片のようなものが見つかったので、それを拾い集めていくと、宝の在りかが記されていた地図だと判明。その場所にあった宝箱を開けると…予想だにしないものが収められていた。
「コアクリスタル…しかも、今使っている物より高性能だ」
試してみたが…容量が大きい、とでも言えばいいか。エネルギー切れまでが遅くなっている。勿論一度のコンバートで最大まで回復するので、以前より少し道具を使いやすくなった。これは良いものを見つけたな。丁度人数分あるし、早速みんなに渡すか。
「時間があれば、他の手掛かりも辿ってみようか。良いものが見つかるかもしれない」
道具にしろ、レシピにしろ、あって損は無いからな。ボオスの方の結果が出るまで時間があるかもしれないし、みんなに相談してみるか。
そんなことを考えながらアトリエに戻ってきたら…
「ただいま」
「あ、アルム!ねえ聞いてよ、今アンペルさんがあたしのこと凄く成長していってるって!」
物凄く上機嫌なライザが出迎えてくれた。…お前の成長、か。
「知ってる。ずっと見てるからな」
「…ふ、ふふふ、そーよね、一番近くで見ててくれてるもんね、アルムは!…何でそんなにサラッとそういうことが言えるかなぁ…」
お前相手に言葉を取り繕うことも無いからな。言えることははっきり言わせてもらうぞ。
「良いタイミングだ、アルム。このままではアンペルの愚痴にライザが毒されて、暗くなってしまうところだったぞ」
「せめてそこは嘆きと言ってくれ」
「同じだろう。全くみっともない」
「あはは…相変わらずアンペルさんには容赦ないなぁ、リラさん」
「…」
一瞬「夫婦か?」なんて言葉が口から出かけた。そうでなければ…何だろうか、お互いが自分が上だと思っているきょうだい?
「ところでアルム、それ何?」
「ああ、今までのものより高性能なコアクリスタルだ。古城に安置されていた」
「ほう…そんなものが。どうやら、あそこもまだ調査する必要がありそうだな」
「別の【門】の手掛かりでも見つかれば僥倖だな。まあ、流石に高望みだろうが」
「その時は、あたしたちも手伝っていいかな?」
「ああ、むしろこっちから頼みたいくらいだ」
「また別の古式秘具が出るかもしれませんね。…召喚機のような物騒なものは、流石に勘弁してほしいですが」
「そういうことを言うと、得てして真実になるぞ」
やめて下さい、縁起でもない…
「しかし、これも結構集まって来たな」
「何が?…あ、ゴールドコインね」
「ああ。だが、あったところで何に使えばいいのか解らなくてな」
少しアトリエで休憩していると、ふとゴールドコインの事が気になったから机に並べてみた。ザムエルさん曰く珍しいものであるらしいが…どういうわけか強い魔物を倒すと良く持っていたりするので、結構まとまった枚数手元にある。しかし、現状使い道が浮かばない。珍しいなら、誰かとの取引に…ん、取引?
「…待てよ、ルベルトさんならいい案をくれるんじゃないか?」
「そっか、商会のリーダーやってる商人さんだもんね。早速話してみよう!…あ、交渉とかあったら全部任せて良いかな」
「…解ったよ。多分そこまで難しい話にはならないだろうしな」
というわけで、バレンツ邸に行って話をしてみたところ…
「私も商人の端くれ、価値のある物は手に入れたい」
「はい」
「そして、錬金術にはレシピと呼ばれるものが必要だと聞いた」
「…つまり?」
「ここにそのレシピと思しき物がある。…そのゴールドコインと交換しようじゃないか」
「是非お願いします」
交渉成立、今ある分は全部貰っておいた。
「因みに、レシピ以外にも珍しいものがあるが…どうかな?」
「素材として使えそうですね…ただ、こちらに関してはライザの意見を聞きたいので、後にしても?」
「ああ、構わないよ」
今は確かクラウディアと雑談でもしているだろうな…盗み聞きにならないようにさっさと呼ぶか。
「ライザ、少しいいか」
「アルム、どうしたの?」
「ルベルトさんとの取引で少し相談をな。…どうした、クラウディア?」
「…その、お父さんとのお話が終わったら、私から話したいことがあるの。いいかな…?」
「ああ、いいぞ」「うん、いいわよ」
「ありがとう…」
そして、ライザが「これは!」と思ったものを譲ってもらってから、改めてクラウディアの話を聞きに行った。
「それで、話って言うのは?」
「うん…私のフルートの事なんだけど…」
そこで聞いたのは…クラウディアが隠れて演奏しているのはあくまで自発的なもので、ルベルトさんに反対されているわけでは無いということ。
最初は隠れずに吹いていたが、その内ルベルトさんが悲しい顔をしているのに気が付いたこと。
その理由が恐らく、病弱故に置いて行かざるを得なかった母を想って寂しがっているとクラウディアが考えていること。
そして、それがクラウディアがルベルトさんの前でフルートを吹けなくなった理由だということだった。
「…クラウディア」
「…確かにそれは、演奏もしたくなくなるだろうな」
「だけど、ここに来て、みんなと出会って、演奏もたくさん褒めてもらって…そして、あの異界で、私の演奏が誰かの心を慰めることができるって解ったの。…だから、何時かお父さんにも私の音を届けて、悲しさを晴らしてあげたい。ううん、晴らして見せる」
「…うん、クラウディアならできるよ、絶対に」
「それができたら…また演奏会をしよう、なんて提案してみるのもいいかもな」
「うん。また3人で一緒に、楽しく演奏会をしたいな」
そう言って笑顔を浮かべるクラウディア。…やはり、家族を想う気持ちは良いものだな。
一応、「きょうだい」はわざと平仮名にしてあります。
今回のQ&Aは無し。
ここまで読んでいただき、有難うございました。