レントが無双した後アイツが再び登場。そして塔に到着。コイツ等もう道中の雑魚敵に苦戦する様子が想像つかないな…
今回はタオ視点→クラウディア視点です。
3/29 誤字報告があったので修正。
「うおおおおおおおああああああああ!」
「…レント君、凄いね」
「凄い事になってる理由は凄くアレだけどね…」
休憩を済ませて改めて塔に向かっている途中、僕たちは道中の魔物の対処を…してない。レントが1人で暴れまわって、それでどうにかなっちゃってるからだ。
さっきまで竜がいたから、まだ大人しくしてる魔物もいるのもあるだろうけど…にしたって凄い暴れっぷりだよ。
「…薬の後味が悪すぎて口の中が気持ち悪いのに、それに反して体の調子は凄く良いから、違和感が凄くてイライラしてるんだっけ」
「暴れて吹っ飛ぶようなタイプのイライラじゃないと思うけどなぁ。口の中に残ってるし」
「猛烈に甘い菓子の1つでもつまんだ方がまだ効果的だな。言えば少しくらいは融通してやったのだが」
「途轍もない甘味狂いであるお前から、融通してもらえるとは思わなかったんじゃないか?」
…レントには悪いけど、多分その発想が無かっただけだと思うなぁ。
「…流石に無理矢理飲ませるのは良くなかったな」
「それもだけど、まず味をどうにかしないとねー。何か案ある?」
「ハチミツでも混ぜてみるか?昔母さんがエルに薬を飲ませる時にやってた覚えがある」
「じゃあそれで」
「…その話し合い、もっと早くやっておくべきだったんじゃないかな」
「まさか使うことになるとは思わなくてな」
「その内レシピ変化とかでもっといいのが浮かぶだろうし良いかなって」
「変なところで見通しが雑だよ…っていうか使わずに済んでたらどうするつもりだったのさ」
「飲んでたな」
「サラッと言うことじゃないよね?」
いや、確かにその辺に捨てたら何が起こるか解らないからそうした方が安全なんだろうけどさぁ…自分で言ってたじゃん、気絶した方がマシな味って。
「アンペル、良いレシピの1つや2つくらい教えてやっても良いんじゃないか?」
「それを自分で閃いたり探したりするのが一流の錬金術士というものだ。今回は特に火急の用でもなかったようだし、わざわざ教える必要はなかっただろう」
「そういうものか」
「ああ。…まあ、私が知るレシピではそもそも素材が足りないからあったところで作れんがな」
「…つまり、レントはどの道アルムにアレを飲まされる運命だったってことになるんじゃ…」
「…そういうことだな」
…多分今までで一番レントに同情してるよ僕。今後誰かにこれ以上同情することなんて、そうそうないんじゃないかなってくらいには。
「あ˝ー…」
「あ、戻って来た。…ホントに1人で粗方片付けちゃったんだ」
「お疲れ様、レント君。…どう?」
「ちょっとはスッキリしたけど後味が全然消えねえ…いつまで続くんだコレ」
「最低でも4~5時間程だな」
「うっげ…どうすりゃいいんだよ」
「やはり上書きした方が早そうだな。ほら、ドーナツを分けてやる」
「あざっす。…死ぬほど甘ったるいのに、今はこれが丁度いいと思えてくるぜ…」
「そこまで言われてると、逆に気になってきちゃうな…」
「「飲むなよ。絶対に飲むなよ」」
「少なくとも味の改善ができるまでは絶対にダメだからね!」
「う、うん、解った」
うん、クラウディアが飲むとか言い出したら僕も全力で止めるよ。
「ああ、それとちょっとアンペルさんに見て欲しいものがあるんだけどよ」
「ん、私に?」
「あっちに釜みたいなのが転がってたんだよ。ただの釜がこんなとこにあるとは思えなくてな」
「ふむ、釜のような物か…それならば「アレ」の可能性があるな」
「アレ、って?」
「便利な代物だ。レント、案内してくれ」
アンペルさんには心当たりがあるみたいだ。ってなると多分古式秘具か何かだと思うけど…なんだろう?
「えーっと、この辺りに…お、これだ」
「何これ?錬金釜のような、そうでないような…」
「『複製釜』だ。調合品に限って複製して量産ができる古式秘具でな、錬金術士なら1つは持っておきたい代物だ。コアクリスタル同様、割とあちこちで見つかっているぞ」
「調合品の複製…つまり、限界まで品質を高めたものを一つでも作っておけば…」
「最高品質のものを大量に増やすことができる、ということだ」
…異界と繋がる門とか召喚機みたいなのがあるからちょっと麻痺しかかってたけど、十分とんでもない道具だよねコレ。しかも量産されてたって、一体どうやったらこんなものが造れるんだろう…
「…コレの存在をモリッツさんとルベルトさんと、後ロミィさんが知ったら何と言うだろうな」
「…ライザ、これで増やしたものを無暗に流通させたら駄目だよ」
「え?うん、錬金術で使う分だけにするつもりだけど…」
「あんまり派手にやりすぎると物の価値が滅茶苦茶になって、商人と職人が商売あがったりになりかねないな」
「要するにルベルトさんとロミィさんにすげえ迷惑をかけるってことか」
「流石に無いと思うけど、モリッツさんが変なこと言ってきてもしっかり断らないと駄目だね…」
まあ、そもそも存在をバラさなければいいんだけど。…それにしても、使い方次第で経済もどうにかしてしまいかねないなんて、古式秘具って本当にとんでもないなぁ。
「それで、どうするんだ?担いだまま塔の探索をするわけにもいかないし、だからと言って今からアトリエまで戻るのも手間だぞ」
「そうですね…見た目からしてそう軽いものではないでしょうし、もう暫くここに置いておいて帰りに持ち帰るしかないでしょうね」
「まあ何百年も野ざらしにされてたみたいだし、後数時間そのままでも変わんないでしょ」
「忘れちゃわないようにだけしなきゃね。どこか見えやすい所に置いておく?」
「そうだな…ん?何だ?」
「…足音?」
複製釜をどうするか考えてると、何か重たそうな足音のような音が聞こえてきた。…アレ、ついさっきもこんなことがあったような…?
「…なあ、嫌な予感がするんだけどよ」
「…まさか、だよな?」
うん、いや、まさか、無いよね?あの時のアイツがまさか追いかけてきてるなんて――
「ぷに」
「「「「「「「…」」」」」」」
追 い か け て き て た 。え、何で!?まさかと思うけどアルムに懐いた!?虫と木の実で!?
「ぷに!」
「あー、ああ。さっきぶり、だな」
「ぷに…」
「え、何かあたし達をジロジロ見てる?」
「…ぷに~!」
「笑ってる…よく解らないけど、安心してるのかな?」
安心してる?つまり僕達を心配してたってこと?何で…あ、もしかして。
「…レントの必殺技?」
「は、俺!?」
「いや、アレ凄い音したでしょ?あの時の音、多分このぷににも聞こえてたんだと思う。で、僕らがその音がする方向に向かってるところは見てたはずだから…」
「ご飯くれた良い人…アルムが心配だから様子を見に来た?」
「ぷに!」
「合ってるみたいだよ」
「…何と言うか、な」
あ、珍しくアルムが本気で困惑してる。まあ、こんなことになったら大抵の人はそうなるだろうけどさ。
「あ、そうだ。この子に頼めばいいんじゃない?」
「まさか、複製釜の見張りをか?」
「うん。アルムが心配でここまで来てくれるくらいには良い子みたいだし、アルムが頼めばやってくれそうじゃないかな?リラさんが強いって言うくらいだから、何かあっても守れそうだしね」
「どうする、アルム?」
「…頼んでみます。…あー、俺達が戻ってくるまでそいつを守ってくれないか?今そいつを持ち運ぶのはちょっと無理があってな…」
「ぷにっ!」
「任せろ!って言ってるのかな?」
「っていうか、ホントにあれで懐いたんだね…」
「いいじゃねえか、結果的にそれで助かってるんだからよ」
赤ぷにとかは寒い所に行く旅人とかが持っていくって話は聞いたことがあるし、もしかしたら種族全体がある程度人に慣れてるところがあるのかもしれないけど…にしたってこれは流石にレアケースだろうなぁ。
「さて、懸念事項も解決した。後は塔まで向かうだけだな」
「おう。これまで色々あったが、ようやくだぜ…!」
「ここで絶対、手掛かりを見つけなきゃ…!」
「…そうだったな、何時までも戸惑っている場合じゃない。行こう、皆」
…いよいよ塔かあ。冒険に出るまで、いや出てからも暫くはここまで来るとは思ってもみなかったなあ。一体どんな新しい知識が眠っているんだろう…!
「…やっと!遂に!俺はやったぞおおおおおっ!」
「レント君、すごく嬉しそうだね」
「アイツの長年の夢だったからな、ああなるのも当然だ」
「ずーっと言ってたからね、俺は絶対に塔までたどり着くんだーって」
「これで、レントは夢を一つ叶えたんだよね。…僕も、あと少しだ」
複製釜をシャイニングぷにちゃんに任せて、私たちは峡谷を進んだ。その先に待っていたのは…島からも見えてた、あの塔。みんなが目指してたところに、やっとたどり着いた。
凄く喜んでるレント君を見て、他の皆も嬉しそうにしてるし、私も嬉しい。だって、友達の夢を手伝うことができたんだもん。
「気持ちは解るが、程々にな。…地形からして、ここが最後の砦のようだな」
「峡谷を突破され、ここまで追い込まれた訳か。…この荒れ具合、撃退できたようには思えんな」
「それじゃあ、ここにいた人たちは…」
「それは中に入って詳しく調べなければ解らんな。…想像通りだろうが、な」
「ですね…ん、タオ?なんだそれは?」
「ちょっと碑文のようなものを見つけたんだ。えーっと…『聖なる塔ピオニール、暴虐の魔物フィルフサを、誘いて滅ぼすべし』かな」
「『ピオニール聖塔』か。随分と背負った名前だが…誘いて、とはどういうことだろうな」
うーん、やり方は竜みたいに召喚機とかを使ったんだと思うけど、わざわざこんなところにフィルフサをおびき寄せる必要があったのかってことだよね…
「他の所に行って欲しくなかったんじゃない?そうじゃなきゃ誘導なんてする必要ないし、やるにしてもこっちに来させないでしょ」
「だったらまず考えられるのが…滅ぼすべしなんて書いてるし、ここでならフィルフサを倒しきれる自信があったのかな」
「どうだろうな。少なくとも、ここが防衛に向いた地形であることは確かではあるが」
「それ以外に理由があるとしたら…避難民を逃がす為でしょうか?」
「あり得るな。此処に奴らを集中させればそれだけ他が安全になる」
自分達の国の施設に誘導して、国民たちは逃がした。本当にそれが目的なら…
「王国の偉い人達は、自分達のしたことに責任を感じて、出来るだけ他に迷惑が掛からないように対処しようとしたのかな…」
「だろうな。まあ、だからと言って奴らの行いは到底許される物ではない。大人が自分の行動の責任を取るのは当然の事だ」
「それに、末端の兵士などはギリギリまで事情を知らされていなかっただろうからな。クリント王国だけで見ても責任が無い者を巻き込んでいないわけでは無い」
「そして、巻き込まれた結果がこれだけの惨状を作り出した戦いに参加する羽目に…ですか。考えなしに動くと周りに迷惑がかかるものですが、これはその最たる例ですね」
…私も、気を付けないと。そういうの、自分でも気づかないうちにやっちゃってることってあるかもしれないし。
「…で、この惨状を作り出したフィルフサが、もうすぐ門から来るのよね」
「ああ。早急に門を閉じなければ、ここら一体が荒らしに荒らされる」
「閉じるんじゃなくて、壊すのは駄目なのかな?フィルフサは出てこれなくなるだろうし、万が一再利用されるのも防げると思うんだけど」
「それが出来れば一番良いのだが…異なる世界を繋ぎ留めるためには莫大な力が要る。そこに下手に大きな衝撃を加えてしまうと…その力が解放されてえらいことになる」
「だからと言ってそのまま放置してしまえば、フィルフサの大侵攻が始まり…島だけ無事で、それ以外のここら一帯は荒らしつくされる、か」
「で、だからって異界に水だけでも返そうとして球を壊しちまうと島の水が無くなる…今んとこは八方塞がりだな」
「…どうすれば、みんな無事で済ませられるのかな」
リラさんとキロさんの世界に水を戻してあげたいし、本当にクーケン島が危ないのならそれもどうにかしたい。そして、皆で冒険してきた場所…思い出をフィルフサに荒らされたくない。でも、どうすればいいのか解らない。どうすれば…
「その方法を見つける為に、皆でここまで来たんだよ。あたしはそう思ってる」
「ああ。どれだけ時間がかかっても、見つかるまで探し続けるだけだ」
「…そっか。うん、そうだよね」
目の前に可能性があるなら、悩むより先に動いた方が良いに決まってるよね。「どうしよう」なんて言うのは、何も見つからなかった時だけでいいんだよね。
「資料を読み取れるのは私とタオだけだ。何か見つけたらどちらかに報告してくれ」
「責任重大だなぁ…でも、だからこそかな。凄くやる気が出てくるよ」
「俺は邪魔が入らないように、周りの警戒とかしてる方が良さそうだな。そういうの探すの苦手だしよ」
「ああ、だが手が空いたら私達も手伝うぞ。人手が多いに越したことはないからな」
「後は、余裕があったら塔の周りの探索と…あ、塔の下の方にも入口がありそうじゃない?」
「なら、先にそっちを見た方が良さそうだな。…さて、行こうか。『答え合わせ』をするために」
「うん。皆、頑張ろう!」
どうかここで、全て上手く行く方法が見つかりますように。
前半後半ともにレントの叫びで始まる回でした。片や八つ当たり、片や歓喜の雄叫びですが。
複製釜については、見つけて即アトリエに直帰するなら兎も角そのまま塔に行く場合どうするんだろうと考えてたらなんか思いついたのでやりました。今後このぷにがどうなるかは…まあサブタイの通りということで。
経済については、ライザがやるかどうかは別としてやりすぎるとそうなりかねないよねと思ったので。まあ、本当に余程やりすぎない限りはそこまでにはならないと思いますが…
Q,このシャイニングぷにいくら何でも友好的過ぎない?
A,タオにも言わせてますが、公式で赤ぷにが旅人が寒冷地に行くときに持っていくという記述がある&DLCのぷにといっしょがあるので、ぷには人に慣れてるor慣れやすい性質があると思いました。
で、あんなところにいるぷに系最上位の奴なんでなんか色々盛りたくなってその結果がコレです。
ここまで読んでいただき、有難うございました。