変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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3まで後1ヶ月ちょいですね。…このペースじゃそれまでに終わらないな。
因みに3はやりますが、そこで出てきた設定がこの小説と大きく食い違っていた場合は修正するつもりでいます。独自設定で済まされるレベルならそのままにしますが。

説明&真相判明。今回はボオス視点のみです。

3/29 誤字報告があったので修正。


やるべきことが解ったのなら、後は

「…これは」

「なに、これ…」

「こいつは…」

 

記念碑が動いたことで出てきた階段。そいつを降りた先に広がっていた空間は…今までの俺達の常識からはあり得ない物だった。床、柱、橋、何もかもが一目見ただけで人工物だと解る。しかも照明まで設置されているから、地下にもかかわらずそれなりに明るい。

…確かにさっきクーケン島が人工島だの何だの言っていたのが聞こえたが…これを見たら疑う余地なんざ微塵も無いな。

 

「これが、あたし達がなんてことなく過ごしてたクーケン島の本当の姿…」

「俺でも解るぜ、こんなのが自然にできるわけねえってな。…本当に、人工島だったんだな」

「す…凄い、凄いよ!これが全部、人工物だなんて!」

「こんな大きなもの、本当に人の手で…?」

「ああ、出来たんだ。クリント王国時代の錬金術ならな」

「え…?」

「「は…?」」

 

…待て、クリント王国だと?

 

「…その辺りの説明は後で1度にしましょう。歩きながらでいきなり聞けるような話ではありませんし」

「そうだよ!それに奥にもっと凄いものがあるかもしれないし、早く進んでみよう!」

「タオさん、すっごい元気だね」

「ああ、間違いなく今までで一番テンション高いぜ」

「ある意味ここも遺跡だからな。それも、何気なく過ごしていたところの地下にこんな規模のものがあったんだ。興奮くらいするだろう」

「そういうお前はどうなんだ?こういうの、お前も好きだろう」

「…この一件が一段落ついたら、隅々までじっくり見て回ってやりますよ、ええ」

 

…よく見ると口角が僅かに吊り上がってるな。本当、ぱっと見じゃ感情が解りにくい奴だ。

 

「ああ、それと…エル」

「なに?」

「さっき本の内容について話すと言ったが…その過程で、お前にはまだ話せないような内容のものが出てくる可能性がある」

 

…オーレン族と異界周りの話か、確かにエルにはまだ話せねえな。コイツの歳であの話は重すぎる。

 

「だからその話題が出そうになった時は…全力で話を暈す」

「…絶対に言わない、とかじゃないんだ?」

「それくらいはしないと説明できないこともあるしな…」

「んー…解った。でも、いつかはちゃんと教えてね?」

 

本当、まだ12とは思えねえくらい物分かりが良い奴だな。

 

「さて、ではタオが大分先に進んでしまっているし、私達も行くか」

「そうですね。…タオ―、落ち着け―。遺跡は逃げないぞー」

 

…タオがこういうポジションなのはかなり珍しいな。いつもはむしろライザとレントに言う側だろうに。

 

 

「この部屋は…確か、本に」

「うん!「中核」「重要」「制御」そう書かれてた部屋だよ!」

「そうか。それが本当なら、これがクーケン島の機能を制御する中枢だな」

 

先行したタオの後を追って進んだ先にあったのは…宙に浮いている赤い球体と、そいつを中心に回っている輪だった。…一目見ただけじゃ、何がなんだか解らねえな。

 

「…これも、錬金術で…?」

「どうやって浮かせてるのかな…錬金術って不思議だなー」

 

不思議、で済ませて良いレベルじゃねえ気もするが…まあいい。

 

「ええっと、開け、見せろ、次、見せろ…」

「…タオがこっちに集中し出したし、今の内に姉さん達に大方説明しちゃう?」

「そうするか。少し長くなりそうだしな」

「…いよいよか」

「理解できる話か心配だな…」

「…よし、気合い入れて聞こう。むんっ」

 

お前らが抱えてる事情、たっぷり聞かせてもらおうか。

 

 

「…クーケン島を造ったのは、クリント王国で?」

「この島の住人は、クリント王国の末裔で?」

「クーケン島は、湖に浮いてる?…え?」

「…そういう反応になるだろうな。無理もない」

「あたし達も最初に聞いたときは混乱したしね…」

 

…予想以上にとんでもねえ話だった。大昔に滅んだ国が、島1つ造れるだけの力を持ってたこと。その国の住人が、俺達の先祖だということ。そして、クーケン島がエリプス湖に「浮かんでいる」島だということ。

歴史的にはとんでもねえ大発見だろこれは。…どうも、そんなこと言ってる場合じゃねえ事態みてえだが。

 

「湖に浮いてるってのは、本当なのか?」

「ああ、この目で見たからな」

「わざわざ潜ったのかお前…」

「何か見つかるかと思ってな。…初めて見た時は、俺も目を疑ったよ」

 

だろうな。…しかし、確かにここに作るなら浮島になるだろうな。エリプス湖の深さを考えると、いくら錬金術がとんでもない代物だとしても、こんなところに普通の島を造ろうなんて考えたら想像もつかないくらい金も時間もかかるだろう。

それはそれで、どうやってこんなものを湖に浮かべているのか、という疑問は残るが…こんなものを造れるんだ、少なくとも今の俺の理解の範疇の外にある話だろうな。

 

「…こんなこと、どこで調べたんだ?」

「塔に色々残されてたから、そこで。あの塔は元々クリント王国の錬金術の研究所だったんだってさ」

「あれもクリント王国に関係してたのか…」

「この辺りのあの手の建物は、大抵クリント王国が関わっているんじゃないかな」

 

少なくとも、古城とあの門があった神殿のような建物はクリント王国が造ったものだからな。その可能性はあるだろう。

 

「…こんなに凄い事が出来たのに、どうしてクリント王国は無くなっちゃったのかな」

「…何て言えばいいか。物語とか読んでると偶に出てくるだろう?欲をかきすぎて自滅する権力者とか」

「うん。…クリント王国もそうなっちゃったってことなの?」

「ああ、そんなところだ。そしてその結果他所からの攻撃を受け、国は壊滅。その際にこの島に避難してきた人達が俺達のご先祖様だ」

 

…嘘はついてねえな、嘘は。その手の物語だと、恨みを買い過ぎたりデカい不正の証拠を掴まれたりで周辺国から袋叩きにされるとかが理由になるが…実際は、な。

 

「えーっと、因みにクーケン島が造られた理由は残ってなかったね。本当は別の目的で造られてたらしいけど、偶々避難の役に立っただけみたい」

「まあ、こんなもんすぐ造れって言われて造れるようなもんでもねえだろうからな。そこは驚かねえ」

「むーん、だったら何で造ったんだろ…」

「それはこの件が無事に済んでからゆっくり調べるつもりだ。…なんなら今予想してみるか?当たってるかもしれないぞ」

「え?えーっと、じゃあ…クーケン島は湖に浮かんでるんだよね?」

「ああ」

「…本当はお空に浮かべたかった、とか?」

 

…空に島を?

 

「…流石にそれは、錬金術でも出来ないんじゃねえか?」

「ライザ、どう思う?」

「うーん、出来ないとははっきり言えないけど…今のあたしにはちょっと想像つかないかな」

「えっと…リラさん達はそういうの見たこと無いですか?」

「いや、痕跡すら見た覚えは無いな。存在していたなら、アンペルが知っている可能性は否定できんが」

「むーん、じゃあ違うかなぁ」

「少なくとも今は資料も何もないから何とも言えないな。…とはいえ、お前はクーケン島が浮島だと偶然言い当てたからな」

「一体どこからそんな発想が出たんだ…」

 

まさかと思うが、エルが頻りに勧めてくるあの小説か?本に影響を受けすぎるのも良くねえと思うんだが。

 

「そっちの話は終わったか」

「あ、うん。事情は大体説明したよ」

「そうか。こっちも終わった…というか、ようやく事態の全貌が判明した」

 

遂に、か。正直嫌な予感しかしねえが…

 

「…どうだったんだ、タオ?」

「…この前、僕たちが予想した通りの事になってた」

「あ…」

「…クソ、やっぱりか」

 

…顔を見ただけで解る、よっぽどマズい状況らしいな。

 

「…どんな状況なんだ?アタシ達はその予想とやらは聞いてないんだが」

「…簡単に言うと、クーケン島は今ほんの少しずつ流されながら沈み始めています」

「「…はあ!?」」

 

流され…いや、それどころか沈む、だと!?

 

「あそこにある核がこの島を浮かせるための動力になってたんだけど…そのエネルギーが足りなくなってるんだよ」

「地震が増えていたり突然不漁になったりしたのは、島が流されていたのが原因です」

「…確かに今まで無かったことだから不思議に思ってたが。そんな理由が…」

「ついでに言うと、淡水化装置も壊れているな。そこに有る3つの大きな装置だ」

「淡水化装置…まさか、湖の海水を、か?」

「そうだ。これが、本来の島の水源だ」

「なら噴水から水が出なくなったのは、装置が壊れたからだと?」

「ああ、経年劣化でな」

 

…なんだそれは、どうして今の今までそんな状態で放置されていた!?何故クリント王国の人間はそういう情報伝達、共有をしていなかった!?…ちょっと待て、なら…!

 

「…アルム、お前達さっき記念碑に何かをはめ込んでいたな?」

「ああ、ここに入る為の鍵だ」

「鍵…ならタオ、その鍵と似たような物を島で一度でも見たことがあるか?」

「え…無いけど…」

「…そうか。…ってことは、だ」

「何が言いたいのよ、ボオス?」

「ここの操作をするための手引書があるのに肝心の鍵が島に無え。そしてそもそも手引書の読み方を誰も知らねえし残ってねえ。更にはこの島が人工島だって事すら塔に行かなきゃ解らねえ。

…つまり、この島はちゃんとした管理が必要なもんだってのに、そのことを誰も知らねえまま何百年もほったらかしだったってことになる」

「…もっと早くにこうなっていても不思議じゃなかった、か」

 

クリント王国の錬金術がどれほどかは知らねえが…今こうなってる以上、完全なもんじゃねえ。それこそ俺達が生まれる前に限界が来てもおかしくなかったはずだ。

…そう考えると、兆候が出だしたタイミングであの2人が此処に来たのはとんでもなく運が良かったんだな。

 

「そう言われてみると、何やってんだクリント王国って改めて思うぜ…」

「今こうやって手遅れになる前に知れたのも、偶然に偶然が重なったからだしね。…そういうの、あたし達はちゃんと残しておかなくちゃ」

「そうだね…あ、ライザ。今の内に装置と核を見ておいて欲しいんだ」

「そうね、まずそれを見なきゃ修理も何も無いものね。任せなさい!」

「事情が事情だ、今回は私も全面的に口を出すぞ」

「うん、お願いねアンペルさん!」

 

事前に知ってたとは言え、意外と冷静っつうか…前向きだな。

 

「俺達はどうするよ、アルム?」

「そうだな…とりあえず、淡水化装置はあの3人ならどうとでもなるだろうな。仮に部品の1つや2つで済むなら、明後日までには直るだろう」

「…そこまでできるようになってるのか、ライザとタオは。全く、アタシが想像つかないくらい成長してるんだな」

「ふふっ、はい。凄いですよ、みんな」

 

正直そこは俺も驚いている。あのイタズラ三昧で真面目さの欠片も見えなかったライザがそこまでできるようになってるなんてな。本気になれるものがあれば、誰しも成長できるってわけか。

…そうなると、農作業をサボらなくなった理由も何かありそうだな?あいつが錬金術以外に本気になるもの…ああ、成程な。

 

「単純で解りやすい奴だってことは、変わって無さそうだけどな」

「正直で真っ直ぐだと言ってやれ。というか、聞こえてたら後でどやされるぞ」

「ああ、悪い悪い」

 

おっと、つい口から出ちまってたか。

 

「それで、たんすいかそーち?っていうのは大丈夫みたいだけど、あの赤いのはどうするの?あれが一番大事なんでしょ?」

「そうだな…島1つ浮かせ続けられるエネルギーを産み出すものだからな。まず素材が見つかるかどうかの話になる」

「心当たりは無いのか?」

「…今のところは」

 

エネルギーを産み出す核を作るためのもの、か。

 

「竜眼じゃダメなのか?アレも持っただけでかなりの力を感じる代物だったが」

「…足りないだろうな、恐らく。出来たとしても一時しのぎくらいだろう」

「えっと、それってお見舞いの時に持ってきてた玉の事?」

「ああ。あれは古城にいたドラゴンの目玉だ」

「…凄いの取ってきてたんだね」

 

あんなことが無かったら、一生お目にかかれなかった代物だろうな。

 

「むーん、ドラゴンでも足りないってことは、もっと凄い魔物から取れる物じゃないと駄目って事?」

「ま、魔物に限定しなくてもいいんじゃないかな…」

「まあ、そうだったとしても倒しに行くだけなんだけどよ…そこまでやらなくていいならそれに越したことはねえよな」

 

まあ、危険はできるだけ排除した方がいいからな。そもそも、アレより上の魔物なんざそうそう見つからねえだろうし…いや、待てよ?

 

(キロが言っていた『蝕みの女王』…そいつはどうなんだ?)

 

少なくとも国を一つ滅ぼすところまで持っていく奴らの頭だ、そいつ自身も相当な力を持っているだろう。…だが。

 

(…蝕みの女王までたどり着くのにあのフィルフサの群れを突破しなきゃならねえだろうし、できたとしても消耗した状態でそんなバケモノと戦わなきゃいけない)

 

…少なくとも、今の俺の感覚じゃ死にに行くのと何も変わらねえ。そんな提案をこいつらにするのは…流石に無理だな。

 

「終わったよー!」

「そうか。で、どうだ?」

「淡水化装置は今すぐにでもどうにかできるよ、素材も多分揃ってるし。で、核は…」

「方法は無い事も無い。…続きはアトリエでだな」

 

もう終わったのか。というか本当に装置の方はすぐどうにかできるのか。まあ、あの世界に早く水を返せるのならそれに越したことはないんだが。

…核の方は、此処で出来ない話なのか。つまり、異界絡み…そういうことか。

 

(クリント王国みてえに無理やり搾取しようってわけじゃねえから、事情を話せばコイツ等には快く渡してくれるだろうが…)

 

遣る瀬ねえっちゃ、遣る瀬ねえな…。

 

「エル、今日の話は他の人達にはしないでくれ。親父と母さんにもな」

「ん、解った。…どうにかできるんだよね?」

「…やるさ。絶対にな」

「うん。絶対に、あたし達で島を救ってみせるよ」

 

…本当なら俺も何か出来るならそうしたいが、こういうことはコイツ等に任せっきりになっちまうのは歯痒いな。

 

「…ああ、ボオス。後でアガーテさんに異界絡みの事情説明だけ頼んでいいか?」

「いいが…さっきも思ったが、本当に必要なのか?」

「かもしれない、とだけ言っておく」

 

…まあ、それくらいなら頼まれてやるが。

 

 

「――結論から言うと、俺達は『蝕みの女王』を倒しに行くことになった」

「「…はあ!!?」」

 

翌日、アルムが俺とアガーテにこんなことを言いに来た。…いやちょっと待て、話が急すぎるだろ!?




アルム「最短最速で突き進む…!」
ボオス「だとしてももうちょっと心の準備ってやつをだな…」

とりあえずエルには「一番ヤバい異界関連は話さず、王国絡みも要点が解る程度に暈す」くらいにして、「俺達を信じろ」してもらいました。それでもウェインとルーテリアは感づきそうなところはありますが。
後色々考えたら、本編前に島が沈んでる可能性も普通にありましたよねコレ。水源自体はライザ達が生まれるずっと前から止まってたそうですし。

Q.異界の話をされたアガーテはどんな反応した?
A.第一声が「…その、なんだ。よく無事だったな、本当に」でした。

ここまで読んで頂き、有難うございました。
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