変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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遂にライザ3が発表されましたね。来年2月22日か…流石にそこまでには本編終了まで行けてるよな…?

塔の中で見つかる手記とか陣中日記とかは全部そのままです。改変し得る要素が何処にも無いので。
塔を調査。今回はレント視点→アルム視点です。


王国の絶望、覚悟、後悔、未練、そして最期の成果を知る

「これ、貯水池かな?もうすっかり涸れちゃってるけど」

「こんな山奥で軍隊規模の人間が活動するんだからな。常に大量の水が必要だっただろう」

 

塔に着いた俺達は、まず橋の下にある方の入り口の所から探索することにした。…あの位置から見えるような入り口じゃなかったように思えるんだが、ライザ曰く「見た感じなんかあるような気がした」らしい。錬金術士ってのはそこまで勘が鋭くなるもんなのか?

で、入ってみたら貯水池みたいな溝があった。どっからどう見ても完全に涸れてるが…

 

「大量の水が常に必要、だがどこかから水を引いていたような痕跡も無い。それに…」

「うん。この台座…あの離れにあったのとそっくりだ」

「ってことは、あの球はここに置いてあったってことか?」

「そうなるな。…つまりあの古式秘具は、籠城戦の為にここに持ち込まれたことになるな」

 

…リラさん、怒ってねえだろうな?

 

「成程、我らの聖地から奪った水をどこまでも利用しつくしていたというわけか。…ああ、心底見上げた心がけだな、本当に…!

「ちょ、怒るのは解るけど落ち着いてくれリラさん!」

「私は、冷静だ…!!」

「はい!分かりました!」

 

めっちゃ怖え…どっからどう見てもキレてるぞリラさん…!

 

「…戦いから数百年経った後にボオス君のご先祖様が此処にたどり着いて、あの球を見つけたんだね」

「そういうことだね。…当時の人達には、凄いお宝に見えただろうな」

「実際それで助かった訳だしな。だからってそれを利用して威張り出したのは頂けねえけどよ」

「個人として悪い印象は特に無いが、モリッツさんにはそろそろ別の事で威張れるようになってもらわないとな」

「なんだかんだ上手くやりそうだけどね、モリッツさんだし」

 

だからまあ、水源の問題さえ解決したら遠慮なく異界に水を返せるわけだ。モリッツさん以外誰も困らねーし。

 

「なんにせよ、これであの古式秘具の出処も確定したな。ここにはもうめぼしいものは無さそうだし、次は上を見に行くぞ」

「はい。…さて、何が見つかるかな。楽しみだ」

 

…俺が知る限りで今までで一番いい笑顔してんな、アルム。

 

 

「何だ、このでけえ骨は…竜か?」

「大きさは確かに同じくらいだね。…でもどうやってここに入れたんだろう、ここの入り口は流石にちょっと狭い気がするし」

「確かにさっき楽しみとは言ったが、入っていきなりこれか。色々期待できそうだな」

 

塔の調査をしつつ天辺を目指す為に扉を開けた俺達の前に最初に現れたのは、かなりデカい…多分竜か何かの骨だった。塔の周りとかなら兎も角、どうやってここまで運んだんだろうな?タオが言うように、どっかから入れれそうな感じもねえしよ。

 

「『門』の技術を応用すれば、入れるだけなら不可能ではないだろうな」

「別の世界と繋げられるなら同じ世界でも行けるでしょって事?…それはそうかも」

「そう聞くと本当に凄いね、クリント王国の錬金術って」

「それならそれで、何故態々中に入れたのかという話になるがな。防衛が目的なら、動きが制限される塔の中より思い切り暴れさせられる外に配置した方が間違いなく良い」

 

ってことは防衛目的じゃなさそうか?でも、他にこんなことする理由も無いよな…

 

「まあ、今考えて答えが出ないなら先に進んだ方がいいな。新しい情報があればそれだけ考察も捗る」

「そうですね、行きましょう。…しかし、予想はしてましたが酷い荒れ具合ですね」

「ホントだよ、階段もちょっと崩れてるし。…崩れないよね?」

「流石に心配性が過ぎるわよ、タオ。むしろフィルフサとの戦いでこれくらいしか崩れてないんだから、それだけ丈夫だってことになるんじゃない?」

「でも、何百年も前の建物なんだよね、ここって。…私もちょっと不安になってきちゃったかな」

「もしそうなったら、上に行けるのリラさんとアルムしかいなくなるよな…」

「心配する気持ちも解るが、奴らの技術力本物だ。暴れ過ぎなければ滅多なことは起きないだろう」

 

…思いっきり剣を振り下ろすのは止めた方が良いな。つーか今思いっきり「は」を強調してたなリラさん。

 

「えーっと、この部屋には…巨大なボウガン?」

「えっと、確かバリスタって言うんだよね、これ。ここからフィルフサを撃ってたのかな」

「防衛用の設備か。…威力はありそうだが、奴らの数の前には焼け石に水だな」

「あの時異界で見たのとは比べ物にならねえくらいうじゃうじゃいたんだよな…あんまり想像したくねえな」

 

1体だけでも、見た目と雰囲気だけで何か嫌な感じがしちまうしな、アイツら。

 

「ん?この紙は…」

「何か見つけたのか、アルム」

「ええ。…此処で戦ってた兵士の手記みたいですけど、俺では解読しきれませんね。タオ、頼む」

「うん。えっと…」

 

――「もう時間が無い。あの恐ろしい魔物との戦いは、あっという間に始まり、終わろうとしている」――

――「俺は街道を警備する一兵卒でしかない。なのに混乱の中、戦えるからと駆り出されてしまった」――

――「何処の悪党がどんな大罪を犯せば、あんな光景を引き起こせるんだ。全てが奴らに踏みにじられた」――

――「黄金の麦畑も、緑の丘も、白い石畳も、全て。その踏みにじる足が今、この塔に届きつつある」――

――「神よ、せめて避難の為別れた妻と娘に、ご加護を」――

 

「…ここで、終わってる」

「…聞いてるだけで、キツくなってくるな」

「予想はしていたが…本当に絶望的な戦いだったみたいだな」

「そして、少なくともこの兵士は事の真相を知らなかったようだな。確かに、告げてしまえば逃げられてもおかしくない内容ではあるが」

「…この人も、多分ここで最期まで戦って…」

「…だろうな。内容からして、自身の生存を諦めている」

「…せめて、奥さんと子供はちゃんと逃げ延びれたと思いたいわね」

 

そうじゃねえと、本当に救いがねえからな…

 

「他にも、こういった内容の手記があるかもしれんな。何か重要なことが書かれているかもしれん、探してみるぞ」

 

似たような内容のものがまだあるかもしれないってのか。もう気が滅入って来たぜ…

 

 

「さて…ここまでで見つかったのは、それなりに高位の騎士と貴族の陣中日記だな」

 

塔を登りつつ調査をしていたら、二つの手記が見つかった。片方は先が破られてて、もう片方は書いてる途中で力尽きちまったみたいだから、本当はまだ続きがあったかもしれねえが…気にしても仕方ねえな。

で、その内容は…

 

――「遂に、リーゼ峡谷の関門が破られてしまった。我々に残されたのは、このピオニール聖塔のみ」――

――「もう竜は来ない。東の城で戦力を浪費し過ぎた。撤退に次ぐ撤退の末、ここに追い詰められたが」――

――「逆転は可能だ。我々が戦っているのは『女王』率いる敵の主力だ。頭さえ潰せば群れは瓦解する」――

――「それに、敵主力をこの塔に引き付けることで領民の避難する時間と隙を作ることができる」――

――「これぞ騎士の本懐、剣の献身だ。この上は、一匹でも多く敵を倒して見せよう」――

 

――「異界で息子が、腕の中で妻が、そして今、私も。我が由緒ある家系が途絶えるは、無念……いや」――

――「領地が街が領民が、魔物に踏みにじられるのを眺めただけの無能な領主には似合いの最期か」――

――「王家の命とはいえ、奇怪な「門」を領内に建造し一時の繁栄におぼれた挙げ句、全てを失いながら」――

――「救いの手立てを、また錬金術に頼るしかないとは。なんと、惨めで滑稽な」――

 

「この先に何が書いてあったか、書こうとしていたかは想像もつかんが…」

「…この高さまで来て、この内容の手記があるってことは、撃退はできなかったってことだよね」

「じゃあ、ここで戦ってた人達は…」

 

…本当、キツいぜ。こんなことが大昔とは言え本当に起きてたのかよ…

 

「…この人達は、最期に錬金術をどう思ったのかな」

「…解らないな。だが、どう思っていたとしても、悪いのはその力の使い方を誤ったクリント王国の王家だ。錬金術そのものは何も悪くない」

「…うん、そうだね」

 

力の使い方か…規模とか事情は兎も角、親父も間違えた結果がああだからな。俺も同じにならねえように気を付けねえとな。

 

「さて…後はこの上か。恐らくここが一番重要な情報が遺されている可能性が高い」

「うん。みんな、行こう!」

 

塔の天辺。俺がガキの頃からずっと目指してた場所。…一体、どうなってるんだろうな。

 

 

 

 

「この巨大な結晶は…魔石か?」

「そうだな。恐らくこの魔石の力で召喚などを行い、フィルフサに対抗していたんだろう」

「村から時折キラキラ光って見えてたけど…これが理由だったんだね」

 

遂に塔の頂上にたどり着いた俺達を出迎えたのは、あまりに巨大な結晶だった。恐らく、何かしらの用途で運び込まれた魔石だと思うが…どうやってここまで運んだんだろうか。

それと時折光っていたのは、単に光の反射によるものか、若しくは何らかの力を発揮した時に光ったのか…ここの構造的に前者では無さそうか?調査すれば解るだろうか。

 

「レント、頂上までたどり着いたけど…感慨深い?」

「ん…まあ、そう言う気持ちもあるにはあるけどよ」

「何だ?子供の頃からの夢だったんだろう、さっきのようにはしゃいだところで私達は咎めんぞ」

「あー、なんていうか…ここから見下ろした先が全部フィルフサの大群だったって風景、ここで戦ってた人達は見たんだよな」

「…ああ、だろうな」

「その時の絶望って、どれだけ大きかったんだろうな…って考えちまったんだ。そして、俺達が間に合わなかったら、それがもう一度起きるんだよな」

 

…確かにそれは、はしゃぐ気分にはなれないな。だが…

 

「だからこそ、是が非でも間に合わせる。その為の調査だ」

「そんなこと、絶対に繰り返させない。まずそれを心に決めて、全力で頑張ろう!」

「…そう、だな。よし、まずは張り切って調査と行くぞ!」

 

さあ、一体何が見つかる…?

 

 

「何だ、この鳥の像?」

「ふむ、何か書いてあるな…賢者像、か。恐らく、クリント王国における賢者の象徴がこの鳥なのだろう」

「実際には、賢者と程遠い事をしてくれたわけだがな」

 

「凄い形の木…それに、枝の所に何かはまってる?」

「これは…トラベルボトルのようだな。恐らくここで採取をし、研究や調合を行っていたんだろう」

「つまり、ここは本来錬金術の研究所だったのか?となると、下のあの骨も研究対象として運び込まれたのか?」

「どうやったら木をこんな形にできるのかも気になるけどね。…あ、こっちにもトラベルボトルがあった。貰っていこっと」

 

「凄い…こんな大きな本があるんだ!」

「ここまで大きくする意味はよく解んねーけどな…」

「内容は…ふむ、興味深いが、今は関係なさそうな内容だな。後にした方が良さそうだ」

 

「なんだろう、この輪っかみたいな道具…かな?宙に浮いてる…」

「これは浮遊天球と呼ばれる物だな。錬金術において重要な要素の一つである星の運行を調べる為にある」

「星の…言われてみたら確かに星に見えるかも」

「…誰もいなくなったこんなところで、何百年も経って、まだ回り続けているのか」

 

 

「…この辺りも、フィルフサに踏み荒らされたみたいだね。跡が残ってる」

「じゃあやっぱり、ここにいた人たちは…」

「ああ、全滅…だろうな」

「陥落した城塞跡、それも相手がフィルフサならば当たり前のことだ」

 

一通り見て回ったが…興味を惹かれるものはいくつもあったが、今欲しいものじゃなかったな。直接的な手掛かりか、そうでなくとも何かしらの『鍵』があればいいんだが…

 

「…ん?」

「どうした、ライザ?」

「瓦礫の下にこんなものがあったんだけど…」

 

そう言ってライザが見せてきたのは…宝石のようなものが付いた3つの輪っかが1つになっている、不思議な物だった。恐らくこれも何かしらの道具だろうが…

 

「これは…鍵だな。クリント王国の遺跡で稀に使われる形式のものだ。ライザ、解るか?」

「うん、高度な錬金術で作られてるのが解るよ。凄い力を感じる…!」

「鍵って…この形でか?」

「うん。「中に入る仕掛け」って刻んであるし、僕らが知ってる鍵と違って、どこかにはめ込む物だと思うよ」

 

…まさか鍵そのものが見つかるとはな。だが…

 

「随分ボロボロだな。このままだと使えない可能性があるぞ」

「修理しなきゃいけないかもってこと?…うーん、確かにそんな感じがする」

「何処で使うのかも調べなきゃいけないしね。…ここまでの流れだと、クーケン島のどこかっぽい感じはするけど」

 

言われてみれば、そんな挿絵があの本にあった気がするな。最初の方だったか…?

 

「ん、もう一つ何かあるぞ…封書か。…む、この紋章は…!」

「紋章がどうかしたの?アンペルさん」

「ああ、こいつはクリント王国の高位錬金術士だけが用いるものだ」

「じゃあ、その封書には…」

「ああ。これまでで一番重要なことが書かれているかもしれん。…署名は「南フルークスター管区長」の役職名だけか。ここら一帯を取り仕切ってた錬金術士のようだな」

「文書の内容は?」

「そう急くな、今から読む。どれ…

 

 ――「本書は、未練の遺言なり」――!」

 

「「「「!!」」」」

「…遺言…!」

「…」

 

未練、か。一体、何が語られるんだ…

 

「――「胡散臭い呪いと侮られた我らが錬金術は、長き時をかけ、王国の中心となる地位を得た」――

 ――「我らは王国の力となり、光となり、糧となった。王国の誇りに、叡智に、剣に、鎧に、そして」――

 ――「死を呼ぶ病となった」――」

 

「……っ」

 

錬金術への認識を良くしたまでは、良かったのにな…

 

「――「我らは、異界より資源を得、各地に「門」を築き、王国に大いなる繁栄をもたらした」――

 ――「我らはその為に、自らの良心を眠らせた。友人らの森から水を奪い、軍勢を引き入れた」――」

 

「………っ!」

 

オーレン族を友人と呼べる程度に友好的な関係ではあったのか?…だとしたら、尚更許されることじゃないな。

 

「――「彼らの聖地から資源を奪い続けた我らに、やがて天罰が下った。一面の涸れた地平から」――

 ――「『蝕みの女王』がフィルフサを引き連れ、来た。我らはたちまち異界を追われ国を食い荒らされた」――

 ――「我らにできたのは、研究施設だった塔を用い、フィルフサを誘き寄せる波長を放射することで」――

 ――「領民が避難する時間を稼ぐ、ただそれだけ。この一地域だけの抗いが、せいぜいの力」――」

 

確かに、この錬金術士達に対しては天罰というのがふさわしいだろうが…それに巻き込まれた領民は、本当に気の毒でしかない。

 

「――「あれほどに満ちていた力も、光も、糧も、全て消え失せた。誇りも剣も鎧も叡智も、いつしか」――

 ――「王国と民衆、そして我ら自身に降りかかる死の病となり果てた。全ては、我らの罪」――」

 

「…っ!何を、何を勝手なことをっ…!!」

「リラさん…」

 

…因果応報、自業自得。そうとしか思えないな。自分達の行いがどういうものなのか、気付くのが余りにも遅すぎるだろうが…

 

「――「この遺言を読む誰かに、せめて未練を託したい。我らの、せめてもの抗いが成就したかどうかを」――」

 

…そうだ、これは「未練の遺言」だったな。一体どんな未練が――

 

「――「この地より南方の汽水湖上に、我らの建造した人工島がある。偶然、緊急避難の役に立った」――」

 

「あ…」

「ここから、南方の汽水湖…」

「そこにある、人工島…ってことは、さ」

「もう、答えは1つしかないな」

 

「――「その名を『クーケン』という」――」

 

…これで、推理の答え合わせが1つできた訳か。

 

「――「どうか、ここを訪れて欲しい。未だここに住まう人があれば、訪ねて欲しい。息災か、と」――」

 

「…せめて、最後に命を懸けた分だけでも救えたか…」

「それがこの錬金術士の未練、ってことね…」

「…何つーか、遣る瀬無えな」

 

最期の最期に、この錬金術士は逃げずに自分の命を懸けた。なら…

 

「…「息災か」、か。そうだな」

「アルム?」

「――言われるまでもなく息災だよ、大昔の錬金術士。特に俺達4人は、あんた達の過ちを何百年越しに清算してやろうとするくらいにな」

 

その分くらいは、応えておいてやるか。又聞きでなく、島民本人の言葉でな。




本当はもう少し書きたいこともあったんだけど、文字数多過ぎ&キリが悪くなりそうだったので次話に持ち越し。
この話を書くにあたって改めて塔を見て回ったけど、結構ここ突っ込めそうだなと思うオブジェクトがあるんですよね。

後ちょっと3の話。ボオス参戦確定&公式サイトのシルエット的にアンペルとリラもほぼ確定。このメンツとの掛け合いも面白そうですね。…ウチのボオス、あんまり憎まれ口叩かないからもし3の話を書くとしたら大分会話変わりそうだな。
そして舞台が「突如エリプス湖の湾口に現れた群島」だそうで。というかまたクーケン島がピンチになるのか…

今回はQ&Aは無し。

ここまで読んで頂き、有難うございました。

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